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処刑

よろしくお願いします

ついに俺の処刑の日が来た



「目覚めていたか、アレウス・アーレンハルト」

「あぁ?......ジャンヌか」


顔をあげるとそこにはジャンヌの姿があった


「大人しくしていたのは評価するぞ、もし暴れていたとしたらお前にではなく、お前の周りに被害が出て......なんだその目は?」

「あ?あぁすまんな、お前も落ちるところまで落ちたもんだと思ってな、何が「聖教国の戦女神(ヴァルキリー)」だよ、笑わせてくれるな」

「貴様!!」

「うっ!!ぐっ...!あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!...ぜぇ...!ぜぇ...!クソが...」



ジャンヌの野郎は容赦なく俺を火魔法で焼きやがった


自分の身体から黒い煙があがる


既にボロボロだった俺に着せられていた服は今はジャンヌの火炎で完全に灰になってしまっていた



「......そろそろ処刑の時間だ。これを着ろ、裸のまま民衆の前に出すわけにはいかない」


ジャンヌはそう言って罪人が着るためのボロボロの装束を俺に投げてくる



「こりゃ御丁寧にありがとうございます...」


俺は形だけ縛った状態しておいた鎖を引きちぎって投げ渡された装束を着る


生地が粗いから傷にくるな...


こういう時にエリーナがうるさ...あれ?いないな


まぁいいや、うるさくないだけいいだろう



「やはり壊されていたか...仕方ない「封鎖(グレイプニール)」...立て、ついてこい」



ジャンヌは再び鎖を召喚し、俺に巻き付け牢屋の扉を開いて俺を立ち上がらせる


そして牢屋部屋の長い廊下を歩き俺は久しぶりに地面より上に空間に出る


地下牢まではジャンヌが1人で俺を連れていたが、地下牢から出ると聖騎士たちが俺を囲むように並び同伴してくる


久しぶりの地上だが日の目を見ることは出来なかった。近くに窓から見たが雨が降っていた


身体に染みるだろうなぁ...俺の身体傷だらけだし、さっきの火炎のせいで火傷もひどいし



俺は中心にゾロゾロと王城の廊下を歩く...まるで俺は罪人...いや、罪人として扱われてるから罪人なのか


廊下を歩き続け──



「......見つけた」


俺は魔力を一気に高め鎖を引きちぎる


「何をする!!」

「捕らえろ!!」

「遅いんだよ、くそどもが!!」


俺を取り押さえてようとしてくる聖騎士たちを殴り飛ばし


視界に捉え続けたある人物の所まで転移をする



「見つけた...やっと、見つけたぞ」


俺はそいつの首を絞める


「ぐ...かはっ...!お、お兄様...?」

「俺をお兄様なんて呼ぶんじゃない、俺はテメェのせいでこうなったんだよ、くだらない嘘のせいでなルーナ」



俺は指の力を込めていくとルーナの首がゴキゴキと不吉な音を鳴らしていく



そして──



「とりあえず死ね」



ゴキャッ!!と1番大きな音をたててルーナの身体から力が抜ける



「アレウス・アーレンハルト!!貴様ぁ!!」


何が起こったかわからないと言った表情をしていたジャンヌが憤怒の感情を表した表情をして俺に突っ込んでくる


「文句あるのか?あぁ?だったらこんな事までしてやるぞ」



俺は魔力を高め掴んでいたルーナの死体に電撃で焼け焦がす


そして高電圧にやられたルーナの死体は黒い塊となり既に死体かどうかも判断出来ない程になってしまう



「ゴミめ」


俺はそのただの黒い塊を近くに壁に投げ捨てる


グチャと音を立てて壁にあたり地面に落ちる死体



「アレウス・アーレンハルトォォォ!!」


ジャンヌが剣を抜いて俺の方へと飛びかかってくる



「......いいのか?ここで俺を殺してよ。どうせ処刑の時間だろ、そこで殺せよ。な?」

「くっ...このグズがっ......!!」



剣先は俺の喉元まで来るがそれ以上前には来ない



俺は言葉を返すかわりに笑みを返してやろう


ジャンヌは悔しげな表情をしながらも剣をしまい──


「このっ──!!」

「ごふっ...!!」


俺の頬を力いっぱい殴る



「お前達...聖女様の...遺体を運べ。この男は私ひとりで見る」

「で、ですが」

「いいから早く動け!!聖女様をあのままにできるわけがないだろうが!!」



ジャンヌの怒号が響き渡り、聖騎士たちは慌てて動き始める



そして再び鎖を召喚し、俺を縛り上げたジャンヌは......



