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第072話「番外編『義姉爆誕』:結婚式典!怒号?祝福?」


 領都シュガーヒルの中央部に位置する、荘厳なる大聖堂。

 天高くそびえる尖塔と、美しいステンドグラスを誇るこの神聖な場所は、本日、アスパルテーム伯爵家の次期当主であるアドバンテームと、オリゴ子爵家の次女スクラロースの結婚式場として貸し切られていた。

 本来であれば、神聖な静寂と、神への祈り、そして厳かな祝福に包まれるべき場所である。

 だが、現在の大聖堂周辺は、およそ結婚式とは思えない異様な熱気と騒音――いや、暴動の気配に支配されていた。


「……ねえ、お父様。

 外のあれ、なんなんですの?」


 私は大聖堂の二階に設けられた親族用の控室から、そっと窓のカーテンをめぐり、眼下の広場を見下ろした。

 そこには、大聖堂を取り囲むようにして、夥しい数の群衆が詰めかけていたのだ。

 しかも、ただの野次馬ではない。

 彼らは明らかに二つの陣営に分かれ、互いにプラカードや横断幕を掲げ、怒号を飛ばし合っている。


 右陣営は、着飾った貴族の令嬢や、裕福そうな平民の女性たちで構成された集団だ。

 彼女たちが掲げる横断幕には、目を疑うような美辞令句がデカデカと踊っていた。


 『氷の貴公子・アドバンテーム様!』


 『月光の麗人!』


 『至高の令息!』


 『どこの馬の骨とも知らぬ女との結婚、断固反対!』


 『私たちの王子様を奪わないで!』


 それは、我が兄アドバンテームの熱狂的なファンクラブ(非公式)の面々だった。

 学生時代から王都や領内で彼を追いかけ回していた令嬢たちが、兄の突然の結婚発表に発狂し、結託してデモ行進を行っているのだ。

 中には、もはや意味の分からない要求を掲げている者もいる。


「結婚するなら、せめて側室枠を設けなさい!」


「領内にハーレム設立特区の要請を!」


「第二夫人でも第三夫人でもいいから私を置いて!」


(ハーレム設立特区ってなによ……。

 特区認定してどうすんのよ。

 税金でも免除されるわけ?)


