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地鍛冶屋から  作者: 雨水
第一章 転生と始まりの始まり
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愚痴る…………悪いか!

一人称視点

少々主人公が愚痴り、欲望を叫びます。

 三日後。

 ドウモッ。

 安藤涼あんどうりょうデス。

 現在ふて寝中デス。

 ナゼかって? 俺は今、ガチ転生を経験中だからだ、どうだ参ったかチキショー!

 ナゼ夢だと勘違いしないかって? ()らしたクソの臭さと気持ち悪さが現実だと俺に叫んでいるからだチキショーめ!

 ナゼ三日後なのかって? 転生したって自覚してから二日間全力で泣きまくってて話す暇がなかったからだチキショー!!

 ナゼ泣いたかって? いい加減この繰り返しも飽きてきたが、もちろん家族と離ればなれになったからだ……が、何よりもの申したいのが俺のパソコンのファイルに残った秘蔵コレクションを消せていないまま死んだからだコンチキショー!!!

 何だよ、死んだ後残ったものが黒歴史って!? 悲しすぎる!

 また涙出てきた……!


 泣き疲れて落ち着いたら今度はイラついてきた。

 何で俺がこんな目に会わなきゃいけないんだとか、母ちゃんをこんな美人にしてくれてありがとうとか、勘の鋭い親父にしやがってめんどくせえなとか色々、主に神にもの申したい事がたくさんあるが、とりあえず今は脇に置いておく。


 俺がとにかく言いたいのは、ナゼ俺の母ちゃんを巨乳にしてくれなかったのかって事だ、チキショーーーー!!!


 ナンじゃあの絶壁は!? 赤ん坊の唯一の絶対特権たる母乳タイムに絶妙な物足りなさと残念感与えやがって! 絶壁は飲みづらいんだよ!

 呪うぞ紙! 間違えた。髪! ……ん?

 まあいいや。


 情報を得ようにも、まだ自我を覚醒させてから三日だ。

 さすがに三日で言語は理解できん。

 学校の成績悪かったからな~。

 英語?

 HAHAHAwww。

 つまり暇だ。

 煙い。

 あぁ~、ちょっと落ち着いた。

 でも今度は暇になってきたな。

 どうしよう。


「……■。■■■、■■■■?」


 あ、母ちゃんが起きた。

 いい忘れてたけど、今俺が寝ている部屋には母ちゃんと父ちゃんが二人とも無防備にぶっ倒れている。三日間泣きわめく俺を必死にあの手この手であやして泣き止まそうと奮闘してくれたからだ。ちょっと申し訳ない。

 母ちゃんは普段口に薄い布マスクとゴーグルをつけて煙を遮断してる。そもそもこんなに煙たい部屋じゃしょうがない。ちなみに俺と父ちゃんはつけていない。なぜか大丈夫|(ちょっと不安)。絶壁さえ気にしなければ絶世の美女と言っていい女性で、長い黒髪に金色の瞳をもった優しい顔している。起き出した母ちゃんは俺を抱き上げて子守唄みたいなものを歌いながらゆらゆら揺らしてくれた。少し恥ずかしいけど落ち着くなぁこれ。本能みたいなものなのだろうか?

 しかし、落ち着いて考えるとだんだん申し訳ない気持ちがムクムクとむくれ上がってきたな。絶壁(しつこい)さえ気にしなければ本当にいい母だ。それを三日三晩困らせ続け疲れさせた。

 いくら悲しかろうが無償で世話してくれている人をずっと困らせ続けるのは……ダメだろ!

 うん、もう十分悲しんだし、いい加減泣くのやめよう。というか泣くのに疲れたし飽きた。

 そう言えば一度も笑った顔を見せてあげてなかったかも。

 親としてはやっぱ辛いよな。

 笑ってみっか。


「……あぃ~」


 かなりひさしぶりだったからやり方が一瞬わかんなかったけどなんとか笑えたな。

 随分ぎこちなかったけど。


「■!!! ■、■■■■■■■■■……!」


 やっべ、泣いちゃった!

 何か間違えた!?

 ……あ、違う。嬉し泣きだわこれ。

 号泣しながらスゴい嬉しそうな顔して俺におもいっきり頬擦りしてくるもん。

 ……ほんと、ごめんなさい。摩擦熱がすごいけど甘んじて受けよう。

 むしろご褒美だと考えろ、俺!

 よしっ、これからはなるべく笑ってすごそう。


「……■? ■■■■■■■■? ■■■■……」


 心の中で固く決意していると、父ちゃんも起きた。

 父ちゃんは髪と髭がボサボサの男で、だいたい目算160~170ぐらいの身長。少し鋭い眼光と無表情な口数少ないナイスガイだ。あと勘が異常なほど鋭い。

 笑ってる俺に気づいて少し目が潤んでる気がする。俺の頭を無表情ながらも撫でてくれているから喜んでるんだろう。

 ほんま、スンマセン。


「■■■■■」

「あぅ?」


 ン?

 父ちゃんが小石を取り出して指差してる。見てろってことか? 何する気?

 俺がジッと見ているのを確認した親父は小石を削り始めた。

 爪で。

 ギャビャアアア、とすごい甲高い音が部屋中に響き渡る。手がブレて見えるほど素早く振動させ、小石が削られていく。と思ったら、あっという間にただの石ころが赤ん坊の形になった。

 すげ……、俺の人形?

 ただの石から爪だけで削り出しちゃったよこの人。何者? 俺の親父だよ。

 大きさは目算で5センチほど。製作時間十秒なし。

 大木のマルタから美女のヌードをチェーンソーで繊細に削り出す前世の父ちゃんや、男の筋肉の魅力を語り出したら止まらない腐った脳をお持ちの前世の母ちゃんよりもすげえ。本物の尊敬できる神業師だ。

 自分の爪だけで石を削れるとは……面白そうだな。俺もやってみたい。


「■■、■■■」

「■■■。■■■■■■■」


 二人は石の人形に興味津々な俺に満足したのか、少し会話を交わした後手に持っている石の人形を父ちゃんが口に放り込ん、だ!?

 ちょっ、何してんの!?


「んばっ!?」

「■■、■■■■■」

「■■■」


 そのまま美味しそうにコリコリと食べながら父ちゃんは別の部屋に行っちゃったし、母ちゃんは何も突っ込まないまま笑顔で買い物に行ってしまった。

 もしかして……父ちゃんって人間じゃない?


 人間じゃなかった。


 数分後、二人は俺がいる部屋で俺が笑ったのがよほど嬉しかったのか、二人でささやかなパーティーを始めたんだが父ちゃんの主食はなんと鉱石、結晶、クリスタルといった『石』だった。地球にも砂を食べる一家がいたのを聞いたことがあるけど、さすがに石を歯で噛み砕いて呑み込むのは人間には無理だろ。いくらなんでも人間の歯は鉱石以上に固くはならんだろうし、人間の胃液で石は溶かせない、はず。一応水っぽいものは飲んでるけど。

 ちなみに母ちゃんは普通の食事。見たこと無い食材や料理ばっかりだったけどまだ食えそうなものだった。

 途中から酒を飲み始めた二人がその後どうなったかは……いや、語るまい。

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