人と遭遇
よろしくお願いします
朝になって街を目指した
霊峰とは言っても麓にはしっかり道が存在した、エリーナの言うことを実はあんまり信用してなかったのは黙っておこう
「結局俺が異世界に来た目的は何なんだろうか」
(1年間修行してて、今さらそんなことを思うんですか)
エリーナがやれやれみたいな雰囲気で俺に答える
元はといえばお前のせいだし、お前が俺を目的もなく異世界転生させたんだろう、とか言っても無駄なことなのはこの1年でよくわかった。ポンコツだからな...
「はぁ...目的もなく霊峰を出てきたのはいいけど、マジでこれからどうしよう」
(気ままに異世界観光とかいいんじゃないですか?この世界にはアレウスさんの知らない不思議がいっぱいですよ?)
「不思議がいっぱいねぇ...」
確かにこの1年でゴブリンやドラゴンとかファンタジーモンスターをいっぱい見てきたから、不思議がいっぱいのはよくわかるけどな
「まぁぼちぼち色々なとこまわって、エリーナの言う通り異世界観光でもしてみるか」
そして、いつかこの世界に来て未使用のマイサンを使えるような相手を見つけたり、どこかいい所が見つかれば、そこに住めればいいかとか適当なことを考える
そして街道を辿って街を目指す、旅の間にエリーナにいろいろ質問した
「なぁこの世界の街とかっていうのはどういった感じなんだ?」
(街ですか?そうですね...基本的に文化レベルは中世ヨーロッパを想像してくれたら、だいたいそれに当てはまると思います)
「中世ヨーロッパってことは王様や貴族がいるのか?」
(もちろんいますよ、それに奴隷もいます)
やはり貴族もいるのか...あまり関わりたくないものだな
(貴族とはあまり関わらない方がいいですかね、どの世界の貴族も権力を傘に生きてるような人たち多いはずですから)
どの世界でもそういう人間はいるらしいな
「ところで奴隷はどんな感じなんだ?元の世界じゃいないからな」
(奴隷には犯罪奴隷と借金奴隷というのが主で、他にも孤児や人さらいによる違法奴隷も存在しますね)
「ありがちな感じだな。奴隷の扱いはどんな感じなんだ?」
(そうですね、家事をさせたり、警備をさせたり様々です。奴隷に対する態度を人によりますかね?あ、もちろん性奴隷もしっかり存在してますよ?)
「まぁ奴隷の扱いなんて人それぞれか」
(あれ?性奴隷に興味無いんですか?)
「興味がない方がおかしいだろ.......って、何を言わせてんだよ」
(ほんとアレウスさんは性格変わりましたよね)
「だからこれが素なんだよ。それで奴隷は奴隷商から購入するのか?」
(それが普通ですかね、購入を検討してるのですか?)
「まぁ余裕があったらいいかなとは思ってる」
そう思ってるのは事実だ。テンプレ展開だと可愛い奴隷を手に入れてキャッキャウフフな性生活がーー
(どうせ美人な奴隷だヒャッホイみたい事考えてるんじゃないですか?)
「さぁどうだろう、それで今から行くのはどんな街なんだ?」
(でも一文無しですよね...?)
......確かにね、世の中にはお金を持ってない人を一文無しと言うけどさ?
(いや、だからアレウスさんお金持ってないですよね?)