 私は呆れてため息をついた。

 兄の顔面偏差値が高いのは事実だが、中身はただの変態シスコンだ。

 あんな男の側室になったところで、毎日妹(私)の成長記録を語られるだけの地獄が待っているというのに。

 何も知らない令嬢たちというのは、本当に幸せで、そして残酷な生き物である。


 一方、広場の左陣営。

 こちらは、血気盛んな青年貴族や、屈強な冒険者、商人の男たちで構成された集団だった。

 彼らもまた、顔を真っ赤にして拳を振り上げている。


「我らが女神、スクラロース様を奪うな!」


「相手が次期伯爵だろうと認めないぞ!」


「あんな美人に相応しいのは俺たちだ!」


 「結婚式を粉砕せよ!」


 こちらは、激痩せして絶世の美女へと変貌を遂げたスクラロースのファンクラブだった。

 ゼブラー商会の看板娘として街に立つようになった彼女は、瞬く間に男たちを虜にし、一大ムーブメントを巻き起こしていたのだ。

 「傾国の美女」を金持ちの貴族に独占されてたまるかという、男たちのルサンチマンが爆発している。


 右からは「結婚相手の女を出せ!」という黄色い悲鳴。

 左からは「俺たちの女神を返せ!」という野太い怒号。

 両陣営が今にも衝突しそうな一触即発の事態に、領都の警備兵たちが必死に人間の壁を作って押し留めている状況だ。


「……胃が、痛い……」


 私の背後で、アスパルテーム伯爵であるお父様が、ソファに沈み込みながら呻き声を上げた。

 その手には、水筒と、パプリカ領から送った特製の『龍の粉(滋養強壮剤)』が握られている。

 しかし、強壮剤を飲んだそばからストレスで胃壁が削られているらしく、顔色は一向に優れない。


「まさかとは思ったが、アドバンテームの結婚式が、このような暴動騒ぎになるとは……。

 警備兵の増員を要請したが、果たして式が終わるまで保つかどうか……。

 パルスイートよ、お前からも何か言ってやってはくれないか」


「私に言われましても。

 あんな熱狂的な信者たちを前に、正論など通じませんわ。

 放っておけば、そのうち疲れて帰るでしょう。

 それよりお父様、お時間ですわ。

 新郎の父として、祭壇の横に立たなければなりませんよ」


 私は冷たく言い放ち、お父様を立たせた。

 正直、私もこのカオスな空間から一刻も早く逃げ出したい。

 ピメントの領地経営で忙しい中、わざわざ時間を割いて出席しているのだ。

 不労所得計画に影響が出ないよう、さっさと式を終わらせて帰りたいのが本音である。


「……そうだな。

 行ってくる。

 アスパルテーム家の当主として、堂々とせねばな」


 お父様は震える足に鞭を打ち、控室を出ていった。

 私もその後を追い、大聖堂の親族席へと向かう。


      ◇


 大聖堂の内部は、外の喧騒が嘘のように静まり返っていた。

 高い天井にステンドグラスの光が差し込み、パイプオルガンの重厚な音色が響き渡る。

 参列しているのは、厳選された両家の親族と、ごく一部の親しい友人や貴族のみ。

 外のデモ隊は、分厚い扉と警備兵によって完全にシャットアウトされている。

 ……それでも、時折「結婚反対ー!」という微かな声が漏れ聞こえてくるが。


 やがて、パイプオルガンの音色が変わり、入場を告げる荘厳なメロディが奏でられた。

 大聖堂の後方、重厚な扉がゆっくりと開く。


「おお……」


 参列者たちから、感嘆のため息が漏れた。

 光を背負って現れたのは、純白の礼装に身を包んだ新郎――兄、アドバンテームだ。

 その姿は、筆舌に尽くしがたいほどに美しかった。

 黄金の髪は光を反射して輝き、宝石のような碧眼は澄み切っている。

 仕立ての素晴らしい白いタキシードが、彼の高身長と長い手足を完璧に引き立てていた。

 本当に、見た目だけなら『氷の貴公子』という二つ名が相応しい。

 歩くたびに、彼の周囲にキラキラとした幻覚の薔薇が舞っているようにすら見える。


(……顔だけはいいのよね、顔だけは)


 私は親族席の最前列で、内心毒づきながら兄の入場を見守っていた。

 アドバンテームは、ゆっくりとレッドカーペットの上を歩み進める。

 その視線は、真っ直ぐに前を……祭壇を見据えている。

 ……かと思いきや。


 チラッ。


 兄の視線が、不意に横を向いた。

 そして、親族席に座る私と、バッチリと目が合った。

 その瞬間、あの冷涼な貴公子の仮面が崩れ落ち、だらしなく蕩けた、最高に気持ちの悪い笑顔が浮かんだのだ。


『パルス!

 今日のドレスも最高に可愛いよパルス!

 ああ、僕の結婚式を見守ってくれるなんて、なんて幸せなんだ!

