白い世界3
よろしくお願いします
「ア...スさん!!アレ......さーん!!起き......さいっ!!」
無駄に綺麗で甲高い声が俺の耳に響く
そして聞こえてくる声は段々とハッキリしてくる
「起きてくださーい!!んー、起きない......待ってください?これはもしや...ムフフ、日頃の恨みを晴らすチャンスですねぇ」
この声はエリーナか......
日頃の恨みを晴らすだと?どう考えても俺のセリフじゃねぇか......
「さぁ顔にお絵描き、お絵......か......き......?あれ?起きて......る?」
「あぁおはよう、エリーナ」
「お、お、おおお、おはようございます、アレウスさん!!」
「あぁ。それでその手に持ってるペンは何だ?」
「こ、これですかっ!?べ、別に寝てるアレウスさんの顔に落書きしようしたわけじゃ......って!!なんですか、そのおもむろにあがる右手は!!だめ!!だめ!!ヒギャァァァァッ!!!頭が...!!頭が割れるぅ!!」
とりあえずアイアンクローをかましておこうか
こいつ人が寝ている間に顔に落書きしようとしてやがったな
「ん?というか何で俺の目の前にエリーナがいるんだ?」
「それは......!!ぎゃぁぁぁ!!だか、ら!!...うげぇぇぇぇ!!ギブ!!ギブギブギブッ!!」
夢でもなんでもいいか、エリーナにアイアンクローをかませることが出来るならな
あ、やばい、白目むき始めたな。流石にやめてやるか
「指がめり込んで...うぅ...ひどい、ひどいですぅ!!このドS!!ロリコン......あぁごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!!もうやめてください!!」
「......はぁ、わかったよ」
そんな涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにした懇願されたら、する気が失せるな
「それで、ここはどこだ?俺の夢の中か?」
「うぅ...夢の中じゃないですよ。この部屋、覚えてないですか...?」
「この部屋...?」
あたりを見渡すが一面に白だけが広がる
一室のようにも見えるが無限に広がる空間にも見えるこの場所
なるほど、ここは俺がたまに来たことのある例の白い部屋か
「どこかはわかったが...どうして俺はここにいるんだ?何かあったのか?」
「へ?アレウスさん覚えてないんですか?」
「覚えてない、だと?」
「はい、アレウスさんジャンヌさんと戦ったり...魔神ナルムヨルグと戦ったりして」
「魔神と...?」
あー...なんか思い出してきたぞ
魔神ナルムヨルグと戦っていたな。それに洗脳されたジャンヌとも......
他にも何か大事なもののために戦って──
「.........シル」
俺はジャンヌ同様洗脳されたシルを取り戻すために戦ったんだ
だがあの戦いはどうなったんだ?ジャンヌを救ったことまでは覚えている
だがその先がうまく思い出せない...
「あの...アレウス、とりあえず落ち着いて...ですね...?」
「お前は何を言って......」
俺はエリーナに言葉を返している途中で思い出してしまう
シルが死んだことを。ジャンヌを倒した後、魔神とシルと交戦していた途中のことだ
シルの身体は爆発して散ったことを
「っ────!!」
「あ、アレウスっ!?」
「ぁ─、っ──!!」
「アレウスさん!!アレウスさんっ!!」
息が出来ない、何かに首を絞められたかのように苦しくなる
「どうして呼吸を必要としないこの空間で過呼吸なんて起こすんですか!!メディーック!!メディーック!!」
うるさいぞ、エリーナ...
くそ、シルのこととか魔神のこととか色々と確認したいのに...やばい、意識が吹っ飛びかけてる...
