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最強妖怪は異世界でもやっぱり最強でした  作者: 狐狗狸
羅魔瑠帝国
11/14

闘技大会編 予選開戦!

「「闘技大会?」」

「ああ。闘技大会は羅魔瑠帝国の名物の一種でな。年に一回城の敷地内の闘技場で行われるバトルだ。」


 マスターはそういって壁にある張り紙を指さす。

 あ、ほんとだ。ご丁寧に地図までついてる。

 写真じゃないってことはカメラとかはないのか。これじゃグー○ル先生も期待できないわけだ。


 張り紙には簡素に<羅魔瑠帝国闘技大会>の文字と、優勝景品・100000リルという数字の羅列があった。

 おそらく金銭単位なのだろうが、日本円の感覚しかない俺にはまったくその価値がわからない。「あ、なんかゼロ多いしそこそこ高額なんだろうな。」程度のことだけ察することができる。


「ローマのコロッセオみたいですね。」

「人間って人の死闘見るの好きだよなあ。」

「とにかく死にかけてる何かを見て自分の死を実感しようとしますよね。」

「分かる。戦争とかだいたいそーいうもんだよな。なんも得しねーのに馬鹿だよなあ。」


 しみじみうなづき合う俺と穂玉。

 

 人間でいう死の感覚は、俺らにはよくわからない。

 というのも、妖怪には寿命という縛りがない。生ある限り、生き続ける。殺されたりとか、衰弱で死ぬとか老いるとかいう感覚はあるのだが、『いつか必ず死ぬ』という概念がないのだ。

 そのため、殺されたり事故ることがない限り、生き続ける。終わりのない生を、ずっと歩み続けるのだ。


 俺も穂玉もそうなるはずだったのだが、どういう縁だが知らんが二人仲良くバナナさんによって事故死である。

 初めて「死」を実感してわかることもあるものだ。

 

「この闘技大会は他国にも人気でな。コンタニア大陸以外の国の貴族や王族もこれを見に来るんだ。」

「なぜです?」

「いわばスカウトのためだ。闘技大会はコンタニア大陸以外が出身の者も出場できる。だいたいは大金狙いの冒険者たちで雑魚ばかりだが、中には腕の立つ者もいてな。そいつらに声をかけて傭兵や護衛、軍の勧誘をするわけだ。勿論観戦料金をとる。」

「さすが商売国家ですね。商売魂たくましいです。」


 俺がほけーっと感傷に浸っている間に、いつのまにか穂玉とマスターの会話はとんとんと進んでいた。

 ちょっと!?さみしいよ!?せめて何か声かけてよ!


「俺ほっとくなよ!寂しいだろ!」

「寂しくて死ぬとか餓鬼ですか?・・・きっも。」

「敬語ログアウトやめろ!!傷つくから!!すんごくメンタルえぐってくるから!」


 ジト目で見てくる穂玉にチョップをかましながら俺は会話へ乱入する。

 マスターとハンクよ。頼むから小動物か何かを見る目で俺を見ないでくれ。


「とにかく、これに出るしかないでしょう。」 


 ごほんと咳ばらいをして、話題を戻す穂玉。

 俺もうなづいて同意の意を示した。


「そうだな。」


 無職の俺たちにとってもいいチャンスだし、しかも金も手に入ると。これは参加しない手はない。

 

 俺と穂玉は立ち上がり、後ろの入り口に向かった。

 そして、別れの挨拶を告げるため、もう一度ハンクとマスターと向かい合う。


「頑張って来いよ。まあ何か困ったことがあったらいつでもこの店によってこい。」

「服や家具を買うときはオラの店よってくんろー!!」


 二人とも、笑顔でそう言ってくれた。


「ああ、ありがとよ。また来るぜ!」

「お世話になりました。」


 マスターとハンクに何度もお礼を言って、俺と穂玉は闘技場へと向かった.




◆◇◆




 千里眼を駆使して歩くこと数分。

 ついに俺たちは王都三層目・羅魔瑠城内の闘技場に着いた。

 

「おおお・・・」

 

 あらかじめ見てたからでかいなあとは思っていたが、いざ目の前に来てみるとすごく実感する。

 頑丈な鉄扉が目前にたたずみ、鉄の要塞感がすごい。入り口からすでにやばい雰囲気が出てるんだけど。


 とりあえず、闘技場そのものの形を確認したいので、誰も見ていないことを確認し、俺と穂玉は壁を駆けぼって突き出した屋根のような部分に飛びあがる。

 不法侵入?んなの知るか!!


「すっげーーー、めちゃくちゃでっけーな!!」

「いかにも、ですね。」


 上からみてわかったのだが、どうやら闘技場は円形ではなく六角形をしているようだ。

 俺たちが立っているところは六角形型の闘技場の突き出した天井らしく、途中から屋根がない。つまり、天井の真ん中だけぽっかり空いていて、観客席の部分にだけ屋根がある、そういう形だ。

 ほうほう、天井がガーって動く野球場みたいな感じか。

 それよりも、驚いたのはその大きさだ。

 東京ドーム一体いくつ入るんだって思うほどでかい。

 さらに、すごいのが観客席と天井を支える六つの柱意外すべて更地。でかい上に広い。本当に暴れるためだけの場所だね。


「えー、闘技大会に参加する参加者のみなさあああん。時間となりましたので入場してくださあああい。」


 耳障りな機械音と混じって招集する人の声が聞こえてくる。

 どうやら始まるようだ。


 俺は体を乗り出して下を行く人々の列を眺める。


 武装状態っていうのか?