......はい、持ってません、すいません
......って、なんで俺がエリーナに謝らないといけないんだよ、女神なら転生ついでにお金もちょっとつけといてくれよ、まったく
(女神にそこまで期待しないでくださいよ)
わかってるよ、君には期待とかしてないから安心してくださいエリーナさん
「とりあえず金の事は置いといてだな、この世界のことっていうか、情勢とかを教えてくれないか?」
(今誤魔化した気が.....まぁいいです。情勢ですね、アインス大陸には大きな三つの国があって、イリヤ王国、聖ダイス国、ダイダル帝国が存在します。あと小さな国が乱立しているくらいですね。これから向かうのはイリヤ王国領の街ですね)
「全然知らなかったな、先にもっと聞いとけばよかったよ」
(アレウスさんは戦いにしか興味なかったですもんね)
「人族以外にも街にはいるのか?」
(えぇ、基本的に他種族もいるはずです、アインス大陸は人族中心の大陸と言っても他種族との交流は盛んですし、普通に暮らしてますよ)
「そうか、なら安心だ。ゆっくり街に向かうか」
色々と話ながら、2、3時間経つ
千里眼と察知スキルに反応がある
人がモンスターに襲われてるみたいだな
「この先でモンスターに襲われてる奴らがいるな、見捨てるのもなんだし助けに行くぞ」
というか初めて会う人間だし、ここで見捨てるのは気分が悪い
(はい、私にも見えてます。早く向かいましょう)
というわけで、魔力による身体強化+身体に電流を走らせて脳のリミッターを外してさらに強化を重ね、全速力で向かう
「おい、護衛対象をしっかり守るんだ!」
「あぁ!!」
「ぐあっ!」
「エイルっ!!」
ちょうど俺らがついた時には戦っていた男の1人がビッグマンティスにやられていた、ビッグマンティスというのはその名の通りでかいカマキリだ
俺は体に雷を纏ったままビッグマンティスに接近し、手刀でその足を斬り捨てる
「助かった!加勢してくれ!」
護衛の人が俺にそう言った、俺はそのつもりだから、うなずいてビッグマンティスと対峙する
ビッグマンティスは足がなくなったことに怒り、俺めがけて鎌を振り下ろしてくる。
「遅すぎだな、」
俺は再び雷をまとって手刀を放ち鎌を根本から断ち切る
「ギィッ!ギギィッ!」
緑の体液を撒き散らし、不快音を鳴らしながらビッグマンティスは後ろに退きそのまま逃げていく。逃がすつもりは無いんだがあのまま逃げても、HPは残りわずか、どうせ死ぬだけだから無視することにするか
「ありがとう、助かった」
と、護衛の1人が話しかけてくる
「おい、カイン!エイルが!」と俺が答える前に護衛のもう1人が叫ぶ
どうやら最初にやられた奴がやばい状態のようだ
「どうした!?エイルは無事なのか?」
「.....」
もう1人の冒険者何も言わない、倒れている男を見ると出血がひどい、HPは刻一刻と減っている、生命力がガンガン減っていってる証拠だな
「おい、ポーションはないのか!」
「こんな傷上級じゃなきゃ直せねぇし、そんな高いもの俺達は持ってねぇ!」
カインと呼ばれた男が大男と言い合っている、会話を聞く限りポーションというのが存在するらしい
(あの方は大丈夫でしょうか?)
あのままほっとけば死ぬだろうけど、幸い俺がいるから大丈夫だな
「今俺が助ける心配するな。おいっ!そいつを俺に見せてくれ!」
そう俺が叫ぶと2人は怪訝な目をして俺を向き
「なんだお前は!いきなり話しかけやがって!それにいきなり見せろだぁ?見てわからねぇのか!重症なんだぞ!」
大男が俺に向かって叫んでくる、仲間思いなやつなんだろう、でも今はそんなことしてる暇はない
俺は男に何も言い返さず、二人をどかして倒れている男に回復魔法をかける
「おい!いきなりなにしやがる!」
「まて、ギグス!あれは回復魔法だ!」
「なにっ!?」
ふむ、光魔法は話に聞いた通りそこそこ珍しいのかもな
そんなことを思っていると男の治療は終わった。そして、俺は二人の男に向かって
「おい!治療は終わった!出血で失った血は元に戻せないから安静にしてやれ」
2人は呆然として俺を眺めてるだけだ、なんだ俺に惚れたか?
(あなたはこんな時でも冗談を言いますのね)
何が悪い、余裕な男の方がカッコイイだろう?
(そうですね、アレウスさんは意外と小心者ですけどね)
俺が思念でそう返すとエリーナもまた返してくる
そんな2人でふざけているとやっと男の片方が口を開ける
「エイルは助かったのか?」
「あぁ助かったぞ」
「本当か?」
「本当だ、心配なら見てみろ」
そう言うと男の2人は倒れている男の元に駆けつけ、確認している。二人のそんな様子を見てると馬車から一人の男が出てきた
「すみません、モンスターはどうなったんでしょうか?」
「あぁビッグマンティスか?もういなくなったよ」
俺がそう言うと男はホットした様子で俺に質問した
「ところであなたは?」
「あぁ街に向かっている旅人だ。名前はアレウスという。ちょうど通りかかった時に襲われるところに出くわしてな、加勢したってことだ」
「それはありがとうございます!」
そうは言うと俺の手を握って感謝してくる
暑苦しい人だな...とか思ったら失礼だよな
(いや、それもう思ってますよね?)