「これ以上私を怒らせるんじゃない、次なにかしたら...殺してやる」



俺は何も答えなかった


ジャンヌの殺気の強さにこれ以上何かを口にするのは良くないと本能的に察したからだ









「登れ」



ジャンヌは短く俺にそう言う


俺は黙って処刑台へと続く階段を登っていく



そして頂上にたどり着けば、俺の処刑を見に来た民衆の顔が一望できた


みな恐怖という感情の色を見せていた


やはり自分では計り知れない力を持ったものに対しては人間恐怖を抱くものだ


もちろん自分たちを守ってくれるものならば安心を感じる


だか、目の前にいる俺はどうだ?


民衆の目には自分に害を与える危険な存在だ


だかれ恐怖をする、そして中には恐怖を通り越して憎悪を持つものが出でくる


恐怖から憎悪へと感情を昇華させる人間の数は徐々に徐々に増えていく


すべて俺に当てられた感情だ




「そこに跪け」


ジャンヌはただ淡々と、そして冷徹に命令する。俺ははジャンヌを一瞥だけして膝をつく




こんな雨の中よく来るな、まったく..


自分の置かれている状況に笑いながら、観衆を眺める


右を眺めてみれば、各国の長がこちらを見ている。もちろんその中にはイリヤ王国の者達も、カイゼル陛下、アレックス王子、ステフ......



「......おいジャンヌ、クリスはどこにいる」

「クリスティーナ王女殿下のこと?それは知らない、行方不明だと聞いている」

「おい、俺以外のやつに手を出しさたら殺すぞ」

「黙りなさい、その無様な姿で言えたものね」

「いっ─ぐぁぁぁぁぁぁ!!」


ジャンヌの抜いた細剣が俺の右腕を切り落とす


「貴様には自由に発言する権利はないことを教えおく」

「ぜぇ...ぜぇ...ちっ...」



俺は荒く息をたて、自分の切り落とされた右腕を睨みつける。流れる血が雨水によって流され血の川をえがく


俺は切り口を通して焼けるような痛みを感じ、顔をしかめる


毒かなんかか?俺には効かないはずだが...またジャンヌのとんでも神器のせいか、くそ...治癒神の加護がなかったら即死のだったかもな...しかしクリスの野郎は行方不明、一体どこに..


