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第十一話 変事

 「……時を超える、か」


 俺は自分の部屋のベッドに腰掛けながら考える。はたして俺がこの世界にやってきた理由はなんだろうか。これは、俺が望んだことなのだろうか。それとも、誰かが望んで俺を召喚したのか……?


 あの本に出てくる人物は、愛する人物のために過去へと行って未来を書き換えている。それは、、、今もなお、別世界の自分たちを救うために……。


 俺がこの世界の人間でないことを知っているのは二人だけ。死神と師匠。この二人だけ。


 「今後、どうしたら良いのやら」


 俺はもう分からなくなってきていた。俺がこの世界ですべきこと。この世界に来たからには必ずなにかやり遂げることがあるに違いない。だが、俺にはそれが全くもって分からない。


 もう窓の外は暗くなっていた。俺は先ほど簡単な食事を済ませていたが、思考を凝らすうちに少し空腹感が漂ってきていた。


 「そうだ、言語やらないとな」


 俺は一冊のテキストを手に取り、パラパラとページをめくっていく。そして、羽ペンを手に寝る前の最後の学習を始める。


 そして、自分の決めた目標を達成するまでやる。目標を定めることで区切り良くやめれる。あっちの世界でも俺は必ずと言って良いほど、計画を立てて行動していた。それは、この世界にきても変わらないらしい。そうだな、今日は……10いや、15ページくらい進めるか。


 「激動の一日だった……」


 

 ***



 「ほんとに一日でいいの?」


 次の日の早朝、彼女はもうこの村を旅立つ準備ができていた。そして、彼女は今玄関の前に杖を手に立っている。


 「ありがと、久々に気持ちよく寝れたわ」


 「それは良かった。そういえば、この後はどこに行くの?」


 「うーん、そうね……。結局もうこの村に探している人はいなかったわ。情報によれば、ここから北にいった北聖の大樹に行ったらしいからそこに行く予定よ」


 北聖の大樹。聞いたことないな。いや、俺が無知なだけか。そろそろ、世界の大陸について知らないとやばいかな……。でも、地理なんてやりたくねー。


 「あと、これ」


 彼女はそう言って杖を地面に置くと、両手で魔導書を差し出した。


 「……これは?」


 「あなたへのお礼よ。昨日はいい思いをさせてもらったし。この本にはあなたが知らなそうな魔法が載っているわ!」


 「おぉ……! それは助かるけど、良いの? これは君のじゃないの?」


 「大丈夫! あたしはもう全部できるからね!」


 なるほど、やはり凄腕の魔法使いだな。とてもありがたいな、魔法に関しては少し疎いし、なによりレベルの高い魔法が使えるようになるのはとても嬉しいね。


 「じゃあ、行くわね!」


 「気をつけて!」

 

 彼女は杖を拾い上げると、この村を立ち去って行った。頼もしい魔法使いだったなぁ。


 人生に光が差し込んだような出会いだった、とても良い子だった。一応年齢的に年上だけど、年下に頼るのは少し恥ずかしかったな……。俺も負けずに頑張らないとな。


 俺は彼女を見届けると家の中へと戻り、リビングへ行く。


 「ん?」


 珍しいな、師匠が作った料理がない。早朝とはいえ、いつもこのくらいの時間には作っていると師匠自身も言っていたのに……。


 というか、師匠が帰ってきていない気がする……。昨日のあの本を渡してから少し変だったしな……。


 「ルイ、起きてる?」


 「どうしたの?」


 そう声をかけると俺の目の前にフォーリンブルーの猫が「空中」に現れた。


 「あ、えぇ……? 空飛べたの?」


 「うん、一応ね」


 ああ、そっか。そういえば聖獣だった。猫の見た目をしたまま座ったりしてたから、普通の猫だったことを忘れてた。いや、精霊なら分かるけど聖獣って飛べるの?


 「で、どうしたの?」


 「師匠のことだよ。あれから帰ってきてないよね?」


 「うん。というかしばらく帰ってこないよ」


 ルイは当たり前のように言った。


 しばらく……? どういうことだよ。師匠が帰ってこない? 


