211話 周天胎動3
カーレント「いいから答えてくれ。鎧があったらどうするんだ?」
炎床「・・・・」
炎床は苦虫を噛んだような顔をし、汗を一筋流す。
カーレント「どうだ、どうなんだ」
炎床「もし・・・もしもそんな奇跡があるなら、俺はっ」
俺の性ーーーー
瞬間!
グローリア「!!」
炎床「え」
暖かさと冷たさを持った光が炎床に集まり、それはフランクスヴェールと戻り再び炎床に纏う。
グローリア「な・・・」
グローリアはそれよりもカーレントを見る。
カーレント「お前が答えを言えないなら少し譲歩してやる。」
本人も気づいていない。その眼がN.ストリームと化した物は間もなければ復元(正確に言うと再生)出来るようになっていた。
グローリア「・・・いや、どういうつもりーーー」
カーレントの眼は真っ直ぐ炎床をねめつけてはいない。
まるで憐れみ・・・
グローリアは言葉につまる。
カーレントは少し左に動く。
グローリア(・・・・?)
自信の先にある結果にカーレントは希望をしていない!
炎床「・・・なんなんだあんたは。いろんな意味でなんなんだよ!!」
炎床の身体に力が湧いてくる。N.ストリームがきらめき輝く。炎床の眼に再び力が宿る!
炎床「ああ・・・ああああ!!」
炎床は震えながら顔を歪ませカーレントにおそいかかーーー
と、同時に炎床の脳は引き金の音を聴く。
兵士「うてええーーーーっっっ!!」
一斉に撃たれたレーザーがカーレントに集中するが、その前に炎床がいた。
振り向く瞬間、フランクスヴェールがレーザーを弾き飛ばし吹き飛んだ光源があちこちに短冊状に突き刺さる。
兵士「うおっ」
光が眩く空間を閉めるなか、炎床は様々な思いがフラッシュのように脳を巡る。
わずかに動き
鎧を戻し
誇りを汚せ
この位置に
グローリア「くうっっっ・・・」
カーレントの眼から血がしたたり、グローリアに垂れ落ちる。
グローリア「カーレント・・・?」
カーレント「頭痛と吐き気と悪寒と震えがある。眼はダメか」
焦点が合わない。
短冊状に散らばったレーザーは兵士2名の胸と頭を貫いて絶命させる。
兵長「おのれどけいガラクタが!再充填用意!!」
炎床「は・・・ハハハハハ!」
ふたたび撃とうとした真っ先にいた兵士に炎床は一本足でダッシュし(まさに予測できない瞬発力)突撃する。
兵士「え、あばっ」
その兵士は吐血しながら吹き飛び、後ろにいた兵士にぶつかり、その兵士は天井まで吹き飛び通信兵の上に落ちる。
通信兵「どあっ!」
受け止めるように倒れ、通信機が吹っ飛び、壊れる。
グローリア「!?」
兵長「血迷ったか炎ーーー」
兵長が炎床に銃口を向けるようにすかさず指示を出そうとしたときだった。
炎床は自らに向けられた銃身2つを手でつかみガーギーとひん曲げる。
兵士「!?」
7つの銃口が一斉に炎床を向く。
その時、後ろからドサッと音がする。
炎床「!」
兵長「ここは私が仕切る!撃て!構わん!!」
上から空を斬るいや、滑空する音がする。
カーレント「肩を貸せ!」
炎床はハッとする。
ふわっと炎床の肩に片足を降ろし、ブレードを兵士一人に投げつける。
兵士「あぎゃ!」
ブレードは兵士の足先を貫き、誤射されたレーザーが別の兵士の頭をポン!と吹き飛ばす。
炎床の左足がズンとふんばるが、みごとに腰は沈まない!
兵士「うてえええて!!」
兵長の命令前に兵士達はレーザーを2人に撃つ。命令なしでもそれは見事に、炎床の鎧の隙間、そしてカーレントめがけて役割分担をさせられたように別れ別れに撃たれる。
それが力量を伴っているベストではあったーーー!!
兵長「う、な!?」
グローリア「!?」
炎床は無謀にも突っ込んだわけではない。そして策があったわけでもない。ついでに言えば自らの意志でもない、それは言い過ぎか。なにかが後ろから押したのである。ちからづよく押した。
レーザーは炎床に当たる直前でぐにゃりと曲がり、炎床の胴の周りを回った後、兵長の胸をつき撃つ。
兵長「へっ!?」
兵長は崩れるようにパタリと倒れる。その他のレーザーも全て2人の周りを回転し、撃ってきた兵士へと返される。
炎床「・・・ハハ」
泣いているのかわらっているのか分からない表情でカーレントの足に震える手をかける。
兵士「ぎゃああああああああーーーーーっ!」
兵士「ヅアッ!?」
兵士の悲鳴がこだまし、一気に5人の兵士がレーザーで撃ち抜かれ、3人は即死、2人はもがいている。だが即座に後ろから13人の兵士がレーザーで2人に照準をつける。
カッ!!
カーレントは炎床のフランクスベールにブレードを当てて、光で目くらましをする。
兵士「く!!」
それでもレーザーは撃たれるが、乱れ飛ぶ。
光の中から兵士が一人、部屋の天井角まで吹き飛んでいく。
兵士「そこかあああーーーーっ!!」
吹っ飛んだ初動位置にレーザーがやたらめったら撃たれるが、撃っていた1番右側の兵士がバラバラに刻まれて、爆発したかのように死散する。
兵士「ひ!」
光がおさまりそれを目にした兵士3人のレーザーが止む。
兵士「!!」
カーレントが無防備に血だらけで立っている。
銃口が右向け右でカーレントに向くが、その内5にんはそれが罠だと気づき周りをそれぞれ上下左右バラバラに銃を向ける。
炎床「ふ、震えが止まらねえ」
1つの銃口が炎床の股間に当たる。が、そこはフランクスヴェール。撃てない! 炎床がその兵士の首を掴んだ瞬間だった。
炎床「!!」
他の兵士が一斉に散らばり、首を掴まれた兵士はチッチと舌を鳴らす。
その刹那
グローリア(違う!)
次にグローリアが常駐の兵士だけではないーーと思ったのは爆音の瞬間だった。散らばった兵士達は
瞬時にカーレントに銃口を向けるが、カーレントは首を横にふる。
炎床を巻き込んだ炎はまたも炎床の胴回りを1回転し、炎が兵士たちへ襲いかかる。
兵士「うおうああああああーーーーーッ!、?」
炎の絨毯が敷き詰められるように兵士たちは焼かれ燃えていく。
炎床「・・・!?」
その炎の中へカーレントは突っ込んでいく。
炎床「な、なんだ?」
それは単なる疑問であってそれ以上にはならなかった。
燃え落ちる首のない複数の遺体の前にカーレントは静かに立っていた。
カーレント「・・・・」
炎床「あなたの正体が知りたい」
カーレントは振り返る。
カーレント「見たままだろうが!!」
炎床「違う!!」
炎床は鬼のごとく凄まじい形相をする。
カーレント「くっ」
カーレントはうずくまる。
炎床が近づく。
炎床「あなたは王より強い、間違いなく」
炎床は不気味に微笑みながらカーレントを無理矢理起こす。そしてそれをカーレントは受け入れた。
グローリア(なにが起こっているのか分からない、が・・・俺は)
炎床のフランクスベールは静かに光った。