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顔合わせ

よろしくお願いします

大陸会議開催3日目──



昼過ぎに俺はとある王城に近くにある議事堂会議室に呼ばれていた


その理由は各国首脳の護衛の任としてついてる者達の顔合わせだ


そいつらは軍の将軍だったり、お抱えのAランクまたはSランクの冒険者だったりと自分の武力に自信があり、大抵のやつはプライドが高い


今晩は晩餐会があり、明日からは会議が開催される。俺たちの小競り合いがまわりにとっては大きな問題になる可能性もあるのだ、昔一度小さな言い合いから殴り合いに発展して、どっかの国の王城を半壊させたらしい


とりあえずは顔合わせしといて、そういったくだらないことを未然に防いでおけということだろう


俺としても余計な波風を立てたくないから、穏便にすんでほしいものだ


(もう既に津波級の波風たちましたものねぇ...)


ほんとだっての......まだ何もしてこなかったが、あの女帝レオーネのことだ、何もしてこないということはないだろうな、こわいこわい



会議室に到着してみれば、既に何名かは着席をしていた。その中には唯一護衛組の中で俺の知り合いであろう──



「あ、あ、アレウス・ハーレンハルト様!!久しぶりでございます!!」



そうそう、七三分けの髪型の身なりを整えた男.........じゃなくて、誰だよこいつ



会議椅子に姿勢よく座ってるそいつを俺は見る


やっぱりあいつが来ていたか、俺の視界に映るは聖ダイス教国の護衛役として来たであろう、聖騎士団の団長ジャンヌだ


どうやら髪切ったみたいだな、会うのはだいたいバンカラードの1件の時以来だから一年ぶりか


お、目が合っ.........ありゃ?


俺が挨拶がわりに手をひらひら振ってみたら、瞳を閉じられてしまった、完全にスルーされたな


「あの、す、すいません──」



俺なんか怒らせるようなことしたか?いや、会うのは一年ぶりだぞ?別に怒らせてることなんか......


(あの...アレウスさん、意図的に無視してるのはわかってるんですけど、そろそろ返事してあげたらどうですか...?)



.........まぁ流石にずっと無視はダメだよな



「あー...えっと、君誰?」

「は、はい!!オーシアン自由国代表の護衛の任として来ました!!ブルートです!!お久しぶりでございます!!」

「オーシアン自由国?あー.........」



ブルートね、はいはい、思い出したよ。エチーゴっていう悪徳商人に雇われてた冒険者か、確かミラに調教されたやつだな


そういえば、あの人魚姫誘拐事件のあとはオーシアン自由国のために働けって、適当に俺が命令しといたのか


見た目まったく変わってて気づかなかったな、どうやら更生したみたいだな



「思い出したぞ、ブルートか。元気にやってるか?」

「は、はい!!アレウス様とミラ様の教育のおかげで、自分やり直すことができました!!」


なんかキャラまで変わっちゃってるけど......真面目になったから別にいいよね、うん


あとお前の教育したのはミラだけだからな?俺も含めないでくれよ?



「まぁ元気そうで何よりだ。ほら、自分の先に静かについとけ」

「は、はい!!」



もっと無口なやつだった気がするんだけどなぁ......まぁうるさいらどっかに行ってもらうのが一番だな


さてさて、俺の席は──



「あ、あのアレウス・アーレンハルト様...」

「ん?あー...確かあなたは、レオーネ女帝陛下のメイドさんの......」

「はい!!カルネと申します!!せ、先日は我が女帝陛下が大変ご迷惑をおかけしました!!」



カルネがバッと勢いよく頭を下げる


それにしてもメイドなのに、護衛でもあるのか。なるほど武芸者か、ちょっと「鑑定」で──レベル12??あれ、どゆこと?


