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恐怖を超えて

よろしくお願いします


カグヤの回は頑張って1話で書き切りました!!

カトレアとミラが戦っている同時刻──



「ルーナちゃん、大丈夫?」

「はい、まだ走れますから...大丈夫です...」


教皇の私室がある居住区へ向かうカグヤとルーナ

ルーナはカグヤを心配させまいとするが、ルーナの息はどう見てもあがっていた


2人は急がなくてはならない、だがカグヤはルーナを置いていくわけにはいかない


「グルルル...」

「また来た...眠ってください!!」


建物の影から現れた野犬のような魔物にカグヤは腕を振るうと、魔物の霧が立ち込める


霧にかこまれた魔物たちはバタリバタリと倒れていく


カグヤが放った霧は睡眠ガスの性質を持つ霧魔法「睡蓮」

相手に強力な幻覚をかけて眠りへと誘う


そしてカグヤは無防備となった魔物達を火魔法で燃やす


「すいません...私が遅いばかりに」

「いいんだよ、私も走るのは得意じゃないから」



そうは言うが、仲間の中で一番身体能力が劣るカグヤであってもルーナの身体能力と比べれば圧倒的に高い


今もカグヤはルーナのペースに合わせているため息一つあがっていない


カグヤが単独で動けばもっと迅速に行動がとれるが、ここでルーナを置いていくことはかなり危険である


聖騎士の者達ならば保護してもらえる可能性はあるが、魔物はそうはいかない


そして現在居住区に近づいていく度に聖騎士よりも魔物と遭遇する頻度は高くなり、魔物の強さが段々と強くなっている


もちろんカグヤがもつ「結界魔法」で、ルーナを保護してからカグヤが単独で動くという考えもあったが、やはり一人にするのは不安なことであった


第一カグヤは危険だとわかっていてもついてくると決めたルーナの覚悟を踏みにじるような真似はしたくなかった



「一旦休んだ方がいいみたいだね」

「すいません...私、足でまといに」

「気にしないで。そうだね...五分くらい休もうか」



そしてカグヤはそっと結界魔法でルーナを囲み、危険がないように守る


自身には結界は貼らないで、何が起こってもいいように警戒し、辺り霧を発生させてなるべく敵が近寄らないように用心する


カグヤ自身こうやって何かを守るために強大な敵と戦ったことは無い

初めてアレウスたちにあった時も自分はただ守れるだけの存在だった


だが今は誰かを守り、そして仲間のために戦う立場となっている


警戒をしながら無意識に厳しい顔になっているカグヤの顔には不安という気持ちも見え隠れしていた



「大丈夫...きっと、大丈夫」


これはルーナにではなく、自分に言い聞かせている言葉


魔物というカグヤにとってトラウマ的な存在だ


現在アレウスとの契約によって手に入れた腕輪によって封印されているカグヤの持つユニークスキル「絶対魅了(チャームフェロモン)」は、かつて幼きカグヤの意志とは関係なく発動し、多くの魔物を引き寄せた


