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転校生は播州リアン! (別題:播州弁少女)  作者: 長槍
第1章 可憐な美少女と迫りくる中間考査
4/7

過剰防衛

 翌日の朝は、何のこともない秋晴れの空で、なぜか早く起きた僕は、自室のベランダから見える朝焼けに昨日車窓から見た美しい夕焼けを思い出してしばし黄昏ていた。

 

 鍵谷 茜。彼女のことは昨日のことで少し怖くなっていたが、朝焼けが昇るとともにその恐怖は薄れていった。そんな平日の朝、朝飯と歯磨きをいつもより早く済ませた僕は、いつもより一つ早めの電車に乗るためにホームで待っていた。

 

 もしかしたら駅同じだし会うかもな、とぼんやりと思った。でもこれといって困ったことは起こらないだろうと思った。

  

 その時だった、鍵谷はまたしても現れた。僕が気が付いた時には、すでに改札を通過しこっちに向かってきていた。僕はもうすでにそれは想定内だったし、一晩寝てすっきりしたので話しかけることにした。


「鍵谷さん、おはよう。」

「あ、えーっと北沢君やっけ、おはよう。そういや同じ駅やったなぁ。」

 一瞬、なぜか駅が一緒だと知っている様子の鍵谷に驚く。

「えっ、知ってたの?」

「昨日さ、駅で降りたとき一瞬こっち見たやろ?そんとき分かった!」

 どうやら昨日の芝居はお見通しのようだった。僕は少し困惑し、少し恥ずかしくなって黙る。なにか負けたような気がした僕は鍵谷に対抗するためここで何のためらいもなく広川の件について聞いた。

「そういえばさ、なんで昨日広川を即効で振ったの?」

 鍵谷はその質問に少し困惑した後、笑顔で

「やってちょっと…気持ち悪かったから。いちびっとう感じがして嫌やってん」と答えた。


※いちびる→調子に乗る


 恐怖が襲った。昨日の僕ならやりかねなかったな、と思い僕は少し青ざめ、慎重に「そうなんだ」とだけ返した。鍵谷はそれを見て若干申し訳なさそうな顔をした。


気が付けば電車がもう来ているみたいで、急いで荷物入りのリュックを背負い電車に乗った。鍵谷は別の車両に入っていった。

 

車内でも、電車が学校の最寄り駅についても、そこから歩く時も鍵谷とは話さなかったし、会わなかった。


 廊下で歩きながら自分の教室をみると、ほぼ昨日と同じ状態にあった。人混みができていて、たぶん先に来た鍵谷がちやほやされているといったところだろうと思った。



実際は、昨日眺めてるだけだった奴が広川みたく猛アタックを仕掛けてるようだった。いつもより早い時間なのに結構な奴らだ、と思う、いや、ちょっと待て、広川いるやんけ!


「付き合ってください、一目惚れです!」

「播州弁かわいいですね!」

「昨日振られても諦めれませんでした!すみません!」


当の鍵谷は、嫌な顔をしてしばらく黙り、告白勢も雰囲気を察した頃合いに、


「もう気持ち悪いから…あんまやめてくれへん?」


と言った。周りはさっきより静かになった。そこに、一人の大柄の先輩がやってきた。


その先輩は結構腕っぷしが強く、かつモテることで有名で、おそらくこの学校で逆らえる人間のいない人物であった。


先輩は人混みを掻き分けるまでもなく、そこには道ができ、その先の鍵谷に近づいた。


そして、いわゆる、壁ドンとやらをして、

「さっきの奴らはキメえ、って言ったか?」と言った

対して鍵谷は、

「当たり前やろ、昨日からあればっかでもう嫌やねん。てゆーか壁に手ェつくんやめてくれへん?」

先輩はやや鍵谷の返答の後半部分を遮るように

「わかるぜわかる、お前にあいつらは似合わない、そうだろ?」

鍵谷はまた嫌な顔を強め、しばらく黙った。

先輩は間髪入れずに

「なんなら、俺と付き合わないか」

と、顔を近づけて問い詰めるように言った。周りの聴衆も、恐ろしさと緊張で張りつめていた。

鍵谷を見ると、さらに顔に嫌悪を示したが、黙ったままだった。

そして、先輩が最後の追い詰めを図る。

「なあ、返事したらどうだ、茜ちゃん?」と、その時だった。


突然、今まで黙っていた鍵谷が「やかましいんじゃダボ ワエもキモいやろがィ」と、叫んだのだ。


※ダボ→ボケの上位互換 ワエ→お前


一瞬、静かになった教室前。誰もがその現場を直視できない恐怖がその場を試合した、しかしその一刹那を置かぬ間に先輩の堪忍袋の緒が粉砕され、

「んだと!てめえなめとんのか!」というが早いか先輩の左手の平手がが鍵谷の顔に向かった。いつもの脅しである。結局本当に叩かないのであるが恐怖心で誰もが逆らえない先輩の平手。恐怖により誰もが目を覆った。

そして、大きな衝撃音がした。僕はなぜか恐怖に打ち勝つものがあり目を見開いた。

そこには、信じられない光景があった。

なんと、鍵谷は先輩の平手を顔まえで受け流していたのだ。

先輩「っ痛ってえ!てめえ何しやがった、クソッ」

ほかの聴衆はどうやら先輩のこの言葉の後に目を開けたようで、みんながみんな信じられないような顔をしている。

(回避不能と言われた先輩の平手を受けたのか・・・)

どよめきが起こる。先輩が完全に壁ドン体制をやめると同時に鍵谷は


「なンしてくれよんどい…全然型なってへんやんけイチビっとんちゃうどワエ。ワエみたいなダボにばっか付きまとわれてめっさゴウわいとうんや。次やったらいてまうどホンマはよどっか行けや……はよせんかい」


※なんしてくれよんどい→何してくれてるの     めっさゴウわいとうんや→凄く腹が立ってるの


鍵谷の余裕の態度を見て、聴衆はさらにどよめきを増す。

先輩は少し息切れを起こしているようだった。そして先輩はしばらく呼吸を整えたのち、

先輩「チッ、久々に強い奴にあったぜ、またな」と言った。

そして、「てめえとは決着をつけねえとな」と先輩は続けた。


鍵谷は制服の埃をはたいて、人混みをかき分け教室に消えていった。

「おい待て!」と、先輩が言うが早いか、始業のチャイムが鳴った。今来たと思われる担任が

「いい加減自分のクラスと席に戻れ!以後朝教室に集まったものは生徒指導室行きにするからな!」

といったので、人混みはあっという間に解消された。


席についてもさっきの緊張が解けない、そんなHRが始まろうとしていた。

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