カーネーション
初めての投稿で緊張しています。
読みづらい所もあるかもしれませんが、最後までお付き合いくださいね(*^ω^*)
よろしくお願いします!
1.
「おい、目糞ついてんぞ」
「女の子にもっと良い言い方はないの?」
隣に立つ男は、小倉依。
彼は、赤毛でピアスやら指輪をたくさん付けている派手な外見から、学校でも問題視されている。私と同い年だ。
つまり彼は私の幼なじみというわけで、私の好きな人でもある。
周りは、見た目で依のことを怖い人だと思っているようだけれど、本当は誰よりも優しいことを知っている。さっきのだって、学校で私がバカにされないために、注意してくれたんだ。(多分ね)
私は赤くなった顔を隠すように、目を擦り続けた。
「お前鏡見てねぇの?寝癖もあるし」
『あんたに早く会いたくて、寝坊したのに急いだのよ!!!』
心の中の言い訳が伝わるわけもなく、
「あんたに会うのにオシャレしてもねぇ」
いつでも一緒にいたせいで、彼に対してなかなか素直になれず、可愛くないことしか言えない自分がいる。
「それより、依。あんた最近痩せた?」
「夏バテかな?お前は太ったよな。」
「うっさい!」
「わりぃわりぃ!」
依は、可愛くない私に笑顔を向けてくれるけれど、毎日こんなバカな会話しかしていないので、私のことを幼なじみとしか思っていないだろう。
私は、この関係を崩したくなくて想いを伝えることなんか、できなかった。
2.
学校に行くまでの通学路に、花屋がある。
私は、店先に置いてある花を見ることがひそかに毎日の楽しみになっていた。
もうすぐ母の日だからか、最近はカーネーションがたくさん飾ってある。
依はそんな綺麗な光景をちらっと見て、
「母さんにカーネーションを買わなきゃ」
心の言葉が出てしまった照れ隠しか、すぐに空を見上げながら呟く。
「毎年あげてるもんね」
学校も、奨学金で行く親孝行な依。
彼は母子家庭で、一人っ子。
だから、母親を常に労り、母親も依を溺愛していた。
「お前さ、花、好きだよね?」
「いきなりなぁに?」
「…いや、何でもない」
3.
学校についてから、私と依は同じクラスなので自然と歩幅をずらして、別々に教室に入る。
互いに席に着くと、少ししてから授業が始まる。
朝から古典の授業はとても辛く、あちこちで机に突っ伏している不真面目な生徒が見えた。
私も、うつらうつらしながら後ろから見える依の赤い髪を見て、その見た目とは裏腹に、真面目にノートをとる彼を見て尊敬した。
そうこうしているうちに授業が終わり、中休みになった。
彼が、倒れた。
4.
最初、すごく派手な音がして、すぐに依の近くの席の女子が悲鳴を上げたり、男子が教師を呼びに行った。
私もすぐに依に近づき、彼を抱き抱えた。
依は、古典で眠かったのに我慢していたので一気に眠気がきたのだと思って、名前を呼びながら、ほっぺをペチペチと叩いた。
しかし、私の軽い考えとは裏腹に、依は目を覚まさない。
頭が真っ白になった私の元へ、男子が呼んできた教師が近づき、依はすぐに病院に運ばれた。
依のかばんから、花に関する本が入っているのが見えた。
5.
お医者さん曰く、検査入院ということで依は少しの間入院することになった。
「依。」
私は、通学路にある花屋で花を買って、彼のお見舞いに来た。
真っ白い部屋で、独特な薬の匂いの中で、
「心配かけて、ごめんな。」
何本か体に管が繋がれている彼は、なんだかやつれているように見えたが、笑っていた。
様々な花を花瓶に活けていると、その中から依は、私に一輪の花を差し出した。
この部屋の中みたいな、真っ白なカーネーション。
痛々しく痩せた腕と、泣きそうに笑う彼を見て、私はピンときてしまった。
彼は、もう長くないらしい。
「検査入院…だよね?」
信じたくない一心で、酷なことを聞いてしまったとすぐに思った。
彼は、静かに涙を流していた。
「あたし、あんたが」
今こそ言わなきゃ、そう思ったのに。
彼は、首を横にふった。
あたしは白くて儚いカーネーションを潰さないように、でも握りしめていた。
6.
何日か経って、彼は亡くなった。
最近痩せだしたのも夏バテのせいなんかじゃない。病気のせいだったんだ。
私は、結局彼に想いを伝えることができなかった。
今まで何故素直になれなかったのだろう。
泣きすぎたせいで、頭の中がぼんやりとする。
彼の病室の荷物を整理していると、枕の下から一冊の本が出てきた。
その本は、かばんから見えていた本で、どうやら花言葉について書かれているらしい。
ふせんとして、何かが書かれているルーズリーフが使われていた。
7.
折り畳まれたルーズリーフを開くと、私宛ての手紙になっていた。
「実は、俺はお前のことが好きでした。少し天然な所も、朝に慌てて準備するせわしない所も大好きでした。
でも、幼なじみとして、お前の幸せが1番だと思っていたし、病気ですぐに死んでしまうだろう俺のことを想ってもらうのは違うと思った。
だから、俺じゃなくて、もっと素敵な、お前を守ってくれるそんな人を見つけて下さい。依」
依は、ずるい。
涙で滲んだインクが、依が嘘つきだと証明していたし、この手紙が挟まっていたページを見て、この先も、依のことしか想うことができないと私は思った。
「花言葉
白いカーネーション→僕の愛は永遠に生き続けます」
いかがでしたでしょうか?
お時間に都合のある方は、よろしかったら感想をいただけると嬉しいです。
最後までありがとうございました!