第3話
何と言う事でしょう。
シズクさんとマスダさん、がんがん掘って、もう大体の形は出来ちゃいました。
10m四方はいくらなんでも、という事で、少し広げてくれました。
あとは綺麗に整地して、梁も慎重に立てていきましょう。
その前にお昼ごはんです。
「マスダさん、今、何してんですか?」
「ヤマモトで出稽古。食客だぞ」
「ヤマモト……西の方でしたっけ? ハワードさんの所?」
「そうそう」
「なんで道場とか作らないんすか?」
「あれ? お前知らねえの? 俺は道場作れねえんだ」
どういう事でしょう?
マスダさんは、もう日輪国では指折りの武術家なんですけど……
「え? いや、知らないす。何でっすか?」
「柔鋼流の本家から文句言われてなあ。最初は教えるにもすげえ言われたんだぞ。元々、外で見せちゃ駄目って流派なんだからよ」
「潰しちゃって、マスダさんが本家になりゃ良いじゃないすか」
「テルクニ……お前、意外と武闘派なんだな……」
あのマスダさんも呆れ顔。
テルクニ君、それはさすがにどうかと思います。
「シズクさんは?」
「ウキョウで作業員やってる。道路、何個も作ったぞ! 凄いだろ!」
「まじすか!? 首都の道路作るとか、めっちゃ儲かるんじゃないすか!?」
「そうだぞ! 1日に金貨10枚とかもらえるぞ!」
シズクさんなら、道路1本作るのもお手の物でしょうけど……
作業量に見合わない額の気がします。
10倍でもおかしくない気がしますよね。
「いや、それ安くないすか? 首都の道路っすよね?」
「安いの?」
「うちでクレール母さんと相談した方が良いと思いますよ。多分、払い戻しでめちゃ増えて返ってくると思いますけど」
「まじ? じゃあクレール様に相談してみる」
「国交省、何してんすか。いや、任された会社の方か……」
「お前こそ何してんだよ」
マスダさん、箸で人を指差すのはマナー違反です。
「今はサムライキングダムすねー」
「?」
「何だそれ」
「知らないんすか!? 10年経って日輪国サーバーで同接5万切ってないんすよ!? 世界入れたら50万超えるんじゃないすか」
「???」
「わけわからん?」
「ネトゲすよ、ネトゲ。僕、これでもランキング100位入ってるんですよ」
「凄いの? それ?」
「初日300万DLで同接50万超えるよーなネトゲで無課金でトップ100ですよ。凄くないすか?」
この2人には通じないようです。
テルクニ君、話題変えた方が……
「なんかすごいのは分かった」
「そうか? 俺は分からん」
「ま、そういう事もあって、こないだオフ会で結構凄い人と会ったんすよ」
「どんな?」
「車道流やってる人と、現時流の人。段持ち」
「え! まじで!? 現時流かよ……なんか良い思い出ないな」
「何かあったんすか?」
シズクさん、話してしまいましょう。もう500年も前の事です。
「いやあ……昔さ。マサちゃん、現時流の奴に命狙われたんだ」
「は!? 父さんが!?」
「何!?」
「マスダさんも知らなかったのかあ。マサちゃん、あんま話したがらないだろうしね。そいつ、暗殺者だったんだ。狙われてるって分かって、逆に果し状出してさ。立ち会ったんだ」
「す、すげえな……知らんかったぜ……マサヒデさん、んな事してたのか」
「これ、教会と現時流の本家? みたいな所から内々の話があって、マサちゃんの記録から消されちゃったもんね。昔の本には書いてあったけど」
テルクニ君のお父さん、マサヒデさんの旅の記録は、今でも本になって売ってるんですよ。凄いですね!
大河ドラマも何本も作られたんです。人気は3本目の作品で、視聴率が毎回20%を超えるという偉業を成し遂げました。連ドラは魔の国で大人気で、平均75%という大記録です。
アニメ版は何故か紛争地域で大人気。放送時間になると通りから子供が消える程で、紛争地域各国で皆が共感出来るのは、サッカーと剣聖トミヤスぶらり旅だけと冗談が言われる程なんです。今でもHDリマスター版が再放送してます。
「ヤバい立ち会いだったよ。間一髪。マサちゃん、右腕が縦に半分斬られてさ。ぎりぎりで左手で脇差抜いて、相手の首斬ったんだ。その現時流の奴、首から血い吹き出しながら、死ぬまでぶんぶん刀振ってたんだ。一瞬遅れたら、頭粉々になってたよ」
「マジすか」
「やべえな」
おやおや? シズクさんが得意そうな顔ですよ。
面白い話をしてくれるんでしょうか。
「テルクニは歴オタだから、知ってると思うなー。現時流の、シンノスケ=ナカタ」
ぎっくり。テルクニ君の箸が止まりました。
「えっ……昔の教会の? 排斥派の暗殺者!? 暗殺失敗は最後の1回だけって、あのシンノスケ=ナカタ!?」
「そうそ!」
「え!? あれって、ヨシタカ=キノトの暗殺で返り討ちじゃないの!?」
「違うんだなあー。あれ、マサちゃん。すげーだろ? 人斬りシンノスケに果し状出したんだぞ。タイマンで勝ってる」
「げえっ!?」
「まじか……?」
「昔の本には載ってるし、クレール様も知ってるし。帰ったら聞いてみなよ」
「……」
「はあー……」
「原本、ヒラマツ家に保管されてるからさ。テルクニなら、申請出したら読ませてもらえると思うぞ。結構、削られた所あるんだ。排斥派とか宗教絡みでしょ。外国の軍隊とかともやり合ってるし」
「軍!? 父さん、そんな事してたんすか!?」
おっと! これは勘違いしてませんか!
