クーデター
よろしくお願いします
街は魔物の大群襲来により大混乱が起きている
「くそっ...!」
俺は千里眼スキルで街の外側を見る
王都の北の方には平原が広がっており、魔物たちが黒い波のように押し寄せてくるのが見える
「...見えた!確かにモンスターの大群が来てる。王都に直撃するまで残り5.6時間くらいはある」
よく王都の兵士達は気づいたものだ
「アレウス、一体どうするの?」
「ちょっと待ってくれ!」
俺は急な事態のために語気が強くなる
「カグヤを探さないと...」
俺はさらに千里眼スキルで王都中を捜索する
俺の脳裏に見えるのは、どこでも人が混乱の波を作っていた
「...くそ...これじゃわからない」
俺はさらに見える範囲を狭めていく
王都にかかる橋の下、薄暗い裏道の路地、そして下水トンネルの中まで探していく
「くそっ...!」
それでもカグヤは見つからない
たらっ、不意に鼻から何かがたれる
「ご主人様、鼻血が...」
俺が手で鼻を拭うと、俺の手の甲は真っ赤に染まっていた
集中しすぎて鼻血が出てしまったらしい
「すまない、大丈夫だ」
「それよりアレウス、何かあなたは知ってるの?」
カトレアが俺に聞いてくる
「あぁこのモンスターの襲来はカグヤのユニークスキルによるものだ」
俺はそこでカグヤのユニークスキル「絶対魅了」について話し、遊郭のカグヤの部屋がスキルを封印するためにあったことを言う
「じゃあカグヤがあの部屋から出たから、今回の事件が起こっているというわけですね?」
「あぁそれで間違いない」
「アレウス、これからどうするの?」
「モンスターの大群が襲来するまでにまだ時間はある、それまでにカグヤを見つけてスキルを封印する」
実際カグヤさえ見つければ、あとはあの遊郭の部屋に戻せばいい。モンスターの大群を俺たちで倒せばいい話だ
「さて...アン、レア、俺たちがカグヤを見つけだす、だからそれまで遊郭にいてくれ」
「嫌だよ!」
「一緒にカグヤお姉ちゃんを探すです!」
ふたりは俺の提案に反対する
「頼む、この混乱だ。お前たちが歩いていたら、混乱に巻き込まれて下手すれば大怪我する。そんなことはカグヤは望んでいないはずだ。だから頼む」
俺は二人の肩に優しく手を置いて、話しかける
「...わかったよ...」
「...わかったです...」
2人はしぶしぶと言った感じで納得する
「いい子だ」
俺は二人の頭を撫で、「ワープ」で2人を遊郭へと送る
「アレウス、これからどうするの?」
「カグヤの居場所はわかっているのですか?」
「いや、千里眼で探したんだが何もわからなかつた」
今俺たちにはカグヤを見つけだす証拠がない
「じゃあどうするのよ!」
「わからない.....証拠がまったく...」
...待てよ、根拠はないが証拠が見つかるかもしれない
「...いや、証拠ならあるかもしれない。ミラ魔眼を開いてくれ」
「わかりました」
ミラは俺に言われて「金月」を開眼させる
「なにか見えるか?」
「はい...これは何でしょう...まるで煙のような魔力が漂っています」
「本当か!」
俺の予測は正しかった、カグヤの魔物を誘う成分には俺は魔力が使われているのではないかと仮説を立ててみたんだ、どうやら仮説があっていたらしい
「ミラ、その魔力はどこから流れている」
「ちょっと待ってください......これは!」
「わかったのか?」
「...はい、これは...王城から流れてます」
「なに?」
王城だと?悪い予感しかしないな
「わかった、王城へ向かおう」
俺たちは「ワープ」で王城の庭に移動する
「ミラ、魔力の発生場所まで行けるか?」
「はい、どこから流れているかわかります」
「連れていってくれ」
俺たちはミラを頼りにカグヤがいるであろう場所いく、王城の廊下を走るが誰にも出会わない
「誰もいないわね...」
「あぁこれは本当に何かあったみたいだな」
そして一つの部屋の前に止まる
「ここです、この部屋から流れ出てきています」
「ここは謁見の時に入った部屋ね」
「あぁじゃあ入るぞ」
ギィ...重々しい音を立てて、巨大な扉が開く
「...これは...!」
そこには囚われているメイドや王城にいたであろう者たちが捉えられていた
「...カグヤ!!」
そして、玉座には囚われているカグヤがいた
