経済政策始めます
よろしくお願いします
「おはようございます、アレウス様」
「あぁおはよう、アーニャさん」
俺は役所の執務室に入ってきたアーニャさんに挨拶をする
書類を読み終わった次の俺はしっかり役所に出勤していた
「アレウス様、私のことはアーニャと呼んでください」
「あぁすまない。それよりアーニャ、一昨日渡された書類は全部読み終わったから返すよ」
ドサッと俺は空間倉庫から書類の山を出して、アーニャに返す
それを見たアーニャは目をぱちくりさせている
「アーニャ...?」
「...本当に読まれたのかですか...?」
アーニャが俺に驚いたように聞いてくる
「あぁ本当だぞ?......もしかして俺を試したのか?」
アーニャの驚き様から見て、俺が書類を読むとは思っていなかったのだろう
「す、すいません!」
アーニャが慌てて俺に謝ってくる
どうやら本当に俺を試してたみたいだな
「理由を聞いていいか?」
「はい...」
アーニャが俺を試した理由は
簡単にいえば、たった18歳の俺がいきなり侯爵になって、領地経営に手をだそうとしてたので心配して試したらしい
まぁ18の若造がいきなり貴族になって、それに加えて俺にも領地の経営を手伝わせてくれ、なんて言われたら、そりゃ試したくなるだろうな
その点から考えみてもアーニャは優秀だな
「そうか、アーニャの言うことはわかるから気にするな。それに俺が間違えたらすぐに教えてくれ。」
「はい、ありがとうございます」
「あぁ俺はまだ若いし、こういうのは初めてだから、アーニャの力が必要だ。これからよろしく頼むよ」
「はい...!私、アーニャはこれからアーレンハルト侯爵領のために命をかけて頑張らせていただきます」
そこまで重く捉えられても困るんだけどなぁ...まぁアーニャ真面目そうだからほっておこう
それよやこの件はこれくらいでいいだろう
今日は色々とアーニャと話し合い事案がいっぱいあるんだ、早くそっちを済ませよう
「この話はこれで終わりにしよう。それより書類を読んで色々気になったことがあるんだ」
「はい、なんでしょうか?」
「そうだな、まずはこの役所なんだが人族しかいないよな?」
俺が最初に話しておきたい問題はこの役所についてだ
書類を読んでて、この役所の職員名簿を読んだのだがみんな人族であった
「はい、ガストン・ノマロが領主を経営していた名残でしょう。元々はこの役所にも他種族もいたのですけど、ここ三年前から人族だけになっています」
これはガストン・ノマロが邪神復活を望む教団に入ったと思われる時期に一致してるな
教団については国王が国を挙げて調べてもらっているが教団という存在がいるということしかまだ掴めていない
「そうか、なら他種族の人たちを雇おう。人族は100人だから、他種族を100人ほど雇おうか」
「100人もですか...?それだと役職からあふれるものが出ると思うんですが?」
まぁ今のままだったらそうなるだろうな、でも俺はその解決案も考えてある
「あぁそれなら問題ない、役場の雇用実態を調べたんだが休日が少なすぎる。7日に1日はみんな休めるようにしたい」
これは俺が日本で生きていた頃の名残だろう
週に1回くらい休みの日は欲しいものだと感じてしまう
「7日に1度の休みですか......そうですね、それならうまく役場が回ると思います」
「そうか、それならいいんだ。それより役場内に他種族批判をするような奴はいるか?」
人族主義だったのはガストンやその周りの者達だったと聞くが、個人的に人族主義な輩もいるだろう
そういう輩は悪いけど、役所にいられると困るんだ
「そうですね......私と信頼できるもので一人一人面談を行いましょう」
「いいのか?」
「えぇ必要なことですからね、それと職員募集の告知も街の方に出しておきましょう」
おぉ面倒ごとをすべてやってくれるのか、いやそれは助かるなぁ
(アレウスさんやりたくなかったんですね...)
いや、面倒ごとをしなくて済んだとか思ってないよ?
