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地鍛冶屋から  作者: 一滴
第二章 学校と歪みと決意
15/17

ソルク、お前はいったい……まあいいや、メシメシ♪

「ふぐううううううううううううう……!」

「まだ泣いてるのか?」


 現在、俺たちは大きな風呂で湯に浸かっていた。

 それなりに大きく、しかも奴隷街の上層の方にあるからか、眺めが絶景だ。

 ソルクの指示にしたがって、長い階段と長い通路に長いトンネル。長い道のりを進んでいき、ようやくたどり着いたのがこの温泉地付きの巨大な建築物だった。最初は『どんな温泉かな~』とはしゃいでいた女子陣も、長い道のりを長い時間歩くにつれグダグダ文句を言うようになっていったが、その先で着いたここは想像以上に素晴らしかった。

 そもそもヒュアニークには、光石と呼ばれる発光する石が町中の至るところにランプ代わりに使われていて、昼はほとんど地上の昼と同じぐらいの明るさで活動できる。そして夜の時間になると村中の公式の光石は光を消して各家の光石と通路の光石のみが輝きだす。

 それはここ奴隷街も例外じゃないらしく、下に乱列する建物や通路が輝いてまるで夜空が下にあるような幻想的な光景が上層のここから見えていた。

 俺が住んでいたドワーフプラントの横穴住居とは違い、ヒューマンプラントの奴隷街は一軒一軒岩石を削り出した彫刻の家が建ち並んでいる。だから一軒一軒が輝いていてとてもきれいだ。さらに天井にはその光を乱反射する結晶が群生していたりして、さながら夜空の満天の星空のごとく上下の両方が輝いていた。

 他の男子二人は温泉をプールみたいにして泳いで遊んでたけど。

 そして俺の心は、まだすさんでいた。


「いい加減泣き止めよ……」

「うっせええええええ! まだちっちゃいからお子様の皆で一緒にお風呂とかちょっと期待してたんだよ! 男女別って聞いたときお前も少しショックな顔してたの知ってんだからな、イジェット!」

「なっ!? ば、バカ言うな! 俺はそんな顔してなんて……」

「知っとるからな~、イジェット~!」


 突然、隣を石壁で区切られた向こう側の女子陣にいるマリーからありがたい援護射撃が飛んできた。

 そうか、マリーも気づいてたか。


「……………………ブクブクブクブク」

「ケッケッケ~、いい気味~」


 二人で言い合いしていたら温泉で泳いでいたドワーフとサイクロプスの二人が会話に混ざってきた。


「お前らあんなガキの体がいいのかよ!?」

「そうそう! どうせ一緒に入るならもっとおっぱいバインバインの姉ちゃんと入りたいよ!」

「「ね~!」」

「「このマセガキどもおおおおおおお!!!」」

「「「「さいって(です)ーーー!!!」」」」

「「「はぁ……」」」


 『ね~』の後に突っ込みを入れた二人は俺とイジェット。次の四人は女性陣。最初の三人はソルクと残った男女一人づつ。

 何だかんだで結構うまくやってけそうな気がするお風呂の時間だった。


 そしてソルク、お前俺たちが掃除してる間に何してたの!?


「「「どうぞ、お召し上がりください」」」


 お風呂から上がった俺たちを待っていたのは、数十人の侍女や執事的なきれいな服装の女性と男性が、きれいに並べられた食事の前に控えて並ぶ空間だった。

 俺たちは今男女に別れて大理石マーブルの長机を挟んで向かい合って座っており、その後ろに一人づつ侍女と執事がそれぞれに控えて立っている。

 そして机の端、真ん中にはどう見てもヤクザの大頭的な強面の人物が両隣に美女をはべらせて満面の笑みを浮かべていた。

 正直に言ってマジ怖い。

 笑顔で十分他人を怖がらせられる男って実力者感半端ないな。

 何者?


