女子会出張編〜聖教国〜Part1
お久しぶりでございます
というわけで、前話で言っていたとおり女子会出張編
Part1、2と分けます。Part1はわりかし真面目な感じでPart2はふざけます
聖ダイス教国・聖騎士団団長ジャンヌ・フォン・カミラは今日も忙しい
朝は日が昇るとほぼ同時に起床し、冷たい空気を肌に感じながら孤独に剣を振るう
いつの日から始めたか覚えてないが、振り始めた当初は剣にふらされるほど小さかったのは覚えている
もちろん鍛錬であるが、今では鍛錬というよりは自分のルーティーンの意味を持つようになっている。毎朝の欠かすことのできない日課だ
そして自己鍛錬を終え、自室へと戻り自ら調理した朝食を済ませ。教皇の執務室へと続く廊下を進む
この時間はまだ人が少なく辺りは物静かである
そんな時にあの男に渡された通信機に着信が入る
着信を感じた瞬間に少し期待してしまう恥ずかしさを押しとどめ、周りに誰もいないことを確認しておいて通信をオンにする
『おはよう、ジャンヌさん。今ちょっといいかしら?』
「カトレアさん?えっと...おはようございます、」
ざんねんながら通信機から聞こえてくる声は自分が期待していたものとは違った
だがカトレアから連絡が来たことに大して驚きはない
なにせ例の一件からミラ、カトレア、カグヤ、シルの四人娘から何度か連絡が来るからだ
昨日もシルから通信があり、聖騎士団と向こうの領軍の合同訓練でも開かないかと誘われた
今日はその事を教皇に相談しようと考えていたところだ
ジャンヌは「今は時間があるから大丈夫です」と丁寧に答える
『やっぱりこれは開くべきねぇ...』
返ってくるカトレアの声は何かを企んでいるような、そしてどこか楽しそうな雰囲気を醸し出す
『ジャンヌさん、今日の夜って何か予定があるかしら?』
「予定?いえ、夜は特に予定はないですけど...?」
ジャンヌの勤務時間は夜の8時まで、前まではもっと遅くまで働いていたがジャンヌの部下達がジャンヌばかりに任せてはいられないといい始め定時に仕事が終わるようになった
ジャンヌとしては寝るまでの時間を持て余してしまい毎晩読書で時間を潰していた
『じゃあジャンヌさんの部屋って大人が5人くらい入られるかしら?』
「えぇ全然問題ありませんが...どうされたんですか?」
『場所も問題なしと...ふふ、これなら余裕で開けるわね』
ジャンヌの質問を無視してカトレアは楽しそうにつぶやく
ジャンヌは人と対話している時表情を顔に出さないように心がけているが、話し相手に顔を見られない今はあまりにも謎すぎて訝しげな顔をしてしまう
『じゃあ今日の9時ぐらいに...私たちの街に来てもらえないかしら?ジャンヌさんだったら一瞬で来れるから問題ないわよね?』
「えっ?あ、ちょっと...」
『まぁ色々と気になるかもしれないけど、そこはサプライズってことだからね?とりあえず来てもらえると嬉しいんだけど...』
「わ、わかりました。今晩9時にそっちに行けばいいんですよね?」
『そうよ!じゃあ決まりね、迎えに来てくれる時にもう一回アレウス以外のうちの誰かに連絡してくれればいいから...ふぁ...やばいわ...二徹の限界が...それじゃあジャンヌさん、おやすみなさい...今晩楽しみにしてるわ、ね...』
「えっと...おやすみなさい...?」
通信機はカトレアが眠ると同時に切れる
カトレアの生活リズムを知らないジャンヌは戸惑いを隠せなかったが、それよりも気になることがあった
「迎えに来てくれる...?」
なぜかとても不安な気持ちになってくる
アレウスと共に暮らす女性たち...だから彼に似ていてる。自分のリズムを乱せられ、彼ら、彼女らのリズムに巻き込まれるのではないかと思ってしまうジャンヌ
「はぁ...これだから私はダメなのかもしれない」
ジャンヌは未だハーレムというものを完全に受け入れる事が出来ていなかった
正直に言って不埒なイメージしか持てず、一人の男が複数の女性をはべらせることなんて認めたくはない
やはり男女の関係は一途であるべき、とジャンヌは考える
だがアレウスと感情を共有している今、アレウスが自分や彼女らを思う気持ちは中途半端なものではなく、一人一人大切に思っていることを知っている。
アレウスの愛に絶対量が決まっていて、それを個々人に割り振っているのではなく
アレウスは一人一人、それぞれを愛している
その愛の量は、ある意味全てが等しく、逆に矛盾しているが決まった測定値などは存在していない
だからジャンヌは悩んでしまう、愛されたいと思う自分がいるから
アレウスとの関係を心配しているのではなく、あの男の回りにいる彼女らとの関係を心配してしまう
この心配が杞憂であることは、毎日何かしらな話題で─時には取ってつけたような理由で─自分に連絡をしてくる彼女らの行動からわかってしまう
「結局は私の勇気次第か...」
ジャンヌはため息と共に言葉を漏らす
そして再び顔を引き締めていつもの自分に戻る
良くも悪くもジャンヌもどこにでもいる乙女なのである
◇