「アレウス、王や王子様たちもいるわ」
よく見ると近くにカイゼルや、ステファニアたちが捕まっていた
「おやおや、誰かと思えばアレウスさんじゃないですか」
「っ!?」
俺たちは呼ばれた方を見る
「ダース...」
そこにはダースがいた、そしてダースの横には
「なんでタケトや第二王子のハロルドまでいるんだ?」
「俺がこの国の新たな王となるためだ」
ハロルドが俺に答える
「ふーん、お前はほんとにお兄さんに勝てなくてひねくれちゃった残念な弟だったのか」
俺が皮肉を込めて答える
「何を...!貴様...!」
「ハロルド殿下落ち着いてください、ここで争っても時間の無駄です」
「...そうだったな...」
ちっ、ダースのヤツ邪魔しやがって
「それで、なんで勇者様が悪者サイドについているんだ?」
俺が次はタケトに問う
「...」
しかしタケトは答えない、明らかに様子がおかしかった
「何を聞いても無駄ですよ。そしてあなたたちがここに来たことも無駄です。私たちは魔神を誕生させ、ここに新たな国を気づくのですから」
「なんだと?」
「おっと、これ以上は言えません。それでは...」
ダースがそう言うと黒いモヤが3人を包んでいき、姿を消す
「くそ、逃がしたか...」
しかし今はそれが問題ではない
「ミラ、カトレア、俺はカグヤを見てくる。他のもの達の確認を頼めるか?」
「わかりました」
「任せなさい」
俺は二人に頼んでカグヤの元へ行く
「カグヤ!大丈夫か!」
俺はカグヤの拘束を解きながらカグヤに声をかける
「...アレウス...様...?」
「あぁ俺だ、今助けてやるからな」
「...アレウス様...私を...私を殺してください...私が死ねば能力はなくなります...から...」
「っ!?」
カグヤが息も絶え絶えに俺にそう話す
「馬鹿なこと言ってるんじゃない、今すぐカグヤを遊郭の部屋は戻す」
「いえ...違うんです...長年の封印により...スキルが暴走してしまって、もう止めることができないんです...」
「何を言って...?」
「だから......私を...」
カグヤは何かを言う前に気を失ってしまう
「おい、カグヤ!」
カグヤは俺の言葉には反応しない
「これは...魔力衰弱か...?」
鑑定でカグヤのステータスを見ると
MPがいくらたってもゼロから変化しない
どうやらすべて魔物を引き寄せるために強制的に使われ続けているためだろう、そして魔力の代わりに生命力が使われている状態というわけか
「くそ...このままじゃ本当に死ぬぞ..」
俺はもう既に頭の中では人の選択肢しか残っていなかった
「やるしかないのか...」
俺はカグヤに回復魔法をかける
「カグヤ、ちょっと間だけでいいから目を覚ましてくれ!」
俺がカグヤに呼びかけると
「...アレウス...様...?」
カグヤが奇跡的に目を覚ました
「カグヤ、時間がない。俺が今から君に質問をする、それにはいと答えてくれ」
こくり、カグヤが弱々しげに首を縦にふる
俺も覚悟を決める
「我が名はアレウス、汝カグヤに契約を申し込む」
俺が「絶対契約」を発動させる
「...はい...」
カグヤは俺に言われた通り「はい」と答える
そしてカグヤが答えると二人の元に魔法陣が浮かび上がる
「共有するものは...「魔力」だ!」
魔法陣がさらに輝きだし俺たち2人を包み、徐々に消えていく
「これで契約は完了だ」
カグヤの方を見ると息が少しずつ落ち着いているのがわかる
一方俺はどんどん魔力を奪われMPがガンガンっていくのを感じる
「この減り方はかなりやばいな...」
(アレウスさんでも少し時間がたったら危ないですね)
「あぁチャッチャと済ませよう」
俺は「武具制作」を念じる
そしてどんなものが欲しいかを尋ねられる
「なんでもいいから、スキルを封印できるヤツをよこせ!!」
俺はつい声に出して答えしまう
そして俺の要求が届いたかどうかはわからないが目の前に光が現れ、一つの腕輪が現れる
俺はそれをすぐにカグヤの腕につける
「どうなった!?」
俺はすぐに鑑定する
そしてユニークスキルが封印されたいるのを確認する
(どうやら成功みたいですね)
「あぁ今回もなかなかやばかったな」
俺は額に流れる汗を拭う
(それで今回は腕輪ですが、名前はどうするんですか?)
