解明
待ち合わせのファーストフード店で、神野瞳は思い悩んでいた。
彼女は、美馬に聞きたい事がいっぱいあった。
どうして美馬君が校庭で倒れていたのか。
美馬君がおかしくなって、私を襲おうとした事を美馬くん自身じゃ覚えているのか。
その記憶はどこまでの事を覚えているのか。
薬の副作用は、今まで現れなかったのか。
そして、本当に私が好きな美馬くんのままでいられるのか。
美馬君がおかしくなって私を襲おうとした事を話すべきなのか、否か。
もし事実を知ってしまったら、私達の関係は以前のままでいられるのか。
どうなのか、不安がぐるぐると駆け巡る。
そうか、美馬君に会う前に先に彼の友人、小口に連絡すれば
美馬君に、異変を話したのかどうか判明する事が出来る。
小口に電話してみた。
「あっ小口さん、もう美馬君は大丈夫なの?」
「いや、一時的だと思う。何も治療方法がないんだ」
「えっ、外に出歩いて、また変な美馬君にならない?」
「美馬君には発信機を付けておいた、すぐ近くに向かうから安心して」
「あっ、1つだけ知りたい事が」
「何かな?」
「今の美馬君は変わった姿は、自覚しているの?」
「いや話してみたが、知らないと言っている」
やっぱり覚えてないか。
美馬が手を挙げて、こっちにやって来た。元気そうな笑みをしている。
「待った」
「もう大丈夫、倒れたって聞いたから」
「あぁ、薬の副作用って聞いたけど。 まさか意識失うとは」
「何の実験か知ってて、参加したの?」
「あぁ、今流行っているストレス死の特効薬だろ」
彼は、変な性格になった事をどう思っているのだろうと瞳は聞いてみたくなった。でも、彼にはその記憶はない。自覚がなければ、どう反応するのだろう。自分の知らない記憶で、何かが起こるって怖いだろうな。
「じゃあ、小口さんに色々聞かれた。意識がなくなっていた時の事を」
「うん、人に迷惑がかからない症状だったらいいけど、
瞳を襲うなんてな。性格が真逆だ」
「本当に、そうだったよ」
正直、僕は怖いんだ。どうしたらいいんだ。
美馬は、彼女に目を合わせず遠くを見ている。
そんな彼を見て、彼女は彼の手を握った。
店を出た2人。
外は晴れなのに歩道を歩く2人の頭上には、大きな影が覆われた。
「んっ雲かな」
瞳は、空を見上げた。空には雲は見えない。首を傾げる彼女。
2人の後ろでは、ドサッと音がした。人が倒れていた。
瞳の体が誰かに押された。えっ、美馬君が押した?
「美馬君なの?、いやっ」
瞳の左腕が強く握られた。捻り潰されそうな勢いで、力が入らない。
美馬は瞳の方を振り向くと、彼女の後ろには大きな黒い男が包むように迫っていた。
「離せ、お前誰なんだ」
美馬は、彼女の腕が握られている男の腕を掴んだ。離れない。男の顔を彼が殴ろうとした時。
黒い男は彼を跳ね除け、車道まで蹴りあげた。車のクラクションが鳴り響く。
彼女の腕がキシキシと鳴っている。瞳は、意識を失いそうになっていた。
彼は車に引かれそうになる直前、空を飛んでいた。羽根を出して。
「痛ぇ、何しやがんだこの野郎!!」
豹変した美馬は猛スピードで、黒い男に近づく。
肩からの体当たりで、黒い男にぶつかる。
ぐらついた、黒い男から彼女の手が離れる。
彼女の体は、地面に崩れ落ちた。
「くらぁ」 空中から頭を目掛けて蹴りを入れる。
ゆっくりと倒れた黒い男。周りにいる人達は騒ぎ立てる。
誰かが通報したのかサイレンの音も聴こえてきた。
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吸血鬼って博士は言ってるけど、私は本物のヴァンパイアに会いたかった。
血を吸ってくれて、快楽をくれるのじゃないの? 仲間にしてくれるんじゃないの?
博士の留守中、研究施設に残ったクルミは施設のパソコンをハックしていた。
「え~~と、やっとあったぁ、 2千年の実験データが入っているにゃ」
クルミは、1つの追加実験サンプルを用意していた。
博士の実験では、人間のDNAはプログラム化されていた。
自由に調整可能で、とてつもないシステムである。
何が必要で、何が不必要なのか。
悪を湧きだす成分、寿命を促す成分、生きる成分、自我が崩壊する成分。
不気味に笑うクルミ。 希望のヴァンパイアを作り出す設定を始めた。