「はいはーい、メディックが来ましたよ〜」
「治癒神さん!!よく来てくれました」
「じゃあさっそく治療するね〜」
「お願いします!!......って、なんですかその手に持ってる狂気的なハンマーはっ!?」
「ん〜、これで叩けば1発で治るから〜」
待ってくれ...すごいやばい匂いしかしない会話が聞こえて...視界がぐらついてよく見えないぞ
「じゃあ行くねぇ〜」
「うわぁ!!先端部分に血がこれでもかとついてるのに信頼出来るわけ──」
「ほいっ!!」「あぁっ!?」「ごはっ!!」
ガツンと脳をゆらす一撃が俺の頭を襲った
「あぁぁ!!アレウスさん!!大丈夫ですかっ!?」
「耳元で叫ばないでくれ...!!」
「アレウスさーーーん!!......ってあれ?治ってる?」
「.........マジで治ってるな」
鈍器的な何かで殴られたと思ったら、気づいたら苦しさが無くなっていた
「ふふ〜、治ってよかったねぇ。あ、私が誰かを呼んでいる気がする。じゃあお大事に〜」
血がべったりとついたハンマーを手に持ちながらホワホワ笑顔の美少女は、ジャンヌの扉のように何も無いところから扉を召喚してどこかへ行ってしまった
「......エリーナさん、今のは?」
「えっと...今のは治癒神アミナさんと言いまして...アレウスさんに加護をくれた治癒神さんもあの方ですし...」
「マジか...」
なにかとお世話になっている「治癒神の加護」の治癒神があれなのか...
「はぁ...まぁいいか。エリーナ、色々と聞きたいことがある、教えろ」
「あ、えっと、それでしたら私の代わりにですね」
なにを言い渋ってるんだこの女神は...
「その説明なら私からさせていただきます」
「ん?............は?」
後ろの方から女の声がして、振り向いた俺は絶句する
「どうしてルーナがここにいるんだ...?」
その女はルーナだった
......いや、正確に言うならもう2.3歳、歳をとって大人になったルーナというべきだな
「あ、リリアーナ遅いですよ〜」
「ごめんなさいエリーナ...それと初めてお会いになります。私が主神リリアーナと申します」
「リリアーナって...あの女神のリリアーナのことか?」
見た目がルーナのその女は「えぇ」と微笑みながら答える
「私のこの姿に驚くのも仕方ないですね。私の姿はあの子、ルーナに似ていますからね」
「正確に言えばあのルーナがリリアーナとそっくりと言うべき何ですけどね〜」
「どういうことだ、エリーナ?」
イマイチ話がつかめない俺はエリーナに詳しい説明を求める
「んー...あの世界には天啓というシステムがあるのは知ってますよね?」
「主神の...そこにいる女神様のお告げを聞くっていうやつだよな?確かお前はルーナにしか出来ないと言っていたやつだな」
「はい。その天啓というのはですね、ルーナに憑依をして言葉を伝えるというものなのです。ですから憑依するために可能な限りリリアーナに近い存在ではなくていけないわけですよ。これでわかりますか」
「あぁ、大体のことはな...」
憑依をするってことは幽霊のミスト同様に器が必要というわけだ
詳しい話はよくわからんけど憑依は共通性があるほど同調率が高くなって、より憑依できるみたいな話は聞いたから、そういう話といっしょなわけだよ
となるとだな...
「なぁ、ルーナはあんたがその天啓をするために作られた存在という話になるんだが、」
俺はリリアーナという女神に顔を向けて話しかける
ルーナが聖女と呼ばれる理由もこれではっきり分かったな
あいつはそのせいであの聖教国の中に閉じ込められていたんだ。聖女という称号がルーナから自由を奪った
それがもしその天啓とやらが問題ならば俺から言いたいことがある
「はい、それは認めざるをえません」
「そうか...あんたにはジャンヌのことでも色々話したいことがあったが...」
流石に自分勝手に過ぎるんじゃないか?と言おうとした時である
「違うんですよ、アレウスさん!!それは誤解です!!」
「あ?おい、ひっつくな!!暑苦しい!!」
「リリアーナは悪くないんですよ!!ルーナの事も天啓システムは必ず導入しなければならないものですし...ジャンヌさんのことだって...ジャンヌさんが転生をする時に天界のシステムに支障が生じてサポートすることが出来なかったんです!!」
「わかった!!わかったから、1回離れろ、このバカ!!」
俺はエリーナを無理やりひっぺがえし、適当に遠くへ投げ飛ばす
まぁあいつはあれくらいじゃ死なないから雑に扱っても問題ないだろう
「はぁ...エリーナがあぁ言ってるが、どうなんだ?」
「そう、ですね...エリーナが言ってることは確かに事実ですけど...でもやはり私に誤りがあったのは間違いないです」
女神リリアーナは申し訳なさそうな顔をする
俺はその表情を見て、目の前の女神は悪い神ではないんだろうと思ってしまう
「......はぁ、俺からはもういい。だがジャンヌとは一度話して謝ってやって欲しい。俺と会えるならあいつとも会えるんだろ?」
ルーナのことだったら、俺が無理矢理にでもあそこから解放してあげればいいからな
だったら今いうべきことはこれくらいだろう
「それ、ならばぁ...問題ないですよぉ...」
「おわっ!?お前、ゾンビみたいに這いずりながら来るな!!」
エリーナはボロボロになりながら「投げたのはアレウスさんじゃないですかぁ...」と声を上げる
「それで、問題ないってどういう事だ?」
「ジャンヌさんは既にアレウスさんとの戦いの後にここに来てもらったということです」
「じゃあ既にジャンヌとは話しているということか」
「はい、その時に謝罪させてもらいました。幼いあの子を転生させたこと、そしてその間なにも力になってあげられなかったことを」
俺から言うまでもなかったということか...