「すまないな、任せるよ」
「いえ、これくらいは当然です。他に何かございますか?」
「あぁそうだな...次は財政面の方なんだけど」
「それは税率などのことですか?」
「よくわかったな、まず税率を変えたい」
「どのように変えられたいのですか?」
「まずは村の方の税率は下げる、6:4から9:1まで下げる」
ちなみに9:1とは自分の収入を9:1に割って税を納めることだ、もちろん9が各個人の取り分だ
多くの村民は金銭ではなく農作物を納めている
だから正直税率を下げたところで問題はないんだ
「それとアピエダとブリストンの住民の税率も5:5から8:2まで下げる」
というか、5割っていうのは明らかに暴利に感じるんだけど、この世界じゃ普通のことっぽいんだよね
「猿でもわかる領地経営」にもそう書いてあった
「だけど商人たちは例外でそのままにする」
商人だけ下げないのには理由があるからそれでいい
「アレウス様、お言葉ですがそれでは我が領地の経営が...」
「あぁ今の税の使い方だったらそうなるだろうな」
ちなみにこの領地の税の使い方は5割が領主の収入となり、1割は公共事業と称する領主の私腹の肥やしとなっていた
実質的には税の4割にしか領民のために使われていなかった
そこらへんが孤児院などの経済悪化につながったのだろう
「とりあえず、税からのオレの収入はなしでいい、すべて公共事業等に割り振る」
「アレウス様よろしいのですか...?」
「あぁ俺だったら自分で稼げるし貯金は嫌というほどあるからな」
元々金はそこそこあったんだけど、王都の闘技大会優勝やS級昇格とかの報酬金でさらに貯金が増えちゃったんだよね
「そうでしたね、アレウス様はS級冒険者でもありましたね」
「まぁそういうことだ、それなら財政面も安定するだろ?」
「えぇ、それで問題は全くないと思います。逆に以前より財政に余裕ができます」
まぁ元々6割が領主の私財だったから、多少税率も下げてもお釣りが帰ってくるだろうな
「余裕がある分は孤児院や学校の方に回してくれ」
「アレウス様、学校には王都にしかありませんよ?」
「え?そうなのか?」
王都では学生らしき人間をちらほら見たから学校のって普通にあるかと思ってたんだけど、あれは王都だけだったのか
まぁ学校のことは今後考えていこう
領地の運営が安定してきたら学校を建てるのもいいかもしれないな
「まぁ学校のことはいい、とりあえず孤児院への支援をもっと増やしてくれ」
領地内にはエレナたちがいるところ以外に孤児院がもう一つあるがどちらも経済的に厳しかった
「わかりました、すぐに対応しておきます」
「あぁ助かるよ」
まぁこれで孤児院の経営が楽になったらいいんだけどな
「それでアレウス様、なぜ商人だけは税率を下げないのでしょうか?それでは商人の不満が高まり領地から離れる危険もあると思いますが」
「まぁそれはそうなんだけどな、代わりに特権を作ろうかと思ってたな」
「特権......なるほど、そういうことですか」
アーニャは特権だけで俺がしようとしていることが理解出来たのか、それだけで気づくとか優秀すぎる
「あぁうちの領地で商売をする特権を作る、これで税率が変わんなくても文句はないだろう」
「そうですね...それにその特権が有名になってアーレンハルト侯爵家領地の商人の評判が上がれば眺めてみれば税収も上がります」
「ま、そういうことだな」
俺的には織田信長みたいに税を無しにして楽市楽座みたいにしてもいいかと思ったけど
それは失敗したら怖いからね、確実な方法で行くよ
「アレウス様はお若いのに未来を見据えるとは流石でございます」
「そんなに褒めても何も出ないよ」
(なに、さも自分が考えてるみたいに言っているのですか...全部あの本のパクリでしょ)
まったくいらない所で水を指してきたな
まぁ俺が言ってることってだいたいが、あの猿でもわかる経済書に書いてあったことなんだよね
俺としてはなかなか攻めの姿勢が気にいっていたし、近世の経済と似ていてとても好ましい
あの本ベストセラーになってもおかしくないんだけど、なぜかこの世界の人には受け入れられてないみたいだな
保守的な考えをしている人が多いんだろうか?
「アレウス様は謙遜されてますけど、これはアレウス様が税収をすべて公共事業にかけるから出来ることなんですよ?」
「まぁ無駄にお金をもらっても困るだけだしな、お金はまわすべきなんだから」
まぁ俺の税の使い方はこの世界じゃ一般じゃないから、こんな政策する人はいないのか
経済はお金がまわってこそ成り立つからね
普通の貴族だったら贅沢してお金を使うんだろうけど、俺にはそれが出来ないから無駄にお金をもらっても困るんだよ
「まぁとりあえず俺が今お願いしたいのはこれくらいかな」
「わかりました、私が早速準備してきますので」
「あぁ悪いな、頼んだよ」
そういってアーニャは部屋を出ていく
まぁ大体のことはアーニャ任せとけばいいよな
「はぁ、ほんとに忙しくなるな」
(実質アレウスさん何もしてませんけど)
ははは、それは言っちゃいけないお約束だろ?
お読みいただきありがとうございます
全然話が進まないんで第3章はかなり長くなる気がしますので気長に付き合ってください、よろしくお願いします
この度カクヨムにもこの作品を投稿しましたので、見かけたら「あっ、載ってるな」ぐらいの気持ちで見てください
ご意見、ご感想があったらどんどん言ってください!!