別れ
よろしくお願いします
キィ......
テラスへと続くガラス張りの扉が軋んだ音を立てて夜の王城の空気に響き渡る
「誰ですの......?」
ステファニアがその後に気づいてこちらを向く
すこし瞳が潤んでいるような気がする
「ステファニア様、私です」
「アレウス...?」
ステファニアが驚いたように目を開く
「えぇそうです、さっきはどこかに行ってしまわれたので少し話がしたくてやって参りました」
俺はいつもの騎士風の喋り方でステファニアに話しかける
「私は...!私はアレウス話すことなんてありませんわ...!」
ステファニアがムキになったように俺に答える
んー...やっぱ嫌われることでもしたのだろうか
「ステファニア様、私は明日アピエダに帰る身です。どうか別れの挨拶として少しだけお時間をいただけないでしょうか」
「......」
ステファニアはすぐには答えない
俺からは何も言わずステファニアの答えをまつ
「約束...晩餐会の時の約束を覚えてませんの...?」
約束...?あぁあれのことか
「いや、忘れてないぞ、ステフ」
俺は口調を崩して、ステファニアに話しかける
これはステファニアか俺に普通に接してくれとお願いしてきて約束したことだ
どうもステファニアに前になると騎士風の口調になってしまう
「それでいいんですわ」
「あぁ」
そして再び訪れる静寂
俺はステファニアの言葉を待つことにした、何故か俺から話題を出しても意味が無い気がする
「アレウスは...」
しばらくするとステファニアが口を開く
「アレウスは本当に明日行ってしまうの...?」
「あぁ俺はこれでも侯爵になったからな、これからは領民を守る義務がつく、俺はその義務をまっとうしたい」
可能であれば内政チートみたいのもやってみたいと思ってるけどね
それはまぁ領地についてから考えているんだけど
「そうですの......」
ステファニアが俯いてしまう
俺は何か言葉をかけるべきか迷ったが何も言えなかった
「私はこんな性格ですから親しく接するような同年代の人がいないんですわ」
突然ステファニアが語り出す
「さらに私は王族ですから、気軽に話してくれるような方もあまりいませんの」
ステファニアが弱々しい笑顔で俺に顔を向ける
「ステファニア...」
「アレウス、何もいう必要はありませんわ。あなたは私を慰めてくれますわ。初めてあったあの時も私のことを嫌な顔せず接してくれましたわね」
「......」
俺は何も言わずステファニアの言葉を聞く
「ねぇアレウス、領地に戻らないで私の専属の騎士になりなさい、姫の専属の騎士とは名誉のある役職ですわ」
「ステフ...!」
まさかステファニアがそんな提案をしてくるとは思わなかった
俺は驚きのあまり言葉を発せなかったが
だけど答えは「NO」だと決まっている
成り行きで侯爵になってしまったが、なったからには領民のために頑張りたい
しかし俺はそう答えることが出来ない、目の前にいるステファニアの寂しそうな姿を見て、そんなことは言えそうにもない
「ステフ...俺は...」
俺はその先のことが言えない、どうしても言えなかった
俺がどう答えるか迷っていると
ガチャ
不意にテラスの扉が開く音がする
「ステファニアお姉様、ここにいましたのね、それにアレウス様も」
なんとクリスティーナがやってきた
「クリスティ...」
俺がその名前を呼ぼうとすると
ダッ!!