「それで、ジャンヌはなんて?」
「あの子は「確かにあなたには言いたいことは沢山あるけれど、私はもうあの時の憎しみを抱かないことを心に決めましたから」と言い、私を許してくれました」
俺は「そうか」と女神リリアーナに答える
憎しみを抱かないこと心に決めたか...あいつは自分の心の闇から解放されたみたいだな
俺も多少は力になれたみたいだな
そして女神リリアーナの言葉をエリーナが継ぐ
「それで、その後はジャンヌとアレウスさんを倒すための作戦会議をしたんですよ!!」
「俺を倒す?...というか聞きたいが、俺に何があった?魔神は、シルは...どうなったんだ?」
俺は恐れながらもシルのこともエリーナに問いただす
「順序だてて説明しますね...まず、アレウスさんはシルの肉体が爆発したところを見て正気を失い、自我を崩壊させ始めました」
「......やっぱりシルは死んだんだな、」
頭の中に思い浮かぶシルの体が弾け飛ぶ光景が再び流れてくる
「へ?シルは死んでないですよ」
「...............は?」
「だからシルは死んでないですって」
「待て、肉体が弾けとんだんだよな?」
「はい、肉体は弾け飛びましたね」
エリーナは何がいいたいんだよ、訳が分からない
シルが死んでないだと?だが確かに俺の目の前でシルは弾けとんだ
「エリーナ...あなたもっと詳しく話なさいよ。アレウスさん、シルはフェンリルの娘です。すなわち彼女も神となる資格をもった1人でございます、彼女の魂は通常の魂と違い消えることはないんです。だから例え現世で肉体が壊れようともシルが死ぬことはないんです」
「あー...」
難しいことは抜きにして、シルは死んでないということでいいんだよな
そうか...シルは消えていなかったのか
「アレウス、にやけてますよ〜」
「あ?...ちっ、悪かったな、にやけて」
「そしてそんな嬉しそうなアレウスさんにとっておきの情報です!!アレウスさんがもっている「眷属契約」をあの世界で再び発動すればシルの肉体は元に戻りまーす!!」
「つまり、シルは帰ってくるってことだよな?」
エリーナは「はい!!」と元気に答えてくれる
シルにもう1度会えるのか...シルには話さないことがあるからな、本当によかった
本当に死んでなかったとはな......ん?
「待てよ...もしかして俺って、勘違いをして自我を失いかけたってことなのか?」
「あ、気づいちゃいました?クスクス...ほんと...アレウスさんっ...」
「てめぇ...」
人の不幸を笑いやがって...