「あー...いや、まぁ大変だったのはお互い様ですから」

「あはは...そうですね、あの後レオーネ様を落ち着かせるのは本当に...」


うん、すごい苦労してんだろうね、伝わってくるよ


「とりあえずお互い様何も無いことを祈りましょう。それで一つ気になったのですが、カルネさんはメイドですよね?」

「はい、メイドです」

「それなのに護衛役を...?」

「あはは...私も困ってまして...レオーネ様自身が帝国内最強ですので、護衛は必要ないんです.....私メイドなのに護衛役として付いてこいなんて言われて...私ただの世話係なのに...」


カルネの顔がどんどん暗くなっていく


うわー...この人超苦労してるんだな、同情するわ


しかしあの女帝が国内最強か、ちょっと興味が湧いたな、あとでこっそり「鑑定」をかけてしまおう


(この前は失礼とか言ってたのに......)


あれは身分とか年齢がわかるからって話で

もう素性はわかってんだから、これはもう失礼ではない、そういうことにしておこう



「あ、あの...私場違いじゃありませんかね...?」

「とりあえず、席に静かに座っていれば問題ないと思いますから、安心してください」

「そ、そうですか!!そのお言葉に従って、黙って座ってることにします!!」

「はい、それがいいと思いますよ」


カルネはトコトコっと自分の座席へと行ってしまう


これは指定席なのだろうか?とりあえず、この場を仕切るやつに聞いてみるか


この場を仕切ってる人間はいるかなと探してみれば、宮廷執事長のクイッケンがこの集まりの司会をするらしい


イリヤ王国が主催国だし、クイッケンは1度護衛役として参加したことあるから、適任なのだろう


「アレウス様は上座でございます」

「......わかった、」



主催国の護衛役として俺はどうやら円卓状の会議テーブルの上座に座るらしい


思い足取りで俺は自分の指定席に座る、落ち着かない.........


俺が席につくと、値踏みするかのようにこちらを見てる奴らが何人か


実力測ってるのか?まぁ勝手にしてくれても構わないが、そっちがその気ならこっちもやらせてもらおう


はい、「鑑定」スキル発動.........うん、まぁそこそこってところか



(男相手には容赦ないですねぇ...そして、普通に上から目線ですね)



男だからな、失礼とか全く思わないからな、上から目線なのは俺の方が格上だからだよ


レベルは平均して大体160前後ってところか?イリヤ王国の国王軍将軍のドルグ将軍もそれくらいだし、それが妥当なのだろう


この中で異様なのは二年前よりちょっと上がったレベル526の俺と、434のジャンヌか


ジャンヌに関しては今はもうシルより強いな、前は同じくらいだと思ってたけど今は確実にジャンヌとシルが当たったらジャンヌが勝つだろうな



あとはある意味異様なのがレベル12のメイドのカルネか、本当お気の毒だな、あの子は


そしてそこからチラホラと会議室にやってくる


中にはギャングのボスとかいて、ちょっと興味が湧いたりもした



「さて、出席者35名全員集まったので、予定開始時刻より少し早いですが、会を始めましょう」


クイッケンが司会台に上がって、そう発言する



「それでは、自己紹介から始めましょう。イリヤ王国代表アレウス・アーレンハルトからお願いします」



主催国だから俺からなのか、適当に済ませよう



「イリヤ王国代表、カイゼル・アクロイド陛下の護衛の任についたアレウス・アーレンハルトだ、よろしく頼む」



俺は立ち上がり、それだけ告げて一礼して座席につく



そして、俺の挨拶を皮切りに時計回りで自己紹介がされていく


俺はただボンヤリと聞いて、終わるのをただ待っていた


たんたんと進んでいた自己紹介が突如ストップする



「けっ──どいつもこいつも雑魚が護衛とか、鼻で笑うしかないよなぁ!!」


ドカッと机に足を乗せて、ある男がそう発言する


その発言を聞いたものたちが、全員色めき立つ、ある3名を除いてだけど


その3名は俺とジャンヌとカルネだ、俺とジャンヌは静観、カルネはビビってる



「はぁ...今回もこのような自体に」


俺の右後ろに立っていたクイッケンがそんなことを呟いていた


今回もって...毎回こんなことになるのか


「そろいもそろって雑魚雑魚雑魚、本当笑いしか出てこたいなぁ!!」


あんなにすき放題言っちゃってるけど、いいんですかねぇ


既に一食触発とかそういう空気通り越してるレベルなんだが


たぶん、発言してる男も、わざと煽る感じで言って状況を楽しんで、その後の展開に期待でもしてるんだろうな、とんだバトルジャンキーだ


(バトルジャンキーなのはアレウスさんも一緒ですよねぇ)


いや、俺をあんなのといっしょにして欲しくはないんだけど......


