116話 涙を燃やせ!4/117話 涙を燃やせ!5/118話 涙を燃やせ!6 (合併)
次回でマレー編も終わりです。
ウィザ[兄様がアンセスタへ行かれたのはもう何百年も前のことです]
マレー[....え?]
ウィザ[こちらとアンセスタの時の流れは違いますから....この話は父、ヴァリから聞いた話です]
ヴァリは大きな玉座に座り、大臣のカヴァが怒っている。
カヴァ[私は反対です! 人間をここに入れるなぞ....!]
ヴァリ[足をケガしているな。このままでは果てるぞ]
カヴァ[アンセスタでは既にジ.エンド.オブ.レインボウの出現が確認されています! ヴァリ様はアース.オブ.ザ.チルドレン! 人間に肩入れさればこの次元が探知されるか襲撃されます!]
ヴァリ[よく思い出せカヴァ。我々ハフドラゴンは何のため存在する? 人を! 竜を守るためであろうが!!]
カヴァ[しかし王....!]
ヴァリ(争いの少ない平和な世界スイヴィア....それはいいが、みなの心まで...)
シュンヘイとオリョウが王の前に連れてこられる。
オリョウ[感謝いたします王。夫のケガまで手当てをしてもらいましてありがとうございます]
シュンヘイ[ありがとうございます]
ヴァリ[どうやってこの地へ?]
アトモ[次元移動は兄さんの専売特許じゃあねえんだぜ]
ヴァリ[アトモにスフィアか!]
夫婦が入ってくる。
ヴァリ[人の地で生きる事を望んだお前らが何故ここにいる!?]
アトモ[そこの男は俺の親友で名をシュンヘイという。妻が子供を生めない事を知り人身御供を決行しようとしていた]
カヴァ[なんと愚かな....]
アトモ[地上はジ.エンド.オブ.レインボウで滅茶苦茶だ。それでもこの夫婦は未来への種を望んだ。俺の言いたい事は分かるだろう?]
ヴァリ[.....確かに、今スイヴィアでは男はジ.エンド.オブ.レインボウと戦う事を想定し、王になる権利を剥奪される。それは世の子も同じだ]
カヴァ[ふざけているのかアトモ様! 王の子を人間の....ジ.エンド.オブ.レインボウの世界へ送れと!?]
アトモ[俺は1つの可能性を求めて戻ってきた。兄者、どう思う]
ヴァリ[そう言えばお前、右の角が無くなっているな]
アトモ[そういうことさ。アンセスタに住んでたら体が適応しはじめてきた]
カヴァ[!!]
ヴァリ[....あの地へ戻れるのか、我々は]
カヴァ[ジ.エンド.オブ.レインボウの世界へ戻ってどうなさいます!?]
ヴァリ[もし、人間とハフが手を取り合い戦える日がきたならば....]
カヴァ[王....]
ヴァリ[シュンヘイと言ったな]
シュンヘイ[は、はい!]
ヴァリ[我が子が欲しいか]
シュンヘイ[は....はい! その為にこの足を推してここまで来ました!]
ヴァリ[どう育てる?]
シュンヘイ[え?]
ヴァリ[どう育てる]
シュンヘイ[え...あ....]
アトモ[シュンヘイ、しっかり答えるんだ]
オリョウ[シュンちゃん!]
シュンヘイ[心血をとして[学ばせ]育てます!!]
ヴァリ[よい答えだ。学ばせるとは勉学だけの事ではあるまい。何をどう学ばせる]
シュンヘイ[は、はい....その]
ヴァリ[何に心血をとす?]
スフィア[まずいわアトモ....]
アトモ[イライラしているな....]
オリョウ[ヴァリ様! 私がお答えします!]
ヴァリ[女は黙っておれ!!]
オリョウは冷や汗をかく。
スフィア[あ、兄様、ここまでシュンヘイさんを引っ張ってきたのはオリョウよ。覚悟ならオリョウの方があるわ!]
ヴァリ[......いいだろう。ならばお前に聞こうオリョウ。何をどう学ばせる?]
オリョウ[世界の在りようです!]
ヴァリ[.......]
オリョウ[小さな生命からおおきな力の流れまでを子に学ばせるという事は体験を[させる]ではなく[する]という事でございます! あらゆる選択肢を与え自立の意識を世界と平行して考えさせれる、そんな子育てが出来ればと....!]
ヴァリ[フフ....なるほど]
ヴァリはチラッとスフィアを見る。
ヴァリ[だがその世界の中でお前達はどんな経験をした? 学ばせるという事は導き手が必ずしも必要ではないが、入り口で迷っていてはアンセスタの今の現状ではあまりにも時間が少ない。私は凡人ではなく、ハフの新たな可能性をあの子に見いだしたいのだ]
シュンヘイ[恐れながら!]
ヴァリ[ん?]
シュンヘイ[理性の中で本能に揺られながら生き抜く力を私達は与える事が出来ます!! あの世界は混沌としています! だからこそ私達はここまで覚悟を持ってきました! 恐怖や不安を乗り越えてきました! オリョウと支えあいながらこれました! なればこそ私達はヴァリ様のお子様に人間の理性的な心ととハフの本能的な生き抜く意思を与える事が出来ると思います!!]
