半年ぶり
よろしくお願いします
ステフの「私」は「わたくし」でお願いします
「まったくひどいですわ...!」
ステフがプンプンという効果音がつきそうな動きで怒る
「いや、ほんと中々会いに来なくて悪かった」
俺はステフにペコペコと謝る
実はステフとは電話で話すことはあっても直接会うのは半年ぶりになる
いつから半年ぶりかというと、みんなが修行に出ていってから半年ぶりだ
正直忙しかったが、別に会いに来れない忙しさではなかった
直接会わなかったのは、簡単に言えば修行に出ていっているみんなに申し訳なかったからだ
みんなが頑張ってるなか俺がステフに会いに行って楽しい時間を過ごすのはなんか変な罪悪感を感じていたのだ
まぁそんなことを思っていある日だ
カトレアから手紙が届いた
なんだと思って開けてみたらこう書いてあった
『私たちのことを気にしてステフに会いに行ってないんじゃない?それは可哀想だから会いに行ってあげなさい。どうせアレウスも会いたいんでしょ?ステフなら私たちはいいから気にしちゃダメよ』
まぁこれを読んだら、そっこうで用事済ませてステフに会いに行きますよね
というかよくわかったなカトレアのやつ、なんというかありがたいくらい理解されてるよ
(アレウスさん完全に尻にしかれてますね)
まぁ正直敷かれた方が楽だよね
うちって女子メンツのおかげで成り立ってるから
悲しいくらい俺のおかげで成り立っているわけではない
「まったく半年も会いにこないなんて...私他の殿方に会いに行こうって考えてましたわ」
「え...う、嘘だろステフ...ほんとにすまなかった...」
ま、まさかそんなことを考えられるなんて...俺が悪かったんだ...そりゃ半年ほっといたらそうなるわな...
「ふふっ...冗談ですわアレウス。私もほれと同じくらい寂しかったと知ってくれたら充分ですから」
な、なんて神々しい笑なんだ...
これは週一...いや、3日に1回...いや、毎日会いに来よう
(とりあえずなんていうか基本アレウスさんって馬鹿ですよね)
◇
「アレウス聞きたいのだけど、私に会いに来なかったのはみなさんのことを考えていたからかしら?」
「みなさん...?うちの連中のことか?」
「えぇ、そうですわ」
ここは正直に話しておくべきだろう、話せばステフもわかってくれると思うし
「なるほど、本当にミラやカトレアが言ってることは当たっていたのね」
「ミラやカトレア?」
「えぇ、先日お話した時にアレウスが会いに来てくれないことを相談したら、そう言われましたわ」
「え、ミラたちと連絡とってるの?」
俺は半年も連絡を取ってないというのに
詳しく聞くとミラやカトレアだけじゃなく、カグヤやシル、そしてジャンヌとも連絡を取り合ってるらしい
「まさかあの憧れの聖騎士ジャンヌと親しくなれるなんて夢のようですわ」
これがジャンヌの話をした時のステフ
なんか知らないところでしっかりみんなの交友が深まっているみたいだ
まぁ仲良くしてくれるのはすごい嬉しいんだけど
しかしとても楽しそうにしていたステフの顔が少し暗くなる
「ですが、クリスだけ誰とも連絡をとってないみたいですの」
「あー...クリスか」
たぶんミストがスパルタしてるんだろうな
ミストのことだろうからクリスを精神的にも強くするようにかなり追い込みとかかけてそうだ
「クリスにはミストがついてるから心配ないだろ?ミストがついていれば危険だった時はすぐに連絡がとんでくるだろうし」
まぁ逆にミストの場合極限までやばくならないと連絡してきそうにないけど
「本当にクリスはあの「竜殺し」のミスト・クルセイダ様に師事してもらっているの?」
「あぁ、ステフはミストと話したことないのか?」
「ありますわ。ですが、幼い頃から伝説として知っていたあのミスト・クルセイダ様とお話ができてるなんて信じがたくて」
たぶんこれが普通の反応なんだろう
ミストと知り合ってから知ったんだけど竜殺しミスト・クルセイダの逸話は超がつくほどの有名な物語らしく、劇にされるほどのものだ
だけど、まぁその中でミストは老衰で幸せに死んだみたいな感じになっていて、妬まれて裏切られて殺されたミストとしては微妙な気持ちらしい
とりあえず有名になったからかまわないみたいなこと言ってたけど
かなり英雄視されてるみたいだけど、あいつわりと変人なんだよな
俺としては英雄というよりは正直クリスの師匠という認識しかない
本人談だが全盛期のミストはジャンヌたちより何世代か前の勇者より強かったみたいだ
英雄と扱われるくらいだ、それくらい強くてもおかしくないだろう
そしてその英雄の力を受け継ぐことになるのがクリスってわけだ。クリスに渡した自動展開型鎧に人工知能と化したミストを導入したのは単なる俺とカトレアによるロマンだ
