洞察力
よろしくお願いします
「アレウス、起きて...アレウス!!」
「んん...あぁ...」
カトレアの声がする
という事は最低でもカトレアはジャンヌと合流したことになるのか...?
「アレウスっ!!」
「おわっ!!...とと、どうし...た?」
「どうした?じゃないよ!!心配かけないでちょうだいっ!!」
起きていきなり抱きついてきたカトレアは少し涙目になっていた
「もしかして、また心臓止まってたか?」
「その通りよ...!!全然起きないし...ミラとジャンヌさんも大変なことになるし!!」
「ミラとジャンヌ?」
「あれよっ!!」
カトレアがビシィッ!!と指を指す
「ご主人様を...ご主人様を返しないっ!!」
ミラが鬼神の如き表情でジャンヌに向かい、斧を振るっていた
振るった斧は空気まるごとねじ切るように轟音を放つ
「何が起きてんだ...?」
「私とミラがここに来た時、ちょうどジャンヌさんがアレウスに刀を刺していたとこだったのよ」
「それで、ミラはブチ切れたというわけか...」
カトレアは「なんで、あんた達は似なくてもいい所似ちゃうのよ」と痛いとこをついてくる
しかしアレがミラのマジギレか...俺よりやばいんじゃね?
「ジャンヌさんはアレウスは戻ってくるって言ったんだけど、その時にはミラは完全に我を忘れてたのよ」
「お前は?」
「私は、魂を共有しているミラが生きてる時点でジャンヌさんの言葉を信じたわ。それでもアレウスの心臓は止まってるし、全然目覚めないから、本当に...」
「すまん、本当に心配をかけたみたいだな...」
もしかして目覚めるのが長引いたのって...
いやいや、そんなわけないよな。元々そういう仕様だったんだ、そうに違いない
そして軽く抱きしめカトレアは一瞬で力が抜けたように俺にもたれかかってくる
「おい、大丈夫か?」
「あはは...流石に限界かもしれないわ。一応カグヤに幻覚で身体の痛みと疲れを感じないようにしてもらったんだけど...」
「あまり無茶しないでくれよ、お前までいなくなったら俺はもうどうしたらいいか、わからなくなる」
「ごめんなさい...あと、私だけじゃなくてミラも...あの子あんなに動いてるけど、身体は悲鳴をあげてるじゃすまないくらいボロボロよ」
ミラのやつも...無茶するな、まったく
俺のことで怒ってくれてるから説教できる立場じゃないけどさ
「ねぇ...アレウス...シルは...?」
「あぁ、シルなら戻ってくるよ。まぁその前にあっちをどうにかしないといけないからな」
とりあえずミラを止めるのが最優先だな
......しかし、気になったがこの新しい力...
俺はカトレアに向けて、手をかざす
「......あれ?身体が?」
「お、どうやら上手くいったみたいだな」
カトレアはさっきの疲労が嘘みたいに回復する
「あんたの魔法じゃ、こういう疲労は治せなかったはずよね?」
「まぁ俺はそれだけで満足する男じゃないってわけだよ...それじゃ止めてくるか、」
俺は転移で一気に2人の間に入る
「絶対に許さないっ!!」
「私は信じてくれるまで全力で受け止めてみせるっ!!」
2人が再び激突する瞬間であった
巨大な爆発が起こり、閃光が走る
「なかなか面白い力だな...」
俺は自分の硬質化させた腕を見ながら、笑みを浮かべる
片方にはミラの巨斧を、もう片方にジャンヌの細剣を、俺はそれぞれ片手でつかみ完全に受け止めていた
「ご主人様...?」
「あぁミラ、心配かけたな」
「あぁ...ご主人...様...」
「...っとと、本当に無茶してたみたいだな」
俺の存在は確認したミラは安心した笑みを浮かべたあとカトレアと同じようにバタりと倒れ込みそうになる
俺は倒れるミラをしっかり受け止める
ミラの肉体の筋繊維は繋がってる部分の方が少ないと言っても過言じゃないほどずたずたに切れていた
これでよく動けてたなと俺は感心しながら
光魔法の回復でミラの肉体を回復する
そして次はミラの疲労だな
ちなみにカトレアに使用した時のヤツなのだが
これが俺が当たらに力を与え魔王化の能力の一つらしいな
今発動している硬質化もそうである
(いやぁ流石ですねぇ、アレウスさん。早速使いこなすとは)
いきなり出てくるなよ...
