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めんどくさがりの弟

 俺の名前は八神健二。八神家の末っ子だ。よろしくな!


 俺の家は五人家族。家族構成は、父さん、母さん、姉ちゃん、兄ちゃん、俺だ。


 俺の家の父さんは普通のおっさんだ。よく友達に格好よさそうとか言われたりするけど幻想だ。休みの日とかゴロゴロしてるし、毎日の晩酌を楽しみにしてる、ごく普通のおじさん。

 母さんがそんな父さんをよく外に連れ出す。二人で遊びに行ったり食事に行ったり。母さんは父さんにベタぼれで、よく下に妹か弟が出来なかったなと思ってるよ。まだ油断できないけど。


 そんな母さんは身内の贔屓目を抜いても美人だ。母さんの家系は代々そうらしく、余り老いを感じさせない。二十代で十分通用する。肉体のピークが長いからなのかは解らないが、母さんはデタラメに強い。性格は温厚なので余り怒らないけどね。


 そんな母さんに似てるのが姉ちゃんだ。姉ちゃんもビックリする程綺麗だ。今年二十歳に成るのにまだ少し幼さを残した可憐な容姿は老若男女を惹きつけて止まない。

 しかし同時に近寄り難いオーラの様な物が出ていて、弟の俺でも躊躇する時がある程だ。兄ちゃんは気にしないけど。この前、品物が入ってるであろうコンビニのビニール袋を顔に叩きつけていた。……兄ちゃん。


 でも姉ちゃんは兄ちゃんを絶対気にいってる。傍目にわかるよ。兄ちゃんと会話したりじゃれたりしてる時、本当に嬉しそうに笑うから。大体姉ちゃんはメッタに俺の部屋に来ないのに、兄ちゃんの部屋にはよく行くのだ。分からない方がおかしい。

 兄ちゃんは知らない……というより、どうでもいいのかも知れないが、姉ちゃんは真剣な交際を申し込まれる事が多い。そんな人達は姉ちゃんのオーラを越えてくるだけあって、なかなかの傑物揃いだ。全部断っているが、休日に会いに行って丁寧に断る事が多い。

 ストレスが溜まるのか、そんな時はよく兄ちゃんを弄って遊んでいる。


 夜、姉ちゃんが呼び出されて出て行った後、微妙に落ち込んで帰って来たときも、次の日の朝、兄ちゃんはナチュラルに姉ちゃんを元気づけていた。仕方ない、この顔の痛みは忘れてやるか。


 最後に俺の兄ちゃん。俺が家族で一番尊敬しているのが、この人。

 子供頃からずっと頼りになって、強くて優しくて頭がよくて最高の兄だ!

 大抵相談事は兄ちゃんにする。兄ちゃんはよく分かってないみたいだが、兄ちゃんを相手にすると警戒が薄れるというか、いつの間にか懐に入って来てるというか、兎に角話し易いのだ。考えてる事も顔に出やすく、反応も素直なので取っ付き易い。肩の力を抜いて接する事ができる。


 しかしそんな兄ちゃんにも欠点は存在する。しかも複数。


 まず一つ。手を抜きたがる。

 俺と兄ちゃんは、小、中、高、と一緒の学校に通っているが、兄ちゃんは目立つ事がない。

 喧嘩も滅茶苦茶強いし、頭も恐ろしい程良いし、見た目もちゃんとしたらがつくが、そこそこ整っている。なのに、兄ちゃんの噂を耳にした事がない。

 一度兄ちゃんのテストの答案を見たことがあるが、難しい問題は解いているのに簡単な問題は手をつけてもいなかった。

 どうしてか聞いたら、


「配点がデカいからな」


 と得意気な顔で答えた。


 喧嘩や手合わせでもよく負ける。本人はどこ吹く風だ。


 兄ちゃんと俺は幼い頃は爺ちゃんの家に住んでいた。

 母さんが父さんの海外出張に付いていき、当時小学校にも通ってなかった兄ちゃんと俺は爺ちゃんの家に預けられた。姉ちゃんだけ父さん達に付いていったが。

 我が家は放任も放任なので、正直爺ちゃんの家にいた方が構ってもらえたし、爺ちゃんには色々な事を教えて貰ったから、俺は爺ちゃんの家が好きだった。兄ちゃんは微妙な顔をするが。


 武術や闘い方も爺ちゃんに教えて貰った事だ。はっきり言って兄ちゃんと母さん以外に負ける気がしない。


 なのに兄ちゃんは喧嘩に負ける。


 どうも兄ちゃんはそのままで問題がないと思ったら途端に手を抜く癖がある。朝起きないのも一つだ。試しに二週間程起こさなかったら、二週間学校を休んだ事がある。

 俺や姉ちゃんが関わらなければ引きこもりになりそうな気がする。本当に心配だ。


 そして二つ目。勢いで行動する。

 兄ちゃんの考えや行動は家族の誰も予想できない。香奈を俺にけしかけたり、姉ちゃんの琴線に触れる様な事をしたり、……肉塊に変えられるかも知れないのに父さんに刃向かったりするんだ。これは明らかな悪癖なのに兄ちゃんは絶対学習しない。一つ目の欠点と相反するはずなのに何故か上手く同居してるんだ。

