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目隠し鬼・伍
色鮮やかな打掛も、結びに工夫を凝らした前帯も、全て剥ぎ取ったその裸体の前では霞む。
「……これに触れていいのは、私だけだ」
『目隠し鬼・伍』
初めて、ということで着飾ったけれど、どうもお気に召すものではなかったようで、内心落ち込んでしまう。
「……どうしよう。これで帰られたら」
折角の指名だというのに。
それに、夕霧姉さんの新造だというのに、憤慨して帰られてしまったと、そう広まれば……。
姉さんの名に泥を塗ってしまうことになる。
気落ちした状態で私は、機嫌を損ねてしまったであろうお客様の下へと戻るのだった。
* * *
戻ってきたあやめを後ろから抱き寄せ、この腕の中に閉じ込める。
柔らかな肌を感じたかったのだが、まるで着せ替え人形のように多くの着物を重ね合わせたあやめの姿に、内心舌打ちしたくなった。
「……っあ、」
ほっそりとした白い項に唇を寄せれば、身を震わす華奢な身体。
男を知らないその姿に、笑みが零れる。
これから知っていけばいい、ゆっくりと。
――――私の手で。
『目隠し鬼・伍』 了
これにて「目隠し鬼」は、終了です。