テラスの奥にいたステファニアが屋敷の中に戻ってしまう
俺は見逃さなかった、ステファニアが泣いていたことを
「クリス、すまない。助かったよ」
「いえ、アレウス様も困っていたようですから」
やはりクリスティーナは俺たちの会話を盗み聞きしていたな、見兼ねて乱入してきたと
「それでアレウス様、お姉様の願いは聞いてもらえないのですね」
「あぁ...悪いが専属の騎士にはなれないな...ステファニアにははっきりと答えれなかったが」
「いえ、仕方ありません。お姉様もわかっていることでしょう。お姉様のことは私に任せておいてください」
そういってクリスティーナはテラスから去る
俺はテラスで一人残されて王都の夜空を眺めた
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これが昨日あった俺が落ち込んでいるもう一つの理由だ
「はぁ...どうにもならないよなぁ...」
俺は昨日と同じように空を眺めてそうつぶやく
「もう!アレウス二つ名なんてそこまで気にすることじゃないわよ!」
カトレアは昨日のこの話を知らないので俺が二つ名のことでここまで落ち込んでいると思っている
まぁ二つ名のことも結構落ち込んでいるけどね
(アレウス様、そのままにしといていいんですか?)
「(あぁ俺にはどうしようもないからな、クリスティーナがどうにかしてくれていることを願うよ)」
今俺が何かしても逆効果だろう、時間が直してくれるのを待つのが一番だ
しばらく歩いていると遊郭につく
遊郭の前には既にカグヤとアン、レアがいた
「あ!アレウス様!」
カグヤが俺に気づいて手を振ってくる
「お兄ちゃーん!」
「お兄ちゃんです!」
ぼふっ!
アンとレアが俺に突っ込んでくる
俺は2人を浮き止めて、クルクルと二回転ほどして2人を下ろす
2人を腕にぶら下げながらカグヤのところへ向かう
「3人とも準備はバッチリか?」
「えぇ大丈夫です、遊郭のみんなにも挨拶はしてきました」
「お菓子もらったよ!」
「もらったです!」
2人が俺たちにお菓子の小包を見せてくる
俺は2人の頭を撫でて、ある方を向く
「レイラ、わざわざありがとうな」
「いえ、可愛い娘たちの門出です。これくらいのことはしますよ」
レイラが見送りのために来ていた
「アレウス様、どうかうちの可愛い娘たちをよろしくお願いします」
「あぁ俺が責任をもって3人を幸せにするよ」
「えぇ、ありがとうございます。アン、レアあなた達は勉強を忘れるんじゃないよ、ご飯もしっかり食べなさいよ、夜更かしもしちゃダメよ?」
レイラがアンとレアに向かって話しかける
「うん、わかってる...いっぱいいっぱい大きくなって帰ってくる...」
「勉強もするです、ご飯もたくさん食べるです......頑張って大きくなるです......」
アンとレアが涙を流しながらレイラに抱きつく
ふたりが落ち着くレイラはカグヤの方を向く
「カグヤ、あなたはもう18だけどあなたの人生は今始まったのよ、アレウスさんのもとで羽を広げてスゴなさい、外の世界はあなたが思っている以上に広いわよ?アレウスさんなら色んな世界を見せてくれるはずだから......幸せなりなさい」
レイラがひとつひとつはっきりと言ってカグヤに伝える
「レイラさん......私...私...」
カグヤが涙を流し始め、うまく言葉を出せないでいる
「カグヤ...」
レイラはカグヤ近づきそっと抱きしめる
「カグヤ、幸せになるのよ...」
「うぅ...レイラさん......ありがとう...ありがとうございます......!」
カグヤが涙でむせながらもレイラに言葉を伝える
「うぅ...最高ね...」
「えぇ......絶対にカグヤたちを幸せにしないと...」
ミラとカトレアもそれを見てもらい泣きをしている
俺はそれを見て心に誓った
俺はこの5人を絶対に幸せにしてやるんだと
別れの挨拶はカグヤ、アン、レアが泣き止むまで続いた
(一つ気になるんですが、レイラさんって男ですよね?)
.........雰囲気ぶち壊しの声が俺の頭の中だけに響いていた
お読みいただきありがとうございます
ずっと言おうと思ってたんですけど
「侯爵」は「こぉ↑しゃく↓」
「公爵」は「こう↓しゃく↓」
と言う発音の違いがあるので一応書いときます!
ご意見、ご感想があったらどんどん言ってください!