 姉ちゃんへのお土産にクレープを買ってきたのに、一つがビチョビチョでどう考えても食べれないのに笑顔で姉ちゃんに渡していた。姉ちゃんが兄ちゃんの顔にそのクレープを叩きつけたら、そのままモシャモシャ食べていたし。その後、姉ちゃんから俺の分だとクレープを貰った。


 兄ちゃんの欠点で大きなのがこの二つだ。この二つがなく、普通に生活するだけで、兄ちゃんは『十傑』に名を連ねていただろう。


 この『十傑』というのは我が校で校内外問わず有名な人の事を指す。但し、常に十人いるわけではないらしく、姉ちゃんの代には最高で六人しかいなかったらしい。


 当然兄ちゃんも入っていると思って入学したが、学校に通う内に兄の名はない事が分かった。……高校でも貫いてるなんて……兄ちゃん、弟は驚きです。


 俺の名が入った事にも驚いた。同じクラスにも一人いるのだが、明らかに次元の違う人間で、これと一緒に見られてるかと思うと冷や汗が出た。


 俺の腕力は元来の物と鍛えてついた物だが、学力は一生懸命努力しているからだ。

こまめに予習復習をして、テスト前にはちゃんとテスト勉強をした結果だ。それでも一位二位の人から三十点近く離されての三位だ。同じクラスにいる澁澤さんなんて授業中は余り真面目に見えないのに僅差で二位。運動もサボっているが、見た目に反して能力は高い。

 ……澁澤さん……なんか苦手。


 学校の外にも名前が知れ渡っているのは……若気の至りだ。本当恥ずかしい。


 母方の家系では十五で一人前と見做されるので、もうあんな恥ずかしい事できないが、兄ちゃんには本当に感謝している。

 だから兄ちゃん、ちゃんと進級して無事卒業してくれよ。年間何十日も休まないでくれ。留年したら気にすることなくサクッと学校を辞める気がするよ。何の痛痒もなく働き始めそうだし……。


 毎日をそんな感じの家族と暮らしているが、俺は概ね幸せだ。


 どんな一日を過ごしているかと問われれば、俺の一日は大体こんな感じ。









 朝は六時に起きる。


 目覚ましが鳴りだすと同時に止め、カーテンを開けて天気をチェックする。


 朝練は自由参加の形を取ってはいるが、基本は皆毎日参加する。当然、俺も毎日行ってる。


 トイレに行って顔を洗い、髪を溶かしてセットする。一度自分の部屋に戻って今日の準備をした後に制服に着替える。


 台所に降りると、父さんと母さんが起きている。起きてなかったら起こすのも俺がやったりする。


「おはよう。父さん、母さん」


「おはよ〜。けんはいつも早いなぁ〜」


「おはよう。朝ご飯どうする?」


「トーストと牛乳でいいよ」


「分かったわ。ちょっと待っててね」


 母さんがパンを焼いてる間、俺は自分の弁当を作る。それぞれ昼飯代や夕飯代を貰うのだが、浮いた分は小遣いにしていいと言われているので、俺は弁当を自作している。


 父さんは俺より少し後に出る。工場勤務だ。

 母さんはもう少しゆっくりしていていいのだが、父さんといちゃつく為に同じ時間に起きている。キャリアウーマンだ。


 唯一兄ちゃんだけは父さんに似ている気がする。でも父さんは決して突飛な行動を取ったりしない。


 食事を終えて、弁当を鞄に詰めたら荷物を玄関に。俺は家を出る前に二階に戻る。兄ちゃんを起こすためだ。


 いつもの様に兄ちゃんを起こす。この布団を隅に投げ捨てていく方法を編み出したのは父さんだ。叩いても揺すっても起きず、引きずり出すしかなかったのだが、父さんが「布団を引っ剥がして四隅に放ればいいよー」と言ったので実行したら、本当にギリギリだけど起きてくるようになった。何で起こし方が分かったのか聞いたら、「父さんの母さんも同じようにして起こしてたからね」と苦笑していた。


 兄ちゃんを起こしたら俺の朝の仕事は終わりだ。歩いて学校に行く。


 この時間は毎日、香奈にメールを送る。電車で別の高校に通っているから、香奈の暇つぶしになればいいなと思ってだ。女性専用車両がない列車に乗る時は、痴漢が心配だが今の所あった事はないそうだ。「満員電車に遭遇した事ないし、友達と行ってるから大丈夫だよ」と言ってたが油断はよくない。いざとなったら痴漢は根絶やしにしよう。


