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目隠し鬼・壱

キーワード。

異世界・似非日本・似非遊郭


あやめ。

蘇芳のモノ。


蘇芳すおう

あやめの全てを喰らう者。


夕霧太夫。

あやめの姉さん。  


蘇芳様がこの国を平定されたのは、御歳拾八の頃。

あれから三年の歳月が流れ、彼の人は、繰り返される日常を疎ましく思っていたので御座います。



「お待ちしておりました。蘇芳殿」

多額の金を払ってくれる蘇芳に、下卑たその面を晒し、にやにやといやらしい笑みを浮かべる小太りの男。

「……ああ」

そのような男と相対することになった蘇芳は、あまり表情を動かさなかったものの、男の内面から滲み出るその醜悪さに嫌気がさしてしまう。

「ささ、どうぞ中にお入り下さい」

そのようなことを思われているなどと一片たりとも気付いていない男が、蘇芳の前を歩く。

醜い男に誘われるように美貌の主は、花街へと溶け込んだ―――。



後に、蘇芳様は出逢うのです。

その後、彼の者の寵愛を一手に受ける少女、あやめと。



『目隠し鬼・壱』



「あやめ」

闇夜でも美しく煌めく紫紺の瞳が、私を射抜く。

その双眸に、思わず萎縮してしまう。

「……はい」

源氏名ではなく、本名を呼んでくださる蘇芳様の下へと歩み寄るまでの間。

強い光が私を絡め取るようで、無意識に身体が緊張してしまう。

そのことに気付いた蘇芳様が、微かに笑ったような気がして……恥ずかしい。


「待ちかねた」

横に座ろうとした矢先、強い力に引っ張られてしまい甘い匂いが鼻を掠める。

気付けば、肌蹴た胸元に頬を押し当てるような形となってしまい、心拍数が上昇してしまう。

「あ、申し訳…っ、」

謝罪の言葉を乗せようとしたとき、項に感じるしっとりとした唇の感触。

「……んっ…」

食むように触れる唇は、まるで戯れの如く。


「あ……、す…おうさ、ま…」

未だ慣れることのない行為に止めようと口を開けば、肌を強く吸い上げられてしまう。

「や、ぁっ……」

「……どうした、あやめ?」

微かに笑う蘇芳様の吐息が肌にかかり、身体が震えてしまう。

「ぅんっ、…なん、で……あっ、も……ふぅ…、ござい、ま…せん」

上気する頬を見られたくなくて、蘇芳様のその胸元に自ら顔を押し付けてしまった。

女郎としてあるまじき行為だと、頭の片隅で思うけれど。

この優しい方は、私の至らないところを全て容認して下さる。

そっと、縋るように服を掴めば、何時の間にか肌蹴られていた背中に口付けが落とされた。



「本当にお前は愚かで愛しいな。私のあやめ」



『目隠し鬼・壱』 了


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