No,2
『誠次の日常』
……さ、寒い。
十二月になってからは、一日に何度もこう呟く。
これはこの一帯に住んでる人すべてに共通で、嫌がらせのようにふきつける風を好きな人なんていないであろう。
制服の下にヒートテックを着ていながら、俺は凍えていた。
詐欺だ詐欺。
逆に体温が逃げているよ全く。
悪態をつきながらなんとか校門までたどり着いた俺だが、毎回恒例のため息を漏らした。
あぁ、今日も一日が始まる。
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少年の名前は、須藤誠次
風宮中学校 生徒会の一員であった。
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あぁ、つまらない。
全く持ってつまらない。
今は中間テスト一週間前なので部活動は禁止されている。
放課後には何もないとわかりながら、授業を受け続けるしかなかった。
木曜日の二時限目はテスト対策用の歴史の復習プリントをやっていた。
いや、復習というよりむしろ日頃授業態度が悪いこのクラスへの「復讐」じゃないか…?
……ダメだ、思考がおかしくなっている。
「……おい、今日の放課後、集合だってさ。」
隣の席の 遠野翔太がひっそりと話しかけてきた。
……集合か……。
もうそろそろ、行事が迫ってるから仕方ないだろう。
塾を行っていない俺は、まじめに勉強しないといけないのにな……。
「……何の打ち合わせだ?」
社会の教師は耳がいい。
……なのでかなりひっそりと尋ねた。
翔太はがっかりとしたような表情になり、静かに答えた。
窓の外では、冬なのにもかかわらず、太陽が燦々とグラウンドを照らしている。
この街の十二月は朝は凍えるほど寒く、昼間はなぜか暖かい。
「……なんか、この学校の大倉庫が何たらかんたら……」
「おいっ!!そこしゃべるな!!」
社会の教師に注意された。
鋭い眼光で睨めつけられたが、すぐに目をそらす。
俺は「またあとでな。」と翔太に目で送った。
翔太は笑って親指を立てた。
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廊下は寒い。
さっきからこんなことばかり言っているが、仕方ない。
本気で寒いのだから!!
生徒会室は、管理棟4Fにある。階段あたりは風が吹き付けてくる……校舎内なのに。
「鍵とってきたよぉ~」
後ろから声を掛けられた。
振り向くとそこには少女が立っている。
この、いつでもテンション高めなやつは 九条アヤノ。
同じ生徒会の一員だ。
「おお、センキュ。……今日は何をするんだ?」
知っていなさそうだが一応聞いてみる。
あ、知らないみたいだな。
きょとんとした顔になっている。
「お前に聞いた俺が悪かった。」
謝罪して、カギを受け取る。
なんか、すみませんでしたぁ!
俺たちは中に入った。
美術部と共用なので、半分に区切られた部屋……それが生徒会室だ。
この部屋には黒板、それぞれの椅子に会議用テーブル。
あとは……散らかったプリント、よくわからないものがたくさんある。
俺が自分の椅子に腰かけたとき、アヤノが言った。
「あ、みんな来たよぉ!!!」
だからなんだそのテンションは!?
確かに廊下で足音が聞こえる。
「…今日はやけにテンションが高いな」
「自分でもよくわからないんだよぉ~」
「よお!!……って二人だけか!?」
翔太が入ってきた、後ろには結城もいる。
生徒会室の温度が少し上がったような感じがした。
人が大勢になるともっと暖かいだろうか。
「彩夏はバレー部が試合だから練習だってさ。」
結城が言った。
彩夏というのは、風宮中学校生徒会の世にも珍しい 女生徒会長、香坂彩夏のことである。
結城が言うに、今日は四人だけを呼んだらしい。
あぁ、なんかだるくなってきた。
アヤノがいるのか…やりずらいかもな。
「……今日は校長先生から直々に頼まれた仕事があるの!!さぁ!勇姿よ!生徒会の力を見せつけないと!」
結城はかなり嬉しそうだ。
仕事大好き過ぎだろ。変なスイッチ入ってるぞ。
時刻は4時03分、さぁて、いっちょやらないとな。
俺の日常は、こんな感じで過ぎていく。
全ては退屈を紛らわすため……ではないのでご心配なく。
「詳細は知らないので、大倉庫に行こう!!」
えいえいおー
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「あのさぁ、セージィ~、ちょっと話があるんだ」
階段を下りてる時にアヤノが話しかけてきた。
言い方が気持ち悪い。そして嫌な予感。
暗がりの階段周りの雰囲気が、それを物語っている気がする。
「ちょっと、不思議な夢を見たんだよね…話だけでも聞いてくれない?」
はい、出ましたそういうの!
こいつはおかしなことを俺に持ってくる。
俺はアヤノにとってなんですか……!?
「別にいいけど……つーか、意味がわかんねーよ!」
アヤノがにっこりとほほ笑んだ。
なんだ、その笑みは!
「ええとね……」
そして夢の話を聞かされる。
黙って聞いてやった。
夢の話を聞くって、こんなにつまらないのか。
一つ教訓になったな……ハハ。
かくかくしかじか。うんぬんかんぬん。
「それで、その男がだれなのか知りたい……ってか?」
少々だるそうに聞いてみる。
なんで俺に話したのかが俺は一番知りたい。ここら辺の壁ではだめなのだろうか。壁好きだろお前。
「うん」
今までの話を聞いて、一つ引っかかるところがあった。
靴箱で靴を履き替えながら、俺は考えていた。
こういうのも、たまには悪くないな。
……散々悪態をついていたが。