「殺せぇ!!」「俺たちを騙したんだぁ!」

「英雄なんて名乗りやがって!!」


そんな怒号が聞こえ始める


お前らが勝手に英雄って呼んだんだろと呟きたくなるが、下手に呟いてジャンヌにまたどこか斬られるのは嫌なので黙り続ける


「無様なものだな、一瞬で英雄から国の、いや、大陸すべての人間の嫌われ者だ」

「......なに、喋っていいの?...そうだな、わかってはいたが、きついもんだな」


だかこればかりは仕方がない、俺自身が選んだこと、すべてを考慮しての決断、これが最善の手だからだ



「...おい、約束通り俺以外には手を出すな、わかってるな?」

「わかっている、貴様以外の者は貴様に騙された、いわば被害者なのだから」

「その言葉はどっかの勇者様を思い出すな」



心の中で「まさかジャンヌが言うとは思ってもなかったが」と付け足しておく、そして勇者になった奴らはみんなこうなるのか?と苦笑した


「これ以上の無駄話はやめておこう、刑にうつるぞ」




そう言ってジャンヌが細剣を天に掲げる



「今から刑を執行する!!」


はっきりとした声でジャンヌはそう宣言する



「なにか言い残すことはないか?」

「そうだな...俺の首を斬り落とすんだったら、覚悟するんだな......後悔させてやるぞ」

「この期に及んで、敵意をむき出しにするか。ここでに貴様が暴れてもいいが、そうすれば貴様の大切なものに矛先が向く...わかってるな?」

「んなことわかってるよ...だから俺はここにいる」

「ただの負け惜しみか、」

「そう思ってくれればかまわない」

「そうか...その無駄口をやめさせるためにすぐに刑を執行しよう」


ゆっくりとジャンヌは細剣を構える、そしてそれに合わせて俺は覚悟を決めて目を閉じる


轟く雷鳴、その場にいるすべての人間がいつ細剣が振り下ろされるのかと待ちわびる



「この聖剣「エクスカリバー」をあじわうといい」

「え、なに?それがエクサカリ──」


ジャンヌはエクスカリバーを振り首を切り落としたことによってアレウスの言葉を遮られる、そしてもう新たに言葉が紡がれるのとはない



「最後まで忌々しいやつだ、アレウス・アーレンハルト......いや、魔神アレウス」


英雄から魔神へと堕ちた男の命はここで幕を閉じた──





死体の首は処刑台から下へと落ちる

地面に激突した音は雨音によって消されるが、綺麗な顔のままではないのは容易に想像ができる



斬られた首元からは滝のように血が流れる


流れる落ちる血は雨水に流され、一つの大河のようにひとまとまりに流れる


それはどこか幻想的なものに感じさせるほど、綺麗な河を描く



そして、その河のほとりは処刑を見守る各国の首脳陣たちがいるテントの近くだった


1人の女性がその河を見つめ呟く──



「アレ......ウス......?」


まるでずっとぼやけていたかのように視界がひらかれていく

そして赤い血の河に魅入られたかのように覚束無い足取りで、降りしきる雨など気にせずにテントの外から出る



「ステフ...どうしたんだい、濡れるだろう?」


ミカエルが声をかけるがステファニアは無視して、その視線は河を辿り続ける


そして河の源泉を見つけた後、その不自然さに気づく



「うそ...アレウス...」



声を震わせ首のない死体を見つめる


そして恐る恐る下を見るステファニア──




「アレウス...そんな...アレウス!!」




ステフは駆け出し、地面に転がる死体の首を抱きしめる



自分が雨に濡れることを厭わずに、自分がその首から流れる血で汚れることを厭わず



そしてその瞬間に全てを思い出す──



「ごめんなさいアレウス...!(わたくし)はなんてことを...!どうしてあんなことを...!」



自分が自分ではなくなってしまったから今まで全てのことを思い出す


まるで演劇を見ているのかような不思議な感覚で自分の今までの行動を思い出す




「ステフ、そんな汚いものは触らない方が─」

「私に触らないでくださいましっ!!アレウスが汚いですって!?そんなとこあるわけありませんわ!!」


近づいてきた手を払い除け、ステファニアはミカエルを睨みつけてそう叫ぶ




「私のしてきたことの方が...ずっと...ずっと醜くて、汚くて...ごめんなさい、アレウス.....」



ステファニアは再び死体の首を強く抱きしめる





生首を抱きしめるという異様な光景に誰もが釘付けになっていた


おかしいことであるのに、信じられないことであるのに


まるで、おとぎ話のような名誉の死を遂げた英雄とそれを悲しむお姫様の一幕を見ているかのような感覚さえしていた



その場にいた全ての人がその光景から目を離すことができなかった




そしてその光景を王都の屋根から見つめ続ける影もあった──

お読みいただきありがとうございます


ゴリ押しでステフの洗脳を解除させて頂きました



ちょっとした予告ですが、この章が終わったら「ようこそ、理想郷へ」の改稿版を作るのでしばらく休止させてもらいます、年内には書き上げられるように頑張りますのでよろしくお願いします

そして、改稿版が出るまではあまり時間の取れない「Trigger of desire」を掲載しようと思っています


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