これもこれで中々愛しい日々なのです。
キーワード。
異世界トリップ・ポジティブ少女・強面のお兄さん
美弥。
ポジティブな女の子。傭兵であるカッサムと共にしているため、男装をしている。
悪は悪と言い切れる人間で、そのせいで厄介ごとに巻き込まれることもあるが、その話はまたいつかどこかで。
カッサム(カッサムドラ・エ・リュード)。
美弥を拾った傭兵。元貴族、元騎士。
顔は強面。左の眉辺りから頬にかけて引き攣れた傷痕有。そのせいで周りから恐れられる。
体格は、程よく筋肉が付いていて、それなりに引き締まっているから何かそそられるものがあるらしい(美弥談)
美弥曰く、優しい人。けれど、それは美弥だからこそというところがあるようだ。
“異世界トリップ”
この単語を聞いてまず思い浮かぶのって、これでもかっていうくらいの美男美女がわんさか出てくるってことかな?
……へ?小説の読みすぎだって??
『これもこれで中々愛しい日々なのです。』
さてと。さっきの続きだけども、美男美女の次に思いつくのが聖女様とか、勇者様とかそういった面倒な設定だと思うのね。
というか、そんないきなり貴方は聖女です!とか言われて、嬉しいわって思う人間なんていないと思うのよ。
しかも、それにプラスして戦争終結に向けて私達を先導して欲しいだとか、魔王を倒しましょう!とか、正直な話平和な世界で日和こいちゃっている現代人にしてみれば、そんな無謀なお願いってかなり過酷だよね?
てなわけで、私にもそういった面倒ごとが待ち受けている予定なんじゃないかなって思ってさ、一応断りの言葉とか馬鹿が馬鹿なりに考えてみたんだけど、どうやら取り越し苦労だったみたいだね~。
誰も居ないんですけどー??
てか、小説とかでよくあるパターンで、森の中、若しくは神殿だとかお城の中だとか、そういったところに落とされた私を、美形キャラがウエルカム状態で待ってくれてる筈なんだけどな~。おかしいな?
……おおぅ!?私は一体何のためにココに居るんだろうねぇ?
とりあえず今の自分の状況を把握しようかな?そう思って周りを見渡せば、丸々なお月様が視界に入る。
でも、地球の月にしてはもの凄く大きいっていうか、……異常に近くない!?
地面に座り込む私に、これでもかっていうくらい近い位置に存在を主張してくるお月様。
青紫の光を宿したそれは、私に接近してくるかのよう。正直言って、
「ちょっ、本気で怖いんだけど、これ!?」
こうして始まった私の異世界ライフ。
あの後、私はある男に拾われていた。
ある男っていうのは、強面の男の人。
左の眉近くから、左目を辿り頬の途中まで、何か刃物で切り付けられたような傷痕があって、それが更に男の凄味を増しているっていうか。
結構その引き攣れた傷が周りには相当恐ろしく映るらしく、その切れ長な琥珀の瞳と相まって、誰も近づこうとしないような気がするんだけど、男の顔がちょっぴり強面だろうが、私はそんなこと気にしない!!
寧ろ、その傷が男のかっこよさを増長させているっていうか。
傷を負った男……んと、カッサムにしてみれば、なんとも微妙な気分だろうけど、私的にはもうかなりキてるから安心して!!
……あぁ、そうそう。
カッサムの顔って、特にこれといって美形だとかいう美味しい要素はないんだけど、私的に、その強面な顔で優しいというギャップが溜まらん……!
だって、カッサムって笑うとやーさんみたいで更に凄味が増すんだけど、私の髪を撫でるときの何気ない仕草だとか、まるで壊れ物を扱うように優しいし、それに、私の名前って美弥っていうんだけども上手く発音できないのかみゃーっていうの!!
強面の男が私に向かってみゃー、みゃーって言うのがね。
もうおかしいやら、可愛いやらで、私の頬は年中緩みっぱなし。
時たまカッサムの不思議そうな視線を感じるけれど、ごめん。
多分慣れそうにないかな。てか、一生慣れる気がしないから、諦めてねカッサム?
こういった可愛い一面を持つカッサムは、傭兵と呼ばれる職種に就いてて、その仕事上の関係で私を傍に置きながら色々な国を回っているの。
私は、彼の傍に居るのがものすごく好き。
カッサムが私を見捨てない限り、私の居場所は彼の横で、それがず~っと続けばいいなって、本気で思ってる。
それか、カッサムも私のような気持ちでいてくれていると嬉しいかな……って、あは。
本人に告白する前に言っちゃった!
何はともあれ。
異世界と呼ばれる世界に来てしまった私を待ち受けていたのは、見目麗しいような人たちじゃなかったけれど、私は私でカッサムと出会えて幸せだから。
どうか、どうか。この幸せがいつまでも、どこまでも続きますように……!!
『これもこれで中々愛しい日々なのです。』 了