 後で君の使用済みハンカチを祝儀代わりにくれないかい!?』


 声には出していない。

 だが、その熱視線から、兄の心の声がテレパシーのように私の脳内に直接流れ込んできた。

 全身の毛穴が開き、ゾワァッ! と鳥肌が立つ。


 「……ッ!!」


 私は反射的に扇子をバッと開き、顔を隠した。

 そして、親族席の陰に身を潜めるようにして、視線を逸らす。


 無理。

 あの目は本当に無理。


 結婚式という人生の晴れ舞台で、いい歳をした妹に、生まれたての赤ん坊を愛でるような視線を送ってくるんじゃない。


 私がドン引きしている間にも、アドバンテームは祭壇の前へと辿り着き、神父に向かって優雅に一礼した。

 その隙に、外の様子が気になった私は、こっそりと後方の窓から広場を覗き込んだ。


 そこでは、ちょうど兄の入場の瞬間、扉が開いたことで彼の姿を視認したスクラロース派のデモ隊の男たちが、奇妙な静寂に包まれていた。

 先程まで「俺たちの女神を返せ!」と息巻いていた男たち。

 彼らは、アドバンテームの『発光するレベルの超絶美形っぷり』を目の当たりにし、手に持っていたプラカードを力なく下ろしていた。


「……なんだ、あいつ」


「……光ってるぞ」


「……あんなん、勝てるわけないだろ……」


 男たちの顔には、明確な絶望と、圧倒的な敗北感が刻まれていた。

 同じ男として、生物としての格の違いを見せつけられたのだ。

 やがて、リーダー格の男がポロリと涙をこぼし、天を仰いだ。


「……お似合いだ。

 俺たちの女神には、あれくらいじゃないと釣り合わねぇ……!」


「幸せに……幸せになれよ、スクラロース様ぁぁぁっ!!」


 なんと、スクラロース派のデモ隊が、一瞬にして戦意喪失し、祝福の方向へとシフトしてしまったのだ。

 彼らは怒号を引っ込め、代わりにボロボロと悔し涙を流しながら拍手を送り始めている。

 なんとも現金というか、潔い男たちである。


 だが、事態はそれで収まらなかった。

 男たちが祝福に回ったことで、今度はアドバンテーム派の令嬢ファンたちがヒートアップしたのだ。


「ちょっと!

 何であんたたち、勝手に納得してるのよ!」


「まだ女の顔も見てないじゃない!

 アドバンテーム様に相応しい女なんて、この世にいるわけないのよーっ!」


「顔も見せない隠れ女なんて、絶対に認めないわー!」


 令嬢たちのブーイングが、さらに加速する。

 彼女たちの怒りは頂点に達し、警備兵の壁を押し破りそうな勢いだった。

 外のカオスは、まだ終わらない。


     ◇


 そして、ついにその時が来た。

 パイプオルガンが、新婦の入場を告げる、より華やかで美しい旋律を奏で始める。

 大聖堂の後方の扉が、再び開かれた。


 「……!」


 参列者たちが、一斉に息を呑んで振り向く。

 私も扇子の隙間から、後方へと視線を向けた。

 そこに現れたのは、ウェディングドレス姿のスクラロースだ。


 純白のシルクに、繊細なレースがあしらわれたドレス。

 長いヴェールが、彼女の顔を薄っすらと隠している。

 だが、そのヴェール越しでも分かる、スラリと伸びた長身と、見事なまでにくびれたウエスト。

 そして、完璧な黄金比を描く絶世の美貌。

 以前の「巨漢オネエ」の面影など微塵もない、まさに「美の化身」がそこに立っていた。


 「まあ……なんと美しい……」

 「あれがオリゴ子爵家の次女か?」

 「天使が舞い降りたようだ……」


 参列者たちから、先ほどの兄の時とはまた違った、熱を帯びた感嘆の声が上がる。

 だが。

 私が驚いたのは、スクラロースの美貌だけではなかった。


(……えっ!?)


 私は目を見開いた。


 スクラロースの隣。

 彼女をエスコートして歩く、新婦の父親の姿。


 そこには、長身で、引き締まった体躯を持ち、ロマンスグレーの髪をオールバックにした、渋くてダンディな紳士が立っていたのだ。

 身に纏う燕尾服は、彼のために仕立てられた一級品であり、その立ち振る舞いはまるで映画俳優のよう。


(誰、あのイケオジ!?)