 朝練は筋トレとランニングがメインだ。全然キツくない。朝練が終わったら同じクラスの奴と話しながら教室に行く。教室で皆と挨拶を交わして授業が始まるまで雑談する。


 授業中は真面目にノートを取りながら、解りにくい所にチェックを入れる。後々躓かないようにするためだ。

 昼休みに入るといつものメンバーと飯を食べる。沼田と白浜、偶に吉岡も加わる。吉岡だけ学食勢なので、購買でパンを買った時だけ一緒に食べる。それに安達さんのグループとよく一緒になる。俺は別に野郎だけで食べてもいいのだが、「彼女持ちは黙ってろ」と言われるので大人しく従う。


 クラスの雰囲気は割といい方だと思うのだが、トイレや朝練から戻ってきて教室に入る時、微妙な空気が漂っている事もある。ハッキリ目撃した事がないし、直ぐにクラスの奴と馬鹿話を始めるので、勘違いだと思うけど。『十傑』だから特別扱いされてるわけじゃないよな?


 彼女がいる事を公言しているのに、何故か告白されたりする。鈍感じゃないので、安達さんが俺狙いなのも薄々分かっているが……告白されてもないのに断るっておかしいよな。香奈に俺の高校生活は見せられない。


 残りの昼休みは遊んだり、呼び出しに応えたりする。…………だから彼女いるって。


 今日も二年の女子から呼び出された。


 待ち合わせ場所の空き教室に行くと、ポニーテールの女生徒がいた。


 俺はこの先輩を知っている。我が校が『十傑』の一人『武神』蕪沢椎名先輩だ。…………懐かしいな。あの時は俺も兄ちゃんも坊主頭だったんだよな。


 相変わらず凄い威圧感を放ってるな。この先輩も澁澤さんも本当に目立つ。こんな人達と同格に扱われてるとか本当止めてほしい。


 蕪沢先輩が声を掛けてくる。


「……初めまして。八神健二って君の事だよね? 私は二年の蕪沢椎名だ」


「うっす! 一年の八神健二です。 宜しくお願いします」


 テニス部だからか、なんか先輩への挨拶って畏まっちゃうんだよな。……告白ではなさそうだな。


 蕪沢先輩は俺の挨拶に頷きを返すと、なんか困った顔をしている。……用件を催促するべきだろうか?


「……君を呼んだのはだな、……その、なんというか、…………取り敢えず、君のお兄さんに渡りをつけて欲しいんだ」


「渡り、……ですか?」


 何だろう? 正直俺を介す意味が分からない。直接話し掛ければいい。さっき「初めまして」と言っていたので、恐らく俺の事も兄ちゃんの事も忘れているんだろう。なら初対面の俺を呼び出して繋ぎにするより、自分で兄ちゃんを呼び出した方が早い。――――もしくは、


「……あの、告白の繋ぎとかは、ちょっと」


「あー、違う違う。本当に、君のお兄さんと話してみたいだけなんだ」


「……? なら、先輩が直接兄ちゃんを呼んだ方が早いですよ。わざわざ一回俺を通さなくても」


 そこで蕪沢先輩は又、困った顔をした。


「……私の自業自得なんだが……君のお兄さんには避けられていてね。正直、昼休み放課後と探してはいるんだが……。同じクラスの奴に伝言を頼んでも、緊急性の高い用事があるとか突発的な発作だとかで、かわされまくっててね」


 あー、言いそう。逃げ切れるもんでもないのに先延ばしにするんだよなー。


 俺は少し悩んだ。伝言ぐらいなら良かったんだが、呼び出しには応じないだろうからだ。例え誰が相手だろうと無視する気がする。一番良いのは、言い捨てて押しつければブチブチ言いながらもやってくれるだろうが、後が恐い。


「……兄ちゃんが嫌がってるなら、俺がどう言っても動いたりしないと思いますけど……」


 少し申し訳なさそうな声音で、俺は言った。


「……やはりそうか。……同級生に話し掛けるのがこんなに大変とは思わなかったよ」


 蕪沢先輩は溜め息をつくと、寂しそうに笑った。


「……一応、言うだけ言ってみますけど、期待はしないで下さい。日時と場所を聞いても?」


「ああ、出来れば今日の放課後が望ましいな。明日はもう休みだから」


「すいません。放課後は部活があるので、ちょっと……。電話もメールも兄ちゃんは多分取ってくれませんから、……直接会って言わないと。今日帰ってから話します。明日の予定は?」