 剣やら弓やらいろいろな武器を持った人がうろうろしており、中には変な棒を持った人もいる。

 みんな髪の毛の色が様々だから上から眺めるとなんか面白い。

 服装も様々だ。全身鎧姿の奴らもいればすっごい簡素なボクサーパンツ一丁まで。

 女性もいるが、みんななんか黒魔術みたいな服装だったり、普通の洋装に近いものだったりと、文化のちゃんぽんが起きている。


 おっと、観察するのはそろそろ終わりにしよう。俺らも中に入らねば。


 俺と穂玉はそのまま天井から闘技場のフィールド内に飛び降りる。観客席を軽く飛び越え、そのまま更地に着地する。

 入場すりゃいいんだろ?()()()()入れとは言われてない。

 わざわざ列に並んでちまちま入るより楽だしね。


 運がいいことに、俺たち以外にすでに参加者がたくさんフィールド内にいたおかげで俺たちが天井から飛び入ってきたことに気づく人はいなかった。

 俺たちよりも目立つ存在が中に入ってきたからである。


「オラオラどけどけー!昨年度優勝者のバルスタ様のお通りだーーー!」


 周りの参加者を押しのけながらフィールドの中央に移動してくる二組のマッチョ。

 んー?なんかどっかで見たことのあるつるっつるの頭に小物キャラ感丸出しの顔。

 誰だっけか。


「おおおー!バルスタだー!狂犬バルスタとマッドネスだぞーーー!」

「今年もいい試合見せろよー!」


 なんか観客席めっちゃわいてるんだけど!?

 あいつら有名人か何かか!?


「あいつら酒屋で私がぼっこぼこにした人たちですよ。いつの間に目を覚ましたんでしょうか。」

「え、まじで?」


 あー!思い出した思い出した!あんときの!

 え、こんなのが優勝できちゃうんならこれ闘技大会じゃねーよ。

 ただの喧嘩だよ喧嘩。


「今年度も優勝金は俺たちの者だぜー!」


 おい、もう一人馬鹿がいたぞ。

 バルスタの隣で剣をぶんぶん振り回したながら悠々と歩く金髪モヒカンマッチョ。

 こいつスキンヘッドの連れか?いつの時代のヤンキーの頭してんだよ。

 あーあーあーあー、昨年度優勝者がこれじゃあ全然やる気出ねーな。もっと強い奴とやりあえると思って期待したのによ。


「ほーたーまー、帰っちゃダメー?これならお前だけでも一掃できっだろ。」

「帰らないでください。というか、帰る場所もないでしょう。」


 とか会話をしていたその時。


「時間となりました。それでは!記念すべき第100回・羅魔瑠帝国闘技大会を開催したいと思いまーす!!」


 上空からアナウンスが鳴り響き、観客席の一部が突き出してくる。

 いや違った。

 俺が観客席だと思っていた場所は大画面のスクリーンだったのだ。

 六つの巨大スクリーンは俺たちからも観客からも見やすい位置で固定され、さらにスクリーンの下に場内アナウンスの場所が出現し、大音量で司会のねーちゃんの声が鳴り響く。


 そういや、こっち側の世界に来てから車とかそういうのを見てない。その代わり、マイクとかスクリーン等の電化製品はあるようだ。

 俺の申し訳程度のファンタジー知識だとこういう世界ってそれすらないのに、不思議だ。

 もしかしたらあれは電気とかじゃなくて魔法を使っているのかもしれない。

 あとで確認する必要はあるかもしれないな。


「闘技大会の司会を努めさせていただきます、マテラでーす!さあ盛り上がっていきましょおおおおおおお!」

「うおおおおおおおおおおお!」


 観客、参加者どちらも吠え、一気に会場が熱くなる。

 雰囲気に彫り遅れた俺と穂玉の場所だけ気温が五℃くらい低い気がする。

 てかこれほんっと暑苦しいわ!あ、あれだ!なんか勝手に興奮している中高生の体育祭の応援に似てる!