「それでジャンヌ、アレウスとの子供はまだかな?」
「──ブッ!?ゲホッゲホッ!!ちょっとお父さん!?」
教皇の突然の一言に飲んでいた紅茶を吹き出すジャンヌ
驚きのあまり滅多に言わないお父さん呼びになってしまう
教皇の執務室へと来たジャンヌは教皇に誘われ紅茶を飲んでいた
その1日のうちの少ない親子としてのかかわりの中での突然の一言だった
「その調子だとまだ孫の顔を見るまでしばらくかかりそうだね。真面目でいい子だと今でも思ってるけど、少し真面目すぎてお父さんはガッカリだよ」
教皇はわざとらしく手を上げてため息をつく
その表情は明らかにからかって楽しんでいる表情であり、教皇ではなく父の顔をしている
「でも、急がないとちょっと大変なことになっちゃうよ?」
「......何が言いたいの、お父さん?」
「いや実はね、これはまだ機密事項なんだけど...なんでもアレウス君のお嫁さんになりたいっていう各国のお姫様や位の高いお嬢様がたくさんいてね?」
「それくらいの話なら私も聞いてことあるわ...彼はそういうのは一々相手はしないと聞いていたんだけど?」
人の色恋沙汰などまったく興味のなかったジャンヌでもアレウスに関するそのような噂はアレウスと結ばれる前から耳にしていた
例えば自分がいる聖教国のシスターの中にも「あの悪魔的なお方と恋に落ちたらどれだけ背徳的で刺激的なんでしょう...」と言っている者をたまに見かけていた
だからジャンヌは教皇の話に驚かない、驚く代わりに何が言いたいのかと考える
そして教皇は「今回はちょっと理由が違うんだよ」と言って話を続ける
「アレウス君はこの大陸すべての人に認められた英雄だ。そしてその英雄にはお嫁さんがいない、それに加えて今アレウス君が治めている街を独立して一つの国させる話が持ち上がってきている......そしたら各国のお偉いさんがたはどうすると思う?」
「どうって...」
「答えは簡単だよ、『英雄の跡取りがいないのは一大事だ。なら我が国の姫はどうかね?』って感じで、もっともなような理由をつけて、英雄に取り入ろうとするんだよ」
「...話についていけないわ、アレウス・アーレンハルトの街が独立して国なるっていう話も初めて聞いたし...」
ジャンヌはそう言いながら、「どうして私に言ってくれなかったのだろうか?」と考えてしまう
「だから、これはまだ機密事項だからね。まぁ機密事項と言ってもほかの国の首脳陣も私みたいに身内や関係者に話しているだろうけどね。あ、でもアレウス君はこの話は今日聞いているはずだよ、カイゼル陛下から連絡があったからね」
「そう...だったの。......それで今の話はどういう話なの?」
「やっぱり気になるかい?...まぁ簡単に言えば、アレウス君は近いうちに結婚しなければならない。という事かな」
「結婚...」
ジャンヌは呟いて自分とアレウスが結婚式をあげる姿を想像する
だが、次には自分とは別の誰かが自分の代わりにアレウスと結婚している姿を想像してしまう。アレウスの周りにいる彼女らでも、イリヤ王国にいる2人のお姫様でもない自分の知らない誰かを
彼女らは選ばれる、だが自分はどうなのかと思ってしまう。ジャンヌはあまりアレウスに自分の思いをあの日以来口にしていない...愛に冷たい女と思われてるかもしれないと心配になる
「本来ならイリヤ王国のステファニア王女が結婚して本妻になれば問題は解決なんだろうけど、アレウス君は大陸をあげての英雄、国境など関係の無い英雄だから、今回はそうはいかないと思う。アレウス君だったらステファニア王女を選ぶだろうけど、何かしらのお見合いのようなものは形だけでも最低開かなきゃいけなくなるんだよ。治め方をどうするかはわからないけど、アレウス君も一国の主となるわけだからね。権利とともにそういう面倒なしがらみも生まれてきちゃうわけだ」
「だからアレウス・アーレンハルトは近いうちに結婚をするということなのね…」
「そういう事だね。でも、ジャンヌはそこまで心配しなくても大丈夫だよ。彼は君のことも選んでくれるからね。知ってるかな、彼はたまに僕と通信機とおしゃべりしてくれるんだけど、ジャンヌの小さい頃のいろんな話をすると楽しそうに聞いてくれるんだよ、愛されてるねぇ」
「......え?お父さん...何を話したよ?」
「うーん...例えば君が6歳の時の...1人で散歩に行って迷子になって泣いちゃっ──」
「お父さん?私、ちょっと久しぶりに真剣に親子の話をした方がいい気がするわ?」
ジャンヌが額に怒りマークを浮かべて笑う
教皇は久しぶりに見たジャンヌのお怒りモードに冷や汗を流しながらもも笑う
いつごろから目の前にある柔らかい表情を失ったジャンヌがそんな表情を昔のようにするようになって教皇は喜びを感じていた
そこには温かい親子の一幕があった──
そしてジャンヌは夕食を済ませた後カトレアからの連絡通りに夜にアレウスたちが住む屋敷の前に「扉」で転移する
事前に連絡していたので、ジャンヌを屋敷の女性陣全員でお出迎えしてくれた.........