というか発動って俺の怒りがないと無理なんじゃないか?
(あー、それは完全発動の条件ですよ。リリアーナの前で説明するための建前として使わせてもらいました。通常状態でもそれなりに使えるように私が改造したんで、問題ないですよっ!!)
何が問題ないですよっ!だよ...
問題しかないじゃないか、アレウスさんのこと信頼してますから、的なことをリリアーナに言われたんだが...まぁ使えるもんは仕方ないよな
悪いのは全部エリーナだしな
とりあえずミラの疲労を吸い取るか
俺はミラに手をかざしてミラの肉体に存在する疲労を全てを吸収する
(へぇ、「暴食」の能力は対象のものを吸収する能力ですか。名に恥じない能力ですねぇ)
そういえば七つの大罪をモチーフにしたとか言ってたっけな
じゃあたぶん、この技で吸収したものを自分のものに出来るのは「強欲」あたりだろうか
まぁ疲労なんていらないから捨てるけどさ
「どうだミラ、身体の調子は?」
「あれ?とても...元気です...これはもしや...愛の力?」
ごめんなさい、愛とは真反対の存在の暴食ですよ、ミラさん
「ジャンヌもすまない、迷惑をかけた」
「えぇ...本当だったら2、3分で起きるって話を聞いていたのだけど...」
「......あー...」
(もしかしてタイムラグが結構ありましたか?あちゃー...天界と現世の接続が不安定でしたかね?)
そうだな...不安定だったんだよな、うん
とりあえずジャンヌも結構負傷してるな
俺との戦闘と...後はミラの攻撃を真面目に全部受けてたか
俺はジャンヌにもミラやカトレア同様の処置を施す
だが一つだけ、治らなかったものがある
ジャンヌの右目だ、失明だったら魔法で一緒に治せるはずなんだが
(あぁ、ジャンヌさんの失明状態は魔眼を長い間開眼してしまったんで右目にかなりの負担をかけてたみたいですね。ですから今は強制的に休止状態...つまり力を蓄える充電状態にしているんですよ)
つまりあの状態が1番いいというわけか
なら治す必要はないんだな
「さて、とりあえずだな...」
まずは何からするべきか...、まぁこれからだよな
「とりあえず誤解が解けたわけだから、な?」
俺はミラに視線を向ける
これ以上言わなくてもミラは理解してるだろう
ミラは俺に頷きだけを返してジャンヌの方を向く
「すみません、ジャンヌさん..あなたの話を聞き入れようとしませんでした」
「あなたが怒るのは当然だわ。私は元々あなたや彼の敵だったんだから...謝るのは私の方、私は元凶の一つなのだから」
「それに関してはご主人様がお許しになられてるのでもう済んだことです。ですから謝るのは...」
「いえ、謝るのは私の方...!!」
「「............」」
カトレアと俺は黙って2人の様子を見守ってるが
「これ終わらないんじゃないかしら?」
「だよな」
なんかさっきから俺たち2人の目の前で「いえ、私が...」と無限ループをしているジャンヌとミラ
二人とも真面目だからな
自分の非を認められない限り引かないんだろうな
だから、この場合は真面目すぎるって言った方がいいか
「二人とも、それくらいにしとけ。....なんだ、ミラとカトレアには知ってもらっておきたいんだが...ジャンヌもたぶん...あー...いつものあれになると思うから頼むぞ」
俺は言葉を適当に濁しながらも、多分伝わるであろうという伝え方をする
「ふーん...もしかしたらと思ってたら...ミラはいいの?」
「ジャンヌさんの人となりを知らないと何とも...だけど、悪い人じゃないのは良くわかったわ」
「まっ、それもそうね。これから知っていけばいいのだし」
どうなら2人からはお許しを得たってところか?なんかもうしょうがないって感じになってる気もしなくないけどさ
「ねぇ、なんの話をしているのかしら?」
「ん?あぁ...まぁなんだ、お前にもこの1件が終わったらゆっくり話すよ」
ジャンヌはなんのことかよくわかってないみたいだ
