手折られた花の行方は・1
キーワード。
異世界トリップ・正妃・シリアス・歪んだ愛情・捨てられる
水城薫。
“聖女”として、カッツォーリ帝国に嫁いだ。
ロット・ルーガス・カッツォーリ。
カッツォーリ帝国の王。
薫の旦那。
異世界と呼ぶに相応しい、ここオルデンに召喚されてから早一年。
何故か私は、“正妃”という名の肩書きを得ていました――。
『手折られた花の行方は・1』
私がこの世界に呼ばれた理由は、至極単純なものでした。
――王位継承のため、異世界から召喚した乙女を伴侶として迎える。そういう仕来りだ。
ただ、それだけだったんです。
そのためだけに私は、元の世界との繋がりを切られ、もう二度と、家族に会うことも出来なくなりました。
それが、どれだけの絶望だったのか。彼らは、一生知ることもないでしょう。
知らないからこそ、彼らは私にこう言えたんです。
――聖女として、殿下と結婚出来ることに感謝するんだな、と。
傲慢なその物言いに、腹が立たないわけがありません。
散々、帰して!と、喉が枯れるまで言いましたが、何一つ聞き入れては貰えませんでした。
気が付けば、カッツォーリ帝国王位継承権第一位、ロット・ルーガス・カッツォーリとの婚姻が成立していました。
せめてもの救いは、盛大な結婚式を挙ることもなく、書類上で結ばれた婚姻だったということでしょうか。
『手折られた花の行方は・1』 了
物語は進んでいく。
ただ一人、私だけを残して。