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シル

あけましておめでとうございます

新年一発目です、よろしくお願いします

「聖騎士たちが倒れてるな...」


ジャンヌとの戦いに決着をつけた後、俺は再び本堂へと転移した


転移した後はシルや魔神の元にたどりつくまで聖騎士たちの相手をするかと思ったが、皆気絶して倒れている



洗脳が解けたのだろう。となるとディストラーダを誰かが撃破したのか...ミラあたりだろうか?ディストラーダの強さを考えるとミラあたりじゃないと厳しい気がするし



「くそ、通信機が壊れてるな...」


ジャンヌとの戦いでいつの間にか破損していたらしいな。耳元につけているから普通は当たらないんだが...何かしらの攻撃がかすってたみたいだな


そうなると俺はかなりギリギリのところで避けたとことになるが、身体が無事なら問題はないか



とは言っても、予備を持っておくべきだったな

連絡が取れないとなると向こうの無事が確認出来ないし、教皇様がどうなったかもわからない


ミラたち3人が協力してるなら問題はないだろうけど、心配には心配だ

シルが出向いてる可能性だって考えられるしな



だがその可能性はない気がする

なんとなくだが、俺にはシルの場所がわかる

微かだが繋がりのようなものを感じる

離れてしまったから感じてることなのかもしれないが、これは俺とシルの眷族契約による繋がりだと俺は信じている


俺にわかるということはシルにも俺の居場所がなんとなく分かっているのだろう

そして俺がどんどん近づいていることもわかっているはずだ





本堂内の構造を知っている訳では無いので、俺はジャンヌとシルと遭遇した場所まで足を運ぶ


廊下には未だシルが生み出した分厚い氷の壁が残っていた



いったいどれ位の厚さかはわからんが、ぱっぱと壊して気に進みたい


フェイト先生があれば1発なんだがな...現在先生は絶賛ジャンヌの洗脳解除で忙しいから俺の手元にはない



「騒がしくなるが、仕方が無いか」


俺は腰から三日月を抜いて形状を変化させる


液状化した三日月は俺の腕にまとわりつき、篭手の形状に変化する


ミストが自動展開式鎧ならばこの三日月は自動形状変化鎧だな


俺は手をニギニギとやり感触を確かめた後、腕に雷を流していく


流れた電流は金属体である三日月に帯電し、高速で循環しどんどん電圧を高めていく



俺の肉体では耐えきれないほどの電気を三日月の篭手に溜め込んでいく

流れる電流は篭手の中で加速し、唸りをあげるかのように放電を始める


そしてその唸りははち切れんばかりの咆哮へと到達し──



「おらぁ!!」


俺は溜め込んだ電気を収束し、放つ

俺の拳が氷の壁に直撃すると共につんざくのような爆音が鳴り響く


俺は一瞬冷や汗を流し

やばい...やりすぎたかも.....と考える



篭手が強烈な閃光を放ち視界を潰す



そして視界が元に戻ると、氷の壁は砕け散り、その粒子が雪のように宙を舞っていた



「完全にやりすぎるとこだったな...」


威力調整を間違えて、本堂自体をぶっ壊すところだった...

そしたらさっき見つけた気絶している聖騎士たちとかを生き埋めにする所だったな


幸い被害がでたのは俺を中心とする半径10mくらいの範囲だったから...あとでジャンヌあたりに修繕費でも出しておこう


最悪魔神のせいにしてしまえば問題はないだろうしな......よし、それでいこうか



俺は三日月の形状を元に戻し、腰にしまう






「まぁそんな簡単には進ませて貰えるわけがないか」



氷の壁を破壊し、先へ進んでしばらく、俺の行く手を阻むように3人の男女が立っている



「どうやら、ジャンヌ殿は倒されたみたいだな」

「ふーん、聖教国最強とか言ってたけど大したことない感じだったみたいね」

「ただナルムヨルグ様に気に入られてただけみたいだな」


目の前の男女は口々に発言する


どうやら俺を待っていたみたいだな、そして口ぶりから察するに魔神の配下


というか、ユニークスキルを持ってるあたりそうなんだろうな


しかし奴らの言葉はいただけないな




「おい、好きかって言ってるようだが、テメェらなんかジャンヌに比べたらクズも同然だ」

「ほぅ...」

「は?あんた何言っちゃってんの?バカじゃない?」

「所詮、イリヤ王国の剣と呼ばれる人間もその程度だということだろう?」


どんだけ自分たちに自信があるのか知らないが...まぁこいつらのことを考えるのはめんどくさいな


「まっ、あの女の味方してるんだものそうよねぇ...あんなナルムヨルグ様を娼婦のような目で媚びてる女なんかねぇ、ガイン?」

「ふっ...ビルマよ、その話はするんじゃない...思い出しただけでも笑いが出る...」

「だけど、抱かれてるっぽいわよ〜?この前すごい歩き方ぎこちなかったもん、アハハハッ!!」


ガインという男とビルマという女の話す声が俺の耳にも届いてくる。いや、あれは明らかに俺を挑発するための会話だ...


