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地鍛冶屋から  作者: 雨水
第二章 学校と歪みと決意
14/17

超速修復開始!

「掃除をするに当たって俺はまず壁の修理から始めたい。イジェット、一緒に頼めるか?」

「了解した。任せろ」

「……何をする気だ?」


 いきなり立ち上がった俺たちにソルクが疑問を投げ掛ける。

 ソルクは知らないらしい。


「ちょうどいいからそこのヒビと穴を使って見せてやろうぜ?」

「おう!」


 ドワーフとサイクロプスの実力、とくと見ろ!

 イジェットが地面にある亀裂に手を当てる。


「ほい」


 瞬間、イジェットの手から千度以上の熱が放出され、石造りの地面の亀裂を溶かしてすぐに結合、修復する。

 数秒で床の亀裂は塞がった。


「ほいほい」

「ほいっ」


 対する俺は自分のリュックから母ちゃんに買ってもらった金槌を取りだし、イジェットが放り投げてきた真っ赤に発熱している石を壁の穴に押し当てながら金槌で叩きつける。


「ほいほいっと」


 張りぼてではあるが、数分でヒビも穴もきれいに塞がった。


「「こゆこと」」

「「「スッゲー!」」」

「……便利だな」


 ソルクは感心するように呟き、他の子供達は歓声をあげての大喜びだ。


「ねえねえ、俺にもできるかな!?」

「僕もっ!」


 ドワーフとサイクロプスの子供が群がって聞いてくる。

 当然できるし、君たちにもやってもらうつもりだ。


「もちろんできる! ドワーフは俺が、サイクロプスはイジェットが教えっからじゃんじゃん直すぞ!」

「「「お~!」」」


 ホコリがひどい中、まずは皆で行動開始。

 雲の巣や変な虫とかに苦労しながらヒビや穴を探していく。

 早速一つ目のヒビ発見。


「あ、あった!」

「俺がやる!」


 サイクロプスの少年、たしか名前はギル君だったかな?

 彼は我先にと壁のヒビに手を当てて構えを取った。

 そして、


「……どうやるの?」


 どうやら熱の出し方をわからないらしい。

 やったこと無かったのか?


「心臓部に意識を集中しろ」

「しんぞうぶってなに?」

「そっからかい!」


 教えるのに少々難航しながらも俺たちは壁を修理していき、ドワーフやサイクロプス以外の残りの皆には壁の穴や床のヒビの場所を教えてもらいながら修理していく。途中から人間と獣人の子供が暇になってきたから、ホコリやゴミの掃除をしてもらう。

 最初は皆で一緒に、段々二組に、最後は四組に別れて修復作業を行うようになり、教えながらやったにも関わらずほとんど時間もかからずに手の届く(・・・・)範囲内のほとんどの箇所は修復が完了した。

 問題はここ。


「さ~て、またしても手が届かねえ……」


 そう、俺たちはまだ六歳児のガキンチョ。

 身長はまだ体の大きいサイクロプスのイジェットでも一メートルをちょっと越えるぐらいにしか成長できていない。

 つまりハシゴがないと手が届かない場所の修理ができないのだ。


「ちょっと待っとれや!」


 急にマリーが走り出し、どっか行っちゃった。

 えっ? 何? 待つの?


 十分後……。


 ドドドドという地鳴りとともにマリーが帰ってきた。

 その手にはハシゴが握られている。

 十分で持ってきたのか。

 フットワーク軽いな。


「ってか、どっから持ってきた?」

「ここに来る前に学校にハシゴがあったのを見付けとったんや。それ借りてきた」


 片道数キロのプラントを十分で往復したんかい!