「遠慮するなよ! 今日は家の大恩人ソルクから『頼む』とまで言われているからな! ここを出てあの廃墟に戻るまで、バカどもからは指一本触れさせねえよう家の野郎共にはキツく言っといたから安心しろ! たっぷり食えや!」

「ちょ、ちょいビーズ? こ……これ、どゆこと?」

「オレニモワカンネエヨッ!」

「ビーズ、お前声が裏返ってるぞ……」

「ウッセェ!」

「……安心しろ。何かあればそこのオッサンがどうにかする」

「ガッハッハッハッハ! 別に捕って食いやしねえから安心しろ! ソルクのお陰で食料問題も解決したからな! それとソルク、オッサン言うなっていつも言ってんだろが! 俺はまだ99だ!」


 オッサン通り越してジジィ全開じゃねぇかという突っ込みが喉まで出かかったがなんとか呑み込んだ自分を褒めてやりたい。


「「「……オッサンじゃなくてジジィじゃん(やん)」」」


 マリー、イジェット、ソルクが間髪入れずに突っ込みやがった!

 俺の苦労は!?


「てめぇら……! ソルクはともかく容赦ねえガキだな。ほんとに六歳児のガキか?」

「……さあな? それより冷める前に食おう。俺たちはこれを食い終わったら、あの廃墟に長い道を通って戻らなきゃいけないからな」

「あ」

「そう言えば……」


 そうだった。

 俺たちはまたあの長い道を通ってまた戻らなきゃならないんだった。

 早いとこ食っちまおう。


「……いた…………ます」

「ほんじゃ、いただこか!」

「緊張もほどよくほぐれたしな」

「おう、食え食え! ガキはいっぱい食わなきゃ大きくなれねえぞ!?」


 この世界でもフォークとナイフ、スプーンが主に使われている。ちなみにいただきますは(・・・・・・・)言わない(・・・・)

 他の皆は最初ちょっとビクビクして一言も発っせていなかったが、ご飯に口を付けた瞬間その緊張は吹っ飛んだ。


「「「「「「「「「うまあああああああ!!?」」」」」」」」」

「ちょおっ、ちょおっ! これマジでうまいんやけど!」

「はじめて食ったぞこんなの!」

「見たことないものもありますね……」

「これうまっ、あそれもうまっ、それもうっま! 超うまいっす!」

「こんなの、はじめて……」

「…………」

「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……」


 皆ご飯に夢中で緊張どころじゃなくなってる。

 各言う俺もはじめて見る料理に手が勝手に動くほど虜にされている。

 冗談抜きでマジうまい!


「おい、ソルクよぉ。いい加減そのボロボロの服どうにかしろや。金も準備も手間も俺が肩代わりしてやるっつってんだぜ? 何が不満なんだ?」

「……何度も言ったろ? 俺は今、この服が気に入っている。わざわざ貸しを使ってまですることじゃない」

「それはこっちだって何度も言ったろ! これは貸しとか恩とかじゃなくて俺がやりてえんだって! 遠慮すんなよ!」


 そばでなにか聞こえるけど興味ない。

 こっちはこっちで(メシに)忙しい。


「もぎゅもぎゅ……ソルク、あんさんここに住んどったんか? むぐ、やけにその人と仲ええように見えんやけど、んぐんぐ」

「……まあね。この人はドワーフのゲンバル・トロイザー。奴隷街のまとめ役で、数日前俺がここに来たときに世話になった人だ」

「んんっ!? むぐん……ゲンバルって『豪壊』の!?」

「ガッハッハッハッハよく知ってるじゃねえか坊主! そう、俺が豪壊のゲンバルだ!」

「毎回コロシアムを必要以上にぶっ壊して親父の仕事増やしてくれてるゲンバルさん!? お陰で儲かってます、ありがとうございます!」

「ん、え? お、おぉ……」


 けなしてるのか感謝してるのかいまいち反応に困るけどたぶん感謝だろうな。

 序列者には印象に残る剣を使って戦う選手に二つ名が付けられる事がある。

 歴四が気まぐれでつけることが多いから、序列者の中にもついていない人がいたり、序列者じゃないのに二つ名が付いたりする事がある。

 百位圏内には大体ついてるけどね。

 父ちゃん達は『極光』って付いてる。

 昔は別の二つ名がついてたとか聞いてるけどそっちは知らん。


「……皆、ご飯が終わったら帰るぞ?」

「「「「「はーい!」」」」」

ソルクが食事前に言った言葉が聞こえた人はいなかった……

読んでくれてありがとうございました

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