プロローグ
よろしくお願いします
第6章の導入だけなので短めです
今回は第三者視点です
大陸会議7日目、アインス大陸に存在する全諸国の長が一堂に会する四年に一度の大会議もついに佳境を迎える
そして大陸会議という一大イベントの最後を彩るのは
大罪人アレウス・アーレンハルトの処刑
その日は幸か不幸か大雨に見舞われ、肌を刺すほどの大粒の雨が降り注ぎ、神が怒りを露わにしたような雷が唸りをあげる
処刑台の前には開催国イリヤ王国の王都に住む、全国民が集まり、集まっていた諸国の長たちも専用のテントで様子を見守る
そしてついにアレウス・アーレンハルトが処刑台に姿を現す
用意された処刑台をゆっくりとのぼり、全身が雨でずぶ濡れ、たれた前髪のせいでその表情を見えていない
刑を執行するのは聖ダイス教国聖騎士団団長ジャンヌ・フォン・カミラ
「そこに跪け」
ジャンヌはただ淡々と、そして冷徹に命令する。アレウスはジャンヌを一瞥だけして素直に膝をつく
英雄から大罪人へと落ちたアレウスに処刑を見に来たすべてのものの視線が突き刺さる
戸惑いの目、怒りをあらわにした目、様々な目がアレウスを捉える
「(こんな雨の中よく来るな、まったく...)」
自分の置かれている状況に笑いながら、観衆を眺める
右を眺めてみれば、各国の長がこちらを見ている。もちろんその中にはイリヤ王国の者達も、カイゼル陛下、アレックス王子、ステフ......
「......おいジャンヌ、クリスはどこにいる」
「クリスティーナ王女殿下のこと?それは知らない、行方不明だと聞いている」
「おい、俺以外のやつに手を出しさたら殺すぞ」
「黙りなさい、その無様な姿で言えたものだ」
「いっ─ぐぁぁぁぁぁぁ!!」
ジャンヌの抜いた細剣がアレウス右腕を切り落とす
「貴様には自由に発言する権利はないことを教えおく」
「ぜぇ...ぜぇ...ちっ...」
アレウスは荒く息をたて、自分の切り落とされた右腕を睨みつける。流れる血が雨水によって流され血の川をえがく
アレウスは切り口を通して焼けるような痛みを感じ、顔をしかめる
「(毒かなんかか?俺には効かないはずだが...またジャンヌのとんでも神器のせいか、くそ...治癒神の加護がなかったら即死のだったかもな...しかしクリスの野郎は行方不明、一体どこに...)」
そしてそのしかめた顔が見ていた者たちには憎悪に満ち溢れた顔に見えてしまう、本人としては痛みに耐えつつ考え事をしているだけなのだが、他人にはそう見えてしまうのだ
「殺せぇ!!」「俺たちを騙したんだぁ!」
「英雄なんて名乗りやがって!!」
そんな怒号が聞こえ始める
アレウスはお前らが勝手に英雄って呼んだんだろと呟きたくなるが、下手に呟いてジャンヌにまたどこか斬られるのは嫌なので黙り続ける
「無様なものだな、一瞬で英雄から国の、いや、大陸すべての人間の嫌われ者だ」
「......なに、喋っていいの?...そうだな、わかってはいたが、きついもんだな」
だかこればかりは仕方がない、アレウス自身が選んだこと、すべてを考慮しての決断、これが最善の手だからだ
「...おい、約束通り俺以外には手を出すな、わかってるな?」
「わかっている、貴様以外の者は貴様に騙された、いわば被害者なのだから」
「その言葉はどっかの勇者様を思い出すな」
心の中で「まさかジャンヌが言うとは思ってもなかったが」と付け足すアレウス、そして勇者になった奴らはみんなこうなるのか?と苦笑する
「これ以上の無駄話はやめておこう、刑にうつるぞ」
そう言ってジャンヌが細剣を天に掲げる
「今から刑を執行する!!」
はっきりとした声でジャンヌはそう宣言する
「なにか言い残すことはないか?」
「そうだな...俺の首を斬り落とすんだったら、覚悟するんだな......後悔させてやるぞ」
「この期に及んで、敵意をむき出しにするか。ここでに貴様が暴れてもいいが、そうすれば貴様の大切なものたちに矛先が向く...わかってるな?」
「んなことわかってるよ...だから俺はここにいる」
「ただの負け惜しみか、」
「そう思ってくれればかまわない」
「そうか...その無駄口をやめさせるためにすぐに刑を執行しよう」
ゆっくりとジャンヌは細剣を構える、そしてそれに合わせてアレウスは覚悟を決めて目を閉じる
轟く雷鳴、その場にいるすべての人間がいつ細剣が振り下ろされるのかと待ちわびる
「...くそ、覚えておけよ。すぐに第2、第3の俺が出てくる」
「大丈夫だ、貴様を忘れ事は無い。私の貴様に対する憎悪の炎は絶対に消えることは無い。新たにお前のような者が現れるとするならばすぐに私が始末する。これ以上は喋らない方がいいぞ、変なところを斬って楽に死ねなくなる」
「ただのジョークに辛辣な答え方するなよ......なぁ、後生の頼みだ、一言だけいいか?」
「仕方がない、聞いてやろう」
ジャンヌは警戒したまま細剣を構える。目の前の男はそうは言いつつもこちらの隙を伺っているのかもしれないと疑っているジャンヌ、アレウスのことを言葉巧みに他人を騙すような人間だと評価しているからこそだ
アレウスが聞いたら、俺はそんなつもりは無いと答えているだろう。ただアレウスは無意識に女を惚れさせるような行動や言動をとっているだけの話、だがジャンヌから見ればアレウスのところにいるすべての女は彼に騙されていると見えてしまっている、危うく自分もそうなりかけていたからこそ余計に警戒をする
「......お前のことも絶対に救ってやる、ジャンヌ」
「──っ!!戯言を!!この聖剣「エクスカリバー」をあじわうがいい!!」
「え、なに?それエクサカ──」
ジャンヌはエクスカリバーを振り、首を切り落としたことによってアレウスの言葉を遮られる、そしてもう新たにアレウスからは言葉が紡がれることはなかった
「最後まで忌々しいやつだ、アレウス・アーレンハルト......いや、魔神アレウス」
英雄から魔神へと堕ちた男の命はここで幕を閉じた──
お読み頂きありがとうございます
どんな入り方にしようかなと迷って、このような形にさせてもらいました、たぶん今回の章は内容が気に食わないと思う人もいるかもしれませんがよろしくお願いします
何故か読書さんがすごい増えた時期が一瞬だけあったんですが理由がわからないんでもし心当たりある人がいたら教えてほしいです、地味に作者はビビってます