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No,9


 時は進んで放課後。俺は学校の廊下を歩きながら、先ほどの昼休みに言った言葉を思い出す。


「なぁ、お前と同じ小学校の奴ってたとえば誰だ?」


「えっ?! う~ん。真紀くらいかな。他はあんまりセージが知ってる人はいないかな」


 さりげなく俺の人脈の狭さを突いて、アヤノは俺の問いの答える。


 そして現在。理科の課題を教室で終わらせ、結城真紀のいる美術室に足を運ぶ。何を隠そう彼女は美術部に所属している。今日は仕方がない。午後の部活動はサボ……いや、欠席するか。

 個人的な用事があるわけだし、翔太も許してくれるだろう。何しろ、結城に訊きたいことがあった。


 目的地にたどり着くと、少し迷ってから、美術室の扉を開いた。

 案の定、河内は美術室にいた。大変真面目に分活動を行っている。俺は急に居心地が悪くなるように感じた。別に部活をさぼっているわけではないのだが。


「結城。ちょっといいか?」


「ああ、うん。別に構わないけど」


 二つ返事で結城は廊下に出てきた。さすがアヤノと違ってスムーズに進む。俺は僅かながら感動を覚えていた。

 他の美術部員は黙々と作品に打ち込んでいる。そういう部活だ。ふと見ると同学年で見たことがあるやつがいるが、名前がいまいち思い出せない。俺の人名記憶力の無さは呆れを通り越すほどだ。


「お前ってアヤノと小学校同じだっただろ? 一つ訊きたいことがある」


「……何が聞きたいかわかる気がするよ」


 予想外の返事に、俺は少々戸惑った。考えを見破ったうえで、結城はこう言っているのだろうか。心理的な面では少なからず自信がある俺の考えを見破るとは。さすがではないか。

 ……そんなことはどうでもいい。


「あの子の、夢のことだよね?」


 どうやら俺の予想は外れていなかったらしい。俺はあいつの夢が、あいつの過去とつながっていると考察した。よくよく考えてみれば、夢というものは実際に見た・体験したことか、実際に自分が想像したことが現れる傾向がある。そして、リアルな夢に想像の産物は現れにくいはずだ。そう考えたところで、俺は過去の話のなのではないかと考えたのだ。


「あいつの過去と関係があったりするんじゃないのか。まぁ、俺はあいつの過去なんて知らないがな」


 何しろ知り合って2,3ヶ月の仲だ。過去に何があったか訊くのは野暮ってやつだ。


「やっぱり須藤はすごいね。なかなかの推理だよ。……確定じゃないけど、私もあの子の過去に関係してると思う。でも、いくら須藤でも教えるのはちょっといけない気がするんだ」


 どうやら思っていたよりも重い過去の話だったらしい。これ以上入り込むのはどうも性分じゃない。



 そう思った時、俺の脳裏に何かが引っ掛かった。


 ―――まてよ、今話してるのは、九条アヤノの過去の話だよな。そして、九条アヤノの夢の話。あいつが分かってないわけがない。


 今、結城はアヤノの過去は自分くらいしか知らないとでもいうように話した。

 そう、アヤノ自身が知らないとでもいうように。


 そのことを告げると、結城は途端にうつむいた。少し考えてから口を開いた。その少しの間が、俺にはとても長く感じられた。何故だ。ただ頼まれたから考えただけなのに、俺はここまで本気に解決しようとしてる。それに、現実アイツの夢は生活に支障をきたしてない。体調が落ち着かないらしいが。


「あの子はね、小学六年生の時、病気で入院したの。

 なんていう病気かは忘れたけども、すごく難しい手術をしなくちゃならなくて、その手術のせいで過去の記憶がちょっとなくなったらしいの……」


 触れてはいけない領域に手を出した気がした。




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