 いや、突然じゃないな。帰ってこないって自分で決めていたから聖獣を俺を渡したのだろう。だが、気になるのはその理由は……? というよりも、ルミンのことを褒美と言ったり、よく分からん本を渡してきたりと挙動が少しおかしい気がしたな……。


 「しばらくってどのくらい?」


 「……というよりも、多分もう会うことはないよ」


 俺は頭の中が真っ白になった。突然の出来事に脳の処理が追いついていなかった。


 「は? ちょっ、え? どういうことだよ、ルイ!」


 会うことはない、どういうことだよ! この先の数年間一緒に冒険するんじゃなかったのかよ! いや、というよりもどうして何も言わずに立ち去るんだよ!


 まじで、なんなんだよ……。


 「どういうことって、僕も分かんないよ。落ち着いて」


 「……はぁ、よく分かんないな」


 その時、俺はとある人物の顔が浮かんだ。真っ白な髪がトレードマークの人間だ。


 「あっ! ねぇ死神はどうしてるの?」


 「えぇ……あの人には簡単に会えないよ。一応神だし」


 あぁ……くっそ。神かよ。じゃあ、あいつと最初の会っていたのは奇跡にも等しいのか……。あぁもう、なんなんだ本当に。


 これなら、ルミンと行動を共にするべきだった。もう少しルイに早く聞けば良かった。


 「師匠はどうして戻らないの?」


 「うーん。それは僕にも本当に分からない」


 聖獣ですら分からないことが俺に分かるわけないし……。この先俺は一体どうしたら良いんだよ。まるで、親に捨てられた子どもじゃん。


 「ルイ、僕はどうするべきなの?」


 「そうだね、君には選択肢がある。一つはこのままここに留まって、暮らしていく。

 もう一つはここを出て、ルミンのように各地を転々として生活する。

 最後は冒険者になる。危険(リスク)があるけれ君はこれが良いんじゃないかな」


 「だけど、俺の見た目的に冒険者にはなれない気がするよ」


 「そんなことはないよ。君はいま九歳かな? 冒険者になるには十歳になる必要があるけど、君は今戸籍がない。


 突如としてこの世界にやってきて、君はいない人間として今日を生きている。だから、新しく戸籍をつくって十歳だと年齢を偽れば良いよ」


 えっ……。この猫、俺が異世界人だって分かってたのか。まじか。というよりも、新しく戸籍を作って年齢を偽るって……。大丈夫なのかな、それ。


 「年齢を偽るって……。両親もいないのに大丈夫?」


 「大丈夫、僕がなんとかするよ」


 まぁ、自分から提案して解決案もあるなら大丈夫か。というよりも、師匠に会ったら事情を聞きたいな。なんの前触れもなく居なくなるなんて……。


 だが、ルイがいてくれて良かった。この世界についてあまり知らない俺にとって今はルイが頼りだ。


 「戸籍を変えるにはどうした良いの?」


 「世界各地にある教籍所(きょうせきしょ)に行けば良いよ。最寄りはここから南に向かった場所にあるよ」


 「なるほどね、じゃあ準備するか」


 はぁ……。怒涛の連続すぎるな。だが生活していくためには教籍所に行って戸籍を作るしかない。だが、そのあと冒険者として生計を立てるためにはやるしかないか。


 「地図はいらないよ、僕がいるからね」


 「頼もしいな」


 聖獣か、意外と頼りになるな。


 とりあえず身を守るための剣と、水の入った革製のボトル。そして師匠からもらったいくらかのお金。


 この世界のお金は硬貨が基準だ。物々交換に関してはこの世界でも同様な感じだ。俺は実際にこの世界でもお金を使ったことはないが、以前師匠が使っているのを見たことがある。


 「そういえばどのくらい歩くの?」


 「歩く? 君にはそれがあるじゃないか」


 そう言うとルイは俺が持っている真剣の近くに立つ。


 「あっ! そうか、そういえばこの剣、空を飛べるって言ってた!」


 だが、俺はこの剣に乗ったことなんて一度もない。もし乗ったら落ちて死ぬんじゃないか? 怖いな。


 「ちなみに魔力とかはいらないから心配しないでね」


 おぉ、魔力によって浮上するわけではないのか。それは助かる。俺はまだ総量が少ないからな。


 いや、待て。師匠はこのことも見透かしていたのか? だから、俺にこの剣をくれたのだろうか。だとしたら本当に何を考えているのだろうか。


 まぁ良い。


 そして俺は服装を整えた。ブラウン色のブーツを履き、橙色のレースアップシャツを着て、黒い半ズボンに着替え背中に真剣を携えた。


 そして俺はルイとともに教籍所目指して家を飛び出した。


 

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