「あのさ、変な勘違いしてない? マサちゃん、自分から喧嘩売りに行ってないぞ。向こうが狙ってきたからって感じ。とある国のお姫様も守ってるんだぞ」
マスダさんもびっくり!
「は!?」
「おいおい! 聞いてねえぞ!」
「いや、これもちょっとね。その国の内乱? 内紛ていうの? そういう感じだからさあ。削られちゃったんだよねー! でも、歴史見てたら、この姫様だー! ってすぐ分かるよ。私、初版本、ちゃーんとデジタルで保存して持ってるぞ。その辺、ぜーんぶ載ってるやつ! まあ、クレール様に聞いたら? 大体知ってるし」
「そのデータコピーさせてくれ!」
マスダさんの食い付きが凄い!
マスダさんは、テルクニ君のお父さん、マサヒデさんの大ファンだったんです。
実際に立ち会った事もあって、手足を斬られてしまった事もあります。
「マスダさんなら良いぞお。ところでカオルちゃん来てないの?」
「ももちゃん? 来てないよ」
「ももちゃん?」
「名前変えたのか?」
駄目ですよ、テルクニ君。気を付けて下さい。
チャットに出て来た『ももちゃん』は、実は情報省の忍なんです。
なんとももちゃんの正体は、実はリアルニンジャなんです!
忍者ではなくニンジャです! 忍ではなくシノビです!
スパイ養成所で鍛えられまくった、ヤバい人です。
コードネームはカオル=サダマキです。仕事の呼び名で、本名は不明です。
身分証も口座も、色んな名前の物を大量に持っています。
『カオル』という名は、代々引き継がれていますけど、一般の人は知りません。
ちなみに、現在18代目。初代との血縁等、一切が不明です。
初代カオル=サダマキは、お父さんのマサヒデさんと一緒に戦い続けた忍です。
かっこいいですね!
でもネトゲはやってます。
トミヤス家の様子を知る為とかではなく、チャット代わりでもなく、ガチ勢です。
課金で給料がかなり消えています。
仕事柄、特別に用意されたプロキシを幾つも経由してプレイしているので、いつも激重です。瞬間移動やプチフリーズはしょっちゅうです。海外から日輪国サーバーに繋いでます、と言って誤魔化しています。
急な仕事が入った時は、鯖落ちです、で通してます。
スマホもいくつも持ってはいますが、位置情報サービス等は一切使いません。基本的にスパイ活動の仕事道具です。特殊な回線を使うので、スマホゲーは出来ません。ガラケーが鳴ったら仕事という感じです。
ちなみに、ドラマ版、アニメ版共に、キャラ投票で一番はいつもカオルさんです。
初代なので、今のカオルさんとは全然関係ないんですが。
「あーっと、ええとさ、うん、ももちゃんって仇名っていうか、コードネーム。仕事が仕事だから、普段はももちゃんって名前で、電話とかメールとかするみたいな」
「あー」
「うん、そりゃ仕方ねえな」
上手く誤魔化せたみたいです。
良かったね! テルクニ君!
「昨日、やるって伝えたから……今の仕事が一区切りついたら、そのうち来るんじゃないすか? あ、受付はカオルさんにやってもらえば良いすかね」
「いや、受付が忍って怖くない?」
「だな……いやいや、情報省、そんな仕事に忍寄越すのか?」
「来るんじゃないすか。父さんのお陰すよ。情報省の忍、父さんと一緒に冒険とかしてたし、稽古もしたから、結構トミヤス流に恩義がある的な。情報省の格闘技とか武器術とか、トミヤス流が入ってますし。で、トミヤス家に何かあったら、みたいな感じで、カオル=サダマキって人は、呼べば個人的に使えるみたいす」
「へー」
「まあ、カオルさん的には、こんなの完全な休暇すよね。普段はギスギスした仕事だろうし、休みとかとっても普通に呼び出されるみたいな感じで、有給とか無意味みたいだし。普通に休ませてあげたいっすよ」
「テルクニのそういう所、マサちゃんに似てるかな」
「だな!」
「なんで、カオルさん来ても、あんま防衛とかはやらんでほしいっすね。休んでほしいっす」
「ニートなのに、変に気は回るんだね」
「全くだ」
「ニートちゃいますよ……ダイヤ鉱山の護衛とか、あの給料、どこに消えたと思ってんすか。ヤバい金額入りましたよ。でも、クレール母さんが、ほとんど懐に入れちゃって」
「うわきつ!」
「まじか? お前、死にそうになったんだろ?」
「今までの食費とー、何とかとー、何とかとー、とか言って……いや、クレール母さんの基準の食費と違いますから! って言っても、聞いてくれないんすよ」
クレールさんは、種族的に大量に食べちゃうんです。
体重以上に食べちゃうんですから……
それを基準に食費だって取られたら、大変ですよね。
「うっわー……かわいそ……」
「クレールさん基準で食費見られたら、そらあ消えるわなあ……」
「グラボ買い替えたら、もうほとんど無くなっちゃいました。働きたくなくなる感じ、分かりますかね。財布握ってるのクレール母さんなんで、全部食費に消えるんす。もう無限地獄なんすよ」
「分かる。一生、給料0になっちゃうだろ」
「だよなあ」
テルクニ君、頑張ってね!