「ふふ、2人はとても仲がいいですね」
「ん?」「ふぇ?」
リリアーナが俺たちを2人を見て、笑い声をあげる
「待て、俺はこのアホと仲良くはないぞ?」
「アホっ!?アレウスさんのほうがアホですよ!!シルがいなくなっと勘違いして正気を失うとか、女々しいですよ!!」
「あ?」
「ひぃっ!!暴力反対です!!」
このアホ女神は......とりあえずはアイアンクローを再びお見舞いだな
「ふふ、やっぱり仲がいい」
「だから違う...というか、あんたはエリーナと仲がいいんだろ?エリーナから聞いたぞ」
「そうですね、私はエリーナとは同期の神とですから」
神に同期とかあるんだな、とかツッコミたくなる部分は全部スルーしようか
「このアホって本当に女神なのか?あんたが女神ってのは納得できるが...」
「はい、エリーナも一応立派な女神ですよ」
「だけど、神様ってあんたみたいにそれぞれ管轄があるんだよな?こいつ俺の頭の中にずっといたんだが」
「管轄のことでしたら、エリーナは管轄を持ってないですから大丈夫ですよ。...まぁ無断で転生させたり、システムをいじったことは大変問題ですけど」
「わ、私だって管轄を持ってたことだったあるんですよー!!」
俺のアイアンクローから復活したエリーナが突如声をあげる
「それ、何年前の話よ...」
「ほんの500年ほど前の話ですよ!!」
数百年単位か...スケールデカすぎだよなぁ
神様すげぇな
「管轄を持ってたことはわかったが、どうして今は持ってないんだ?クビになったのか?」
「あ、あはは...いや、それはですねぇ...」
どうやら図星のようだな、こいつ基本的にアホだからな。クビにされない方がおかしい
「この子、一回星を一つ潰してるんですよ」
「......その話、詳しく」
ものすごい興味深い話が聞けそうだぞ
◇
「くっくっく...バカすぎるな...」
「私も今思い出すだけで笑いがこぼれます」
「ぅぅぅぅっ!!笑わないでくださいよぉ!!」
エリーナの星を一つ潰した話はこうだ
エリーナが思いつきで「愛をふりまきますよぉ!!」とか言って、ちょこちょこっと運命をいじったらしい
いわゆる角でばったりぶつかった男女が恋におちる運命とかを増やしたという感じだ
それでエリーナがその調節をみすって、その星の全生物が発情期よろしくの大繁殖を初めて、しばらくして資源が枯渇して星が一つ滅んだというわけだ
視点を変えればただの大量虐殺者だが...
バカだな、バカとしか言いようがない
笑いが止まらん......
「もうこの話は終わりです!!というかアレウスの話の方が大事じゃないですか!!」
「そ、それもそうだな...くすっ、」
俺は笑いに堪えながらエリーナに答える
いかんいかん、落ち着け落ち着け...
「ふぅ...シルが生きてるのはわかった。魔神はどうなった?」
「あ、魔神ならアレウスさんがサクッと倒しましたよ」
「サクッと?」
「サクッと」
「自我を失った俺がサクッと?」
「はい、自我を失ったアレウスさんがサクッと」
自我を失ってどうやって魔神を倒すんだよ......
いや、また怒り任せに暴走したんだな、俺は
「まぁもっと詳しくいうと魔王になったアレウスさんが魔王をサクッと倒したんですけどね」
「は?魔王?俺が?」
「はい、魔王プログラムを少しいじってですね。アレウスさんの魔眼を改変してインストールしたわけですよ」
「......何のためにだ?」
「もっと詳しくいうとその魔王になる能力はアレウスさんの怒りを動力源に発動するように設定してあるんですよ。アレウスさんが怒りに飲まれないようにするために怒りがそっちに流れるようにしたというわけです」
それじゃ俺のためにしたってわけか、文句は言えないな
しかし魔王とか...色々と困るんだが
「というかリリアーナはいいのか?俺が魔王になって...魔王っていわゆる一種の浄化装置なんだろ?」
エリーナのアホ伝説で俺はリリアーナと呼ぶようになっていた
「はい、緊急措置ですからこの際仕方はないでしょう。それに魔王プログラムも天啓プログラムと一緒であまり使われることは無いですから」
「そうか、それならいいんだが」
「はい、アレウスさんならば適切に力を使ってくれると信じていますから」
適切にね...その信頼を裏切らないようにした方がいいかもな
「まぁでも、結局さっきはアレウスさんの怒りを処理しきれなくてアレウスさん暴走したんですけどねぇ。全てを壊してやるー!って感じで」
「......それやばくないか?どうなったんだ?」
「魔王となって魔神をサクッと倒した暴走したアレウスさんはジャンヌさんによって倒されました」
「ジャンヌは目覚めてるのか?」
「はい、私たちとここで話をした後にすぐに。魔王を倒すのは勇者のしきたりですからね、ジャンヌさんにしか出来ない仕事です」
そんなしきたり聞いたことはないが、確かにシルがいなくなったあの状況で俺を倒せるとしたらジャンヌただ1人だろうな
シルとも話したいことは沢山あるが、ジャンヌとも色々と話さないといけないな
「まっ、これがアレウスさんがジャンヌさんを倒したあと、ここに来るまでのお話ですかね」
「そうか、とりあえず...面倒事はすんだってことか?」
「大きな山は超えました..でも最後の仕上げがありますかね」
「最後の仕上げだと?」
俺は首を傾げる、魔神を倒した...これ以上やることあるか?