やつらは何か挑発する理由があって挑発しているのかもしれない、罠かもしれない


だけど、俺の怒りはそんなに我慢強くない──


「もういい、とりあえずお前から.........死ね」

「へっ─?......うそ...?」


転移で移動し、真ん中にたっていた女の胸を貫く


この程度も避けることが出来ないのによくジャンヌのことが言えるな


「「貴様!!」」

「うるせぇよ、」



俺は胸を貫いていた腕を引き抜き、両脇に立っている2人の男の首を絞める


「てめぇらのくだらない話なんてもう十分なんだよ、」


ゴキゴキッ!!と首の骨が砕ける音が鳴り響き持ち上げていた2人の男の身体から力が抜ける



そして指を開き、二人の男は床に落ちる



「かひゅ...くそが...!!くそったれが...!!」

「......まだ生きていたのか、このゴミが」



俺は三日月を刀の形状に変化させ、女の首を斬る



「胸糞悪い話を聞かせやがって...」




こいつらがさっきしていた話が本当がどうかはわからない......

だが、もし本当だったらと思うと、そしてジャンヌだけでなくシルまでもがそうなっていたとしたら......



「はぁ...落ち着け、くそ...!!」



自分の心が黒く染まっていく

自分の内に潜む残虐性が再び表に出ようとし、どうしようもない破壊衝動が俺の心を刺激する


自分の胸をつかみ、無理やり黒い感情を押しとどめる


このまま今の感情に流されていたら、ここに来る前にミラたちに謝ったことがすべて無駄になる


ここで暴れてしまったら、例え魔神を倒し

シルやジャンヌを救い出すことが出来ても2人に顔向けなど出来なくなる



「はぁ...!はぁ...!さっさと、終わらせるべきだな....」


最悪なタイミングで嫌なヤツらに遭遇してしまった

あんな雑魚なら出てくるんじゃないと言いたくなる


もう1度深く呼吸し、心を落ち着かせ俺は更に奥を目指す








「ふむ...やはり来たか」

「シル!!」



本堂の最奥の聖堂に辿り着くと、そこにはシルの姿があった



そしてもう一人──



「どうやらシルの予想が正解したみたいだね」

「ナルムヨルグ......!!」



ナルムヨルグは聖堂にある台座に、まるで一国の主であるかのように優雅に座っていた




「お前がシルの名前を気安く呼ぶんじゃない」

「どうしてだい?彼女は今は僕の眷属だ。君が言ったセリフは本来僕が言うべきセリフじゃないかな?」



これ以上のこいつとは会話をしていられない



俺は無言でナルムヨルグに襲いかかる



「主殿に手出しはさせん!!」

「シル......!!」


俺の三日月とシルの氷結剣がぶつかり合う



「はははっ!今君も聞いただろう!彼女は今、僕のことを主殿と呼んだ!!そして君は貴様と呼ばれる、もう答えは出てるんじゃないかな?」

「てめぇ......!!」


先程から姿勢を変えず、余裕の笑みを俺に向けるナルムヨルグを睨むつける


「私の相手は貴様だ!!アレウス・アーレンハルト!!」

「くっ─!!」


氷結速度が勢いを増し、俺は一度距離を取らなければならなくなる



距離をとったが俺の腕は未だパキパキと凍る音が鳴っていた


俺は無理やり自分の腕に電流を流し、氷を破壊する



「シル、いい加減目を覚ませ。帰ってこい、俺もミラたちみんなも待ってるんだよ。」



俺はシルを睨みそう言うが、その本人はゴミを見るような目を俺に向けてくる



「貴様は何を言っているんだ?くだらない」

「くだらないだと?」

「そうだ、確かに我は貴様やあの女達との時間を過ごしたが...その時間は実にくだらないものだった。我は気づいたのだよ、真に仕えるべき主は誰だったのかと、」


シルはナルムヨルグに擦り寄るように身を寄せる



「これでわかっただろう?君はもう彼女に触れることすら許されない。文字通り身も心も(・・・・)も僕のものだ。......あぁ一つ感想を言わせてもらうとすれば...彼女は非常にいい身体をしていたよ」


