Ж古書屋オカルティオン 共通①
『いいかいマハラァナ。自分がジュエリット人であることは大切な人にしか話してはだめだよ』
――小さな頃、祖母に言われた。
「……暇だなあ」
私はマハラァナ。祖父母に育てられた。
高齢で店を開けられない祖父母に代わり、古書屋を引き継いだ。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ~」
若いのに珍しい。お客さんは執事みたいな格好のカッコいいお兄さんだ。
「何か探しているんですか?」
「ええ、ぼっちゃまに頼まれまして」
本当に執事だったようだ。
「何を探してるんですか?」
「【大魔女マデェール】という本なのですが」
聞いたことのないタイトル。
というより私は魔女よりゴースト系にしか興味がない
たんに知らないだけだろう。
「……探してみますね~」
見つからないので似たような【大女神エレクティエ】をとることにした。
「うーん……」
一番上にあって届かない。
「これですか?」
「はいそうです」
執事さんが代わりに取ってくれた。
「名前にてますけど、これじゃダメですよね?」
「いえそれで構いません」
「そうなんですか?」
執事さんは本を買っていった。
「あれ…あった」
念のため大魔女マデェールを探すと、それは奥に隠されていた。
「……どうしよう」
そうだ。持っていってあの本とこれを交換しよう。
「そんじゃ、シクヨロ、マハラジャン」
「は?」
本屋は幼馴染のロベルに任せる。
「執事さんのいそうな家……」
やはり屋敷か。
「あ、ホラーハウス」
その昔女の子がその屋敷に入ったらイケメン幽霊と幸せに暮らしました~みたいな伝説があった。
―――いくら私がオカルトマニアンでも、あからさまな場所にはいかないわ。
「すみませーん~」
「ん?なんだい~」
THE探偵。の男性に執事さんがいる屋敷をたずねた。
「銀行の頭取宅ですか~いかにも金持ちって感じですね~」
「いや~やんなっちゃうよね~」
「道案内してもらってすみません~」
「なあに丁度、僕もその屋敷にいくつもりだったんだよ~」
――――なんか、彼のペースに乗せられていたような。
「着いたね」
「わ~でっかい!!」
「すみませーん」
探偵さんが話をつけて、メイドさん等が迎えてくれた。
「あ、名乗り忘れたね。僕はオルベリスク、ご覧の通り探偵さ~」
「あはは~私はマハラァナ、古本屋の店長です」
「貴女は……」
「あ、執事さん。実はこれありました」
―――――――――――
「なに、あったの? ふぅん…」
頭取の息子が陰険な顔でジロジロ私を見ている。
感じわるっ。マシュマロの角で頭ぶつければいいのに。
「で、探偵がなにしにきたわけ?」
「いや~頭取にお呼ばれしちゃったんですよ~」
「じゃ、私はこれで、サヨナラ、バイバイジャン~」
「……なんだったんだアイツ」
―――――――――――
「店番ありがとう大変だったでしょ?」
「いや、全然。客こねーし」
◆
「きましたホラーハウス~」
私はホラーハウスに行きたくなった。なので探索にきた。
「おい……」
ロベルはホラーハウス探索に強制参加である。
「なに」
「お前いつだか、あからさまなオカルトエリアには釣られないとか言ってたよな?」
「最近行かないとは言ったけど絶対に行かない言ってないよ?」
「ああそうかよ……」
ロベルは諦めた様子。
「さあ入ろ――――」
「おい!」
さてこれからというときに出鼻を挫いた不届きな輩。銀行強盗……じゃなくて頭取の息子だ。
執事の誰だっけ。まあいいや。なんでここにいんのかな。
まともなパンピーはこんな禍々しいテリトリーには近づきたがらないもんなんだけど。
「またあったね。僕はアイウス、知っての通り頭取の息子」
「あ私マハラァナです~」
「その家は以前は僕の先祖のもの……今は空き家だけど」
「へーそうなんですかお坊っちゃま~」
「お前僕を馬鹿にしているのか?」
「べつにしてないです~」よし入ろ
「おいおいおい何入ろうとしてんだ」
ロベルが私を止める。
「え、なにか問題あるの?」
「お前話聞いてなかったのか? それアイウス・マーニュの先祖の家だって」
「聞いてたよ、だって先祖のでしょ? 空き家ってことは権利とかもう無効なんじゃない?」
アイウスは先祖のとは行ったけど僕のとは言ってないし。
「まあ、そうだが」
「じゃホラーハウス探索を――――」
「はーいストーップ!」
「あ、探偵のオルベリスク?」
「ホラーハウスのアドベンチャーなら僕も同行させておくれ~」
「いいですよ~!」
「あ、おい!」
こうして私はホラーハウスを探索することになった。
●店はがらあきヤバイじゃん
「ゴーストがでそうだね!」
「やめろ」
ばたん。
「あ、扉がひとりでにしまった」
「お約束だね」
「いやだあああたのむから家に帰らせてくれ!!」
「そう言われても……まさかホラーが苦手なんて幼馴染なのに知らなかった」
「かっこうわるいところを見せたくないと、隠していたんだろう?」
アイウスはニヤり。
「……そうだよ」
と照れながらこちらに視線をあわせない。
「探偵はさっきからなにをしている」
「ほら、探偵ですから内部を調べるのは普通でしょう?」
というオルベリスク。たしかにそうだけど、物色しすぎじゃない。ずるい。
「……そうだな」
あっさり引き下がる。意外だなあ。
「おい見ろよあれ」
ロベルがなにかを見つけ、嬉々しながら指差している。
「金はないけど由緒正しき貧乏貴族なのに金ぴかが好きって成金趣味だよね」
彼は悪いかと言いたげな顔でアンティークを探しにいく。
「マハラァナ、豪奢な宝石箱があったよ」
オルベリスクが私に見せてきた。女の子は皆宝石が好きだろうと思ったからだろう。
「わー箱に宝石がついてる。泥棒なら箱ごと盗みますね」
私はどういうわけか、女の子の好きな物の定番である花や甘いものは普通に好きだが宝石だけは好きではない。
鉱物系にはくない思いをしたからだ。