そしてその事によって多くの命が失われてしまった


これがカグヤがもつトラウマ、今でもカグヤは魔物に対して恐怖心を抱いている


アレウスに自由を与えられた後、魔物と戦う機会はあった

だがそれは大抵はアレウスがいたり、ミラやカトレアといった仲間がいる時だ


そして今はカグヤ一人、ルーナという守るべき大きな存在もいる


トラウマなどと言ってられない、魔物が怖いと言ってられない


目の前に少女を守るため、そしてアレウスや仲間のために戦うためにこの恐怖を消さなければならないとカグヤは決意する



「なにか来る...」


カグヤは腕を構える


自分が発生させた霧は視界不良にさせる以外にも睡眠効果などもつけていた


だかその睡眠効果を無視して何かがこちらやって来る


ドスン、ドスンと大きな足音をたてている


カグヤはその足音から敵の大きさに警戒をする



そして霧をのけて現れる



『ウモォォォォォォォォォ!!!』


現れた怪物は巨大な体躯に太い腕、そして短い足


「トロール...」


カグヤのその見た目で一瞬で判断をする

トロールを見たのは初めてだが自分が今まで読んできた物語に出てくるトロールの見た目と完全に一致していた


数は今見える所で3体ほど、足音から判断するに霧で見えないが最低でもあと4体ほどいるとカグヤは判断する


そして肩付近には赤い紋章があった


「やはりこの魔物も...」


聖教国で遭遇したすべての魔物に付いている赤い紋章


これはアレウスが言っていたディストラーダという魔女によって魔物に変えられた者についてるものであった


治す方法はあるにはあるが全てを治すことは不可能であり、治すことが出来るのはアレウスのみ


なのでカグヤができる最善のことは安らかに眠らせることだけだ


「多分身体が大きくて催眠ガスが身体にまわってないんだ...」


カグヤは霧の催眠効果がうまく効いてない原因を的確に分析する


そしてカグヤの出した答えに加え、トロールのような魔物は脳みそが小さく種族繁栄の生殖本能、または快楽的な破壊本能しかないのでカグヤの霧魔法の効果が出なかったのである


自分の心を叱咤し、トロールに立ち向かう



焔炎槍(ホムラ)!!」


カグヤはカトレアに作ってもらった魔力増大装置としての役割を持つ扇子を広げて、炎の槍を生み出し一体トロールに向けて放つ


1本な巨大な炎の槍が一体のトロールを貫き、焼き尽くす


さらちカグヤは舞うように扇子を振り、新たに炎の槍を生み出してはトロールを貫いていく


そして最後のトロールたちが霧の中から現れる

現れたのは3体



『ウモォォォォォォ!!』



腹から出した唸り声をあげてカグヤに向けて走り出し、その巨腕を振り上げ叩けきつける


だがその棍棒のように奮った拳はカグヤまでは届かない


3体のトロールに囲まれたカグヤはただ扇子をたたみ、佇んでいるのみ


カグヤとトロールたちの間に何か見えない壁があるようにトロールはカグヤに触れることは出来ない、と3体のトロールは感じていたいただろう


実際にはそんなことを考える頭脳すらあるかも怪しいところだが、トロールたちは本能的に不思議に思う


カグヤは障壁のように厚さの薄い結界を自分の目に前にはり、盾していた


ただそれだけのこと。そして結界を維持したまま再び扇子を開き──



鳳仙花(ホウセンカ)!!」


カグヤから一対の炎の翼が現れ、翼がカグヤを囲んでいたトロールたちを消滅させる



カグヤの周りには炭とかした燃え焦げたトロールの死体のみが残る



「ふぅ......」



カグヤは安心したように一息をついて、自分を囲んでいた結界を解除する



そして離れてカグヤの様子を見ていたルーナの元まで行き、結界を解除する



「ルーナちゃんに危険がないように気をつけていたんだけど...大丈夫だった?」

「はい、私には何も...カグヤさんは大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ、あれくらいなら大したことはないよ」


