タァムディム 共通①
「とうとうこの日が来たのね……」
――私はある役目を果たすため、国を出ることになった。
「あら、女性の御者さんなんてめずらしい。エレスゲの王都までいいかしら」
最低限の荷物を持って馬車に乗り込む。
金は向こうで沢山入るから、これでいい。
「はい、どうぞ乗ってください」
ドアが彼女の手にあるボタンで自動に開く。
「ねえ、御者ってだけでも狙われるのに女性一人では物騒じゃない?」
自分も女一人旅で他人の事を言えないが、純粋に疑問を抱いたので訪ねてみた。
「ええ、なのでこの馬車はかなり硬くできていまして、護身武器が積んであります。年のためにお客様は女性限定にしているんですよ」
その後、お互いに年の近い幼馴染がいる同士だったので、将来結婚するの?という話になった。
「どうかしら」
「あ、着きましたよ」
――四つの島を統一して作られた国エレスゲ、噂通りに黒煙と霧ばかりな町並みだった。
■
「ルクシス・テッサ=マージンナともうします。本日よりタァム・ディム守護騎士団へ入隊致しました」
私はある事情から母の生まれたラヴェル国で母一人に育てられた。
女にも徴兵のある国で、所属した騎士団にてシュヴァリエ・ダーンテソウムの称号を獲る。
そして女のみで構成されたエレスゲの女王クラールの近衛兵団に入ることになった。
「テッサはどこから来たの?」
「ラヴェルの都心です」
笑顔で思惑を悟られぬように答えた。
「へーイケメンいる?」
別の隊員が会話に混ざってきた。
適当に話を聞きながら、暫くしてシフトの仕事だと去っていく。
「はあ……」
案外平和で、戦うより会話が多くて体より頭が疲れる。
まあ女ばかりの組織にしては、意外と雰囲気が悪くない感じ。
「……」
私の本当の役目――いや、本当の目的はエレスゲの女王を守ることじゃない。
一年ほど前に祖国ディーツの女帝から直々に手紙が届いた。
“敵対する王国エレスゲを討つべく力となってほしい”
つまり私の役目はクラール女王を倒し、エレスゲをディーツに従属させる事。
もう一つ、個人的な目的はこの国が父の生まれ育った場所で、もしかしたら、騎士をやっている父に会えるかもしれないと思ったからだ。
その為にはエレスゲの東西南北を守る四つの騎士団を調べなければならない。
「あ、悪い」
走って来た男が私にぶつかってそのまま左へ曲がった。
「待てイールスト!!」
しばらくして違う男が走って来て、避けるとこちらを見た。
「おい、そこの貴様!」
「え……私?」
男は私を見て、怪しんだ。
「見ない顔だが新入りか」
「はい、本日よりタァムディム守護騎士団に入隊しましたマージンナであります」
茶髪の男がまあいいと言って考える。
「それよりも金髪青目の男を見なかったか」
◆なんて言おう?
〔左〕
〔右〕
〔見てない〕
「そうか」
男は走っていく。
「テッサ、テッサじゃないか……!」
黒髪の端正な顔をした壮年の男。
「もしかしてノエーズ叔父様!?」
彼には幼い頃に何度か会って、エレスゲの北方にあるシャヴルズ騎士団に入ってから会わなくなった。
「10年会わない間に綺麗になったな、うちの若い衆が落ち着かなくなりそうだ」
「その口ぶりだとかなり出世されたのでは?」
ノエーズはコクりと頷いて、あるものを見せた。
「シャヴルズの騎士団長になられたんですか!?」
「ああ、今から三年くらい前にな」
◆そう言われて私には一抹の不安があった。
〔彼の立場〕
〔任務への支障〕
「今から東西南北で団長の集会があるんだ。またな」
「はい」
騎士団長が集まるなんて重要なこと噂にも聞いていないのだが、それほど機密保持力の高さを示しているのかしら。
「」