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ペットの憂鬱

キーワード。

異世界トリップ・獣人・ペット


ペット・私。

異世界でペットになっていた女性。


ジャイル様・飼い主。

外見年齢10歳児の活発な王子様(獣人)


私が飛ばされた場所は、獣人たちがこの世を支配している、そんな世界だった。

昔映画で見た猿の●星に似たようなもので、猿は勿論のこと、様々な動物たちが人のような姿形を模倣し、まるで人と同じような生活を過ごしている。

それが私の行き着いた世界。

あぁ、一応この世界にも人間と呼べる人が、いるにはいるんだけど……人間は専ら獣人たちのペットになるらしい。

端的にいうと、人間は獣耳生やした獣人のペットで、彼らが私達のご主人様になるらしい。



『ペットの憂鬱』



そんなことも知らない私は、認識番号も何もない“野良”扱いを受け、気付けばペット保護の会の皆様方に大変お世話になってしまった。

ええ、本当。気付けばペットとして正式に登録されてしまい、GPSを搭載されたような首輪まで付けられてしまって……(涙)

「晴れて私はペットですか……」

首に付けられた首輪を弄りながら、どこか他人事にように自分の起きたことを振り返っていたところ、保護の会の一人。

私担当のミレーナさんがこちらに向かって駆けてくる。

ミレーナさん……彼女は、可愛らしいチワワの獣人さんだ。

円らな瞳がまたキュートで……って、今はそんなことどうでもいいか。

そのミレーナさんが頬を紅潮させながら私の両肩を掴み、貰い手が見つかったと、そう言ってきた。

……早い。大抵の野良扱いされてしまっている人間は、素養も何もない状態とみなされ、ある程度のマナーを学ばない限り、ペット閲覧場にて張り出されるリストに名前すら載せて貰えないらしいのに。

だから、私も飼われるのはまだまだ先のことだと思っていたのだけれど……。

どうやら人生はそう簡単にはいかないようだ。


*   *   *


私のような容姿は、結構珍しいものだったらしい。東洋の典型的な凹凸のない顔。黒髪と黒目。

どうやら私の飼い主となった御方は、その要素に興味を持ってしまったようだ。

そのせいで私は、身分違いもいいところ、というか、身の丈以上の方に飼われてしまっている。

その相手は、この国の王子であるジャイル様。

といってもまだまだこの国では、お子ちゃまで、年も10歳前後の活発な男の子である。

まぁ、あまりにも元気が良すぎて、遊び相手となっている私の身体が悲鳴を上げていますが、愚痴や弱音を吐いてはいけない。

ペットは気が済むまで飼い主に尽くさなくてはいけない。それがペットとしての規律なのだ。

でも、そういったら、決して飼い主に逆らってはいけないということだから、虐待されたり、強姦される場合においても逆らってはいけないのか?と問えば、それは抵抗してもいいらしい。

が、実際には抵抗なんてしなくても、ペットの身の安全は約束されている。

なんでも、この有能な首輪がペットを守ってくれるのだとか。

といっても、飼い主になる獣人にもそれなりの適応能力や、試験を定期的に行い、ペットを持っても良いと判断された場合のみ飼ってもいいことになっているから、そういうことにはならないらしい。

あ、そうそう。

それを一手に引き受けている組織があるのだけれども、独立している団体らしくて、貴族や王族とてその試験を受けて適合とみなされない限りペットが飼えないんだって。

あとあと、ミレーナさんに聞いたところによると、ある貴族が大金を積んでペットを飼おうとした男がいたらしいんだけど、その金ごと男を追い出したとか……。

ある意味凄い。


その組織が出す問題は相当難しいのだけれども、私のご主人様であるジャイル様はその試験を見事突破され、目出度く私を貰い受けてくれた。

ちなみに、私のご主人様がその試験を最年少で受かっている。

それを聞いたとき、何故か私まで嬉しくなってしまった。ううむ。

どうやら私は、本能の方でジャイル様を自分の飼い主であると認識しているようだ。

といっても、この世界で家族も何もない私にとっては、ジャイル様の存在は自分の中で大きいから、そう認識してもおかしくないのかもしれない。

この世界に私の居場所を与えてくれたジャイル様は、私にとってとても大切な人。

まぁ、ジャイル様は気まぐれに毛色の変わった人間を求めただけで、私の思惑など知らないと思うけれど、それでもいい。

それでもジャイル様は、私にとって大切な存在なのだ。

だから、大切な人が私と遊ぶことを望むのなら、その希望に全力で応えるまでのこと。

ええ、例え体力的にも厳しいものを感じる今日この頃ですが。私、頑張ります……!!


……けれど、私にとって頑張れないことが一つ。

たまに行われるどこぞの令嬢方とのお茶会。ただのお茶会なら私も文句は言わない。

可愛らしいお嬢様と、これまた可愛いご主人様が二人仲良くお茶を楽しむ。

視覚的にも大変癒される。

けれど、何を思ったのか近頃お茶会に訪れるお嬢様方のペット同伴率が高い!すこぶる高いのだ!

しかも、そのペットは全員雄の人間。

きっとこの御嬢さん方は、その可愛らしい顔をしながら、私と、自分が引き連れてきた男を結ばせて、ジャイル様との婚姻の布石としたいのだろう。

なんとも強かな御嬢さん方だ。けれど、ペットが結ばれたからといって当人たちが結ばれるかは、結局当人次第であるから、やっぱり子供の考えることだな~と傍から見る分には微笑ましいのだが……。

無理矢理そんな理由で男だらけの部屋に閉じ込めるのは、本当に止めてほしい。たまったものじゃない。

何が悲しくて自分よりも美形な男たちに囲まれながら、愛のない甘い言葉を囁かれなきゃならんのだ……!

なんだ、これ。生き地獄か?!

何が「ペットはペット同士、仲良くしていたいでしょうし、別室に置いてかれてはどうでしょうかジャイル様?」だ!!

そんなこと私は望んでなんていないのにぃぃぃ!!!!!!


『ペットの憂鬱』 了(?)

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