山を、登る
耳に響く息遣い
肉の音骨の音
踏みしめる音
目に映る世界は簡素化
植物もシンプルになっていく
登るに比例して
現実感がなくなっていく
辛さが増していく
「そこに山があるから」
って誰が言った
こんな苦しいことだって
教えておいてね
減っていく花の匂い
生物が少ない
振り返ると
目に映る世界は未見
頂上が楽しみになっていく
登るに比例して
足取りは軽くなっていく
辛さに慣れていく
「そこに山があるから」
って誰が言った
そんな一言だけじゃ
言葉が足りないよ
あと二歩もう一歩
たどり着いた場所で
上を向いて回ってみる
一面の青に引きずり込まれる
周りには絶景
感情が一つに定まらない
「そこに山があるから」
って誰かが言った
そうか言葉だけじゃ
語りつくせないね
登ってみるしかないんだね
実際に山を登ったときのことを思い出しつつ書きました。ある一線から別世界に入ったような気持ちになったことを覚えています。感覚が変わったのか、環境が変わったのか。登山家の方々はこういう特殊性を求めて山に登るのかなと、思ったことをそのまま詩にしました。