56話 もう1度君に....(タイトル改変)
まるで大地は陽炎のように揺らめき太陽が照りつける。気温が1度上昇しレッドオーラがネイティブストリームの中を獲物を探すように不気味に這う。
ミラ兵[ひ...ひいい!!]
ミラの兵達は独自の判断で退いていくが、アルフォリアの兵は退かない。
アルフォリア兵[こんな....こんな怪物を放っておけるかあーーっ!!]
アルフォリア兵は突貫覚悟で全兵構える。
ウィークス[.......畏れよ。人よ畏怖なるものに畏れよ。そこから創造は始まらん]
それはもはやウィークスの声ではなかった。
その時
ウィークスとアルフォリア軍の間に何かが落ちてきて爆発する。
ウィークス[....!]
アルフォリア兵[うわっ!!]
天の呟きが消え、ウィークスの意識が戻る。上空をドラゴンが飛んでいた。黒いドラゴンは地上に降りる。
ウィークス[!!!??]
幾度の罪悪感に際悩まれたろう。
幾度の眠れぬ朝を迎えただろう。
そのたびにピスが隣に居てくれた。
笑っていてくれた。
[大丈夫だよ!ウィークスなら!]
彼は最高のプレゼントを残していってくれた。
ウィークスにとってそれは何にも変えがたい存在だった。
俺が殺した人....
ドラゴンに乗っていたのはマレーさんだった。
ウィークスがロイザン渓谷で失ったマレー.ラキだった。
手にはアルフォリア軍の旗を持っていた。それはアルフォリア軍への戦闘中止命令だった。ウィークスは静かに降りる。
ウィークス[マレーさ....]
ウィークスはおぼつかない足でマレーに向かう。
マレー[ウィークス!!]
あの心配してくれた声が聞こえた。マレーは走りだし、ウィークスを支えた。
ウィークス[俺が...殺したって...死んじゃったって....ひっく...思ってえ....ひっく...うううう.....]
マレーも涙ぐむ。
マレー[遅くなった....ウィークス....!!]
2日後....ミスト城
王[そうか....やはり君が地球の子なのだな]
ウィークスは包帯に巻かれながらも力強い目で王を見る。
ウィークス[エイロウの丘から離れた今、あれほどの力は出せないようです。ですがアーバレストの力をコントロール出来るようになりました]
王[アース.オブ.ザ.チルドレンの力は人間の意思で自在に発動出来るものではない。君の本能が危険を察知した時、体に多大な負担をかけてでも発動するはずだ]
ウィークス[そうですか....ネカロパを支配した今、もうそんな場面に出会う事も無いと思います]
王[......分かった。下がってよろしい]
ウィークス[はっ....]
ウィークスは出ていく。
王[皮肉なものだ.....]
マレー[ウィークス!]
ウィークス[マレーさん! 今から行こうと思ってたんですよ!! 聞かせて下さい、あの時の事....!!]
マレー[ああ、外に出よう]
2人はベンチに座る。
マレー[ロイザン渓谷の崖から落ちて幾日か経ったんだ。俺が気がつくとあのブラックドラゴンが目の前にいたんだ。正直、いまでも何が起こったのかよく分かっていない]
ウィークス[目の前に.....]
マレー[最初は食われるかと思ったんだが、随分と人間慣れしててな。アルフォリアの戦力となると思い、崖下でドラゴンとの信頼関係を築いてきたんだ]
ウィークスは今一度、マレーが目の前にいる事を目で確認して興奮した。
ウィークス[俺だったら....逃げ出してますよ。食べ物はどうしていたんです?]
マレー[なるべくドラゴンに近いものを食べていた。魚を取ったり、肉を食ったり....]
ウィークス[サバイバル術ってやつですか。軍人て凄いなあ....]
マレー[お前の話も聞かせてくれないか?随分成長したみたいだな]
ウィークスは喋った喋った。自分の体験してきた全てを....気づくともう夜だった。
マレー[俺以上に散々だったんだな。そのピスってやつにも感謝しないとな.....]
ウィークスの体に電撃が走る。
マレー[どうした?]
ウィークス[い、いえ...]
ウィークスは王が手配してくれた家につき、ベッドに横になる。
ウィークス[......ネカロパ?]
反応はない。
ウィークス[聞こえてるよな? なあおい...ネカロパ]
やはり反応はない。
ウィークス[........分かってる。分かってるさ]
でも......
ウィークスは急に涙が溢れて止まらなくなる。
ウィークス[寂しいいいよおおピス.....たまにはさ...たまには夢であえるよなあ?なあ...おい...]
ウィークスは亀のように縮こまり、泣きつかれて眠った。




