めんどくさがり、しっかり!
家に!! 帰って!! きたふははははは!!
ベッドの上にはテンパが横たわっている。
深夜の教室で女生徒を待ち伏せし賭け鬼ごっこを強要し屋上から飛び降りる程嫌がっていたのに捕らえ本人の意向も聞かず無理矢理家まで担いだ上に自分のベッドに寝かすどうも俺です。
あれ? 大変な変態に聞こえる? 言い直そう。
深夜出歩くのは危ないので注意しようと教室で待ちぼうけにあうも耐え嫌々ながらも彼女の希望に沿うように遊んでいる最中に彼女が屋上から足を滑らせ落ちるのを身を呈して救い介抱するため疲れている自分を押してベッドを譲る紳士どうも、っ俺です!
うん真実。
危ない危ない、本当に言葉って危険。誤解されちゃうとこだヨ!
さて。
ベッドの上のテンパを見る。あれだけ激しく動いたのにテンパは薄く汗もかいておらず、人形のように眠っている。フワフワの髪、長い睫、白い肌、華奢で小さな体。薄い唇に薄い胸板。体のサイズに比べて長い手足。
……おぅっふ。いや別に? 変なこと考えてるわけじゃないよ? ただね? 心配じゃない? 高い所から落ちたり電気浴びたりしてるし。人口呼吸と心臓マッサージぐらいしとくべきかなって、ね? 夏に向けて。え? ピュア? なにそれ魔法?
徐にテンパに顔を近づける。
スー スー
胸は規則正しく上下しており呼吸音も聞こえる。
幻聴だな。いかんねぇー、俺も疲れてるんだろうなぁー、……はっ! こうしちゃいられない。速くテンパを助けなきゃ。
いや待て。ほんと待って。
なんか、こぅー……、おかしくなってない、俺? これが噂の断眠ハイってやつか?
思わず額に手を当てる。熱でも出てるんじゃないかと。もう一方の手をグーパー。目をシパシパ。目の端に何か赤いのが引っかかったので見てみる。自分のシャツが血で真っ赤だった。あぁ、そう言えば。
学校指定の夏用の制服を脱ぎ、下の黒いTシャツも脱ぐ。うぇー痛ぇー。
肩と胸から弾丸をほじくり出す。軽く部屋に血が散ったが、いつも姉から出血させられる量に比べれば軽い軽い。
しかし血でベタベタになってしまったな。風呂入ってくるかぁー。いやなに、そんなつもりじゃないよ?
新しい黒いTシャツと下着に短パンを引っ張り出して風呂に向かった。今日は姉の理不尽に遭わなかっただけマシですわー。
風呂に! 入って! きたよー!!
駄目だ俺はもう駄目だ。暑い日の終わりに熱い風呂に入ってエアコンガンガン(新手の雑誌にあらず)効かせた部屋に入ったらもう駄目だ手遅れだ。
フラフラと床に寝転がった。
あー、きちぃ。冷たいもん(炭酸)をキューっといきたい。ダラダラしたい。寝たい。
「いや、寝てよかろ」
ガバッと跳ね起きこの世の真理に気付いてしまった。どうも俺です。
エアコンのタイマーをセットしてフカフカの布団を押し入れから取り出す。冬まで会うことはないと思っていた恋人(布団)に意外な再会。ついでに薄いブランケットを取り出してテンパにかけてやる。風邪引かれても困るしなー。
………………。
あれ? 大丈夫か?
えーと、テンパは殺る気満々で暗記満載の人間兵器で俺はターゲット。そんな危険人物の隣で無防備に眠る仔羊(俺)。
覚醒するテンパ。
隣に仔羊。
料理。
たいぃーほ。
? ……?
俺は一つ頷く。ま、いいわ。もうね、眠いねん。ダイエットは明日からやるわ。
俺はグルグル(魔法陣にあらず)とセルフ簀巻きで布団にくるまった。あれ? こうすれば弟の引っ剥がしに対抗できんじゃね? やう゛ぇ、エジソンだな。
何か書くものを探したが動くことは出来なかった。じゃあ、仕方ないね。寝よう。
俺の意識はあっさりと旅立っていった。