 半端ねーな、マリー。


「ジー……」

「え、何?」

「ジー……」

「……」

「ジー!」

「……プッ、ハイハイよしよし、えらいえらい」

「えへへぇ~♪」


 こっちを見ながら尻尾をおもいっきりフリフリして期待の眼差しを向けてくるマリー。全身から誉めてオーラを放出する姿があまりにかわいかったから焦らしてたが、さすがにイラついてきたみたいなので頭を撫でて誉めてあげる。ちなみにここまでがワンセットだったりする。物心ついてから度々こんな感じでマリーとじゃれ合う事が通例になってしまっていた。だってかわいいんだもん。

 機嫌が直ったら作業再開。ハシゴのお陰で手が届くようになりさらに修復が進んだ。

 大体目につく場所のほとんどは修復が終わったところで、最後は『ここ』だな。ヒビどころか壁が無い半壊した部屋と、穴じゃなく底が無い廊下。そしてこの廃墟は、俺が住んでいたテトラドプラントの横穴住居とは違い一軒のホテルのような、城のようなちょっと表現しづらい建物で、屋根がある。だからこの最後の瓦礫の山と天井の無い広間がすごいやばい事になっている。簡単に言ってただの瓦礫の山だ。

 さすがにデカいし広過ぎる。ゆっくりやってると三日はかかるぞ。


「ねぇ、これどうするの?」

「天井なんてどうやって塞ぐのさ!?」

「うーん……」


 時間は今十六時ほど。

 他の壁が半壊した部屋なら何とかなる。

 だがこの広間はちょいと桁が違う。

 だが俺には一つ服案があった。


「なあ、ここは俺が自由にしていいか? ここは学校に行きながら俺が改造するから今じゃなくていいよ。他の部屋からやってこう」

「わかった」

「いいよ~」

「ほな、次行こか!」

「「「おお~!」」」


 他の半壊した部分は皆が要領を掴んでくれていたお陰で、競争まで始めるほどの余裕を残してどんどん修理が進んでいった。


「見ろ! もう俺はここまで終わったぜ!?」

「あまい! 僕たちはここまで終わったよ!?」

「お前らそんだけか!? こっちは掃除も終わっとるわい!」


 こうして見ていると子供のどや顔ってかわいい以外感想って出てこないんだなって思う。

 年下って感じで自分の中で割り切れてるのかな? 微妙に子守りをしてる気分になってきた。

 若干ブルーな感じになりながらも、半壊部分の修理は二時間ぐらいで終了。

 思ったよりすぐ終わったな。


「あ~、疲れた~!」

「皆お疲れ!」

「いい汗かいたぜー!」


 皆が一息入れている中、一人姿が見えない事に気がついた。


「そう言えば、ソルクはどこ行ったんだ?」

「あれ? そう言えば……」

「あいつどこ行ったんだ?」

「誰か見てへん?」


 皆首を振る。誰も見ていないのか?


「……こっちだ、こっち」

「オウッ!?」


 いつの間にか背後に立たれていた。

 えっ、何?

 気配消して後ろに立たれると変に警戒しちゃうんだけど。


「何やってたんだよソルク!」

「そうだよ~。もう皆で掃除終わっちゃったよ?」

「……まさかお前、一人でサボってたんじゃねえだろうな!?」


 掃除と修理の間姿が見えなかったから、皆ソルクを非難するように若干トゲのある声をかけるが、次に続いたソルクの一言で皆の手のひらはひっくり返った。


「……風呂とご飯の準備できたからさっさと入って食って寝るぞ。もちろん男女は別な」

「いやっほぉ~! ソルク最高っ~!」

「ありがと~! 汗かいちゃってベトベトしてたんだ~!」

「ナイス!」

「気が利くやんか~! どこ行きゃええん!?」

「ありがたい。それとすまん、気付けなかった」

「……いいよ。こっちへ」


 マリーもイジェットも気づいてないみたいだけど俺は一人違和感を感じていた。それは、


「なんで男女別にしたんだよ~! せっかく女子と一緒に入れると思ったのに~!」

「アホかい!」

「最低です!」

「死ね」

「クズ」

「……しばらく近づかないでね?」


 バカにされ、軽蔑され、拒絶され、もう一回バカにされ、最後には引かれた。

 女子陣からの集中砲火を受けて崩れ落ちる俺は男子陣からもほっとかれて置いていかれてしまうのだった。

 肩ぐらい叩いて慰めてくれよ、皆!

次回は近い内に投稿いたします

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