毒に侵されながらも、私は世界を殺す竜を斬る ――その息が止まるまで、私は死ねない
森は静かに死にゆく。
炎はなかった。
叫び声もなかった。
ただ、落ち葉だけが…一枚、また一枚と…何も残らなくなるまで。
彼女は黒焦げになった木々の間を歩いた。
一歩踏み出すごとに、枯れた土埃が舞い上がった。
彼女は布切れで口を覆ったが、それでは足りなかった。
「…もう始まっている…」
彼女の指が震えた。
毒。
それは目に見えない…しかし、至る所に存在していた。
空気の中に。
彼女の肌に。
彼女の血の中に。
しかし、彼女は止まることはできなかった。
今、止まることはできない。
ここまで来たのだから。
最初の症状は軽かった。
めまい。
そして…重苦しさ。
まるで自分の体が自分のものではないかのように。
「…もし止まったら…死んでしまう…」
彼女は歩き続けた。
ブーツが乾いた根を踏みしめる音がした。
その時、彼女はそれを感じた。
圧力。
異様な鼓動。
まるで世界そのものが…狂ったように呼吸しているかのようだった。
「…そこにいたのね…」
彼女は顔を上げた。
そして、それを見た。
竜。
威厳などなかった。
美しさもなかった。
それは…異様だった。
鱗は黒かったが、病的な緑色の光がそこから漏れ出ていた。
息を吐くたびに濃い霧が立ち込め、地面をゆっくりと溶かしていった。
竜が歩いた場所では…
生命が消滅した。
「…あなたが…」
少女は剣を抜いた。
「…すべてを殺している者…」
竜は首を回した。
その目は彼女に釘付けになった。
そこには怒りも、憤怒もなかった。
ただ…認識だけがあった。
まるで彼女がそこにいる理由を既に知っていたかのように。
空気が重くなった。
霧が迫ってきた。
彼女は走った。
毒が肌を焼いた。
肺が焼けるように痛んだ。
「ちっ…!」
彼女は枯れた根の間を飛び越えた。
動きが鈍くなっていった。
呼吸が…浅くなっていった。
「…失敗するわけにはいかない…」
彼女は思い出した。
部屋。
横たわる人影。
荒い息遣い。
「…待ってて…」
彼女は歯を食いしばった。
「…もう少しだけ…耐えて…」
竜が口を開いた。
炎ではない。
毒だ。
黒い霧が爆発した。
彼女は地面を転がった。
腕の力が抜けるのを感じた。
動かない。
「…近づいてくる…」
毒が。
彼女の体内に。
広がっていく。
「…それから…急いで…」
彼女は小瓶を取り出した。
小さい。
かすかに光っている。
…すべてはこれにかかっている…
竜は前進した。
ゆっくりと。
意識的に。
まるで避けられない死を覚悟したかのように。
彼女は彼に向かって走った。
まっすぐに。
ためらうことなく。
竜は攻撃した。
彼女は剣を投げた。
傷つけるためではない。
気をそらすためだ。
竜はそれを弾いた。
そしてその瞬間――
彼女は既に彼の目の前にいた。
…捕まえた…
彼女は小瓶を彼の胸に叩きつけた。
ガラスが粉々に砕け散った。
光が爆発した。
竜は咆哮した。
初めて。
世界を揺るがすような咆哮。
彼の鱗にひびが入り始めた。
緑色の光が…白く変わった。 ―今だ!
彼女は剣を構えた。
彼女は飛び上がった。
全身が痛んだ。
視界がぼやけてきた。
しかし、そんなことはどうでもよかった。
「やらずに死ぬわけにはいかない!」
彼女は剣を突き刺した。
深く。
首に。
竜は倒れた。
森は静まり返った。
彼女もまた倒れた。
膝をついた。
荒い息を吐きながら。
「…やった…」
しかし、何かがおかしい。
ひどくおかしい。
彼女は周囲を見回した。
空気は…
まだ毒に満ちていた。
「…違う…」
彼女は竜を見た。
その体は溶け始めていた。
しかし、毒は…
残っていた。
「…あなたじゃない…」
彼女の手は震えていた。
「…ただ…心臓が…」
そして彼女は理解した。
竜は…
原因ではなかった。
原因は器だった。
核だった。
毒は死んでいなかった。
放出されていた。
「馬鹿…」
彼女は弱々しく笑った。
彼女は血を吐いた。
「あなたを殺せば…全てが解放される…」
空が暗くなった。
空気が重くなった。
世界は…崩壊しつつあった。
しかしその時…
風向きが変わった。
一瞬。
ほんの一瞬。
しかし、それは確かに。
彼女は顔を上げた。
「…まだ…」
彼女は立ち上がった。
苦労しながら。
「…まだ…」
彼女は再び剣を突き刺した。
さらに深く。
心臓へ。
光が爆発した。
しかし今回は…
毒ではなかった。
静寂だった。
空気は…
そのままだった。
毒は…
消え去った。
竜は…
毒を放出しなかった。
毒を封じ込めたのだ。
そして、その核を正しく破壊することで…
浄化した。
彼女は倒れた。
弱々しく。
空を見上げる。
青い。
初めて。
「…やった…」
彼女は微笑んだ。
弱々しく。
「…もう…息ができる…」
彼女は目を閉じた。
そして世界は…
再び息を吹き返した。
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次回も全力で書きます!




