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転校生は播州リアン! (別題:播州弁少女)  作者: 長槍
第1章 可憐な美少女と迫りくる中間考査
1/7

「ごじゃ」って何だ!?

今思えば、あの日が全ての始まりだったのかもしれない。


僕の名前は北沢翔。高校1年だ。


高校1年の夏休み、学校祭の準備と課題に追われていた8月の初めのある日、

確か学校祭に使うポスターをみんなでクッソどうでもいいことを喋りながら描いていた時

どうでもよくないことをそのうちの1人が話し出した。


「俺らのクラスにさあ、転校生くるらしいんだけど。」

「吉田マジ!?」

「男?女?」

「いやまだ全然わかんなくてさあ、マジで来るってことしかわかんなかった」

「うっわぁ、つかえねーな。」

「あれでしょ、美少女でしょ。俺賭けるわ」

「は?ありえねー。絶対顔微妙な感じでしょ」

「藤田マジ夢ねーな、というかロマンねーな。転校生ってーのはな」

「いやいいから。広川ちょっとキモいし現実見ろよ」

「は?」

「いや、僕も美少女説推すわ。」

「うわ、神田裏切りやがって。」

「そもそも男か女か判ってないんだよなあ。」

「過度な期待は禁物・・・か。」


とまあこんな塩梅で雑談が激しくなったりしたわけだが

しばらくその話題で持ちきりになってその日は作業効率が落ちた。

1日使ってそいつに尋問したがこの日はそれ以上の情報を聞き出すことができなかった。


僕は美少女が転校してくるという広川説を支持し、その日は寝た。

次の日も作業に行ったが、情報はなかった。


というか恐ろしいことに夏休み中にこれ以上の情報は出てこなかった。

さらに恐ろしいことに学校祭が終わっても何の情報も出てこなかったのでいつの間にか

転校生の存在は忘れられ、吉田はホラ吹き男の汚名を着せられていた。

さすがに可哀想だと思ったが、美少女転校生を期待させた罰だと思ったので仕方ないと思った。





ところが、9月も終盤に入り、中間考査が近づき、吉田の汚名すら忘れ去られつつあったある日、

吉田が汚名挽回を達成する事態が発生した。


いつも通り学校には定刻ギリギリに到着した僕は、渡り廊下上で教室の異常事態に気が付いた。


(なんだあの人の集まりようは!?)

そう。いつもとは比べ物にならないレベルで教室前に人が殺到しているではないか。

と、認識すると同時に、学校祭の準備の時の吉田の雑談が突然脳裏をめぐり、さらに同時に広川の転校生美少女説が鮮明に浮き出てきた。

(これもしかして転校生なんじゃねーか)

(しかもこれだけ集まってるってことはマジで美少女でしょコレ)

いつもは速度を一定に保っている僕の歩行速度は、突然二次関数的に早まり、気づいたら走っていた。

そして人ごみにブレーキが利かないままほぼ突入といった形で入った。


そこにいたのは、人ごみの中で混乱しているのか立ち尽くしていた一人の、そうまさしく「美少女」だった。

身長は150センチ後半ぐらい、肩まで伸びたきれいな黒髪、前髪はピンでていねいに分けられ。

スポーツ経験者とみられるきれいな立ち姿、体系、肉付き。すべてを透かしていくかのような眼。

自分の想像したいた美少女のイメージをはるかに超える姿だった。

脳内思考ではただでさえ語彙力のない僕からヤバい以外の語彙が失われ

(おいおいヤバイヤバイヤバいよコレ)

というか想定外の美しさ、いや可憐さに僕は夢かと思い、自分のほっぺたをつねった。

隣を見たら、僕の少し後に突っ込んできたであろう広川が僕と同じようにつねっていたので少し笑った。

しかしながらまだ僕は、その現実を呑み込めずにいた。

無論、声をかけることすらおこがましいと思うその美しさを、しばらく広川含めた人ごみ連中とうっとり眺めてたら

チャイムが鳴った。


担任がホームルームのためにやってきたが、少しの間右往左往したのち、

「自分のクラスに戻れ!」

と叫んだので、みんな我に返り、名残惜しそうに、口々お付き合いしたいとか何とかつぶやきながら、自分のクラスへ帰っていった。

そのつぶやきにはおおむね同意した。あまりにも可憐すぎたのだ。


興奮冷めやらぬ僕も、ある程度冷静さを取り戻し、自分の席に着いた。


担任もHRを始めようとしたが、クラスの状態を見て何か察したような顔をし

「たぶん紹介しないとろくにホームルーム始まりそうにないだろうから、自己紹介から始めましょうか。前に来て。」

その転校生もやや緊張した足取りで、それすらも可愛いんだけど。

教卓のまえでくるっと振り返り。

実はこの時点で15年間出ることのなかった鼻血が出始めて。


美少女転校生は前で若干周りをキョロキョロし、そして、少し息を吸った動作を見せた後。



「ウチ、鍵谷茜っていうねん。兵庫から来ました。よろしくなぁ~」



(ん?関西弁?)

またもや思いがけない事態である。関西弁話しそうな見てくれじゃないじゃないか。とある種偏見のようなものが芽生えたが

再度美少女を、いや鍵谷さんを見た時点で偏見は消え去りそれもアリだなあと思っていた。

しかし、これをはるかに超える衝撃を僕は受けることになる。


「はい、鍵屋さんだったね。鍵谷さんにみんな仲良くしてあげてね~。 ほらそこ、弁当食わない。 

それと後鍵谷さん、はいこれ中間考査の課題ね。」



「ホンマけ、ごじゃ多いやん~」



(ごじゃ?)

「ごじゃ」。目の前の美少女は確かにそう言った。確かに言った。でも理解不能だ。

ごじゃってなんだんだ。というかいま関西弁よりわからない言語を聞いた気がする。

県立トップ高に入学した僕の現代文読解力をもってしても「ごじゃ」の意味は分からなかった。

というかこの美少女と意思疎通が可能なのかわからなくなってきた。

周りを見回す。みんな眉間にしわを寄せて中空を見るか隣のやつと議論していた。


美少女転校生鍵谷茜の自己紹介終了際に放った一言は、クラスメイトを混乱の海へと駆り立てた。


もはや付き合いたいとかいろいろな邪念は消え去っていた。


「鍵谷さん、北沢君の横が開いてるからそこが席ね」

と担任が言ったが、もはや僕の耳には届いていなかった。


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