カグヤはルーナを安心させるために笑顔で答える


「カグヤさん、私はもう大丈夫ですから...行きましょう」

「わかった、じゃあ急いで行こうか」



2人は居住区へ向けて駆け出していき

そして居住区の目の前までたどり着く



だが居住区の大きな入口の前に何者かが立っていた




「あらあら...やっとここにも来ましたか」


黒いドレスを着た紫髪の女──


カグヤはその女の特徴を見て、すぐに誰であると理解する



「ディストラーダ...!!」

「私の名前を知っているみたいですわね...あなたは金髪の狐の獣人...カグヤ、.....それに、なんと聖女様生きていらしてましたの」


ディストラーダはカグヤの名前を言い当て、ルーナの姿を見て驚ろく


カグヤの特徴はシルから聞いていた

そしてルーナはアレウスに殺されたと報告があった


ディストラーダは2人の見て、妖艶に唇を舐める


「ふふ...なんて美味しそうなの、はやく食べてしまいたい」


ディストラーダが持っている能力の一つ「魂之還元(ソウルサクリファイス)」は、対象者の生命力を喰らい、自分の力にする能力


ディストラーダの瞳には2人は美味しい捕食対象に見えていた


ルーナはずっと目にかけていた、だが喰らって殺してしまえば洗脳をかけていたとしても怪しまれる。だから喰らうことはなかった

そして死んだと報告をうけて落胆していた

だから目の前に再び姿を現したことに歓喜していた


だがルーナ以上にカグヤを見て、さらに歓喜する


既にアレウス・アーレンハルトが攻めに来た時点でディストラーダを含む直属の配下たちは自由に行動をすることを許されていた


だからディストラーダは教皇がいる居住区の前で餌となる敵を待ち構えていた


そして餌を現れた


その餌の1人の狐の獣人はこの世で最も綺麗であるといっても過言でないほどの美貌の持ち主


ディストラーダにとって生命力とは美しさであり、カグヤのような美貌を喰らえば自身の能力でその美貌を自分ものに出来ると考えた


だからこそディストラーダは歓喜していた


ディストラーダにとってジャンヌよりもシルよりもカグヤは美味しそうに見えていた




「ルーナちゃん、下がっていて」

「カグヤさん...」

「大丈夫...あの人は、絶対に私が必ず倒すから」


ルーナはカグヤの言葉に従いカグヤから離れ巻き込まれないようにする

そしてカグヤはルーナを守るために再びルーナの周りには結界をはる


結界をはりおえたカグヤはディストラーダの方を向き、扇子を構える



「あぁなんていい表情...はやく食べたいですわ」

「人を魔物に変えるなど絶対に許せない...」


ディストラーダは恍惚した表情を、カグヤは真剣な表情を...2人は真反対な表情で互いを睨む



そしてカグヤから先に仕掛ける


カグヤはディストラーダに気づかれぬように霧魔法を発動し、幻覚を見せる


既にディストラーダは現実世界を見ていることない、とカグヤは判断し「焔炎槍」を放った



だがカグヤの判断は間違っていた

ディストラーダは炎の槍を綺麗に避ける


それはマグレではなかった、ディストラーダは確実にカグヤが放った魔法を目で捉えて避けていた



「あなた、話に聞いているとおり幻覚を得意としているようですわね。ふふふ、でも残念。私には幻覚は効きませんわ」

「幻覚が効かない...?」

「そうですわね...私の洗脳系の能力はご存知で?私はその能力を自分にかける...そして一種の自己暗示状態にしているから幻覚が効かないんですわ」

「自己暗示状態...」


洗脳もいわば、幻覚を見せているようなものであるため。カグヤの幻覚を見ることは無い

ディストラーダは常に自己に洗脳をかけて自己を保ち続けることが出来る


「さて...美しいあなたの得意技を塞がれましたが...大人しく食べられる覚悟は出来ましたか?」

「私の得意技は幻覚だけじゃない...!!」


カグヤは扇子を開き、炎の鳥を生み出す


現れた炎の鳥は甲高い鳴き声をあげ、ディストラーダに向けて突撃する


ディストラーダは余裕の表情を崩さず、パチンと指を鳴らす


ドスンッ!!と空から二つの岩のような巨大な物体がディストラーダを守るように飛び降りてきて、炎の鳥を受け止める


炎の鳥は激突とともに巨大な炎をあげて爆発をする


そして煙をあげて黒い煙をあげながら、現れた二つの壁は動き出す



「ふふふ...紹介しますわね、これは私のお気に入りのキングトロール、名前はアルとエル...元はもっとハンサムな双子の王子様だったのだけど...今はちょうどいい壁といった感じですわね」


カグヤがさっきの倒したトロールよりも巨大なキングトロール、その首元にもはっきりと呪印が存在していた



そしてキングトロールとは別にディストラーダの後ろの影から一体の獅子が現れる



「それで、この子はカイザーレオ、名前はゲラルト...元はとある国の騎士団長、...百年前から私のいい護衛役ですわ。獣になっても私を慕ってくれるなんて...いいペットだと思いません?」