パジャマ姿で。
「.........これはどういう?」
「こんばんわ、ジャンヌさん。何かおかしいかしら?」
カトレアに続いてミラ、カグヤ、シルもジャンヌに挨拶をし四人、全員何かおかしい?と互いを見合う
「いや、...こんばんわ。とりあえずどうして全員パジャマを着ているのか疑問に思って」
4対1、なぜかジャンヌだけがおかしいとなっているような状況になっている
そしてジャンヌの疑問に答えるのはジャンヌに連絡をとった本人であるカトレアだ
「どうしてって、女子会を開くからよ。ほら、しっかりジャンヌさんの部屋に行っても色々と楽しめるように道具も用意してあるわよ」
カトレアは足元のトランクケースを持ち上げる
ジャンヌはカトレアが言った意味がまったく理解出来なかったのでポカンとしてしまう
今ジャンヌの頭の中には、女子会、自分の部屋...と、全く考えてもなかったワードがぐるぐると回っていた
だがその一瞬の思考の停止がこの場では命取りとなってしまう
「見たところまだ仕事着ね?」
「ということなら、お風呂はまだってことよね?」
「それでしたらここの温泉に入ってもらうのが一番ですね」
「うむ、ではさっさとジャンヌを温泉街の方へ連れていこう」
「えっ?え、.........え?」
ミラ、カトレア、カグヤ、シルの順に見事にコンボを繋げていきジャンヌは完全に状況把握が出来なくなってしまう
『さぁ、さぁ、さぁ、さぁ』
「え?なに?待って、どこに連れていくの?!」
そしてジャンヌは4人のされるがままに温泉宿の方へと連行されていった
◇
何故か無理やり温泉に連れていかれ、ジャンヌは様々な疑問を浮かべながらも何だかんだ温泉につかりリラックス出来る時間を過ごしてしまった
その後──
『お邪魔しまーす』
「はぁ...」
なぜか4人の娘が聖教国にあるジャンヌの部屋に来ていた
そして部屋の主であるジャンヌは完全に諦めた様子で4人の後自分の部屋に入る
「一人暮らしにしては広い部屋ね、流石は騎士団長...ねぇ適当に座っても大丈夫?」
「どこでもいいんですけど...すいません、イスが足りなくて」
「全然問題ないわよ。こんな時のために...よいしょと、ほらミラたちの分もあるわ」
カトレアは持ってきたトランクからクッションのようなものを取り出し、ミラ、カグヤ、シルに渡し最後に自分の分を取り出す
「よかったら私が部下を呼んで、椅子を持ってこさせるのだけど...」
「大丈夫!!ここを押せば...ほらね?」
カトレアはクッションと思わしきものに付いていたスイッチを押すと「ボフッ!」という音と共にクッションが膨らみ一人用のソファほどの大きさに変化する
「じゃあ私はここにしようかしら?ジャンヌさん、ここ使っても大丈夫かしら?」
「え、えぇ大丈夫ですけど...」
「ありがと!!カグヤとかは危なっかしいから、私がそばで教えるわよ」
カトレアは自分のソファは床において、機械技術に疎いカグヤに使い方を説明しに行く
その片場、シルはジャンヌにそっと近づき...