「それではルール説明を始めます!と、その前に。」


 明るくてはきはきとした声が途切れ、地面が揺れ動きだす。


 瞬間、重低音が会場に響き渡り、突如、巨大な鉄の壁が地面から姿を現す。

 スクリーンがぎりぎり見える高さに調節されているのか、一定の高さまでせりあがるとそこで壁は止まった。

 しかも、一つじゃない。数枚の分厚い鉄壁がフィールドを分断していく。


「な、なんなんだこれ?」

「参加者を分けるつもりでしょうか?」


「観客の皆様、スクリーンをご覧ください。現在フィールドはこのように、六つに分断されております。」


 スクリーンに一つの図形が移る。六角形の頂点同士を結んだ形、つまり六角形とアスタリスクを重ね合わせた状態。

 さっき闘技場を天井から眺めた俺たちだから一瞬でわかった。

 闘技場のフィールドごと俺たち参加者を分けたのだ。


大掛かりな仕掛けに観客が一斉に湧き上がる。


「昨年まではフィールド全体での勝ち残り戦にしていました。ですが、今年は特に参加者が多いため、少し特殊なルールになります。昨年と同様、二人一組で今、自分たちのいる囲いの中の敵を戦闘不能にしてください。つまり、分けられた小フィールドの中で一つだけ残ったペアが本戦へと勝ち進む形です。」


 スクリーンの映像が図形から切り替わる。

 六つとも異なった映像。

 たぶん六つの区分別々に映像に出しているのか。


「続いて、ルールの説明に移ります。ルールその1、壁を上って別の区分に行くことは禁止です!その2、自分の組んだペアが戦闘不能にされた場合、自分は大丈夫でも失格とします!その3、魔物使い(ビーストマスター)の方の魔物はペアとしてカウントしません!最後に、戦闘不能になった人は即刻退場になります。さあ皆さん!準備はいいですかああ?」


 スクリーンの画面に次々とルールが表示されていく。


 えー、てかマジですか?

 この人数を全員()()()()にしろと?

 ()っちゃうのは簡単なんだけどさー。


 「記念すべき第100回・羅魔瑠帝国闘技大会予選、開戦ーーーー!!」


 って、おいー!始まっちまったよ始まっちまったよー!!

 俺がここで全力出したら絶対何人か逝かせてしまう・・・・!ここは穂玉に頼もう!!


「おい穂玉、てめえ腕なまっちゃあいねーだろうな。」

「はあーあ、いつになったら力加減を覚えるんですかあなたは。」

 


 俺の周囲に風が渦巻き、竜巻となって人々を飲み込んでいく。

 それはだんだん規模を増し、さらに速く、大きく、破壊力を持つ。

 今回は俺の妖術でその場に生み出したタイプの風なので、方向・威力・速度、全てが俺の意のまま。

 もちろん、自然の風そのものを操ることができるが、あいにく今日は風が吹いていなかったので、超ド級の竜巻を創り出し、どんどん威力をあげていく。


 ふはははははは、人間が木っ端のように巻き上がってくぜー!!

 属性三個持ちなめんじゃねーぞ!


 とはいっても竜巻事態に殺傷能力はない。

 いや殺すことは簡単なんだけどね?もう少し俺の妖力を使えばいけるんだけど、なんの恨みのない人を殺すわけにゃいかん。

 これは処理しやすくまとめるだけ。本業は穂玉にお願いする。()りかたは俺よりもきれいだし正確だからな。


「あとで油揚げおごってくださいよ!」

「おい、油揚げあるのかこの国、なかったらおごれねーんだけど!?」


 ちょうど土煙も一緒に巻き上がったとき。

 穂玉の周囲に淡く輝く銀色の結晶が舞い散る。




  融合妖術(ゆうごうようじゅつ) 千刃(せんじん)銀桜吹雪(ぎんおうふぶき)



 銀に輝く竜巻が牙をむく。



「さあさあ楽しい楽しい花見の時間だぜー!!」


 鋭い結晶が竜巻に飲み込まれてった人間どもの手と足に突き刺さっていく。

 大丈夫だ。命はとらないが、戦闘不能にはさせてもらう。

 穂玉の至極緻密な妖力調整のおかげで、体がしびれて数日動けなくなるだけだ。


「おっとー!!?これは突如発生した竜巻に参加者が飲み込まれております!!どうやら自然発生した竜巻ではないようです!」


 司会の声とともにスクリーンに俺たちのいる場所の現状が移される。

 まあ、ほとんど騒いでる人間がぐるぐる風にもまれてるところしか映ってねーけど。


「な、なんなんだ・・・!こんな大魔法見たことも聞いたこともねーぞ!?」

「あ、足と手が・・・動かね!?」


 そりゃそーだよ。だって魔法じゃねーもん。


「終わりました。」


 淡々と事務作業の終了を知らせるように穂玉が言う。

 どうやら全員刺し終わったらしい。


「りょーかい、ほんじゃはい解除っと。」


 指をはじき、俺は妖力で生み出した風を止める。

 今まで巻き上がっていた人々がぼとぼとと地面に落ちてくる。


 予選突破だ。






◆◇◆






「へー、なかなか面白いやつらだぞ!リベラ、あいつらと斬りあいたい!」


頭上に映し出されるスクリーンを見て、ひとりの少女が無邪気に笑う。

まるで小さな人形のような可憐な少女。


「おいこらてめえ、任務以外で面倒ごと起こすなよ?」


それをたしなめる一人の青年。

普通だったらとても微笑ましいワンシーンだろう。



だが彼らの足元には、敗北した人間達がうずたかく積まれていた。



「どーせ本戦で斬るんだぞ?少し早めに」

「だめだろーが!!その戦闘願望をなくせっ!」




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