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地鍛冶屋から  作者: 雨水
第二章 学校と歪みと決意
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『自己紹介』のち、『黒い微笑み』

 謝罪をそんなことと切り捨てられたのがそんなにショックだったのか、いくつかここを使う上での注意点を説明した後、少しフラフラしながらハスさんは帰っていった。

 そして今、俺たちはこの廃墟の一室で自己紹介をしていた。


「俺はドワーフ、ビーズ・ドロット。鍛治仕事なら任せろ!」

「ウチはキツネの獣人、マリー・ロイロームや。よろしゅうな」

「イジェット・リブーム。サイクロプスだ」

「……ソルク・ウォーハン。……人間だ」


 ハスさんを唖然とさせる質問をした男の子の名前はソルクらしい。

 髪は切っていないのか伸び放題になっているが、きれいにはしているのかそこまでベタついたようには見えない。

 そして気になるさっきの質問。


「さっきここ自由にしてええかって質問やけど君、いったい何する気なん? ここ改造する気?」

「それは俺も気になってた。ソルクはここで何かやりたいことがあるのか?」


 正直に言ってここの環境は最悪だ。

 壁はボロボロ、床はガサガサ、廊下はホコリっぽく、いたるところに穴が空いている。しかもいったい何年、いや何百年ほっとかれたのか、よく見ると壁に使われている石の隙間から小さなクリスタルまで覗いている。

 士気も限りなく悪いと言える。俺も会わせて男子6人、女子5人、総勢11人が部屋にいるわけだが、皆不安そうな顔をしている。そりゃそうだろう。親元を離れて最初の出来事がこれじゃスタート最悪だ。気分はビターブラックだなこりゃ。

 直すのにも相当時間がかかるだろう。

 まぁ、普通(・・)にやったら(・・・・・)だが……ん? まさか?


「……特にやりたいことはない。カミに書いてある注意点は全て読んだが、無視していいものがほとんど。つまり、改造しようが(・・・・・・)何しようが(・・・・・)自由(・・)。さっき貴族の言質もとったしな」

「「「…………」」」


 ……ほほう。


「……確かに」

「……確かにな」

「……うむ」


 何をしようが自由、と言った瞬間皆の目がギラリと光るのを俺は見逃さなかった。

 もちろんそれは他の三人も気づいているだろう。


「……何ができる?」

「家具や道具作りだな。鍛冶室がないと話しにならんが」

「ウチは食料調達と体力には自信ありや。掃除でもなんでもやったるで?」

「俺は材料調達と壁の修理だな。瓦礫や砂粒を固めてレンガにできる」

「……じゃあ、その他は俺の指示にしたがって雑用だ」


 俺もマリーもイジェットもソルクも、各々何をするかは理解した。

 しかし、他の子供達はまだ不安顔だ。


「な、なんでそんなに、楽しそうなん……ですか?」

「そうだよ~、しばらくここで暮らすなんてやだよ~……」


 気持ちはわかる。

 だがこうも考えられるだろう。


「何言ってんの? 俺達は今自由にしていいお家(オモチャ)をもらったんだぜ? 喜ばねえの?」

「「「……」」」


 自分でもわかる。

 俺今、スッゲー悪い顔してる。


「何をしても自由や。壁に落書きしようが、結晶掘り起こそうが、部屋を拡張しようが好きにできるんやで?」

「しかもここに大人はいない。何をしようと怒られる心配は、しなくていい」

「「「……」」」


 果てしなく黒い笑顔でそう宣言する俺達に、他の子供達の表情は段々同じ顔に汚染されていく。


「……僕、自分の鍛冶室が欲しかった」

「……お菓子食べ放題」

「……俺のための自由にしていい部屋」

「……私、前々からやりたい実験があったけど、親に禁止されてた。でもここでそれは関係ない」

「親の許可は……」

「「「……いらない」」」


 沸々と燃え出す親に抑圧されていたフラストレーションが皆の口角をつり上げていく。

 親の監視は無し。

 授業は明日からだが今はちょうど昼ごろ。

 時間はたくさんある。

 俺もやりたいことがある。

 様々な枷が外れた子供達が、自由にしていいオモチャを手に入れ暴れだそうとしていた。


「……まずは、掃除からだな」

「「「「「「……」」」」」」


 水さすなこんちくしょう(泣)!

とりあえず書き溜めを投稿。次回は一週間後ぐらいかな

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