まぁあの伝え方で分かるのはうちの連中くらいだろうな
どうなるかはまだ未定だしな、でも多分俺が考えてる未来が正解なのだろう
(また増員ですかぁ...いや、文句はないんですけどね)
別に俺だってお前の話は聞いてないよ、エリーナ
「よし、じゃあ次だな」
「次?」
「あぁ...シルを呼び戻さないとな」
俺はそう言って手をかざして、強く念じる
初めてシルをこの世界に呼んだ時と同じように
魔法陣が発生し、巨大な光の柱を放つ
その光の中から1人の人間の影が浮かび上がってくる
「よく戻ってきたくれたよ、シル」
「......うむ」
シルはただ短く俺に返事をする
そしてシルはミラとカトレアの方を向く
「すまない...迷惑をかけた。我が弱いばかりに今回のような事態を招いてしまった」
「「シル...」」
頭を下げるシルに、対してふたりはほぼ同時にシルの名をつぶやく
そして2人はシルに近づき
「シル、顔をあげて...」
シルはカトレアの言葉通り顔をあげる
カトレアはシルの顔を睨みつけるかのようにじっと見ていた
ミラは何故か目をつぶっていた
2人はどういうつもりでやってるんだ
緊張の時間が流れる
「......やっぱり、肌がツヤツヤしすぎじゃない?」
「すんっ、すんっ...やっぱりこれはご主人様の匂い...つまり...」
「えぇ、私たちに謝らないといけないのは別にいるようね」
2人は揃って俺の方を向く
........へっ?
「アレウス、説明しなさい」
「そうですよご主人様...どうしてシルからご主人様の匂いがして...こんなに肌がツヤツヤなのか教えてくれますよね?」
「......あー...」
俺はたらりと冷や汗を流す
(.........え?アレウスさんもしかして...あの部屋でシルと......)
............すいません、ことを致してしまいました...
「えっと...あなたたちは一体なんの話をしてるのかしら?」
俺たちの様子を見ていたジャンヌが首をかしげる
普通の反応はこれだよな
うちの娘さんたちの洞察能力が高すぎるんだよ
ミラに関しては俺の匂いがするって、よく分かるなって話だし
「はぁ...まぁいいわよ、よく分からないけど我慢出来なかったみたいね」
「二年の時を超えてですからね...私もご主人様に同じように可愛がっていただけるなら文句はありません」
と、2人は俺が答える前に半ば呆れながら、そして笑いながら言ってくれた
「ちょ、ちょっと待つのだ二人とも。わ、我に文句など...言いたいことはないのか?我は2人になら何を言われても構わぬぞ?」
そして矛先が俺に向かってしまったことで少し呆然としていたシルが2人に声をかける
そんなシルの言葉に2人は顔を見合わせて──
「何も文句はないわ、私たちは家族なのよ。私の一言がシルを悲しませる結果に繋がったのも事実だし、謝るのは私の方よ」
「えぇ、家族内の問題なんだから解決したら文句はないわ。そしてカトレアの言う通り、シルの気持ちに気づいてあげられなかった私たちにも問題があったから」
「二人とも...」
シルはただそれだけを言って、2人を見つめ
そして自然とその瞳からは涙が流れていた
「まったく、何泣いてるのよ」
「シルは笑ってる方が似合うわよ」
2人はそう言ってシルを抱きしめる
美しい光景だが......カグヤが足りないな
「取り込み中悪いが.....カグヤがどこにいるか知ってるか?」
俺は邪魔にならないようにそっと2人に質問する
「カグヤなら教皇様とルーナちゃんと一緒にいるわ」
「居住区の私室で軟禁状態にあったみたいです」
どうやら教皇様は無事だったみたいだな
俺はジャンヌを見ると、ジャンヌはほっとしたような顔をしていた
「それじゃカグヤに終わったことを報告なくちゃいけないし、3人がいる居住区に行くとするか?」
4人に特に異存はなく、了承してくれる
そしてジャンヌの提案により、ジャンヌの扉で直接居住区へと向かうことになった
お読みいただきありがとうございます