「その話をするために私は来たので、私から」
とリリアーナが言って、俺の方を向く
「天啓システムを発動させようと思います」
「なんだと?」
「魔神を倒せたとしても、アレウスさんが魔神であるという疑惑が晴れた訳ではありません。ですから私が天啓システムを使い現世に顕現し、その疑いをなくそうと思います」
「......一つ聞きたい、それをしてルーナに何か影響はあったりするのか?」
「彼女には少し負担をかけると思いますが、大きな影響はありません。それは保証します」
俺は「そうか」と答える
確かに俺が魔神だという噂は消えていないのだろう
あれは洗脳という類ではなく、ただそう人々を信じ込ませただけだ
噂は人から人へと伝染していき、嘘であろうとホントであろうと広まれば広まるほど、その流れる噂は人々の中では真となる
それは洗脳とは違い、解くのは簡単な事じゃない
そこであの世界の人々が崇める神の言葉で俺の疑いを晴らすというわけか
正直俺が断る理由はないな、ルーナに負担をかけるかもしれないがここは頼んでおこう
「わかった。だったらリリアーナ頼んだぞ」
「はい、おまかせください。さしあたってアレウスさんにはこれを渡しておきます」
「これは?」
リリアーナは一つのガラスみたいに透き通った宝玉を渡してくる
「これをルーナに渡してくれれば天啓システムは発動します。場所はどこでもかまいません」
「そうか、受け取っておく」
俺はリリアーナから宝玉をうけとり、ポケットにしまう
「とりあえず今回はこれで終わりか?」
大体のことを話切った感じがしたと思った俺はそう2人に問いかける
「そうですね、私たちが話すべきことはだいたい終わりましかね。リリアーナ、向こうの準備は?」
「向こうの準備ならもう完了済みよ」
「じゃあもうよさそうですね」
ん?2人はなんの話をしているんだ?
「アレウスさん、サプライズは最後にやってくるんですよ〜」
「サプライズ?」
「アレウスさんは戻る前にまだやることが残ってますから!!ささっ、こちらの扉です!!」
エリーナが手を掲げるとどこからとも無く扉が現れる
この先に何かあるってことか?
「じゃあ私たちは戻りましょうか。アレウス・アーレンハルトさん、私は天界の規則上、直接干渉することができません。ですから、私の世界をどうかよろしくお願いします」
「あぁ、俺も平和に暮らしたいからな、できる限りのことはやってやる」
「ありがとうございます...それと、あの子...ジャンヌのことを幸せにしてあげてください」
「あぁ俺が絶対に幸せにしてみせるさ」
これで今回はお別れなのだろう
俺はリリアーナと握手を交わす
そしてリリアーナはどこかへと消えていった
「まぁ私はどうせ向こうの世界で合流しますから、言うことは無いですね〜」
「確かにそうだな。まぁ今回は助かったよ、ありがとな」
「むむっ!!アレウスさんからそんな言葉が!!」
「おまえなぁ...」
「えへへ、まぁアレウスさんは私の相棒ですから、力を貸すのは当たり前です!!」
「そうか...ありがとよ」
「それじゃあ私も...また後で」
「あぁ後でな、」
俺は軽く手を挙げてエリーナに挨拶する
最後にもう一回アイアンクローをしようと思ったが、今回はもうなしでいいな
そしてエリーナもリリアーナのようにどこかへと消えていった
「さて...」
俺は謎の扉に近づき、そっとドアノブに手をかけて、回す
扉はだんだんと開かれ、扉の先の部屋の姿がだんだん俺の目に入ってくる
そして扉が開ききった時、小さな銀髪の少女を見つける
「主殿...」
シルがそこにいた──
お読みいただきありがとうございます
次回は遂にアレウスとシルの再開です
吐きたくなるぐらい甘い話になったら申し訳ないです




