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めんどくさがりはブレない


 一年生から呼び出されました。



 ……なんだろうー? 告白かなー?……うん。それもうやったわ。


 実は余り動揺はないよ? それどころか、……またか……ふぅ、やれやれ。ってやれるぐらい慣れてるわ。ハハハ! なんと今まで五回も呼び出されたことあるわ! 余裕だわ! ……………弟への橋渡しに。ぶわっ。一撃で耐久値の限界まで持ってくとか、なんなのあいつ。バカなの? 死ぬの? 連邦なの?


 めんどくさいので断ってみましたー。


 そしたら「俺の顔立てると思って」とか言ってきた。潰してろ! 貴様の顔なぞ知らんわ! 名前も知らんわ! やだ?! 他人じゃん?!


 俺の嫌そうな表情でこのままだと断られると悟ったのか、「じゃ、頼むわ」とか片手で俺を拝んで行ってしまった。掃除時間の事でした。


 わかってるよー、ちょっとしたことだもんねー、昨日の委員の仕事の方が時間掛かってるよねー、でもねー、これ本来やらなくてもいい事なんだよねー、勝手に行ってー、砕けてこいってゆーかー、あいつ彼女いるしー、色んな意味で徒労ってゆーかー、…………………………………………………………帰りてぇ。






 放課後ですよ。


 いつもならテンションマキシマム! ……悪魔の一言で地獄(焼却炉)へとやってきました。すげえよ。言葉の魔術だよ。そのうち絶対騙されちゃうよ。なんか対策しないと! 弟に、てめーのケツはてめーでふけやカス! とか言ってみようかしらん?


「……あのー」


 それか彼女にチクってみるか? 修羅場るだけだろうが、俺の溜飲は下がる。 いや、兄貴の愛だよ?


「もしも〜し」


 あー、みんな帰ってんのに……。何やってんのかな、俺。……今ごろ家についてゴロゴロしてるはずなのに。


「先輩? せんぱ〜い」


 背中をツンツンされた。


 ……何? この学校? 里なの? 俺の背後をとるのが流行なの?


 振り向くとオカッパ頭の美少女が立っていた。


「あ〜。宮本先輩から聞いたと思うんですけど。呼び出したの、私です」


 やべー。宮本先輩が誰かすら分からねー。


「それで、ですね。用件は分かってるとは思うんですけど」


 あー、ね。言っとく? 彼女いるよー、って。……いや、もう余計な情報入れてややこしくなんのがめんどい。


「一応、ですね? ちゃんと言っとこうかと……」


 も、なんでもいいよ。手紙でも言葉でも、弟には叩きつけてやっから。



「――好きですっ。つきあって下さい!」



 ……ん? なんだって? もう一回言って、なんて言わねーよ?! そこまで鬼じゃねーよ!


 頬を赤くして上目づかいでこっちを見てるオカッパちゃん。


 一応確認しとこ。


「俺の事が?」


「好きですっ」


「君と?」


「つつつきあって下さい」


 もう顔全体が赤い。体もプルプル揺れてる。



 鬼でした。



 ……もう一度彼女をよく見てみる。

 切れ長の瞳に薄い唇。サラサラの黒髪に華奢な体つき。


 えー?! 待って待って君めちゃくちゃ可愛いよ?! どうしたんだ! 早まるな! この子が俺の彼女になるってこと? つまり、キャッキャウフフ、アハハ、グヘヘな事が可能ってことね。すごいね! 捕まるんじゃね?


「ごめんなさい」


 「ごめんなさい」したのは俺。


 俺のあれな顔見てオカッパちゃんが速攻「ごめんなさい」したわけじゃないよ? 念の為。


 チラッと顔を上げる俺。


 えーーー?! 超泣きそう?! 顔色は赤から青へモデルチェンジ。唇は半開きでプルプル。今にも倒れちゃいそうだよ! 何この罪悪感! ザクザク精神削ってくるよ! 助けて弟!! 修羅場プローーー!

 しかし前言撤回する気はない。いや、モテんのはうれしいし、彼女も欲しいよ? でも好きでもない子とつきあったりする気はないんだよ。ピュアなんだよ。あ、女子との交流ゼロだ。つまりつきあう気ないね。

 プルプルするオカッパ。背中の汗全開の俺。どうする。どうする?!






 家に! 帰って! きったよー!!


 行間を読め。君達ならできる。


 いつも通り、……二百……三百、四百越えました! をやりつつ、最愛の彼女(布団)にその身を委ねる。


 そのままカッと目を見開く。


 ……あぶないあぶない。時に誘惑を破れなければ、真に目指すべき場所にはたどり着けはしないのだよ!


 鞄からシュークリームの入った箱を取り出す。


 いやね? 普段の行いを猛省して時に弟を労うのもいいかと思ったのですよ。賄賂じゃないよ? 友好の証、さ! 一年の問題は一年に限るよ。親が子の喧嘩に出ちゃダメだよ。もし繋ぎを頼まれたら、断ってもらう。お兄ちゃん命令!


 さっさと済まそう。あんまり楽しい事でもないし。……弟は毎回あんな場面を踏んできてたんだなぁ。次からは橋渡しも考えるよ。出来ればやらない方向で。連絡もこないほうがいい。


 サクッと弟の部屋(真に目指すべき場所)を訪ねる。ノックしてガチャ。


「……兄ちゃん。それ、意味ねーからな? 返事すんの待てよ……」


「お邪魔してます」


 弟の部屋には彼女がいた。

 メガネを掛けて三つ編みおさげのまだ少し幼い顔立ちの弟の彼女。


 前に弟との会話でつい口をついて、地味子ちゃんって言ったら本気で殴られた。二回転ぐらい回ったよ? 気をつけよう。……しかし、甘いな(シュークリームだけに!)。弟よ(……なしで)。こんなこともあろうかと! 三つ買って置きました! ……いなかったら? 二つ食べましたけど?


「いや、お前にさ。日頃苦労かけてるなーって思ってさ……反省して」


「えっ! 明日からちゃんと起きてくれんの?!」


「それはない」


「なんでだよ?!」


 なに言ってるのかしらこの子?


「でさ。今まで、お前が好きな子。違った。お前の事を好きな子を紹介したりしたじゃん? あれって善くないよね〜」


「兄ちゃん?!」


「今度からお互い、お、た、が、い、そういう事は止めないかと思ってさ?」


「……普通そういう事しないから。てゆーか! 今は別に気にすることあるじゃん?! 主に兄ちゃんのせいで?!」


「……あ、そうなの?」


 なーんだ。あーいうの受けちゃ駄目なんだなー。……ちぇ。なんか損しちゃったぜ。


 俺はシュークリームを箱から一個取り出すと、二度程室温が下がった弟の部屋を後にした。


 部屋の扉を閉める時に「置いてくとか?!」という声が聞こえたけど、これ以上邪魔しちゃ悪いしね? おさげちゃんも笑ってた(冷たく)から大丈夫大丈夫。さて、多分今から弟は彼女と戯れるだろうから、俺も部屋で恋人(布団)と戯れよー。







 夕飯の時に弟の頬に紅葉がついてたので、季節じゃないよ? と言ったら怒られた。どうやら今までそういう話は彼女にしたことないらしく、弟は結構凹んでた。


 ざま…どんまい。どんなに可愛い子に告られてもおさげちゃん一筋な弟がフラれる様は、あまり思い浮かばんがな。

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