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踊らされる人生。嗚呼、あんたが憎いよ

キーワード。

身勝手・振り回される


私・葉月はづき。  

スペックの高い男と幼馴染になったばかりに、常にトラブルに巻き込まれる損な役回り。


幼馴染・俺。 

私の幼馴染。女好き。葉月を振り回していいのは、自分だけだと思っている最低野郎。

私の幼馴染は無類の女好き。

その優れた容姿を活かして、次から次へと女漁り。

そんな男が私に手を出さないのは……って、ああ。念の為に言っておくけど、私はあの男に手を出されたいとか、抱いて欲しいとか思ったことはない。

それこそ、生まれてこの方、一度もそんな馬鹿なことを考えたことはない。

大事なことだからもう一度言うけど、私はあの男に抱かれたいとか思ったことはない。以上!


……ついでに言うけれど、あいつが私に手を出してこない理由がある。

それは“え?あー……、俺にもやっぱ好みの女ってもんがあるんだよ”だそうだ。

あいつは、あいつの友人たちの会話でそう言っていたに過ぎなかったが、こともあろうに私の顔を一度見た後でそう言いやがった。

はっきり言って、あの男の存在ごと海に沈めてやりたい気分になったのは、言うまでもない。



『踊らされる人生。嗚呼、あんたが憎いよ』



私は実に不幸な人間だ。

それこそ、生まれたその瞬間から不幸そのものだったと言えよう。

それもこれも、幼馴染のあの男が不幸の元凶だった。

奴と私の家は、まず普通なら知り合いになること事体、信じられないような間柄。

私の家は中流階級で、至って平凡な家庭。

サラリーマンの父にパート勤めの母。そして、中学生の私の三人家族。

片や奴の家は、大手の社長さんである小父様に、これまた有名会社の会長を父に持つ小母様。

その二人は家柄良し、顔良し、性格良し。

もう、文句のつけようがないってくらいの人たちで、私の憧れの存在だったりもする。

ただ、最近思うのは、どうしてこんな金持ちの人たちが私のお隣さんで、家族ぐるみの付き合いをしているのか、謎といえば謎。

――って、まぁその疑問は置いておくとして。

家族ぐるみの付き合いということは、流れから察せられるように奴と私は幼馴染という関係ということになるわけで。

しかも、生まれた年が一緒だったばかりに、余計に奴と関わるはめになって……。

その現実に何度枕を叩き潰したことか……っ!


……ああ、私。枕を涙で濡らすような柔な心を持っているわけじゃないんであしからず。

だって、あんなスペックの高い息子さんの傍にいて何もないわけないじゃない。

必然的にいろいろと関わりたくない嫌なイベントごとがてんこ盛りなわけ。

そんなことを何回もどころか、何十回も経験してたら逞しくなるって。悲しいことにさ。

まぁ、でも。それも今日でおしまい。

なんと、あいつのあまりの女遊びの激しさに、とうとう小父様が怒ったみたいで、強制的に男子校送りになるんだってあいつ。

元々頭は良かったから、例え偏差値が高いと有名な男子校に行ったとしても問題ないと思うんだよね。

あぁ、でも。何か問題があるとすれば、あそこは全寮制だって聞くから、あいつが痺れ切らして男に走ってしまいそうってことかな?

次は男漁りでも始める気かね~奴は。

でも、まぁ。あそこは、見目麗しい男たちがわんさかいるって親友の理香子が言ってたし、見た目とかそういう意味では有りなのかもね。

だって、あいつってば小父様と小母様に似て美形な上、やや小母様似だから、逆に襲われちゃったりとかしちゃってさー。

ははっ、ざまぁ(笑)と思ったのは、言うまでもない。



―――あれから数か月後。

何故かその男子校にあいつと一緒に通うことになってしまった私がいた。

って、これ何かおかしくない?

私は、家から最も近い男女共学の公立高校に行くはずだった。

それが、どうしてこうなった?

戸惑いを隠せない私に奴は、まるで世間話でもするかのように『あぁ、お前も俺と同じ学校に行くことになったから、髪切ってこいよ』と。

言われた言葉の意味を必死で理解しようとする私に奴は、更に追い打ちをかけた。

「お前と俺、同じ部屋だけどな、安心しろよ。お前相手だと食指が動かないっていうか、ぜってー勃たねぇから。

案外、あそこに通う男共のほうがよっぽど反応するかもな」

ようやく奴の言った内容を理解すると、こいつの言動全てに苛っとした。

「なんで私がそんなとこ行かないといけないのさ?

あぁ、あと。男に反応するかもって言うぐらいなら、どうぞご自由に、お好きなだけヤりゃーいいんじゃない?」

「お前な~、仮にも女だろ?男みてーなこと言ってんじゃねぇーよ葉月。彼氏出来ねぇぞ。

……あ、そうそう。お前を連れて行く理由だけどな。

とりあえず“女”っていう存在を傍に置いておきてーんだよ。それがねぇと俺の精神衛生上宜しくない。


――そんなわけで、お前道連れ」


可愛らしく笑うこの男を、心底殴りたいと思った中三の冬。

かくして、無謀とも思える茶番劇が始まろうとしていた。


あぁ、ほんと。あんたが憎くて仕方ないよ。



私の幼馴染さん?


『踊らされる人生。嗚呼、あんたが憎いよ』 了

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