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転校生は播州リアン! (別題:播州弁少女)  作者: 長槍
第1章 可憐な美少女と迫りくる中間考査
3/7

砕けない奴と砕けた奴

「やっぱ広川くんけ。言うとっけどウチはお断りやさかい。ほんならな。」


電車の中で僕は、ついぞさっき鍵谷が広川にかけたその言葉を反駁していた。


 広川は、というと、青ざめたまま電車の中に入った後、恥ずかしさからか

僕からも見えない車内の奥のほうへ行ってしまった。


 当の僕も、その恥ずかしさは身に染みて分かっていた。彼女のような高嶺の花、隣の席になったぐらいで期待した僕が間違いだったのだ。


(でも会話を途中から聞いて、しかもその場で即決で振るなんてなんて気遣いのない奴なんだ

でも、初日からあんなこと言われていやと思わないほうもおかしいか。いやでもそんなばっさり言わなくてもいいじゃないか・・・・)


 とにかく、僕は鍵谷のさっきの言葉をひたすら反駁し、さっきまでの自分の気持ちと葛藤を余儀なくされた。


 しばらくすると、スマホが振動したので、取り出した。それは広川からメッセージの通知だった。


''あんなにバッサリ振るとか性悪だぜまったく、でもそれが逆に萌えない?''


僕は驚いた。広川はあれで未だ諦めてなかったのか。と思い相談を受けた時よりはるかに呆れさせられた。


''やめとけ''


とだけ送り、メッセージアプリを終了した。


 なんか広川みたいに未練を溜めるとキモいことが客観的に分かったので、僕は冷静さを取り戻した。別に広川を軽蔑しているわけではないが、このときは別の立場を取りたくなった。


 そのあとは駅に着くまで適当にスマホゲーかニュースでも読んで過ごした。鍵谷のことは再びどうでもよくなっていた。


 気づいたら、駅に着くとアナウンスが入っていた。立って周りを見回すと、乗った時の混み具合はいずこにと思えるほどガラガラの車内だった。電車はやや強めにブレーキをかけ、つり革をつかむ僕の体も若干もたつく。まもなく、電車は停止した。


 駅に着いた。いつも僕はこの駅に一人で降りる。一人といっても、たくさん降りる人の中に高校の友達がいないというだけのことだけど。


(時間帯ずらせば中学の同級生とも会えるんだけどな、今日も僕だけだ)


と、思いながら降りたホームを改めて見回す。そのときだった。


 はるか向こうに同じ高校の制服が見えた。まさかと思った。目を細めてだれかと見ようとした。


 鍵谷だった。


(マジかよ)


幸いか、鍵谷のほうは気づいていない様子だった。


 ここで僕は声をかけるか迷ったが、さっきの鍵屋の広川への扱いを見るに、それは悪い選択と本能的に察知した。


 声をかけないことに決めた以上、こっちがバレても困る。僕はとっさにポケットからスマホを取り出し、さっきやっていたゲームを再起動しながら早歩きで改札へ向かった。


そして改札を通過し、迎えの車に急いで乗り、一安心をすると、再び自分の来たほうを車窓から見る。


鍵谷は切符でやや迷いながら改札を通り、自分の自転車まで、歩いて行ったようだった。



 迎えの車の中で、僕は、今日、鍵谷のおかげでどれほど混乱したのかを自分の記憶を確認しながら考えた。


(朝、美少女転校生、名前は鍵屋、とにかく可愛い、自己紹介、確か播州弁、日常会話も播州弁、鍵谷に広川が惚れる、僕を巻き込んで振られる、かと思ったら鍵谷は駅が同じ、と、こんなもんか)


 と、再び深い思考に落ちた僕は運転してる親の声が耳に入っていなかったようで、家でこっぴどく叱られて、心配された。結局夕飯もシャワーも寝るときもそんな調子だったみたいで、まったく災難をもたらしてくれたな、鍵谷は、と僕は思う。


疲れたのかその日はよく寝れた。


しかし、鍵谷は、いや播州弁少女翌日、それ以上の災難を振りまくことになる。


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