そうとも言うけど、今は静かにしてなさい
「す、すみません!もう死ぬと思っていたもので。私は奴隷商を営んでおります、エドと申します」
奴隷商か、てことは中にいるのは奴隷たちってことか
俺がそうやって目を馬車に向けていると
「あの馬車にはうちの奴隷たちが入っています。商品とはいっても人でありますから、私だけ逃げるわけにも行かず...」
喋ってるうちに段々声のトーンが下がっていく、この奴隷商はとてもいい人なんだろう
(この方は優しい方なんですね)
とエリーナも言っている、今にも泣き出しそうなエドさんを慰めてると
護衛の2人が俺に話しかけてくる
「仲間を助けてくれてありがとう。俺は冒険者のカインだ、横のでかいのがギグス。仲間を助けてくれて本当にありがとう」
「ギグスだ、感謝する」
ふたりはそういって俺に礼をする
「顔を上げてくれ、俺はアレウスだ。助けたのも街を目指して偶然現場に遭遇しただけだから、感謝されるほどじゃない」
俺がそう言うと2人はいきなり顔を上げ
「そんなことはない!もしアレウスが来てくれなかったら俺達全員はビッグマンティスに殺されたいるところだった」
こいつがいきなり呼び捨てにしてきたな、距離感一気に縮めてきたな、おい
俺がそう思ってるといつの間にか復帰したエドさんもこちらに来て
「アレウス様がいたからこそ、私達は生きているのです。この感謝の気持ちは受け取ってください」
そこまで言われて嫌と言えるほど強くないので俺は渋々了承した
俺は助けた礼にと馬車に乗せて街まで一緒に連れていってもらえるらしい、これはありがたい
ちなみに倒れている男も一緒だ、名前はエイルというらしい、目を覚まさないけどそのうち目覚めるだろ
カインから聞いた話だが馬車なら街まで二日でつくそうだ。徒歩で10日だから大幅な短縮だろう
馬車の中では暇なので奴隷たちをエリーナと一緒に見ることにした
馬車の中には奴隷が四人いて、身なりもしっかりしていた、大切にされているのだろう
(ひとりはフードをかぶっていますが全員女性ですね)
「(あぁそうだな、犯罪者には見えないから借金奴隷と言った所だろうか)」
俺はエリーナと念話で話してると奴隷の1人がこちらに話しかけてきた
「あの、あなたが私たちを助けてくれたのですか?」
話しかけてきた女性は赤髪の三十代後半ぐらいであろう女性だった、流石に「鑑定」を使って人の素性を調べるのはよくないよな
でも見たところ、仕草とかの丁寧さを見ると没落した貴族ってところかな
「通りかけた所を偶然ですよ、あまり気にしないでくださいよ」
そう答えるといきなり泣き出した、他の二人の奴隷も泣いているようだ。焦った俺は
「ちょ、ちょっといきなり泣かないでくださいよ!」
(アレウスさんは女泣かせですね)
エリーナが冗談を言ってくるが、かまってる暇はない、俺が泣くのをやめさせようとすると
「もう私達は死ぬと思っていたんです、ほんとにありがとうございます」
とエドさんと同じようなことを言ってお礼を言ってきた。
やはりビッグマンティスは危険な存在なんだろうか、鑑定スキルを使って調べる気もないのでよくわからない
エリーナに聞けばーー
(ビッグマンティスですか?そうですね、アレウスさんなら余裕ですよ)
とこっちが期待してた解答とは程遠い答え方をしてくる、君の信頼が重く感じるよ、全く。
その後奴隷たちを色々とおしゃべりをした。彼女達は借金奴隷のようだ。
悲しんでいると思ったのだがエドさんはやはりいい人らしくいい環境のとこに売られるらしく、売られ先も決まっているだとか、そうこう話してるうちに街につきそうだ
この2日間でエイルは目を覚まし、冒険者3人組とは仲良くなり、モンスターに襲われることもなく、奴隷の人たちと仲良く話して時間が過ぎていった。
しかしフードかぶった彼女とは1度も言葉交わすことがなかった。
◇
そしてカインたち冒険者やエドさんたちと出会って2日がたった──
「街が見えたぞ!」
馬車の中で奴隷たちと会話すると外からカインの声が聞こえた。そう言われてから10分ほど経つと馬車が止まった
馬車から出てみると検問の列に並んでるようだ。検問まで暇なのでエドさんやカインたち冒険者3人組から街の話を聞いた。
「この街はどんな街なんだ?」
「おいおい、そんなことも知らないのか?」
む、なにか馬鹿にされた気がするが今は我慢だ
「遠い田舎から来たものでな、外の世界のことはあまり詳しくないんだ」
「そういえばそう言っていたな」
「あぁだからなるべくしっかり教えて欲しいんだ」
俺が念を入れて説明を求めるとエドさんが詳しく教えてくれた。
今から入る街はブリストンといいイリヤ王国内では大きい方の都市でノマロ家という貴族の領地らしく、この街は現当主の息子が治めてるだとか。
その貴族について聞いてみるがカインたちは文句を言い、エドさんもあまりいい顔をしていなかった。