ナルムヨルグはシルの頬に指を添え、そしてシルはそれを恍惚とした笑みで受け入れる


俺はただナルムヨルグの言葉を聞き、その光景を呆然と眺めることしかできない


俺の中はあいつを魔神を早く殺したいという感情しか残っていない



「いいね、その目だよ。怒りと絶望を宿した目がとてもいいよ...そうだ、これも見せてあげようか」


ナルムヨルグはシルのあごを引き寄せ、己の唇をシルの唇に──



「させるわけがないだろうが──!!」



俺は怒りのまま叫び、2人の間を割って入るかのように三日月を振り下ろした


「殺すっ!!」

「おっと、無駄だよ」


俺が振るった刃はナルムヨルグに届く前にシルに止められる


「主殿に手出しはさせん!!」

「.........」


俺は何も言葉を発することもなく、シルを睨む


そして俺の視界にはシルの首元にあるネックレスが入ってくる

俺がシルにあげたネックレスだ。あのシルと俺の間に捻れた溝を作ってしまった約束をした日にあげたもの


そのネックレスは贈り主に対する思いが強ければ強いほど、透き通った色に変化するという不思議なものであった


目の前に映るネックレスの宝石はまるでガラス細工のように綺麗に透き通った色をしている


シルの心はまだ俺を思っている証拠だ


「すまないな、シル...」


俺はシルと鍔迫り合いをしながら声を漏らす



シルを取り戻しあと何を話すべきかはわからない...だけど、謝らないといけないことはわかる


シルは洗脳されてはいるが、その心は俺の方を向いている。例え魔神が言っていたことが本当でも今はそれが分かれば俺には充分だった


だから「すまないな、シル...」などと、半ば無意識に呟いてしまった



今のシルに俺の言葉はきっと届いているはずだ、聞こえてるはずだ


だから、こそ俺は早くシルを取り戻さないといけない。こんなくだらない事はもう終わりにしないといけない



ここにきて、シルを早く取り戻さないといけないという思いが一層強くなる





だが俺のそんな思いは一瞬にして潰されることになる





「さて...そろそろ仕上げだな」

「.........は?」


トスッ、と軽い音が鳴る


俺の顔に、赤い液体がかかる


俺の目の前ではシルが胸を貫かれ、胸を貫くナルムヨルグの抜き手が見えていた


さっき以上に脳が理解出来ない光景が目の前に広がる



「ここで...洗脳解除だ」


ナルムヨルグのそんな声が響く、俺は身体が硬直して動かない



「.........主殿?」



シルが俺の目を見て、ハッキリと俺を「主殿」と呼ぶ


俺も...俺も早くシルに返さないと──


「.........シ、」

「おっと...感動のシーンはこれでおしまいだ」



ボンッ!!と破裂するような音が鳴り響き、俺の全身にビチャビチャっと何かが大量にはりつく


飛んできたものはどこか鉄の風味を持っている




俺は何かを声を発しようとするが何も出ない


頭が真っ白になる


目の前でシルの............
























目の前でシルの身体が弾け飛んだ






シルの肉片が俺頬に、身体にこびり付いている

俺は全身シルの血で真っ赤に染まる



「嘘......だろ、おい...」


目の前には誰もいない、俺と鍔迫り合いをしていたシルはもうそこにはいない


ただ目の前に笑みを浮かべるナルムヨルグの姿のみが映る




「シルを......どこにやった...?」

「どこにやった?違うだろ?彼女は死んだ、君の目の前で肉体がはじけ飛んだじゃないか」




ナルムヨルグのその言葉と高笑いが俺の心は壊していく


シルが死んだ、その事実は無理矢理にでも理解させられ俺の心は崩れていく


シルの胸が貫かれた時、俺は何も出来なかった

シルが俺を呼んだ時、俺はシルを呼び返すことが出来なかった



無意識で手をあげるが、そこには何も無い


シルに触れることはもう二度となくなってしまった



「ぅ...あ、ぁあ...あぁ......」


声ではない声が呻きとなって俺の口から漏れる


俺の頭の中で、シルが俺と目の前で弾け飛ぶ瞬間が何度も再生する



その事がシルがもう目の前にいない、死んだのだという現実を俺に突きつけてくる




もうここには、この世界にはシルはいない



シルがいない世界など意味があるのだろうか、価値があるのだろうか?



意味も価値も存在しない、そんな世界は無意味で無価値だ


俺は壊れていく自分の心を手放す

そして俺がいたその心の座には黒い何かが俺の代わりに居座ることになる



「あぁ...あぁ、ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



ただ俺は叫び声をあげる




そしてただ一つ思う、





シルがいない世界など消えてしまえばいいのだ、と


お読みいただきありがとうございます


色々と書きたいことがあるので一つずつ


まずはブックマークが遂に1000件いきました、ありがとうございます。こんな誤字だらけで他人から見たら雑な内容な作品でも、それだけいけば作者は満足です、読者さんありがとうございます

次に「The trigger of desire」の投稿が再開したのでよかったら読んでください

そして最後に、この作品がうまくかけない時の暇つぶしで書いていた物語を月一で投稿することにしました、題名は「ネカマな俺の冒険譚」です。月イチ投稿なので他の作品書くのに支障をきたさないのでよかったらこちらの方も見てみてください


ついにこの章の終わりも見えてきて、しばらくお休みになる時が近づいてきましたが、これからもよろしくお願いします

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