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手折られた花の行方は・5
恨んでもいいから。
憎んでもいいから。
関心を持たれない方が、よっぽど辛いから――。
『手折られた花の行方は・5』
人々が眠りに付く頃。私は行動することにしました。
箪笥の中に収納されていた衣服をいくつか鞄の中に詰め込んで、……その中には、初めて私が異世界に召喚されたときに着ていた服も入れておきました。
私と元の世界とを繋ぐモノ。今の私にとって、唯一縋れる大切なモノでしたから。
衣服の他に、二度の食事で出された物の中で、比較的保存がききそうな物をいくつか鞄の中に入れました。
肩から斜めにかけるタイプの鞄を提げ、午前中に書いた手紙を机の上に置きました。
そっと、机を指で名残惜しげに撫で、
「……さよなら」
二度と開かれることのない城内へと続く扉に一瞬だけ視線を向けた私は、全ての想いを断ち切るように隠し扉にそっと手を添え、
『手折られた花の行方は・5』 了
ぱたりと、静かな音を立てて閉まる扉。
今日この日をもって、部屋の主はいなくなった―――。