 私は記憶の糸を必死に手繰り寄せた。

 オリゴ子爵といえば、たしかスクラロースと同じく、丸々と太った、樽のような体型の美食家だったはずだ。


 「フゴッ」という豚のような鼻息を鳴らし、常に何かを食べていたあの父親を、私は夜会で見て知っているのだ。

 それがなぜ、こんな枯れ専女子が泣いて喜びそうな、超絶イケオジに変貌しているのか。


(……ははぁん、なるほどね)


 私の脳内で、一つの推測が成り立った。


 スクラロースの激痩せ。

 それは「恋煩い」が原因だと聞いていたが、彼女はそれを自分一人のものに留めなかったのだ。


 彼女のダイエット(意図せぬ絶食)の波は、同居している両親をも巻き込んだに違いない。

 娘が食べないのに、親だけが飽食を貪るわけにはいかない。

 あるいは、娘の美の覚醒に触発され、オリゴ家に眠る「痩せれば美形」の遺伝子が、一族全体で共鳴したのか。


 そして何より、あの美食家の鏡とまで言われたオリゴ子爵のことだ。

 きっと、痩せる過程で新たな「食の真理」に目覚めたのだろう。


『運動後の方が、食事は美味い。

 しかも、空腹で食べる少量の方が、より美味しさを深く感じることができ、次の食事への楽しみも倍増することを知った。

 もはや、無駄に太っている場合ではない!

 真の美食とは、健康な肉体にこそ宿るのだ!』


 ……とか何とか言って、健康志向の美食家ストイック・グルメにクラスチェンジしたに違いない。


 間違いない。


 私の推測は、ほぼ100パーセント真実を突いている自信があった。

 恐るべし、オリゴ家の美形遺伝子。


 イケオジ化した父親にエスコートされ、スクラロースが祭壇へと進んでいく。

 その圧倒的な美の暴力は、大聖堂の外にも伝播していた。


 窓の外。


 あんなに騒がしかったアドバンテーム派の令嬢ファンたちが、ピタリと沈黙していた。

 彼女たちは、開かれた扉の隙間から見えたスクラロースの姿に、完全に言葉を失っていたのだ。


「……嘘でしょ」


「……あんな美人が、この世にいるなんて、聞いてない……」


「……負けた。

 勝てる要素が、一つもないわ……」


 彼女たちは震える手で横断幕を下ろし、その場に膝から崩れ落ちた。

 美貌、スタイル、オーラ。

 全てにおいて、次元が違った。

 アドバンテームの隣に立って、少しも見劣りしないどころか、互いの輝きを高め合うような存在。


「……悔しい。

 悔しいけど、勝てない!

 キーッ!!」


 一人の令嬢が、ハンカチを噛みちぎらんばかりに悔しがった。

 だが、女の執念とは恐ろしいものである。

 彼女たちはすぐに顔を上げ、謎の方向へとシフトチェンジを開始した。


「ええい、まだよ!

 まだ正妻が決まっただけよ!」


「そうよ!

 あんな完璧な正妻がいるなら、愛人枠はもっとハードルが下がるかもしれないわ!」


「側室枠を狙うのよ!