それより、誰から動くか?地味に面白そうだから、見守ってよう。ことが大きくなったら暴れた奴らは全員感電させてるとするか


しかし最初に動いたのは予想外の人物だった──


「貴様、さっきから色々と言っているようだが、そろそろ黙った方がいいぞ」


決して大きくないその声は、しっかりと会議室に響き渡った


その声の主はジャンヌだった


「貴様の発言はこの会の進行を阻害しているから、邪魔だ」


なんとも正論なことおっしゃりますな、しかしこういう所で無駄に目立つのはあいつらしくない、口調もどこか高圧的というか


「おいおい、綺麗な姉ちゃんがいると思ったが、なかなかなこと言ってくれるじゃねぇか!!」


さっきから好き放題言っていた男は標的発見とばかりにジャンヌの方へと近づいていく


あいつ馬鹿だなぁ...まぁジャンヌのことだから穏便に済ませるか



「はぁ......静かに席についた方がいい」

「あぁ??聞こえねぇなぁ!!」

「席につかないと......殺すぞ──」



その瞬間身体中にゾクリとするような感覚が走った


「おいおい.........」



この場で唯一、平静を保っていた俺の声が響く



ジャンヌのやつ、今まじで「殺す」と言ってたぞ。今のは脅しとかじゃない、本当に黙ってなかったら殺してたぞ


ジャンヌの殺気がとんでもなかったおかげか、俺を除く全ての人間が青ざめていた。ジャンヌに直接さっきを飛ばされた男なんて、腰を抜かしてしまっている



あと本当にお気の毒なんだが、カルネは白目むいて気絶している。本当にあの子はかわいそ過ぎるだろ......


「......黙ったなら、早く席につけ」

「は、はいぃぃぃぃ!!」


ジャンヌに睨まれた男は慌てて自分の先につく



確かに穏便に済んだが......これは少々やり過ぎじゃないか?まぁ聖騎士団の団長はこれくらいやらないとやってけないのかもしれないな


「こ、こほん!!それでは気を取り直して、自己紹介を再開しましょうか」



ジャンヌの殺気で停止していたクイッケンがいち早く復帰して会の軌道を元に戻そうとする


はぁ...これ以上問題は起きないでくれよ......



そしてその後はジャンヌのあれがあったおかげか、スムーズに会は進行した


ただの顔合わせのようなものだし、特に話すことはないからな。結構短時間で会は終了した。カルネが担架で運ばれてたな、本当にお疲れ様でした


俺は席を立ち上がり、ジャンヌのとこへ向かう、一応挨拶はしておた方がいいと思ってのことだ



「ようジャンヌ、久しぶりだな」

「......アレウス・アーレンハルトか、」


......なんでそんなに嫌そうな顔をするんでしょうか......俺まじで怒らせることしたか?



「あー...なんだ、さっきのは少しやり過ぎじゃないか?」

「さっきの?」

「あぁさっきの...自己紹介の時やつだよ、殺気飛ばしすぎだぞ」



(さっきの殺気......ぷぷっ!!)



やかましいわ!!......俺も考えちゃったけど


「あれのことか...別に間違ったことはしてないと、思うが?」

「間違ってはないかもしれんが、流石に加減があるだろ?」

「貴様に指図されるいわれはないアレウス・アーレンハルト、私は行かせてもらう」

「は?おい.........あー......」


ジャンヌは素早く立ち上がり行ってしまう



(アレウスさん...本当に何したんですか?)


いや、俺は何もしてないと思うんだが......



しかしジャンヌは一体どうしたんだ?もともと真面目で堅物なところはあったが...あれはどう見ても、それが悪い方向に、しかもとんでもなく悪い方向に変化している



ステフの変化にも驚いたが...こっちの変化にもかなり驚いたな


1年以上会ってないと人はこんなにも変わってしまうもんなのかね


とりあえず俺も会議室から出るとするか──

お読みいただきありがとうございます



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