「あぁそうだな...タリスマンってのはどうだ?」
俺がそういうとカグヤにつけた腕輪が光る
鑑定をかけると
守り人・タリスマン
「どうやら成功みたいだな」
タリスマンっていうのはキリスト教の魔除け的なお守りだった気がする
ちょっと魔除けとモンスター除けをかけてみた
カグヤの体調を確認すると、今はしっかり呼吸が落ち着いており無事みたいだ
「ご主人様」
そうしてるとミラが俺と所へやってくる
「あぁミラか、そっちはどうだった?」
「重傷者が何人かいましたが、カトレアが開発した特製ポーションを飲ませたので問題ないかと。それよりカグヤに契約をされたのですか?」
「あぁやむお得ない状況でな、カグヤには後で謝らないとな」
仕方なかったとはいえ勝手に契約してしまったのだ、怒られる覚悟はしておこう
「多分心配はいらないとは思いますけどね」
「そうか?」
俺がそんなことをはなしてると
「アレウス、王様がアレウスと話したいって」
「あぁ今すぐ行くよ」
俺はミラの答えを聞かずにカトレアに言われた通りカイゼルのところへ行く
「陛下、ご無事ですか?」
「あぁなんとかな、助かったぞ...」
どうやら無事のようだ
「ステファニア様やクリスティーナ様、そしてアレックス様もご無事ですか?」
俺は三人にも聞く
「あぁアレウス君、なんとか助かったよ」
「アレウス様、ありがとうございます。助かりました」
二人は俺にそう答え
「まったく助けに来るのが遅いですわ!私がどうなってもよかったのかしら!」
ステファニアはいつものようにツンツン発言をするが、顔には涙のあとがあった
「すいません、ステファニア様。助けに来るのが遅れたしまったことをお詫び申し上げます」
「ふ、ふん!わかればいいんですわ」
「ありがとうございます。...ステファニア様ちょっと失礼」
俺はステファニアの頬に切り傷があるのを発見して頬に手を触れて傷跡も残らないように治す
「な、何をしていらっしゃるの!」
ステファニアが顔を赤らめていう
「いえ、ステファニア様のお顔に傷があったので、こんなに美しい顔には傷がついてる何てもったいないですから」
俺は少しステファニアをからかうように言う
「ま、また綺麗と言って...わ、私を...!」
ステファニアの顔がどんどん真っ赤になっていく。やっぱこのお姫様可愛いなぁ
(はぁ...この状況でよくふざけていられますね)
「あの...ご主人様」
「アレウス...何ふざけてるのよ...」
俺の家の女性陣が呆れた声を上げる
「い、いやなんでもいい。陛下、何があったかご説明いただけないでしょうか?」
「あぁそうだな...」
そしてカイゼルの話を聞いた
今日、勇者タケトが所見に来るということでカイゼル、ステファニアなどの王都や大臣がここに集まったらしい
しかしここに来た勇者の様子がおかしかったので、兵たちを読んでタケトを捕まえようとするが逆に反撃を受けたらしい
そしてそのタイミングで第二王子のハロルド、宮廷魔術師のダースが裏切りを起こし王城にいたものをすべてここに捉えられてしまったということだ
「...まさか奴らは本当にクーデターを計画してたのか...」
俺は晩餐会の1件を思い出す
「まさか勇者、ダース...それに息子のハロルドまで裏切るとは...」
カイゼルは信じられないという表情をしている
まぁ実の息子に裏切られたらそうなるか
「陛下、今王都には魔物の大群が押し寄せてきています。それが来る前に奴らの計画を潰し、そして魔物の襲来を阻止しなければなりません。どうかハロルド王子の処遇を決めてください」
俺は時間が無いのでカイゼルに息子をどう始末するかだけを聞いた
「......アレウスよ、息子を頼めるか...?」
カイゼルが苦々しげに答える、やはり親としては子供に死んで欲しくないのだろう
「はぁ...わかりました。なるべく殺さずに捕らえるようにしますよ、しかしもう彼が魔神側に落ちていた場合は一考の余地もありません」
「あぁわかっている...」
「さて...ミラ、カトレアは話は聞いていただろうが」
「はい、ご主人様についていきます」
「もちろん私もよ」
2人が俺にすぐに答える
頼もしすぎて俺は苦笑いをしてしまった
「今回もめんどくさいことに巻き込まれたものだ...」
(アレウスさんは生粋のトラブルホイホイですからね)
「あぁ...Luck値カンストのはずなのにな...」
俺は悩ましげにエリーナと話す
ダースたちを見つけて問題を片付けるとするか
お読み頂きありがとうございます
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