表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天使の言い分  作者: ろく
13/20

第十三話


 起きたら、すぐ側に理絵の顔があった。

 んおお!? 何で!? 何が起きた!?

 勢い良く体を起こす。まだ上手く回ってない頭がガンガンしてる。

 ……あー、思い出した。おれのばかちんこ……。

 昨日のあれやこれやを思い出す。うあー、めちゃくちゃ恥ずかしいー。

 ああいうおせっきょーじみた事はおれのキャラじゃないじゃん。つか、理絵に言ったってどうしようもないじゃん。

 いやいやそういうんじゃなくてさ、それ以前にさ、うあー、布団までちゃんとかけてくれて……。

 いやマジごめん。押し倒しといてアレはないわ。マジでない。おれ最低。せめて謝れよ。

 うん、良し。理絵が起きたらまず謝る。そんで礼を言う。布団ありがとう。

 んでもっかい謝る。いらいらをぶつけました。ごめんなさい。

 つか、一緒に寝てたの? 何で? ベッド空いてんじゃんか。女の子が床で寝てる図とか、何かそれだけで罪悪感的なんだけど。

 今からでもベッドに運んでやっかな。ああでも、いっくら理絵が軽いとしても四十キロはあるよな……。

 ほぼ毎日酒瓶やら何やら運んで慣れてるとはいっても、四十キロ越えはちょいときつい。それで一基の親父さん腰いわしちゃったし。あなどれんよ、酒瓶。

 寝顔を眺めつつ首を捻っていたら、理絵がむにむにと何か言った。と思ったら目を開けて、ぼんやりとした顔でおれを見上げてくる。

 んん、謝るって決めてたけどもさ、いざ理絵が目を覚ましたら、気恥ずかしさが勝って言い出しづらい。

 ええと、ごめんなさい。昨日は……ん? 今日? まあどっちでも良いや。まあとにかくごめんなさい。

 よし、エア謝罪は完璧だ。後は口に出すだけだ。

 しばらくして、ちょっとだけしゃっきりした顔つきになった理絵が、おれの方ににじり寄ってくる。

 よし謝るぞ。

「ごめんなさい洋平くん」

 んお?

「わたし、調子にのってた。ごめんね」

 ぺこん。

 頭を下げた理絵に、おれはぽかんとしちゃいました。

 や、謝るのはおれだと思うんだけど。つか、お前が調子にのってるとか今更だと思うんだけど。

 だって出会い頭からしていきなり天使とか言い出すし。そんで人ん家に居ついちゃうし。ノーブラノーパンで寝てたりするし。

「あ、何で笑うの」

 はは、何でってそりゃ、なあ?

 ひとしきり笑って、おれは腑に落ちないって顔をしてる理絵の頭をぽんと叩いた。

「悪い。昨日八つ当たりした。ごめん」

 よし言えた。エア謝罪の文面からは随分言葉が減っちゃったけど。

 言ってすっきりしたらいきなり、何か恥ずかしくなってきた。あー、苦手だわこういうのー。

 おれは立ち上がって着替えを取りに行った。シャワー浴びたいってのは建前で、この空気から逃げたかったってのが本音。

「あ、待って。わたしお腹すいちゃった。おフロ入る前にご飯作ってほしいな」

「……お前ね」

 それがついさっき『調子のってました』って謝ってた人間の台詞か。

「食パンあるから適当に食ってろって」

「作ってくれないの?」

「それくらい自分でしろよ」

 むう、と頬を膨らませて、理絵は食パンの袋をごそごそ漁った。

「……薄い」

「すみませんねえ」

 おれだって四枚切りに憧れますけどねえ。

「わたしのうちではもっと厚かったよ?」

「んじゃ帰れよ」

「…………やだ……」

 あ、おれのアホ。こういう事言えばしょんぼりモードになるっての分かってんのに。

 でもまあ、実際問題ずっといられたら困るし。女の泣き顔見たくないってのも本音だけど、さっさと帰ってくれってのも本音だ。

 で、おれは逃げ出した。とりあえずはシャワーだ。

「冷蔵庫にマーガリンあるから」

 バターなんて良いものはうちには無い。ジャムはあったかもしれないけど、最近使った覚えがない。もしかしたら賞味期限切れてるかもしれない。

 つか、うちの冷蔵庫に何があるとか知ってるんだろうけど。ずっとここにいてんだからさ。

 いつになったら帰ってくれるんだろねえ……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