「ああ、構わない。連絡先を交換しておこうか? 上手くいっても駄目でも連絡はして。日時も場所も好きにしてくれていい」


 俺と蕪沢先輩は連絡先を交換した。


「じゃあ、悪かったね。昼休みを削って。……連絡を待ってる」


 そう言って蕪沢先輩は先に空き教室を出て行った。一緒に出て行って変な噂とか立っても嫌なので、俺は少し間をおいてから教室に戻っていった。








 部活が終わり家に帰ると、着替えもそこそこに兄ちゃんの部屋に行った。間違いなくいるだろう。ノックはしない。兄ちゃんの部屋だけはしても意味がないからだ。他の部屋……例えば姉ちゃんの部屋とかならする。兄ちゃんはいてもいなくても返事をしないので、そのうち止めてしまった。


「兄ちゃん。今、いい?」


「駄目だ」


 気にせず続ける。分かってた返事だ。


「兄ちゃん、蕪沢先輩って知ってる?」


 兄ちゃんは少し不思議そうな顔をしてる。これは蕪沢先輩どうのじゃなく、「アレー? 俺ダメってアレー?」という顔だ。


 無視して続ける。


「何か兄ちゃんに話したい事があるんだって。蕪沢先輩」


「俺には無い」


 俺の方を見て、コイツ早く出ていかねーのかなーと明らかな不満顔を見せる。兄ちゃんは一人の時間を邪魔される事を嫌う。でも、いつもそうなので気にならない。


「兄ちゃんに会って話したいんだって。日時と場所もこっちで決めていいって言ってたよ」


「…………こ」


「告白じゃない」


 兄ちゃんは一瞬で顔を床に突っ込ませていた。


 告白でもどうせ断るくせに。


 最近は莉然先輩が兄ちゃんの部屋に偶にいるが、彼女じゃないのは家族皆分かってる。


 正直、『十傑』の先輩が何で兄ちゃんの部屋にいたかは分からないけど、兄ちゃんが他人を部屋に招いているのを初めてみたので、些か取り乱してしまった。香奈に高校生だからそういう事もあるよ、と言われたが、兄ちゃんだから驚いているのだ。姉ちゃんなんて俺の三倍は取り乱していたじゃないか。


 因みに兄ちゃんは『十傑』を知らない。名前がないので、もしや? とは思っていたが。他人に余り興味無い兄ちゃんはクラスの人の名前も知らないんじゃないかな? なーんて。少し言い過ぎた。


 漸く再起動した兄ちゃんは、会話を続けたくないのかゲームの電源を入れた。


「……どうする? 明日休みだし、暇なんだろ? 平日の放課後でも良いってよ?」


 兄ちゃんは嫌そうに顔を歪めると、徐に手を懐に突っ込みカードを取り出した。……ライフカード? 兄ちゃん、これ自作?


 三枚程のカードが、


『断る』『嫌だ』『生きていたい! ありがとうを言うために!』


 とあった。……兄ちゃん。


「疾く去ね」


 話は終わりとばかりに手を振られた。予想通りの結果だ。予想外の行動だったが……。


 俺は兄ちゃんの部屋を出て、自室に戻った。


 蕪沢先輩に結果を報告するために電話を掛けた。


「――――という訳なんです。すいません。御力には成れませんでした」


 蕪沢先輩は電話越しに溜め息をつく。


『いいわ。ありがとう。……それにしても、嫌われちゃったな……』


「いえ。兄ちゃん多分誰にでもあんなですよ? もういっそウチに来ますか?」


 それが一番いい案に思えたが。


『……でも、八神は話を聞いてくれないでしょう? 顔を出してくれないと、……ちょっと』


 蕪沢先輩もしかして少し落ち込んでます?


 俺は暫く頭を捻らせ閃いた案を告げてみた。


『――――でも、それじゃ騙す形になると思うんだけど?』


「正直、蕪沢先輩が兄ちゃんに何を話したいのか分かりません。でも兄ちゃんはどんな事でも面倒に思いますよ? 正攻法じゃ無理ですよ。それに――――」


『……それに?』


「兄ちゃんって、何を言われようが何をされようが、次の日にはケロッとしてるんで、余り気に病まなくていいです」


 これから騙す事も、蕪沢先輩が気に病む事を兄ちゃんにしてたとしても。するとしても。


 九年前の出稽古で、蕪沢先輩は兄ちゃんに挑戦をしていた。


「知ってます? 俺の兄貴は凄いんです」


 電話の向こうから息を呑む気配が伝わってくる。


『…………君は、…………いや、ここまで世話になってるから、後は私が自分で確かめるよ』


「今回が最後ですからね? あと、先輩の番号は消します。俺、彼女いるんで」


 兄ちゃんがこれ以上、香奈をけしかける材料を残しておくつもりはない。





 電話を切った後に、俺は思った。兄ちゃんはまた面倒に巻き込まれるのだろう。それが少し愉快だった。


 やはり俺も八神家の一員なんだな。


 俺の名前は八神健二。八神家の末っ子だ。

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