 ハーレムを目指すのよ!」


「私こそが次の椅子に座るのよーっ!」


 彼女たちは、敗北を認めた上で、さらに別の欲望へと形を変えて熱狂し始めた。

 もはや何が目的のデモなのか、本人たちも分かっていないだろう。

 だが、怒号とブーイングは完全に消え去った。

 圧倒的な美の暴力の前に、外野はもう「祝福するしかない」という諦めの境地に至ったのだ。

 広場からは、割れんばかりの拍手と、側室志願の叫び声が響き渡るようになった。


      ◇


 大聖堂の内部では、そんな外のカオスなど知る由もなく、式は厳粛に進行していた。

 祭壇の前で、新郎アドバンテームと、新婦スクラロースが向かい合う。

 イケオジ化したオリゴ子爵が、涙ぐみながら娘の手を兄に託した。


「……スクラロースを、頼むぞ、アドバンテーム卿」


「ええ、お任せください、義父上。

 パルスのお友達を、不幸にするわけにはいきませんからね」


 アドバンテームが爽やかに答える。

 オリゴ子爵は「パルス?」と少し首を傾げたが、感動のあまり深くは追求しなかった。


 神父が、神聖なる経典を読み上げる。


「汝、アドバンテーム・アスパルテーム。

 病めるときも、健やかなる時も、この女を愛し、敬い、慈しむことを誓うか?」


 兄は、真っ直ぐにスクラロースの瞳を見つめ、熱を帯びた声で答えた。


「ええ、誓います。

 パルスのためによろしく頼むよ、スクラロース」


(パルスのためにって言うな!

 聞こえてるから!

 誓いの言葉に妹を混ぜるんじゃないわよ!)


 神父がビクッと肩を震わせ、困惑した顔で兄を見た。

 だが、兄の顔は一点の曇りもない爽やかなイケメンフェイスだ。

 神父は「聞き間違いか?」という顔で咳払いし、今度は新婦へと向き直った。


「汝、スクラロース・オリゴ。

 病めるときも、健やかなる時も、この男を愛し、敬い、慈しむことを誓うか?」


 スクラロースは、頬を薄紅に染め、瞳を潤ませながら、甘ったるい声で答えた。


「誓いますわぁん♡

 あなた様のために、この身の全てを捧げますわぁん。

 パルスちゃんのお話も、毎日聞かせてくださいませねぇん♡」


(だからアンタもアンタで。私の名前を出すな!!)


 神父が今度は完全に固まった。


 新郎は「妹のために頼む」と言い、新婦は「あなたのために全てを捧げるし、妹の話も聞く」と言っている。

 互いに見ている方向が全く違う。

 会話が完全にドッジボールをしている。

 だが、当人たちの顔は、この世の春を謳歌するような至福の表情なのだ。


 神父は助けを求めるように、親族席のお父様を見た。

 お父様は、両手で顔を覆い、見なかったふりをしている。

 神父は諦めた。

 プロとして、この狂気の式を終わらせる義務があるのだ。


「……そ、それでは、誓いの口づけを」


 神父が震える声で促す。

 アドバンテームが、スクラロースのヴェールを優しく持ち上げる。

 二人の顔が近づく。

 ステンドグラスの光が、二人の横顔を神々しく照らし出す。


 アドバンテームは「これでパルスとの絆が深まる」と考え。

 スクラロースは「愛する王子様とついに結ばれる」と考え。


 脳内の思考回路は地獄のようにズレているのに、傍から見れば、それは一幅の名画のように美しい、完璧なキスシーンだった。


「おおぉぉぉ……!」


 参列者たちから、感動の拍手が巻き起こる。

 外の広場からも、祝福の歓声と教会の鐘の音が響き渡った。


「……はぁ」


 私は、拍手を送りながら、大きく、深くため息をついた。

 疲れた。

 色んな意味で、本当に疲れた。


 狂気と勘違いと、圧倒的な美貌が入り混じった結婚式。

 だが、結果として誰も傷ついていない(お父様の胃壁以外は)。

 ファンたちは祝福に回り、オリゴ家は健康になり、兄とスクラロースはそれぞれの欲望を満たして幸せそうにしている。


「……ま、本人が幸せならいいわよね」


 私は扇子で口元を隠す。

 隠された私の口は、きっと微笑んでいるのだろう。


「ま、私の不労所得計画に影響がない限り、勝手に幸せになってちょうだいな!」


 こうして、アスパルテーム家に新たな「義姉」が爆誕した。

 怒号から始まり、最後は熱狂的な祝福に包まれたこの結婚式は、領都シュガーヒルの伝説として、長く語り継がれることになるだろう。


 ……もちろん、その裏にある狂気の真相は、私と一部の人間だけの秘密である。


番外編『義姉爆誕』 完


※2026/03/13

 微修正

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