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目隠し鬼・参
あれを眼に留めたのは、今から六年前のこと。
当初は、毛色の変わった猫程度としか思っていなかったが……。
『目隠し鬼・参』
夕霧が来るものとばかり思っていたが、そこに現れたのは一人の少女。
初めて眼にする、柔らかな黄色を帯びた白い肌。
その肌に、はらはらと零れる艶やかな黒髪もまた珍しく、興味を引かれた。
じっと見ていれば、観察対象物が慌てたように頭を下げ、何か必死に言い募っている。
その声もまた、耳によく馴染むもので、決して不快と思えるものではなかった。
「あ、あの……」
もう一度その顔を見たくて顎を持ち上げれば、髪と同じ漆黒の瞳が揺れる。
「くくっ、そうか。……なるほど」
これが、夕霧の“お気に入り”か。
教養を受けているにも関わらず、初心といってもいい程の反応には、嗜虐心がくすぐられる。
―――欲しい。
何故かこのとき、そう思った。
穢れを知らない無垢なる白を、紅で染め上げたいと―――。
『目隠し鬼・参』 了