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No,3




 少し思ったことがある。

 ま、こいつの話し方の問題だったら無意味に考えただけになるが…。

 舞台は16時を回った学校内。階段を下りながら俺たちは話していた。

 最後の階段も下り終わって、俺たちは靴を履き替えグラウンドの端にある大倉庫を目指していた。

 つーか、四人を名指しで指名するか?

 今回のテスト結構ヤバいかもな……これからのモチベーション的な問題に不具合が……


「今話を聞いただけでちょっとおかしいところがあるんだが」


「え!?」


 なんでそこで驚く?

 アヤノは珍しいものでも見る目で俺を見ると、うれしそうな笑みを浮かべた。

 いまだにキャラがつかめないな……。

 常に明るいのかと思えば、急に暗くなったりするし。


「お前は起きた時に、「あいつ携帯持って無いじゃん」と呟いたんだろ?……おかしいだろ。」


 あいつ……というのが認識できている以上、その人物を形容できているのだから知っていることになる。

 なので、霧がかかってわからない…というのはおかしい。

 起きた直後は覚えていたのなら別だが。

 つーか、部屋で一人で呟くほうが疑問だが。


「…う~ん…なんか、〝携帯持っていない”とかはわかるんだよね。おかしいね。」


……うーむ。

 これは摩訶不思議というのか、アヤノだけの世界…みたいな。

 つーか、無理だろこれ!もうどうでもよくね?


「無茶苦茶だな。つーか、お前はどうしたいんだ?」


 アヤノは少し間をおいて複雑な顔で答えた。

 正直、ばかばかしい話だけど…それをマジで考えるのが俺たち子供…なのかもしれない。

 自分で子供というのは嫌だが、世間の大人から見たら子供だものな。


「すっきりしたい・・かな?」


 ニコニコと笑いながらこう答えた。

 すっきりさせる?

 単純な解決方法だが、凄まじく難儀だ。少なくとも俺にとって。

 あれ?俺は別に解決しなくていいんだよな?

 うっかり忘れていた。


「でさぁ、セージも手伝ってくれない……??」


 あ、一足遅かった…。

 でたよ、断ったらなんかなるこの感じ。

 影響の受け過ぎかも知れないけど、こいつは断れない空気。

 そんなことを考えていると、俺たちに天から水が降り注いだ。

 ……雨だ。


「ああ、雨が降ってきちゃった。」


 結城が少し先で呟いている。

 大倉庫はもう目の前なのに。


「アヤノが考え事とかするからじゃん!」


 笑いながら結城がこっちへ来る。

 ちょっと言い過ぎじゃないか…?

 俺も同じようなこと考えていたが。


「うぅ、真記が酷いよぉ……。」


 しゅんとした顔でアヤノは呟いた。知るか、アホ。

 俺たちは、駆け込むように大倉庫へと向かっていく。

 小雨とも言い難い量の雨が俺たちに襲いかかる。


「……運び出す系のやつだったらいやだなぁ。」


 翔太が制服の水滴を払いながら言った。

 大倉庫は、「大」がつくのも納得がいく大きさだった。

 コンクリでできた外壁に屋根付近は鉄骨で補強されている。

 そして、当然の寒さが俺たちをむしばんでいく。

 ここに長居はしたくないな…。


「…多分それはないと思う。おそらく整理だろう。テスト明けすぐに小学生が来るだろう?そのための準備をしやすいようにするとかじゃねえのか。」


 冷静に言ったので、的外れだったらかなり恥ずかしい。

 少し祈りながら、俺はあたりを見回す。


「もうすぐ先生が来るから、待ってよう。」


 真紀がそう言ったとき、俺は僅かながら忘れていた。

 いや、話が流れてくれるのを期待していた。

 その期待を無視して、少女はもう一度言った。


「ねぇ。セージ、手伝ってくれる?」


 あ、やっぱり無理だな。

 流させてくれない。


「あ、あぁ、うん。」


 ……すごく曖昧な返事。

 これなら、普通はノリ気でないと伝わるはず…!!

 14年間で得た知恵の一つだ!喰らえ!


「ホントに!?ありがとぉ~」


 全然伝わらない。こいつはどうやら無敵のようだ。

 あれを無視しますか!?アヤノさん!!

 俺の心の叫びは絶対に届かない。

 もはやこの作戦が失敗した以上手伝うのは決定だな………ハハ。


「つーか、手伝うって何するんだよ?」


「わかんない」


「いや、俺がわかんねぇよ?」


 ともかく、さっき俺が考えていたことをアヤノに言ってみることにしよう。

 するべきことはサッサと片づける!!


「おし!お前ら整理を手伝ってくれ!」


 言おうと思ったところで扉のほうからの声に阻まれる。

 その付きでたお腹に少し残っている髭は、生徒会担当の小金井先生だ。

 いや、タイミングだろ!

 来るタイミング!


「あぁ、くっそ!」


 うっかり思ったことを口走ってしまった。

 些細だが面倒くさい失態。

 アヤノは「バカだねぇ~あはは」といった目で俺を横目に見てくる。


「お? 須藤、なんか言ったか?……ま、不良の須藤君、さっさと片付けてくだされ。」


 全員がくすくすと笑っている。

 あの先生は面白いがなんか苦手だ。

 つーかその眼をやめろ!アヤノ。


「ドンマイ誠次」


 翔太が腹を押さえながら近づいて肩をバシッと叩く。

 俺の眉間にしわが寄った(多分よってないが)と同時に翔太の腹に鉄拳をぶち込み、 俺は整理に専念することにした。整理しながらでも十分言えるタイミングがあるはず……、!?


 ……どういうことだ?

 いつの間にか俺は、マジであいつの夢の話を考えているじゃないか。

 自分でも訳が分からない…。


────そのわけを、後に俺は知ることになるが。


 今は倉庫のホコリにイラついていた。




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