オリョウ[シュンちゃん....]
アトモはフウ...と息を吐く。
ヴァリ[決めたぞカヴァ!! よの正当なる子をこの人間に預けよう!!]
カヴァ[......先代にあの世で怒られますぞ]
ヴァリ[それもまた一興! 気に入った人間! だが最後に条件がある!]
シュンヘイ[は、はい!!]
ヴァリ[何とか立派に育ててくれ....宜しく頼む....!!]
ヴァリは深々と頭を下げる。オリョウは涙を流す。
シュンヘイ[必ず....お約束いたします!!]
スフィアはアトモに寄り添う。
ウィザ[あの頃の次元移動は不確定要素が大きかったのです。時間の流れに流され着いたのが今のアンセスタの時代だったのでしょ....?]
マレー[俺は....チルドレンの子供だったのか....]
マレーは涙を拭う。
ウィザ(兄様....)
マレー(あの足....その時の傷が原因で....)
ウィザ[....ずっと、ずっと会いたかった兄様! 本来玉座は兄様のもの! 私に代わってこの国を...!]
マレー[俺は....]
そこへハフ兵を引き連れたハリデイが入ってくる。
ウィザ[な、何事か!!]
ハリデイ[その者の姿をご覧ください! もうハフの血などありませぬ!!]
ウィザ[我が兄上を愚弄するか!! 誰かこの者を引っ立てよ!!]
誰も動かない。
ウィザ[.....!?]
ハリデイ[皆わかっているのですよ。男たちはジ.エンド.オブ.レインボウと戦って絶滅した! だからといってその者の子ではハフは救われない!!]
マレー[俺は王になんぞなるつもりはない! 静かにしてくれ!!]
ウィザ[に、兄様]
ウィザがマレーを見る目付きにハリデイは激昂する。
マレー[剣もない! ウィザ! その次元移動ってのはここで使えるのか!?]
ウィザ[は、はい! それはすぐに....]
ハリデイ[ウィザ.ラキを捕らえろ!!]
ウィザ[!!]
マレー[くっ....ウィザ! 俺とこい!!]
ウィザ[え!?]
マレー[アンセスタへ戻るんだ! このままではお前もおしまいになる!!]
ウィザ[で、でもこの国をおいては!!]
マレー[そこの筋肉隆々の女が上手くやるさ!! 行こうアンセスタへ!! 俺がお前を守ってやる!!]
ウィザ[!!]
ウィザはマレーの手を握る。
ハリデイ[!?]
ウィザ[ごめんなさいお父様!!]
2人は空間の歪みに消える。
ハリデイ[なっ.....ウィザ様ああああーーーーっ!!]
ハリデイは床に崩れ落ちる。
2人はニアリバーンに現れる。
マレー[た、たすかっ.....]
ウィザは顔を両手で隠して泣いている。
ウィザ[私....何てこと....!]
マレー[........]
マレーは震えながらウィザを抱き締める。
ウィザ[!!]
マレー[正直....実感ないけど、守るから.....俺、守るから....!!]
ウィザ[マレー兄さん....!]
マレー(俺の両親は誰が何と言おうとこの世にただ2人。けどヴァリさん、あなたに誓う! ウィザは任せて下さい.....!!)
2人はエレジーに乗りミストへ向かう。
ウィザ[み、皆さん宜しくお願い致します。アンセスタの事は全然知らなくて....]
ソル[ア、アンセス....?]
マレー[この世界の呼び名だそうですよ]
ソル[そうか....宜しくなウィザさん]
ウィザ[はい!]
ソル(角に尾に爪か....これは全員に説明が必要だな)
ライライ[あ、あのお嬢さん、よかったらスイヴィア?の事を聞かせて貰いたいんだが....]
ウィザ[あ、はい! 私に答えられる事なら喜んで!]
マレーはライライに耳打ちする。
マレー[あんまり思い出させるような事は聞かないように!]
ライライ[う、うむ、そうじゃな....じゃああっちで聞こうかな?]
2人は向こうへ移動する。
マレー(大丈夫かな..)
ヘラニー[フフ....]
マレー[な、何ですか]
ヘラニー[すっかりお兄さんやってますね]
マレー[そんな柄じゃないですよ俺、ハハ.....]
ヘラニー(よかった....半身を取り戻したかのように輝いている....)
2人はミストで降ろされる。
ウィザ[いい人たちばかりだったな]
マレー[ウィザ、俺に合わせなくてもいいんだぞ? エレジーの方が安定した暮らしを....]
ウィザはマレーに腕を組む。
ウィザ[守ってくれるっていったでしょ? それに兄様をこんな立派に育ててくれたご両親にも会いたいし!]
マレー[(無理しやがって....)そうか....そうだな。俺の父は凄くてな、母さんの代わりに.....]
2人が話ながら町の中央まで来たとき、男たちが何かしている。
男[へへ...義足を売った金だとよ! 儲け儲け]
オリョウ[ああ、マレー!!]
シュンヘイ[来るなマレー!!]
マレー[!!]
オリョウとシュンヘイが倒れている。
男[あいつか、邪魔しやがったというのは]
男[やっと来やがったぜえ]
男はオリョウにボウガンを向ける。