ディストラーダは獅子の頭を撫でながら楽しそうに笑う


3体ともディストラーダが喰らい魔物と変えた者達だ

魔物変えた張本人であるディストラーダには魔物達の使役権が存在する


大抵はアンデッドになるが、時折強い魔物に変化することがある

そうして生まれた魔物たちをディストラーダは自分の配下として操っていた


カグヤがいままで倒してきた魔物達もその1匹であった



「さぁこの子達相手にどれくらい耐えられますか?私としては...なるべく傷がない状態で食したいので諦めてほしいとこなんですが、」


ディストラーダはカグヤが持っている扇子とは異なった、鳥の羽が使われた貴婦人が使うような扇子を広げながら言う


カグヤは無言で再び扇子を構える


それはディストラーダの提案に対する、拒否を意味する


「ふん、まぁいいですわ。結果的に食べれさえすればいいのだし...お前達、やりなさい」


ディストラーダは2体のキングトロールと1匹のカイザーレオにカグヤを襲うように命令する


3体の魔物はディストラーダの命令に従い行動する


まずはキングトロールよりも速いカイザーレオがカグヤにむけてその牙を剥く


「くっ──!!」



決して近接戦闘が得意でないカグヤはギリギリのタイミングで結界をはりカイザーレオの攻撃を防ぐ


だがその瞬間に──



『ウモ、ウモモォォ!!』


ドスンドスンと巨大な足音を鳴らして接近してきた2体のキングトロールの一撃がカグヤの防御結界をやすやすと破壊する


運良くその起きな拳はカグヤに当たることは無かったが、その衝撃にカグヤは吹き飛ばされる



地面を転がったカグヤはすぐさま立ち上がり、魔法を放つ



火之迦具槌(ヒノカグヅチ)!!」



キングトロールよりも巨大な炎の巨腕がキングトロールたちを襲う


巨大な衝撃音が鳴り響く、炎の腕は爆散する



『ウモモ、ウモォ...』


火之迦具槌を受けた一体のキングトロールはよろめくが致命傷にいたることはなかった


プスプスと焦げながらも、態勢を立て直す


「火之迦具槌でもダメなの...」


鳳仙花の火の鳥は直撃しても無傷でいるくらい頑丈なのはわかっていた

だがまさか自分が使う技の中でも高い威力を誇る技を受けても致命傷にいたることがないことに驚きを隠せないでいた



「やっぱり大したことはあまりせんわね...まぁ大事なのは強さではありませんし、いいんですけど」


カグヤの戦いをまるで観客のような眺めていたディストラーダは自分の爪を見ながら呟く


「それよりはやく食べたいですし...そうですわね、アルとエルはそちらの獣人を、ゲラルトは聖女様の方をどうにかしなさい」


ディストラーダの新たな命令がくだる



キングトロールの双子、アルとエルは吹き飛んだカグヤに向かい


カイザーレオのゲラルトは結界の中にいるルーナの方へ向かおうとする


「ダメ!!」



カグヤはルーナの元に向かおうとするが、2体の巨大な壁がカグヤの前に立ちふさがる



「どいてください!!」



カグヤは再び火之迦具槌を放つが、1度に放つことが出来るのは1発のみ


片方をよろめかすことが出来ても、もう一方をどうにかすることが出来ない


カグヤがキングトロールを相手している間にもカイザーレオのゲラルトの牙はルーナを守る結界を壊そうとしていた



カグヤが結界を解除すればルーナは逃げることが出来る、だが解除すればすぐに捕まることになる

だからカグヤがはった結界がカイザーレオの牙に勝つことしかルーナを守る方法はなかった


だが無情にも結界を軋みをあげていた



「だめ!!」



カグヤは慌てて新たな結界を重ねるようにかけてルーナを守ろうとする


1枚がやぶられる前に新たな1枚の結界をはる



「アル、エル!!獣人の相手をしっかりしなさい!!」



ディストラーダの叱咤がとび、双子のキングトロールはカグヤをより激しく攻めたてる


「くっ──!!」


カグヤはその激しい攻撃により、ルーナを守るための新たな結界を作ることが出来なくなる


このままではルーナを失うことになる、自分が守ると決めたのに──


そんな焦りがカグヤの心を埋め尽くす


そして最後の1枚にカイザーレオの牙が突き刺さる


結界は歪み今にも壊れそうになる



「だめぇぇぇぇ!!!」


カグヤは地面に手をつき、2体のキングトロールを押し上げるように結界を生み出し転ばせ、自分はルーナを守るために駆け出す



そして最後の1枚が割れる



「っ──う、ぁ、ぁぁぁ──!!」


叫びにならない叫び声があがる


その声はルーナではなく──


「カグヤさん...」



ルーナが目を開けたら、ルーナをかばうようにカグヤがいた


その左腕はカイザーレオの牙が突き刺さり、血を流していた


ルーナの元へ駆け出したカグヤはギリギリのところで間に合っていた。そしてルーナをかばうために自分の左腕を犠牲とした