偶然かなんかわからんが、ミスト曰くクリスとミストの魂の形は驚くほど似ているらしい
そのためクリスが鍛え上がればミストと同等、またはそれ以上の力を手に入れることが可能らしい
まぁそのせいでミストはクリスをかなり厳しく鍛え上げてるみたいだが
「ほんとにクリスが心配ですわ...」
「クリスなら大丈夫だよ。クリスはかなりできるやつだって姉のステフが1番わかってるんだろ?」
「えぇ...えぇそうですわね。私が1番するべきなのはクリスを応援することですものね」
ステフが俺の言葉で表情を変える
心配になる気持ちはわかるが、信じてやる方がいいだろう
クリスだって生半可な覚悟でやっているわけじゃないしな
「でもみなさんずるいですわ。私だって本当は出たいのにアレウスやお父様が参加するのは禁じるのですもの」
「ほんとに出たらただじゃすまなくなるから、参加だけはやめてくれ...」
「私だって護身術も習っていますし、多少魔法だって出来ますのよ?」
「いや、そのレベルじゃもうどうにならないんだよ。正直他の国のお姫様とかも止めたいくらいだ」
「でも、ずるいですわ...みんなだけアレウスの正妻になるための争いに出れて、私だけ出れないなんて...」
ステフが一瞬拗ねる顔をする
そして自分が言った言葉の意味をもう一度確認したのか、顔が真っ赤になる
「い、今のは違うますのよ!?別に私、アレウスと結婚したいとか、正妻になりたいとか思っていませんわよ!?」
なんというかもう尊い、尊いの一言に尽きる
後ろに並んでるメイドさんたちもすごい温かい目で見てくるし
ステフたぶんここは二人きりじゃないことを忘れてるんだろうな
しかし正妻ね、一つ気になることがあるので詳しそうなステフに聞いてみる
「俺って一応国の主になるみたいだけど、やっぱり公務とかってあるのかな?」
「えぇ、一国の主であるならば日々の公務は欠かせないでしょう。しかもそれは最低限の義務ですわよ、王たるもの民の様々なものに目を向けなければなりませんから」
「ステフはお姫様として公務を経験したことあるか?」
「えぇ私も何度が外交の場にたったことはありますわ。女王たる私の母は若くして亡くなりましたから。アレウスは新たに建国される国を治めるようになるのだから、最初のうちは外交も多いと思いますわ」
「あー...やっぱりそうだよな」
一応色々考えていたけど、やっぱうちの領地が国になるのは色々と面倒事が増えそうだ
大会の時に国として認められるらしいけど、そこからかなり大変になる
一応色々と準備はしてるけど、それでもかなり大変だ
「例えばだけどさ、俺は立場的に魔神を倒さなきゃいけないから領地を開けることが多くなりそうなんだが...そういう時って代わりの公務は誰がやるの?」
「そうですわね...それはアレウスの側近、または正妻である女王がやるのではないのかしら?」
俺はステフの答えに「だよなぁ」と答える
そうなるとだな...色々と前提が間違ってるものがあったかもしれないな
詳しくは言わないけど世の中適材適所というのがあってだね、名前だけでその立場をこだわるのはあまりよくないのかなと思うというかなんというか
(なるほど、アレウスさんの言いたいことがわかりました。しかしそうなると色々と後戻り出来ない感じがしませんか?)
だよなぁ...もっとはやく気づいてれば、違ったかもしれないけど
まぁそうなってしまったら、とりあえず聞いてみるしかない
なんかもう誰がどうなっても答えは想像つくのだが
「アレウス、どうされましたの?」
「いや、なんでもないさ。ところでこのクッキー美味しいんだが、どこのクッキーなんだ?できればお土産として買って持ってきたいんだけど?」
「残念ながらお土産にはできませんわ...実はそのクッキー私が作りましたの」
俺はステフの言葉に普通にびっくりした
普通に王室御用達のどっかの高級菓子店のクッキーだと思ってたんだが...
ステフが言ってたように、お土産にはできそうにないな
一応役場とかお世話になってる旅館とかに差し入れとして持っていこうと思ってるから、ステフにおすすめのお店を聞いてそこで差し入れを買っていくことにした
ステフとしばらく話した後に国王とも話すことがあったのでステフのとこをあとにした
その日からステフのとこに何度か足を運ぶようになった
毎日の仕事や、レイラの俺(女Ver.)のプロデュース、それからステフに会いに行くこと
みんなに会えないのは割と寂しかったが、忙しかったから時間をどんどん過ぎていった
そして気づけば闘技大会の開催はそこまで迫っていた
お読みいただきありがとうございます