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奴隷

改稿したものです、よろしくお願いします

(今日はどうするんですか?)


「ん?そうだな、エドさんの所に顔出してみようかと思ってる」

(エドさんのところにですか、何か用事でも?)

「いや、特にないけど、1回顔を出した方がいいかと思ってな」


エドさんにはぜひ来てくださいって言われたからな、俺としてはなんというか行かないとっていう義務感があるというか


まぁ本当は行かなくてもいいんだろうけど

俺の精神衛生のために行くことに決めた



「さてさて、確かここらへんのはずなんだけど」


クレアさんに聞いてみたところ、エドさんのお店は結構有名ですぐに教えてもらえた


「ふむ、なかなかの大きさですな」


とはいってもこれまで見たお店の中ではといった話だけど。地方にある普通サイズより大きいコンビニくらいの大きさくらいだろうか。


(何ていう微妙な表現...)


「いや、微妙な表現の方が的確に表すことができるんだから仕方ないだろ」


まぁ自分でもこの例えはどうかと思ったけど、ちょっと大きめのコンビニに勝る表現がなかったんだよ


「おい、奴隷が逃げたぞ!捕まえろ!!」


エリーナとそんないつものくだらない会話をしていたら。店の中から男の声が聞こえる、エドさんの声ではないことはわかる


そして、声の先からフードをしてかぶった何かがこちらにやってくる。

奴隷が逃げたと言っていたから、たぶんその何かが逃げた奴隷とやらだろう。


「おっと...」


ふむ、流れ的に捕まえてしまった。まぁエドさんにとっては商品でもあるし、ここで見逃すのもなんかダメな気がする


「おいおい、そんな暴れないでくれよ」



俺の腕の中でじたばたと暴れる奴隷にそう伝えるが一向に聞こうとしない。ふむ、ほんとに逃げたいようだな。逃がしてあげようかと思ったけど、どうやら無理そうだ



「すまない、助かった」


奴隷を追いかけていた男がこちらの方にやってくる。流石にここで逃がしたら俺の罪になってしまう


「いや、気にするな。それよりあんたは?」

「あぁここで警備員をやってるものだ」


警備員さんか、どうりで屈強な体をしてると思ったよ。なんというかアメリカの映画に出てくる大人のバーの用心棒みたいな人だ



「......何事ですか!......そんなアレウスさん...」


そして後ろの方からエドさんがやってくる。

そして俺の方を見て、ひどく驚いている。

しかし「そんな」はひどいですよ...


「あーえっと、なんか奴隷が逃げたみたいな叫び声が聞こえて咄嗟に捕まえてしまったのですが」

「...は、はい、間違い......ありません」

「では、俺が連れていく」


そういって俺に腕に捕まっていた奴隷を乱暴に受け取ろうとする


「おい、乱暴に扱っているならこちらも思うところがあるぞ。エドさん、俺の言っている意味わかりますよね?」

「あ、当たり前です。暴れるのはわかるがもっと丁寧に扱ってください」

「ちっ...雇い主がいうなら仕方ない、ほら乱暴にはしない」


まぁ少し脅しをかけておけば大丈夫か

捕まえた奴隷はまだ暴れているがさっきの勢いは既になく、おとなしく警備員に連れていかれた



「アレウスさん、申し訳ございません」

「すいません、こちらも脅すみたいなことをしてしまって」

(みたいなことじゃなくて、まんま脅してましたけどね)



いらない所で水を差すんじゃないよ、まったく



「そうですか...その、今日はどういったご要件で?」

「いや、特に用はなくて。たまたま近くに来たので顔を出そうと思って」

「それであのタイミングで......ふむ...」


そして、しばらくエドさんが何かを考えているのか、黙ってしまう


うん、気まずいね



「えっと...エドさん?」

「あぁ...!すいません、そのアレウス、もしよろしかったら私の話を聞いていただけないでしょうか?」

「話...ですか?別に構いませんけど」



うん、なんだろうか、なんか込み入った感じっぽいけど、ここで断ることはできないだろう


(これは所謂フラグですね、フラグの匂いがプンプンします!!)


お前のそういう発言がフラグになるんだよ!!


「ありがとうございます、それではこちらに」


俺が答えるとエドさんは俺をつれて、店の奥の部屋、たぶん応接室らしきところにたどり着く


部屋に入り、エドさんにソファに座ることを勧められるので、俺は勧めにのってソファに座る


「それで話というのは?」


俺はエドさんが座るのを確認して、一呼吸おいて聞いてみる



「はい、とある奴隷のことなんですが...」


「......奴隷ですか...」


たぶんさっきの奴隷の話だろう

あの奴隷どっかで見たことあるけど、誰だろか?