(いい貴族ではなさそうですね)
とエリーナが言っていたが、俺も同意見だ。あまり関わりたくない
カインたちはこの街を拠点として冒険者をやっているらしい。その際冒険者になることを勧められ、エドさんもそれに賛同していた
冒険者の仕事を聞いてみると、街の雑用や、警備、街外での討伐などが主であり、ダンジョンにも潜れるらしい
基本的にはなんでも屋って感じがするな、なんか裏稼業にも関わってる連中もいるっぽいしな
エリーナに聞いた時、俺がいた霊峰もダンジョンだったな
色々と話していたが、そろそろ順番が来た時に大きな問題が差し迫った。
「え?領地に入るには税が必要で、身分証の提示もあるって?」
「そんなの当然だろ?」
カインが何を言ってるんだとばかり言ってくる
「な、なぁ俺も金も持ってないし、身分証なんかも当然持ってないんだが...」
「それは大丈夫ですよ、税は私が出しましょう。助けてくれたお礼です。それに身分証が無くてもどうにかなる方法はありますから」
お金を出してもらうのは申し訳ないが断るわけにはいかないのでありがたくお世話になろう
「すいません、ありがとうございます。別に犯罪歴があるとかじゃないんですけどね、なにぶん田舎の方から出てきたもので」
と俺がトーンを落として言うと
「す、すいません、疑っていった訳ではありません!大丈夫ですよ、田舎から若者がやってくるのは多いものですから衛兵さんもそこら辺はわかってくれると思いますから」
「確かにアレウスは世間知らずな所があるからな」
「悪かったな、ずっと田舎暮らしだから仕方ないだろ」
この世界に来て1年といってもその1年はずっと山の中にいたわけだし、1年も山の中にいたら人との接し方も忘れても仕方ないんだよ
(いや、ただの人見知りですよね?ただの、)
まぁ世間ではそう言う人間もいることは否定しないけど
「しっかし、アレウスは謎だよなぁ。俺より年下なのにあんなに強いなんて」
「まぁだいたい家に伝わる秘技みたいなものだよ」
ちなみにカインの年齢は20代、「鑑定」でバッチリ確認が出来る。対人で使うの初めてだけど、これ女性とかに使ったりしたらなかなか失礼なスキルだよな
そして検問も終わり、身分証を持たない俺も特に問題なくスルーされた。冒険者の3人は、ギルドカードが身分証になるらしい、エドさんは商会ギルドの身分証、俺も身分証を手に入れるために冒険者になっておいた方が良さそうだな
ちなみに入領税は10000ユニオン(通称U)だ
1U=1円というなんとも俺にはありがたい通貨設定であった
ちなみに日本円同様の単位事に硬貨の種類があり
1000U以降は紙幣となる
入領税10000円は高いと思ったが、一般的な税らしいな。この国の貴族は羽振りがいいんだろうな、まったく。
街に入るとカインたち冒険者3人組とエドさんや奴隷達ともお別れだ。
「ありがとよアレウス!俺達は冒険者ギルドにいるだろうからギルドに来た時は俺達に話しかけてこいよ!」
「あぁ、わかった、お世話になると思う」
そう言って俺達は握手をかわし、エイルもギグスともお礼と共に握手を交わした。エイルには号泣されたがギグスが慰めてるので大丈夫だろう。
3人との会話が終わったらエドさんが話しかけてきてくれた
「アレウスさん、私たちもあなたがいなければここまで来ることができませんでした、ありがとうございます。これは今回の報酬替わりですが」
そう言って俺に袋を渡してくる
「50000U入っております」
「えっ、いや!悪いですよ、税も代わりに払ってもらったんですし!」
俺は他人からの無償の好意が苦手なんだ、申し訳なさを感じる
「これだけでも足りないくらいですよ。私たちの命の恩人ですから」
奴隷たちもウンウンとうなづいているので拒む方が
逆に失礼だと思って受け取ることにした
「ありがとうございます」
「えぇかまいませんよ、落ち着いたらうちの店にも来てください、いい子を紹介しますよ」
と言われてしまったので1回くらいは行かなければならないだろう、やはり商人なのかなかなか侮れないな
奴隷とも少し言葉を交わし、別れの挨拶をする
だが結局最後までフードを被った彼女とは言葉を交わすことは無かった
カインたちは冒険者ギルドに向かい、エドさんたちも去ろうとしてた時、フードの彼女から見られてるような感じがした。
気になった俺は悪いとは思いつつ、彼女達の後ろ姿を見送りながら鑑定スキルを使うことにした。
...
バチッ!!
「なっ!?」
鑑定スキルが弾かれた!?
(え、なんか目がいたい!目がぁ目がぁ!!)
おい、やめろ、空から城が落ちてきたらどうするんだ
というかお前が「鑑定」スキルうみだしたんだろ!!
「それにしても彼女一体何者だったんだ?」
俺は疑問を残しながらもエドさんのオススメされた宿に向かうことにした
お読みいただきありがとうございます