「ゲラルト!!なにをしているの!!」



ディストラーダは慌てて、カイザーレオの噛みつきをやめさせる


それはカグヤをある意味心配してのことであるが、すべては自分のためである


自分が食す前に料理がボロボロになってしまったら元も子もないからだ


「カグヤさん!!カグヤさん!!」


ルーナは左を抑え、蹲るカグヤに必死に声をかける


「大丈夫...ルーナちゃん、私が守るから...」


カグヤは無理やり笑顔を作ってルーナに答える


「はぁ......はぁ......!!(どうにかしないと...)」


カグヤは噛まれて大量に出血している腕を抑えながら考える



「まったく困った子だわ...」



ディストラーダはカイザーレオがカグヤをかなり損傷させてしまったことにウンザリとする



そして3体の魔物を引き連れてカグヤとルーナの元へと近づいていく




「......(どうにかしないと...あの魔女を倒すには...もうあれしかない...)」


カグヤは近づいてくるディストラーダの姿を見て、考える



「もう怯えている私でいるわけにもいかない...」



カグヤはそっと呟き覚悟を決める



そして最愛の人からもらった腕輪をそっと外す



「なにを呟いているのですか?」

「あなたには...関係のないこと、ですよ」


カグヤはよろよろと立ち上がり、ディストラーダを睨む



「関係のあることですわ...そんな覚悟を決めた表情...ふふふ、食べるのが本当に楽しみ、」


ディストラーダは指で自分の唇をなぞり妖艶に笑う



「カグヤさん...」

「大丈夫、ルーナちゃん。私はもう負けないから...」


カグヤは今度は無理やり作った笑顔ではなく、心からの笑顔で笑う


噛まれた腕が痛む、だが今のカグヤにはそんなことは関係なかった


「私は負けない...なんという強く美しい魂...はぁ...もう我慢できっ───!!ごはっ!!」



突如ディストラーダの視界が急に変化し、ディストラーダは壁に叩きつけられていた


ディストラーダは何が起こったか分からないでいた。急になにかに殴られたような感覚におちいったあと気づいたら壁に叩きつけられていた


だがそんな存在は自分の周りには存在しなかった

そんなことを出来るのは自分の味方である魔物達くらい


ディストラーダは頭をあげると信じられない光景が目に映る


なんとキングトロールの一体、アルが殴ったあとのように拳を突き出していたのだ


ディストラーダの頭は混乱する

何が起こったのか全く理解ができていない

いや、理解は出来ているが有り得ないとしか言えない現実を受け入れることが出来なかった


なぜ自分が使役する魔物に殴られたのかまったく理解ができなかった


「お前達!!こっちに来なさい!!」


ディストラーダはそう叫ぶが3体の魔物はピクリとも動かない


「どうしたのお前達!!私の言うことがきけないっていうことですの!!」


ディストラーダは必死に叫ぶが、3体の魔物はやはりディストラーダの声を無視する



そして代わりにカグヤの声が返ってくる



「無駄です、もうこの魔物達はあなたの言うことはきくことはない」


ディストラーダにとっては信じられない発言をカグヤはする



「そんなことはありえないですわ!!その3体にも私と同様に幻覚が聞かないように強力な洗脳を!!」


ディストラーダはひっしにまくりたてる


「残念ですが、この魔物達に幻覚は見せていません」

「どういうことですの...?」



何がなんだがわからないディストラーダの鼻が何から甘い匂いを感じ取る



「私はこの力をずっと恐れてきました...アレウス様から助けられたあの日もそして自由になった間もずっと...」


カグヤは取り外した腕輪を見る

その腕輪はカグヤの「絶対魅力(チャームフェロモン)」を封印するための腕輪


そしてその腕輪は取り外されている、すなわち封印が解かれていて「絶対魅力(チャームフェロモン)」が発動されていることを意味する



だが今はカグヤの無意識的に使用している訳では無い、その能力はカグヤの意思の元カグヤの意のままに発動されている


カグヤの放つ誘惑の因子が魔物たちを操る


これが本来の「絶対魅力(チャームフェロモン)」の能力

自身から放たれる誘惑因子をあやつり、対象者を使役する能力だ



幼き日のカグヤは能力をコントロール出来ず、魔物をただ引き寄せるだけになっていた


そして王都の動乱の際は長年無理やり封印していたがために力が暴走し魔物を引き寄せてしまった



カグヤは二度の経験により能力は自分の意志とは無関係に発動するものだと思っていた

だがそれはアレウスとカトレアにより間違いだと教えられることになった


アレウスが「鑑定」の能力により本来の能力を知り、そしてカトレアが論理的な面でそれを立証した


カグヤは二人の言葉を信じたが、自分を信じることが出来ず腕輪を外すようなことは出来なかった