「はい、とある貴族様のご命令でこちらにやってきたのですが」


貴族ね、うん、あまりいい感じがしないんだけど、これは面倒なことになるパターンかもしれない

俺は頷いてエドさんに話の続きをうながす



「はい、少し事情が込み入ってて詳しくは話せないんですが......その奴隷の彼女は無理やり奴隷にさせられて」


彼女、ということは女性の奴隷か、あの馬車に乗っていたうちの誰かだろうか?


......あの馬車?


あ、さっきの奴隷はあのフードをかぶった奴隷だ。思い出した、あの「鑑定」が効かなかった奴隷か


もしエドさんが話している奴隷がその奴隷だったらさらに面倒なことになりそうだ


「えっと、それで何故俺に......?」


「はい......これから話すことは奴隷商として失格でしょう。しかし一人の人間としてどうしても見ていられなくて」


あー、なんか話の流れがだんだんとわかってきたぞ


「アレウスさん、先日の馬車に乗っていたフードを目指した被っていた奴隷を覚えていますか?」

「......覚えています」

「そうですか、その彼女がさっき私が話をした奴隷であり、アレウスさんが捕まえた奴隷なんです」


うわー、やっぱりそうか、ほんとに悪いタイミングできてしまったらしい。

そして、たぶんこのあと俺はエドさんに言われるであろうことも見当がついていた


「アレウスさん、アレウスさんの腕を信頼してお願いがあります。彼女を...彼女を救っていただけないでしょうか......!」


ほら、やっぱりね?

こうなるだろうとはなんか思ってたよ。さて、どうするべきか


「......それは俺に貴族と敵対しろと?」


「長い目で見ればそうなります......」

「はぁ......」


俺はついため息をついてしまった。なに?奴隷のために?貴族と敵対しろって?

ふざけてるんじゃないか?


「アレウスさん、無理でしょうか?」

「......すいません、エドさん。それは俺にはできそうもありません。他のものに当たってください」

「そんな......!」

「話は以上でしょうか?それでは俺は帰りますので」



俺はその場から早く逃げ出したい思いで、部屋から出ていく。後ろからエドさんが俺を呼ぶ声が聞こえてくるが、俺には聞こえない、いや、聞きたくない



そして俺は声を漏らす



「......なんで俺にそんなことを話しちゃったのかねぇ」



エドさんの店を出たあと俺はあてもなくとぼとぼと道を歩く



(ほんとによかったんですか...?)

「何のことだ?」

(いや、だからさっきの...)

「はぁ...やめてくれ、俺には関係ない話だ」



そうだ、俺には関係ないんだよ。それに貴族との揉め事に巻き込まれるのなんてゴメンだ

本当にタイミングが悪かった、面倒な事はなるべく避けたいんだよ



そして俺は再びただ自分の気が晴れるまで適当にぶらつく



「あ!お兄ちゃん!!」


不意にどこからか、俺を呼ぶ声が聞こえる


この声は──


「あぁエレナか、こんなところでいったいどうしたんだ?」

「うん!おつかい中!」

「そうか、えらいな」



エレナが明るい笑顔で答えるので、俺は自分の気分も少し明るくしてくれたお礼にとエレナの頭を撫でる


「お兄ちゃん......?」

「どうしたんだ?」

「なんかつらい顔してる、お腹痛いの?」


そういってエレナは俺の腹をなでてくれる

俺はそんなに顔に出てたのかな?


「ありがとう、エレナ。でも別に俺は大丈夫だぞ?」


いかんいかん、子供に心配させてどうするんだ俺は

そして俺は誤魔化すようにエレナに笑顔で答える


「そうだ!お兄ちゃん、ちょっとついてきて!!」

「え?ちょっ!」


エレナはいつかエレナと初めてあった時のように俺の腕を引っ張って俺を連れていく




「ここは教会?」

「うん!前に院長先生に連れてきてもらったんだ!」


エレナに連れられて来たその場所は街の少しハズレにある古びた教会だった。

そしてエレナに手を引かれ、中に入る

そこには気の長椅子が並べられ、聖堂の奥には女性の像、そして窓には綺麗なステンドグラスが貼られていた


「すごい綺麗でしょ!」

「あぁこれはすごい...」


俺は思わず息を飲んでその光景に見とれていた。どうやら廃墟みたいでところどころから陽の光が漏れていた。しかし逆にそれがこの場の雰囲気をより幻想的なものへとさせていた


