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味方なし

よろしくお願いします

─アーレンハルト邸─



カトレアは鼻歌混じりに屋敷の廊下を歩く



「あら、カトレアお帰りなさい」

「うん、ただいま〜、雨降ってきそうだったから帰ってきたわ」

「そうね、私も今慌てて洗濯物をしまってきたところよ」


ちょうど廊下で出会ったミラは籠いっぱいに洗濯物をいれて、歩いているところだった


「私も手伝うわ、どこまで運ぶの?」

「ありがと、じゃあ私の部屋までだからついてきて」

「りょーかい...って重いわね」



籠を受け取ったカトレアがついそんなことを言ってしまう


対するミラは「そうかしら?」みたいな顔をしてから、「じゃあ行くわよ」と言って自分の部屋まで向かおうとする


カトレアは改めてミラと華奢な体格からは想像出来ない馬鹿力に驚きつつミラの後を追う




「今日はカグヤは学校の方だったかしら?」

「えぇ、今日は自分が教える授業のある日だって言って朝出てったわよ」

「いいわねぇ、私も教師してみたい」

「カトレアは感覚的すぎて教えるのに向いてないのよ」

「それアレウスにも言われたわ......」



実際カトレアは「ここはこんな感じでこうよ」と実に感覚的な教え方をするのだ


理論的にも教えるのは可能だが、それはそれで理論的に説明しすぎて理解するのが難しいのだ


理解できる人間は、カトレアの弟子であるアリスのようなカトレアと同様な天才肌の人間のみくらいである



そして洗濯物をミラの部屋まで運び、ついでにということで2人で洗濯物をたたみ始める



「これはカグヤのスカート.........え、なにこの下着...」


スカートをたたみ、次にとった下着を手に取ってみれば、隠すべきとこがどう見ても隠すことの出来ない切れ目が入った下着であった



「ねぇミラ、この下着誰の?」

「下着?あ、それ私のよ。ご主人様との夜用の」

「あんた、こんなのつけてたのね」

「それ着るとご主人様喜ぶのよ」

「なるほど...」



カトレアは下着の両端をつまんで広げて、下着をしっかり見ながら「私も試してみようかしら」と考える



「......(しかしこういうことはミラの方が私なんかより何枚も上手なのよねぇ...)」


親友であり、ある意味ライバルとも言えるミラにカトレアは関心をする



「...私も負けてられないわね」

「??何か言った?」

「ただの独り言よ...よしっ、これで全部たたみ終わったわ」

「私もちょうど終わったわ...時間もいいことだし、お茶にする?」

「それがいいわ。あ、私はコーヒーでお願いね」



2人は廊下を歩いて、ダイニングへと向かう


そしてミラはそのまま紅茶とコーヒーをいれるためにキッチンへと向かう



「さてさて、飲み終わったら何をしましょうかねぇ...天気が天気だし、あんまり外は出歩きたくないのよねぇ」



カトレアはまどの外に見える、黒く厚い雲を見ながらそんなことを呟いていると──



「きゃっ!!」



キッチンの方から、何かが割れる音と共にミラの小さな悲鳴が聞こえてくる



「なになにどうしたの?ゴキでも出たの?」


何事かと気になったカトレアはキッチンとダイニングをつなげる、扉から顔をひょっこり出す


そしてそこを見てみれば──


「あぁどうしよう...私とご主人様のおそろいのカップが......」

「いや、それ私もお揃いだから」



世界の終わりにでも直面するかのように割れたカップを見つめるミラにカトレアは冷静に突っ込む


さらに正確に言えば、カグヤもシルもお揃いである


「割れたのは1個だけ?」

「えぇ、ご主人様用のが...」

「ほんとだ、アレウスのやつじゃない」



ミラがカトレア用のを取り出す時に一旦外に出しておいたアレウス用のカップが机の上でパックリと綺麗に割れていた


「うぅ...私とご主人様の思い出のカップが...」

「いや、だから私たちもお揃いだって......はぁ、しかしアレウスのだけがねぇ...」