能力がコントロール出来ず暴走してしまったら、と思うと怖くて外すことが出来なかった

幼き日のトラウマがカグヤに腕輪を外すことを拒ませていた


勇気を出して外してみよう、自分の力と向き合おうと勇気を出して挑戦してみようということはこれまでにも何度かあった


だが怖くて出来なかった、腕輪を外そうとすると手が震え頭が真っ白になった



「だけど今は違う!!私はもう負けない、守りたいものがあって取り戻したい家族がいる...そのためだったら私はどんな恐怖にも打ち勝ちます!!」



カグヤは堂々と言い放つ


その表情は憑き物が取れたかのようにスッキリし、覚悟に満ちた表情していた




「獣人の分際でぇ......!!」



ディストラーダの自分の配下を奪われ、自分を傷つけたことに憤怒する


ディストラーダは決して弱い訳では無い、ステータス的に言えばミラやカトレアを上回る


ただ自分で戦いたくないから、自分の手を汚したくないから戦っていなかっただけの事であった



「死になさいっ!!」



ディストラーダは強く踏み込んだ後、カグヤの胸を手動で貫く


あっけなく攻撃ができたことに驚くが、やはり大したことはなかった、とディストラーダは考える


だがその考えはすぐに消え去る


胸を貫かれたカグヤはドロドロと熱せられた蝋のように溶けだしたのだ


そしてカグヤだけでなく、ルーナも周りにいた3体の魔物達もドロドロと溶けだして消えていった


「なに!?何が起こっているのですの!?」


ディストラーダは目の前で起こった異様な光景に恐怖を覚える


「あなたはもう私の誘惑に負けたんです」



どこならともなくカグヤの声がひびきわたる



「まさかこれは...幻覚...?でも私には効かないはず...!!」


ディストラーダは自分自身に洗脳をかけているため幻覚を受けることなどはない、そう考えていた



「これは霧魔法による幻覚ではありません...私の能力「絶対魅力(チャームフェロモン)」による力...本来は対象者を使役する能力ですが、私の霧魔法と合わせることによりさらに強力な幻覚を見せるんです」

「ありえない...!!どうして私が...!!」

「別にわからなくてもかまいません、あなたはただ、自分がしてきたことを自分で受けるだけなのですから」

「なにをいって......なんですって...」


ディストラーダは声を失う


ディストラーダの目の前にもう一人ディストラーダが現れたのだ



「どうして...私が...体が動かない...?」


金縛りを受けたようにディストラーダの体が動かなくなる


そしてディストラーダはカグヤの言葉を思い出す


カグヤは言った「自分がしてきたことを自分で受ける」と


ディストラーダはその意味をすぐに理解した



「嫌だ!!私に...私に近づかないで...!!」


現れた幻覚のディストラーダは妖艶な笑みでディストラーダに近づいていく


その笑みはいつも自分がうかべている笑み

だが今のディストラーダにはただ恐怖でしかなかった


逃げようとするが体の自由が効かない


そして近づいてきたもう1人の自分が、自分がいつもしてたように自分の首に噛みつき生命力を吸い出す


ディストラーダは何かをゴッソリと失ったような感覚に陥る


生命力を吸い終わったもう1人の自分は満足そうな笑みを浮かべて消え去っていた



「うそ...やめて...いやだ...助けて...寒い...気持ち悪い...」


自由を失った体がガチガチと震えだす


そして自分が何かに変わっていく様な感覚におちいる



「ダメ、いやだ...そんな...!!」



そして段々と自分の身体は腐り始める


肉がこぼれ、水分を失った肌はボロボロと崩れていく


「いやだ、うそ...いやいやいやいや、いやぁぁっ───!!」



ディストラーダはどんどんとアンデッド化していく自分の身体に耐えきれなくなりついに叫んだ












カグヤはミイラのようにボロボロとなったディストラーダの死体を見つめる


幻覚を見て発狂したディストラーダは心臓発作におちいり絶命した

能力が消えたディストラーダの身体はこれまで奪い続けた全ての生命力を失い、本来あるべき姿に戻ったのだ


そしてディストラーダが死んだと同時にディストラーダの能力によって魔物にされた3体の魔物も倒れこの世を去った




「これはあなたが受けるべき報いです、あなたはそれを何人もの人間にしてきた...」


カグヤはディストラーダの亡骸に向かったそっと呟き、ディストラーダの死体を燃やしたのだった


お読みいただきありがとうございます


これでアレウスVSジャンヌに移れます

教皇様の保護はあとでちょこちょこっと回収するんでよろしくお願いします

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