「ほら、お兄ちゃん、こっちに来て!」



エレナは少し腐りかけた長椅子に座るのではなく、陽の光が少しさしている石の台座に座って俺を呼ぶ


「ほら、お兄ちゃん」


俺はエレナの隣に座ると膝をパンパンやって俺に問いかけてくる


「ん?どうした?」

「わからないの?膝枕だよ!」


......なんですと?今膝枕と申しましたか?エレナちゃん


「もー、ほら!はやくー!」


エレナは痺れを切らしたのが俺の体を無理やり傾けて俺の頭を自分の膝の上にのせる


俺の頭は少し小さなエレナの太ももの上に着地する



「......エレナさん?」

「ふふふー、私もね悲しいことがあるのエミリア先生にこうやってもらうの」


そういってエレナは俺の頭を撫でてくる。

幼女に2人きりで膝枕されて頭をなでられる青年、うん、ちょっと犯罪くさい


(いや、ちょっとじゃないですよ。犯罪ですよ?イエスロータノータッチの精神だけは忘れちゃいけないんですよ?)


ほんとお前は少し黙っててくれエリーナよ、あとロリコンロリコンしつこいぞ


「ここ綺麗でしょ?私もね悲しいことあったり泣きそうになるとたまにここに来るの」

「そうか...」


1人で来ていいのか?なんてことは聞かない


悲しいことか、エレナは孤児だ。俺とは比べ物にならないくらい悲しい思いだってしているはずだ


「お兄ちゃんはなんでつらそうな顔してたの?」

「そうだな...自分がどうしたらいいか、わからないんだ」


俺は安心感からか、そう愚痴をこぼしてしまう。気づいてしまってはもう遅いもう口には戻せない


「んー、だったらお兄ちゃんの好きなようにすればいいよ!」

「俺の好きなように?」

「うん!お兄ちゃんだったらおじゃま虫だって吹き飛ばせるもん!」

「おじゃま虫だって吹き飛ばせるか...」

「うん!!」


そうだ、そうだよな。何をこんなに迷っていたのだろうか。俺がしたいようにすればいいじゃないか、貴族のしがらみだ?そんなのぶっ飛ばせばいい話じゃないかーー


「はぁ...小さな女の子に慰められるとはな..」

「ん?どうしたの?お兄ちゃん?」

「何でもないよ」


こんな小さなエレナに教えてもらうなんて

恥ずかしい、ほんとに恥ずかしい。まさか俺ってこんなに弱いなんて



「ありがとな、エレナ」

「ふふふ、私はいい女ってよく院長先生にも言われるから!」

「そうか、ならそのいい女にもう少し甘えさせてもらおう」



俺はあまりの心地よさにもう少しこのままでいようと考えた。幼女の膝枕を堪能してるだって?馬鹿野郎!!


エレナはほんとにいい女なんだよ



そしてしばらくがたちーー


「お兄ちゃん、元気でた?」

「あぁ元気いっぱいだ、ありがとなエレナ」

「全然いいよ!」

「そうだな、なんか俺のできることがあったらお礼としてお願いをひとつきいてやろう」


大抵のことはきいてあげようと、俺は救ってもらったんだ。対価としてはそれくらいじゃないと足りない



「んー...んー.........あ!!」


「なんかあるのか?」


「うん!私、お兄ちゃんのお嫁さんになりたい!!」



うん、予想の斜め上の方向のお願いが来ました。



......まぁこれはテンプレの答え方にしようか


「そうだな、エレナが大きくなってそれでもまだ俺のお嫁さんになりたいって思ってるならそうしよう」


「わかった!約束だよ!」


そういって俺とエレナは指切りをする

エレナが大人になるのは10数年後、たぶん俺のことなんて忘れているだろう。

それに俺も歳をとるんだ、エレナが大人になった頃には俺はおじさんだ。少しずるいかもしれないけどこの約束が一番だ



「それでエレナ、おつかいはよかったのか」

「......あ」


みるみるエレナの顔が青くなる。

これは完全に忘れていたパターンだな。まぁ俺のせいでもあるんだけど


「...俺も一緒に怒られに行くよ、さぁ行こうか」

「うん!」


俺とエレナは手を握って教会を出ていくーー




......その後院長マリアに超怒られました。


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