カトレアは再び窓の外を眺めて


「不吉なことでも起きなきゃいいけど、あいつのことだから余計心配になるわ」



カトレアは嘆息をしながら、そう呟いた






ー同時刻・大陸会議本会議中ー


「アレウス・アーレンハルト、貴様が魔神であることは既にわかっている」

「.........なんだと?」



俺は、俺を指さしてくるルヨナ猊下...いや、ルヨナを睨みつける


そして俺以外の者は騒然としていた


落ち着いてるのは聖教国サイドのルヨナ、そしてジャンヌのみ


ジャンヌの野郎はどうしてそんなに落ち着いていられるんだ?.........くそ、あいつもあっち側の人間か、俺に対するあの態度もそれで納得がつく


一体何が起こってんだ?神からのお告げで俺が魔神だと言っていたのか?


おい、くそ女神、どうなってんだ


(く、くそ女神って......まぁ今は非常事態です、置いときましょう。すいません、詳しい話がわからないと...ですが、完全に向こうが言ってることは嘘なのは確実です、リリアーナがそんなことを言うはずがありません。さっきも言いましたが天啓システムというのはよっぽどのことがない限り発動されません、嘘をつけば天界規約に反しますし......あぁすいません、私も考えがまとまりません!!ちょっと調べに天界の方まで顔だしてきますね!!それじゃっ!!)



あ、おいちょっと......いきなりすぎませんかねぇ...


まぁいい、天界に行ったなら正確なことがわからはずだ、俺はこの場をどうにかしないとな



「おい、ちょっと───ちっ、物騒じゃねぇかジャンヌ」


俺が発言する前にジャンヌの細剣が俺の首元へと当たっていた


これで、ジャンヌは完全に向こう側だとはっきりした



「皆さん、お静かにしていただきたい。半年ほど前です、我らが主神リリアーナ様から天啓が舞い降りたのです、「アレウス・アーレンハルトは魔神7柱の1角である」と、これは余計な混乱を避けるために今日の今まで協会の特秘事項としておりました。そして我々聖教国はその真相を半年かけて調べあげたのです」


ルヨナは淡々と話し始める



「まず、我々はアレウス・アーレンハルトの出自について調べあげました。この男の名前が知られ始めたのは、魔神ドレアムの1件でした。しかしそれ以前のアレウス・アーレンハルトの素性は不明です。ギルドに調べさせてましたが、やはり完全に出自などはすべて不明でした」



んなのなことは当たり前の話だろうが、俺は転生者だぞ、家族も故郷もこの世界には存在しない


「......おい、ジャンヌ、お前は俺の出自を知ってるはずだろ?」

「貴様お得意の嘘か、アレウス・アーレンハルトよ。これ以上むだ愚痴を叩くならその首を切り落とすぞ」


聞く耳を持ちやしないな、こいつ本当にジャンヌか?


ちょっと「鑑定」.........



堕天勇者ジャンヌ

種族人族・女

────

───

──

...



こりゃアウトだな、堕天勇者ね...


タケトの時は完全に魔神となっていたから、まだ魔神化には至ってないわけだ


勇者は魔神となる器を有しているから最悪の事態もありえるからな、まだマシだと考えておこう


それでもくそヤバイ事態には変わりないが、



「では次にアレウス・アーレンハルトが現れてから今までのことについてです。まず一つ、魔神ドレアムは約束3ヶ月まで存在しておりました」

「............は?」



俺は余りにもアホなことを言われたので、素っ頓狂な声をあげてしまう



「皆様も三ヵ月前の聖騎士団によってなされた悪魔の大討伐の一件は1度でも皆様の耳に入っていたでしょう」


それは俺の耳にも届いていた、とある山地で邪教徒と見られる集団の集落が発見された事件だ


でもそれは悪魔関係の話だったが、魔神関係の話ではなかったはずだ


「そこで、多くの悪魔を束ねてのいたのは悪魔の王とも伝承に残されていた魔神ドレアムでした。現に我らが騎士団長ジャンヌが魔神ドレアムの相手をし、見事討ち取ったのです。ジャンヌ、その時の話をし」