「ジャンヌよ、カトレアのあれにいちいち驚いていたら身が持たないぞ?しかし、カトレアはまた面白いものを作ったものだな」
そう言ってシルは自分の分のクッションのスイッチを押して、ソファを設置する
ジャンヌは目の前の光景を見ていることしか出来なかった
「えっと...このボタンを......きゃあっ!!」
「だからそっち側からスイッチ押すと危ないって言ったのに...」
自分の方に向かってクッションが膨らみ盛大に床に倒れたカグヤ
とりあえずジャンヌは自分の部屋が壊されないことだけを願った──
◇
「というわけで、セッティングはあとはつまみと飲み物ね」
そして毎度のことながら場を仕切るのはカトレア
結局ジャンヌを含めた5人は円を作るように座り、真ん中にはカトレアが持ってきた折りたたみ式のテーブルが置かれ、さらにカトレアはトランクケースから白いボックスを取り出す
クッションを出した時点で明らかにトランクケースの許容量を超えているのだが、そこは気にする必要は無い
「ジャンヌさんはお酒飲めるかしら?」
「えぇ、嗜む程度には飲みますけど」
「それじゃあ酔いすぎるのも困るし...カクテルにしようかしらね。ミラは飲めないから炭酸レモネードでいいかしら?カグヤとシルはどうする?」
「じゃあ私も炭酸レモネード」
「我はカクテルにしてもらおうか」
「はいはい、了解よん。適当に決めちゃったけどジャンヌさんは飲みたいものがあったら別にものにするけど、どうする?」
「ジャンヌよ、ちなみに教えておくがカトレアは料理は壊滅的だが酒に関することは別だ、我はおすすめするぞ?」
「ちょっと、料理のことは今関係ないでしょ!!」
カトレアのツッコミにシルはただ「くくっ」と笑って返す
「まったく...とりあえず決めれないなら、一度飲んでみるのがいいと思うけど、どうする?」
「そ、それじゃあいただきます」
「了解〜、じゃあチャチャッと作るけど...つまみの方はどうなってるのミラ?」
カトレアはトランクからグラスなどを取り出しながら、ミラに聞く
「それなんだけど...」
ミラはそう言ってジャンヌの部屋のキッチンの方を見る
「実はご主人様にジャンヌさんが料理が出来るのを聞いたのだけど...ジャンヌさん、よかったらキッチンを使わせてもらって一緒におつまみを作らないかしら?」
「一緒に...?」
「あっ、それは昔アレウスから聞いたことがあるわ。ジャンヌさんの料理がミラに負けないくらい美味しかったって」
「彼に料理を...」
ジャンヌは好きな男に自分の料理を振る舞う、そんな幸せなことした記憶がないため戸惑ってしまう
そしてしばらく考えて思い出す
理由は覚えてないがアレウスと初めてあった時に見栄張ろうとして自分の料理を振舞った事があっことを
だがあの時自分が作ったとは言った記憶はなかった。事実ジャンヌは言っていないが、アレウスの鑑定スキルを持っているのでジャンヌが料理が得意なのがわかり、そこから推測したという話であった
「ジャンヌさん、それでどうかしら?」
「──...あ、えっと...私からもお願いします」
ジャンヌは己の思考から戻り、そう答える
ジャンヌはなんとなく向こうが自分との仲を深めるために提案してくれたことを理解していた
だからジャンヌも自ら願って提案を受け入れる
「それじゃあ動く前に大事なこといなくちゃいけないわね」
カトレアそう声を上げ、キッチンの方へ向かうために立ち上がったジャンヌが動きを止めると4人がジャンヌの方を向いていた
「ジャンヌ、あなたは私たちの家族なのよ。だからさん付けも敬語もこれからはなしにしましょ?」
「家族...」
「えぇあの馬鹿な男を愛しちゃったんだから、私たちはこれからずっと切っても切れない関係なのよ。だから遠慮とかそういうのはもうなしにしましょ。今は私が言ってるけど、これは私たち四人全員のジャンヌへの思いよ」
カトレアの言葉と共に、ミラもカグヤもシルもジャンヌをまっすぐ見てうなずく
それはしっかりとジャンヌの瞳に映る
ジャンヌは答えよとし、一回喉が詰まる
なんて言うべきか、なにを言えばいいのか、一瞬だけ考えてしまう
だが今いうべきことは簡単な一言だ
「──ありがとう、これから...よろしく、みんな」
ジャンヌの言葉に4人は笑顔で答えた
お読みいただきありがとうございます
なかなか書けない環境が続いて、作者久しぶりに書いたんですけど正直書き方忘れてたんで、変な感じだったらほんと申し訳ないです