会議の参加者は全員ジャンヌの方を向く、その顔は皆混乱といった表情であった


「はい猊下、私ジャンヌ・フォン・カミラは魔神ドレアムを討ちました。そしてヤツと対峙している時に魔神ドレアムだと名乗っていました、そして朽ち果てる時、この男、アレウス・アーレンハルトの名を呼んでいました」

「おい、くだらない嘘を......っ──」



首に押し当てられていた細剣の刃の圧力が強くなる


俺には発言権がないみたいだな......ここで、ジャンヌと相手すれば周りにも被害が出るし、完全に俺が悪者になるよな


だけどこのまま黙っていれば、完全に向こうの思惑通りに事が進んでしまう


かなりまずいぞ...なす術無しじゃないかよ



しかしルヨナは何者なんだ


鑑定でも結果は枢機卿と映るのみ、だけどこいつは完全に黒だよな、何者なんだ?



「そしてもう一つ、勇者タケトが魔神になった一件です。あれもアレウス・アーレンハルトによる差し金であることも発覚しました。邪神信奉の教団関係者たちに吐かせて裏も取れています」



ほんとにある事ないこと好きなだけ言ってくれてやがるな



「これらにもまだ多くの証拠がございますが...主だった話はこの二つ、そして何よりもやはり我らが主神がおっしゃったことでございますから、疑いのない事実でございます。神のお言葉を最初に疑ってしまったことが大変お恥ずかしい限りです」


ルヨナは誠に遺憾ですとばかりに顔をしかめた


遺憾なのはこっちだ馬鹿野郎


しかし、流石に軽口を叩いてるのも、ここら辺が限界だぞ......


「ちょ、ちょっと待ってく──」

「そして、ここで宣言しましょう。魔神アレウスをかばう国は全て、我ら聖教国の敵と見なすします、これは大陸の存命をかけた一大事です、我々は容赦はしませんよ」



『!!!!!!!』



つまり俺を少しでもかばったらしたら、戦争を起こして叩き潰してやるってことか


カイゼル陛下も今の発言を聞いて押し黙ってしまった


あのレオーネも「ちっ、聖教国相手じゃ分が悪い」とか言ってる始末だ


まぁ誰も聖騎士団率いる聖教国軍とは戦争したくないわな


この空間に俺の味方は完全にゼロとなったわけか、誰も彼もが聖教国との争いを恐れ


そして神からの天啓を信じきってしまっていた




はぁ......だったらこっちから仕掛けにいくしかないよな



「.........おい、貴様らは何がしたいんだ」


俺は口を開いて発言する、ジャンヌに刃を再び当てられるけど知ったこっちゃない、傷くらいすぐ治るからな


「魔神アレウスよ、我々は貴様の処刑を望む」

「.........俺の処刑だと?」

「もちろんだ、我々は魔神の存在などは認めない。ここで暴れてくれても構わないが......わかってるな?」

「.........クソッタレが、」


俺がここでジャンヌたち相手に暴れまくれば、俺ではなく俺の周りに被害が及ぶということか


つーか、この状況誰も不自然だとは思わないのかよ。ダメだな、完全に向こうの言葉を信じきってやがるな、困惑の顔から、既に俺を敵として見ている顔に変わりやがって。しかし明らかに空気がおかしいな、思考誘導みたいなものを受けてる可能性が高いな



まぁその中でも数人ほどは俺を心配する目で見てくれることだけが俺の心の救いかな




ここから状況を良くする方法はただ一つしか思いつかないな.........やるしかないか



俺は両手をあげてこう告げる






「わかった、だったら俺を処刑しろ。首を切るなり、火あぶりにするなり好きにしろ」

お読みいただきありがとうございます

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